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伴奏は聞かない。伴奏を予想する。

 私には音感がない、とはいつも書いていることです。子どもの頃にきちんとした音楽教育を受けなかったツケが、今になってやってきただけの話で、実際ないものはないので、仕方がないのである。

 音感がない人間が歌う場合はどうするかというと「伴奏に頼る」わけです。もう、伴奏に“おんぶに抱っこ”状態です。とにかく自分の出すべき音を、伴奏の中から拾って拾って拾いまくって、歌い続けていくわけです。

 “声を出したい -> 伴奏を聞いて音を拾う -> 声を出して、さっき拾った音と同じかどうか確認する -> 同じならOK、違っているなら、すぐさま修正” この作業を瞬時に行い、音符一つずつに対して行い続けいくわけだ。我ながらご苦労なことである。

 ところがこれがいけないと先生はおっしゃるわけ。何がいけないかと言うと、これをやっていると、テキメン、歌がピアノに対して遅れるのでダメというわけ。

 音は音波に乗って運ばれるので、他人のところに届くには時間がかかるわけです。それなのに、ピアノを聞いてから声を出していたら、ピアノを聞いている分だけ、声が遅れてお客さんに届くわけなんですよ。あら、そりゃそうだよね。

 音には、必ずタイムラグが生じるもの。だから演奏者は、そのタイムラグも折り込んで早め早めに演奏していかないといけないのだそうです。

 ってことは? そう、伴奏を聞いて歌ってはいけないのです。いや、それどころか伴奏と一緒に、伴奏と同時に声を出していかないといけないのです。つまり“伴奏が聞こえる前に歌いださないと間に合わない”ということです。

 そしてそれはどういうことかと言うと「歌は歌で歌い、伴奏は伴奏で演奏し、それがちゃんとしたアンサンブルになっている事」が肝心というわけで、つまりは「伴奏を予想しながら歌っていきましょう」というわけなのです。

 「いやあ、それじゃあ、音程が…」としどろもどろに答えていたら「レッスンでは、音程が外れたら、必ず指摘しますから、安心して歌ってください」と助言。分かりました。

 音程とは伴奏を聞いて、そこから拾っていくのものではなく、自分の中で考えて、自分で作って演奏していくもの。歌なんだから、楽器に頼らずに歌えることが大切。もちろん、すぐにできるようになるわけではないけれど、そういう歌い方を始めなければ、いつまでたってもピアノ頼りの歌い方しかできない。もっと自信をもって、自分で(正しい)音程を考えながら、歌っていける、歌が趣味のオジサンにならないと…。いつまでも他人(ピアノ)頼りじゃダメなんです。

 って、書くと簡単だけれど、音感のない私には、これはかなりのチャレンジだよ。でも、ここが“歌を歌える人”と“ジャイアン”の別れ道かもしれない。ここの別れ道で迷わずにしっかり、歌を歌える人の方に行きたいものです。

コメント

  1. お散歩さんぽ より:

    すごいなあ。
    それを要求されるところがまたえらい。耳に聞こえているのが合うように早目早目に息を送る、かぁ。すっかり忘れてました(笑)
    ま、今の状態は「それどころじゃない」んで、そんなことは後回しだなあ(涙)

  2. すとん より:

    >お散歩さんぽさん

    >それを要求されるところがまたえらい。

     いやいや、全然エラくないのよ、これが。だってね、発表会に向けてのレッスンなんだから、当然“客前での演奏”が前提なのよ。一人でカラオケでとか、レッスン場で先生と二人きりとか、そういう状況なら、そんなのでも仕方ないだろうけれど。

     “客前の演奏”って、単純に歌えればいいとか、そう言うのとはまた違った注意が必要なので、その手の指導の一つなのですよ。

     実際に自分が客の立場で、各種発表会などを見物に行くと、やはり「伴奏を聞いている奏者」というのが、少なからずいるわけで、そういう人の演奏って、なんか『もったりした感じ』というか『無駄に重い演奏』に感じます。

     もうちょっと言うと、歌(フルートも同様だろうけれど)とピアノの演奏なら、明らかに歌主導なわけで、歌がピアノを引っ張っていくくらいでちょうど良いのだろうけれど、それがピアノに引っ張られて歌っているようじゃあ、ダメじゃんってことなんです。

     あと『伴奏を聞いて歌う』以外にも、遅れて聞こえるパターンがあります。

     合唱に多いのが『指揮を見て歌う』。これは結構遅れます。ま、そういう団だと分かると、指揮者の方で早め早めにアクションを起こして、微調整かけてきますから、大事故は起こりませんが、客席で見ているとおかしくて…。だって演奏よりもずいぶんと前に指揮者が指示を出して、それをゆっくりゆっくりと合唱がこなしている様子は、やっぱりおかしいです。演奏中に、にやけてしまうくらいです。これも指揮をきちんと見るのは練習中だけにしておいて、本番の時は、指揮を予測しながら演奏するくらいの方がいいんだと思います。

     フルートの場合は、ちょっと話が違って『音の立ち上がりが遅い』と演奏が遅れて聞こえます。歌の場合でも音の立ち上がりの遅い人はいるけれど、それって歌手の心がけ次第で修正できるけれど、フルートの場合は、フルート自体の性能に大きく影響されますね。と言うよりも、フルートの場合は、こっちの方が大問題かな?

     試奏をしていると、その辺、結構感じますよ。音の立ち上がりが速くて、スッと音の出る笛と、立ち上がりが悪くて、息を入れてもタメてから音が出てくる奴。息をタメないと音が出てこないフルートは、奏者自身がそのタイムラグを計算に入れて演奏しないといけないから、慣れるまで大変だろうなあと思います。

     大雑把に言うと、高額な楽器は押し並べて、音の立ち上がりが速いです。庶民的なお値段の楽器は、千差万別で速いのもあれば、いやになるほど遅いのもありますが、平均的な話をすると、やはり値段分だけ音の立ち上がりが遅くなるかな…?って気がします。気のせいかもしれませんが。ちなみに、チャイナ娘はアゲハよりも、八分音符一つ程度、音の立ち上がりが遅いです。だから、最初にアゲハを吹いた時、その反応の速さに酔いしれましたもの。

     あ、ゴールドフルートは、あきらかに銀笛よりも音の立ち上がりは速いですよ。

  3. smilekumi より:

    本文で「フルートもそうだよなあ」と思い、上のコメントを拝読して確信に変わりました。
    私の音の立ち上がりが遅いのは、庶民的なお値段のフルートだからなのね!なーんて、フルートのせいにしちゃいけませんね。
    でも自分の楽器の特徴をちゃんとわかった上で演奏するようにすればいくらか違うんでしょうね。そんなにすぐには買い替えられませんもの。

  4. すとん より:

    >smilekumiさん

     だから、庶民的なお値段のフルートのすべてが、音の立ち上がりが悪いわけではないから、一概に笛のせいにはできないって。でもね、そのフルートの持っている性能を超えた演奏はできないのだから、自分のフルートに限界を感じたら、買い換えしかないと思います。でも、フルートって高いからねえ…。

     そうそう、こちらにもタマにコメントくださる、ship-papaさんが、最近お安くてなかなか良い感じのフルートをご購入なされた(http://ameblo.jp/ship-papa/)ようです。探せば、安くて良いものもあるわけです。

    >でも自分の楽器の特徴をちゃんとわかった上で演奏するようにすればいくらか違うんでしょうね。

     これが大原則でしょうね。だいたい上を見出したらキリがないです。アマチュア・フルーティストのひとまずのゴールである、総銀フルートだって、ゴールドフルートと比べたら、かなり音の反応は悪く感じますよ。音の反応を追求してゆけば、24Kゴールドとかプラチナ無垢とかに行き着くのだろうけれど、そんなフルート、趣味で買っちゃいけませんって、でしょ。

  5. tico より:

    もう一つ、ダンスの時も同じですよねえ。
    並んで踊っている人の中で覚えてない人は人の振りを見て手足を動かすからズレるんですよね。見たことあります?

    他のことでは、私がよくやる遊びですが。
    NHKニュースを聞いている時に「同時日本語通訳」っていうのをして遊びます。アナウンサーが言われたことをすぐさま、耳で聞きながら口で言っていきます。これは確かにズレていきます。しかし英語の同時通訳の人はこれを英語→日本語でやってるのですから、想像もつかないくらいすごい頭ですねえ。

  6. すとん より:

    >ticoさん

     そうそう、ダンス(群舞)も同じ。全く同じ。振りをよく覚えていない人が前の人の振りを見て踊っているのに、その前の人を見ながら踊っている人を、さらに別の人が見て踊っているとか…。町内会の盆踊り大会と、学校の運動会などで、よく見かける光景ですね。遠目で見ていると、結局バラバラに見えるのね。そのバラバラさ加減が素人くさいわけで…。

     そこへ行くと、プロのダンサーたちは、どれだけ人数が増えても、ビシっとキレのいいダンスを踊ってますね。あれはお互いを見るなんてのはしてないし、もちろん音楽を聴いてから動いているわけではない。磨き上げた肉体に絶え間なく訓練をほどこして、ああなったわけで、あれはあれで、全くの素人が見ても、感動するものです。

     音楽と同じですね。

     同時日本語通訳…難しそう。でも脳味噌が鍛えられそう。少なくとも、これができる人は、なかなかボケないと思います。果たして私はできるか…無理っぽいなあ。

  7. 橘深雪 より:

    なれないことに直す作業は、なかなか大変な事だと思いますが、頑張ってチャレンジして下さい。
    私もなれないこと頑張ってみます…

  8. すとん より:

    >橘さん

     慣れない事というより、できない事?ですね。いわば、恐怖心との戦いなんですよ、実は。音感バッチリの人には想像すらできないと思うのだけれど、ピアノよりも先に音を出すというのは、自分が出す音が、正しい音程から外れていないか、もうドッキドッキなんですよ。例えれば、目隠しして歩くようなものです。分かるかなあ…。本当に怖いんですよ。

     でもやらないといけないので、やります。やると決めたら、やるんです。だって、男の子だもん。

  9. chiko より:

    ずうっと読んでいて、思い出したことがあります。フルートの立ち上がりとか、ダンスとかとはちょっと違うかもしれませんが。
    オーケストラや吹奏楽で合奏をするとき、指揮者を見ますよね。指揮者が曲の前の最後の一拍めを振ったときに、みんなで息を合わせるんですよね。そう、文字通り息を吸って息を合わせる。そして、一拍めをあわせる。なんか、表現がわかりにくいですかね。
    実写版の「のだめカンタービレ」で、のだめちゃんと千秋先輩がモーツァルトの二台ピアノを弾くときに、”4、はいっ”って息を吸ってあわせたのを覚えていますか。あんな感じで、息を使う楽器でなくても、息を合わせるんですよね。
    レ・フレールは、前に、「息が合っている」実験をしたことがあって、演奏の時だけではなく、何もしていないときも、息を吸う、吐くのリズムがあっているということです。ああ、だからなのね。MCの時、息が合いすぎて、一緒に喋りだそうとしたり、見つめ合ったりしてるんだ・・・
    ちょっとずれてきましたね。
    それにしても、オーケストラの指揮っていうのは、わたしには、すごくわかりにくいのもあって、「あれで、なんでそんなに合わせられるの?」って、??????がいっぱいつくことがあります。
    でも、すとんさんが仰るのは、音が合わないと言うことだから、ちょっと違いますかね。

  10. すとん より:

    >chikoさん

     オーケストラ(に限らないけれど)の指揮者って、舞台に立った時は、すでに仕事の大半は終わっているんですよ。指揮者の仕事のほとんどは、実はリハーサルの時に行なわれています。リハーサルできちんとポイントを押さえて合わせて、本番では、そのポイントへのきっかけを出しているだけです。だから、いきなり本番を見ても指揮者の動きの意味はあまりよく分かりませんが、リハーサルから付き合っていると、あの動きで何が言いたいのか、結構分かるものです。

    >指揮者が曲の前の最後の一拍めを振ったときに、みんなで息を合わせるんですよね。

     これはね、実は、指揮者がそのオケなり合唱団なりを信用していない時にやるんですよ。本当に信用している、オケや合唱団を振る時は、指揮者という種族は、気持ちを貯めて貯めて、いきなり振り出します。もちろん、いきなり演奏開始です。曲の出だしにありったけのエネルギーを込めるわけです。

     DVDなどで販売されている、プロの楽団+カリスマ指揮者の演奏はたいてい、いきなり振る -> いきなり曲が始まる、のパターンなのは、その例。

     しかし、信用できない相手の時にこれをやると、事故がおこる可能性があるので、1小節程度先に振ってから、音を出すように指示します。曲の前の最後の一拍目に息を吸わせるのも同様な手口です。確かに事故は起こらなくなりますが、曲の出だしの時の集中力はそがれます。

     …なんだそうです。だから大雑把にいうと、合唱を主にやる指揮者は先に一小節程度振ってから音出しをさせる傾向がありますが、オケ専門の指揮者は、いきなり音出し派が多いそうです。ま、合唱団の方がオケよりも信用なら無いってのは、自分を見ていると、よく分かる(笑)。

    >のだめちゃんと千秋先輩がモーツァルトの二台ピアノを弾くときに、”4、はいっ”って息を吸ってあわせたのを覚えていますか。

     覚えてません(笑)。でも、さもありなんですね。息を合わせる時は、本当に呼吸のタイミングを合わせるのだそうです。特に歌とか管楽器とか息を使う演奏者と共演するピアニストは、その演奏者と同じタイミングで息をするそうですよ。でないと、きちんと演奏できないそうです。

  11. chiko より:

    ああ・・・私たち、信用されてなかったんだ・・・・
    アマチュアだし・・・学生もいたし・・・いつもみんなが集まるとは限らなかったし・・・・

  12. すとん より:

    >chikoさん

     落ち込むことはないです。信用するしないは、別に人間的な問題ではなく、ビジネスライクに音楽演奏者の技術的レベルでの信頼うんぬんですから。プロのオケや合唱団の技術的レベルと自分たちのそれを冷静に比べれば、納得しませんか?

     アマチュアだから…といった理由で信頼しないという事はないでしょうが、アマチュア団体の場合は、常に技術的な問題がありますからね。『練習は週3回程度。本番の舞台には、演奏曲ごとにオーディションを行なう。団員の紹介以外の入団者希望者はお断り』なんて言う、厳し目の合唱団くらいになると、アマチュアでも指揮者はいきなり棒を振り下ろしてくれるようですが…。

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