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メトのライブビューイングで「湖上の美人」を見てきた

 アンコール上映です。今回は2014-15年シーズンに上演されたものです。スタッフ&キャストは以下の通りです。

 指揮:ミケーレ・マリオッティ
 演出:ポール・カラン

 エレナ:ジョイス・ディドナート(メゾソプラノ)
 ウベルト/スコットランド王:ファン・ディエゴ・フローレス(テノール)
 マルコム:ダニエラ・バルチェッローナ(メゾソプラノ)
 ロドリーゴ:ジョン・オズボーン(テノール)
 ダグラス:オレン・グラドゥス(バス)

 ディドナートとフローレスと言うゴールデンカップルによる上演でした(喜)!

 作曲者はロッシーニで、ベートーヴェンと同時代の作曲家で、当時的な人気は全然比較にならないほどにロッシーニの方が上だったそうです。だってねえ…、この「湖上の美人」がヒットした時のベートーヴェンときたら、交響曲で言えば、8番と9番の間の時代で、この頃の有名な作品ときたら、ピアノソナタ「ハンマークラビィーア」の頃だから、音楽は…渋いよね、玄人受けはするだろうけれど、一般的な観客は…って考えれば、そりゃあ、こんなにもアクロバティックな曲である「湖上の美人」の方がウケるよねえ。

 もっとも、同時代的な人気では負けたベートーヴェンだったけれど、その後も人気を継続して、結果的にはクラシック界ナンバーワン作曲家の地位を得たけれど、ロッシーニは死後しばらくして、その作品が上演されなくなり、忘れられた作曲家になったわけだけれど…そりゃあ、そうだよね。だって、ロッシーニは作品が上演されなくなってしまったから。演奏されなくなったわけは、音楽的にダメとかつまらないとかではない事は、実際の演奏を聴いてみりゃあ分かるわけで…単純に演奏するには難しすぎるだけの話で、こんな難曲、そりゃあ簡単には上演できないよ。上演できなきゃ、忘れられても仕方ないよ、うん。

 ロッシーニの時代は、ベルカントの時代と呼ばれるほど、歌手たちの歌唱技術がむやみに高かった時代で、その後、声楽やオペラの音楽的な傾向が変わり、ロッシーニの時代の歌唱方法が廃れてしまったために、後の時代の歌手たちではロッシーニの作品が歌えなくなってしまった…という事情があり、ようやく近年、ロッシーニ時代の歌唱方法(寸分違わずってわけではないだろうけれど)を再現できる歌手たちが出てきて、ようやくその作品が演奏されるようになってきたわけです(それでも、誰でも彼でも歌える…っけわけにはいかないようです)。

 とにかく「湖上の美人」というオペラは、目の玉が飛び出るくらいの難曲が揃ったオペラです。アマオケでも演奏できちゃうベートーヴェンの交響曲とは、演奏の難易度が全然違います。ほんと、聴いていて、清々しいくらいに…難しい(汗)。

 まず主役のエレナだけれど、メゾソプラノなのに、転がす転がす…。そんちょそこらのソプラノ以上に転がせないと、この役は歌えません。

 テノールの2役は、転がす上に超高音が出ないとダメ。Hi-Cなんて、普通にバンバン出せないとダメなのよ。そんなテノールなんて、世界レベルで探しても、そんなにたくさんはいないのよ。

 こんな厳しい条件の歌手を3人も揃えないと上演できないのだから、普通の歌劇場じゃあ無理でしょ。さすがのメトでも、今回が初上演だと言うのも納得です。でも今の時代はいいね、こんな難曲オペラも、メトのような歌劇場なら機会さえ恵まれれば上演できるし、それをこうして映像として世界中に配信してくれるわけで、極東の片隅に住んでいる私のような、平凡なオペラファンであっても、それを見て楽しめる時代なんだから、ほんと、すごいよね。

 という訳で、何はともあれ、この上演、絶賛オススメです。

 何がすごいのかと言えば、とにかく、歌手たちの声と歌唱テクニックです。その凄さを単純に楽しむオペラなのです。ストーリーは無いわけではないけれど、それはひとまず横に置いて、歌手たちの声とテクニックにうっとりするのが正しい鑑賞法なのです。

 とにかく、オペラファンなら、黙って見るべしです。

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