スポンサーリンク

いわゆる合唱とオペラ合唱の違い

 クラシック系の合唱には2種類の合唱があります。一つは、いわゆる合唱であり、もう一つはオペラ合唱です。いわゆる合唱とは、本来は教会音楽を歌う合唱ですが、日本でいう合唱は、教会音楽に限っているわけではなく、オペラ合唱以外の合唱を指しています。つまり、オペラ合唱は、いわゆる合唱とは、やや毛色の異なる合唱ってわけです。

 さて、これら2つの合唱ですが、その違いとして、私は以下の3点の違いがあると思っています。

1)歌っている主体の違い

 いわゆる合唱では、歌っている集団は群体として存在しています。群体というのは、水族館にいるイワシの群れのようなもので、一匹一匹は小さくて弱いので、集団として集まり、全体で巨大な魚を表現して、敵に対峙しているのです。ああいった存在を群体といいます。ですから、いわゆる合唱で歌っている一人ひとりの声は、小さくて弱いのかもしれないけれど、それが集まって、1つになって、巨大なパワーを生み出しているわけです。

 一方、オペラ合唱で歌っている主体は民衆であり、一人ひとりは個人として自立しているわけです。自立した個人が群れになっているのがオペラ合唱で、あくまでも個人の集合として歌っているわけです。ですから50人いたとしたら、その歌声は50人の歌声であって、決して1つにはならないし、なるべきではないのです。あくまでも50人の人間が集まって歌っているのでないといけないわけです。

2)音量の考え方の違い

 いわゆる合唱が、合唱という形態を取る理由の一つは、音量の増加があります。それは、なぜオーケストラのヴァイオリンは複数いるのか、と同じ理由です。一人ひとりの音量は小さくても、大人数で歌うことによって、音量の増加をするために、合唱という形を取ります。ですから、いわゆる合唱の理想形は、大人数で歌っていても、あたかも一人の人が歌っているように聞こえるようにそれぞれの歌声が溶け合って、一つの音色に収斂していく歌声です。

 一方、オペラ合唱は、民衆を表現しているわけで、音量の増加はもちろんですが、複数の人間が存在している事を歌声で表現しています。ですから、互いの歌声が溶け合うのではなく、むしろ互いに自分を主張するくらいの方が良いのです。

3)個性の表現の違い

 上記2点にも通じるのだけれど、いわゆる合唱では、合唱団という単一の個性で音楽を表現していきます。

 一方、オペラ合唱では、個性は複数あって良いというか、それが望ましいわけで、色々な考えや立場の人間が複数いるのだ…というのを歌声で表現しています。

 大勢が一つになるのが、いわゆる合唱であるならば、大勢が大勢のままなのが、オペラ合唱なのです。

 私の個人的な印象では、いわゆる合唱の歌声は美しくあるべきだし、オペラ合唱の歌声は力強いのです。

 そんなわけで、いわゆる合唱とオペラ合唱は、同じ合唱という形態を取ってはいるものの、音楽としては、かなり違うものという事が分かります。まあ、そもそも、聖なる教会音楽と、俗っぽいオペラに、音楽としての共通点なんて、あんまり無いんだよ。だから、合唱だって、自ずと違ったものになってしまうというわけだ。

↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
にほんブログ村 クラシックブログ 声楽へ
にほんブログ村

コメント

タイトルとURLをコピーしました