スポンサーリンク

Hi-Cは命を削って出すもの

 テノールとかソプラノにとって、高音発声は必要不可欠であり、レゾンデートルですらあります。しかし男声女声の違いもあり、その発声方法に関しては、似ているようで違っている部分も多々あります。

 私は男声なので、この記事ではテノールに関して書きたいと思います。

 声帯の能力は人それぞれです。そもそも高音発声があまり得意ではない人もいれば、比較的得意な人、むしろ低音発声ができないために高音を歌わざるをえない人…と様々です。要は“持ち声”の違いの影響が大きいって話です。

 いわゆるテノールの一般的な音域は、低いドから高いラまでです。国際表記で書けば、C3~A4です。なので、ミュージカルテノールや合唱テノールの守備範囲もだいたいこの範囲となります。

 オペラアリア等で“高音”と呼ばれる音は、大抵、それよりも高い音であり、高いラ~高いド(Hi-C)であって、国際表記で書けばA4~C5です。これらの音は、一般的なテノールでは発声できない高さであって、それを発声するために、卓越した発声テクニックと恵まれた才能(持ち声)が必要となります。逆に言えば、この音域が発声できれば、それが飯の種となるわけで、一流のプロテノールの多くは、この音域の発声可能な事がウリとなるわけです。特にHi-Cに関しては、プロテノールであっても、発声が困難であるほどの高音であり、発声の難易度が極めて高いのです。標題の通り「Hi-Cは命を削って出すもの」って感じで歌うわけです。

 とは言え、Hi-Cを歌う歌手たちのみんながみんな、命を削っているわけではありません。それは…持ち声に恵まれている人がいるからです。

 テノールでも、ベルカントオペラと呼ばれる、ドニゼッティやベッリーニ、ロッシーニを得意とするテノールたちは、Hi-Cはもちろん、それよりも高い音(D5とかE5とかF5とか)が楽々と歌えなければいけません。そんな高音、一般的なテノールには、到底無理なわけで、テクニック以外に、持って生まれた才能が必要とされます。

 あくまでも、一般的なテノールの音域はC3~A4であって、A4~C5が発声できれば、一流のプロテノールとして活躍することも夢でなく、C5よりも高い声が出せる超人は、ベルカントオペラ等の選ばれた人のためのレパートリーの作品を歌うことでできるわけです。

 なので、アマチュアテノールならば、A4(高いラ)が発声できれば、実は立派な事なのです。そこより高い音は…一般のテノールにとっては、不可能に挑戦するわけですから、それこそ命を削って出すつもりで行くしか無いのです。

 まあ、命を削れば出せるなら、みんな命を削ってくると思うよ。それほど難しく、それほど憧れているのです。

 ちなみに私ですか? そんな高音なんて出ません(笑)。ファルセットなら楽々出ますが、それはカウントしないのがテノール業界のお約束ですからね。テノールはあくまでも実声(地声)で歌うものなので、残念ながら、私には無理です。でも、たまに調子が良かったら出たり出なかったりしますが、安定して出せなきゃ、歌では使えません。

 いずれはそんな高音も安定して出せるようになったら良いなあと思ってます。つまり、奇跡が起こることを願っています。ほんと、命削れば出せるなら、ガンガン削っちゃうよ。

↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
にほんブログ村 クラシックブログ 声楽へ
にほんブログ村

コメント

  1. 如月青 より:

    ホント、ハイC出せるなら、悪魔に魂売りますね。

    女声の場合も合唱の音域は男声の1オクターブ上でほぼ同じです。若い頃はAの関門がなかなか超えられず、この頃になってやっと安定して出るようになった、と喜んでいました。

    でも先生によると、自分で出たと思うのは当てにならない、と。プロの耳には、きちんと体幹を使ってマスクに響かせなければ合っていると聞こえないそうです。

    その判断だと、まだGに届くかどうか、と。習い始めはEだったので、伸びてはいるのですが、Cまではあと何年?

    イメージトレーニングとしては、楽器の持ち替えがよいそうです。腹筋で支えるのはどの音も変わらないのですが、高音を意識し過ぎて喉を固めるのは、弦楽器で言うとビオラでバイオリンの音域を出そうとするようなものなので、発声の前に、あ、自分のパートはバイオリンだった、と楽器を持ち替えるように想像すると余分な力が抜ける、と。

    テノールの方に当てはまるかは分かりませんが、ご参考まで。

  2. すとん より:

    如月青さん

    >弦楽器で言うとビオラでバイオリンの音域を出そうとするようなものなので、発声の前に、あ、自分のパートはバイオリンだった、と楽器を持ち替えるように想像すると余分な力が抜ける、

     たぶん、テノールの場合は「あ、自分の楽器はチェロだった。じゃあ、思いっ切ってハイポジションに移動して、バイオリンの音域を弾かなきゃダメじゃん」って感じかな? つまり楽器は変えずに、テクニックと力技で乗り越える…って感じだと思います。男声の場合は、楽器を変えないし、声の色も発声方法も変えずに、中音域のままに高音域に突っ込んでいくわけで、そのためにテクニックが必要になってくるわけです。もちろん、高音でノドを固めるのは悪手なんです。

    >自分で出たと思うのは当てにならない、

     全くその通りで、知り合いの中には、常にチューナーを握りしめて歌っている人もいるくらいです。それくらい、人って自分には甘いんですよ。まあ、私も自分には甘々ですけれど。

タイトルとURLをコピーしました