もちろん、この場合の“歌える”はアマチュア歌手として、他人に聞かせられる声で歌える…程度の意味です。なので「何歳まで歌えるのか」は「何歳で声の老化/劣化は始まるのか」と同義だと思ってください。
私はかつて、キング先生から「歌は50歳まで。50になったら歌えなくなる」とよく言われました。ですから、テノールとして独唱を楽しめるのは50歳までであって、50歳を過ぎたら、合唱をするなり、バリトンに転向するなりすれば良い…と言われていたのですが、今思うと、これって、単なる“呪いの言葉”でしかなかったと思います。
当時の私は40代の後半で、目前に迫る50歳を感じて、自分の歌手生命の終わりがやってくるのが恐ろしかった覚えがありますが、60歳を超えた現在、別に歌が歌えないと感じたことはありません。
先生が替わって、本当によかったです。おそらく、キング先生のところにいたら、そんな呪いのせいで、今も歌っているか分かりませんからね。
歌える…という表現が、声の老化/劣化の話とするならば、そりゃあ若い時代と比べると、年を取っていけば、だんだん歌えなくなってくるのは必然でしょう。でもそれは、50歳ではない事だけは明らかです。
美しい声を維持するのに、肉体的に必要なのは発声に関する筋肉であり、性ホルモンであろうと、私は考えています。
筋肉は発声そのものに関与し、性ホルモンは音色に関与すると思っています。そして、筋肉は、原則的に老化はせず、鍛えれば鍛えるだけ使用可能なのて、いくつになっても発声はできる…わけです。しかし、性ホルモンは年齢とともに減少していきますので、年齢とともに、男性的女性的な声は出づらくなります。良くも悪しくも、年齢を重ねていくと、中性的な音色になるのは仕方のない事であり、声の美しさが減少してしまい、ある一線を超えたところで“歌えない”声になってしまうのかもしれません。
少なくとも私の場合は、60歳では十分男性的なテノールの声で歌えています。でも、70歳になった時に、男性的なテノールの声で歌えているかは、まだ分かりません。それ以前に、70歳まで元気で健康な状態で歌えているか、いや、生きているかすら分からないのですから「自分は何歳まで歌えるのだろうか」と悩む必要は全くないのかもしれません。
歌は生きている時にしか楽しめないのです。死んじゃえば歌えないのです。ですから「いつまで歌えるか」ではなく「いつまでも元気がお達者で暮らしていこう」と考える事が大切なのではないでしょか? 今、私は、そう考えています。
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