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頭の中からメトロノームは消しなさい

 先日の声楽レッスン終了後に、キング先生に言われました。

 「歌っている時に、頭の中にメトロノームが鳴っているのが見えます。メトロノームはフルートの時だけで、歌の時はメトロノームを忘れてください」

 ラジャー。

 とにかく歌の時は、旋律を横へ横へつなげるように、レガートに、流れるように、歌うことを心がけるように注意されました。

 おそらくは、フルートの時も本当はメトロノームは忘れた方がいいんだと思う。メトロノームに従いつつも、メトロノームに支配されない演奏。それが“歌うこと”につながっていくと思う。打ち込み系音楽に“歌心”がないのは、見事にメトロノーム(パソコンだからゲート信号というべきか)に支配されているからでしょうね。私はやりませんが、初音ミクをきれいに歌わせるには、楽譜どおりではなく、色々なノウハウで、ピッチやタイミングをずらして旋律を人間臭く歌わせるのだそうです。たぶん、それもきっと同じことだと思います。

 それにしても、なぜバレたのか、私の頭の中のメトロノーム。頭の中でメトロノームを鳴らしていた私はヘマだけれど、それを見抜いたキング先生はすごいなあと思います。

 …しかし、アカペラで歌っているんだよ。頭の中で、メトロノーム鳴らして、音叉叩いてないと、メロディーがどこに飛んで行くか不安でしょうがない…というのは、言い訳ですね、はい。

 餅は餅屋、蛇の道は蛇だね。

コメント

  1. ダリア より:

    今日のすとんさんの記事、百パーセントまったく共感しています。さきほどこの記事を読み終わって以降、目をパチッと開いたままで、ウンウンと連続してうなづいてしまっている自分がいます。
    考えてみると、メトロノームとチューナーって、「親」みたいなものですね。愛情たくさんで「ほらほら、こうこう」って導いてくれるけど、いつかは親離れしたそのとき、一人前に自立した私の音、私の歌になるのでしょうね。

  2. tico より:

    教えていると生徒の思ってることはほとんどわかります。迷いも含めて。それほど芸術は心の内が出るものです。これはギターもパントマイムも同じです。具体的に書いた方がいいんでしょうけど、人のことになりますので、割愛させていただきます。ジャズライブでも演奏者のお互いの気持ちの「線」が見えますよ。

    メトロノームはカウントであって、リズムではないです。リズムは抑揚とかゆらぎとか、回転力とか前進力などがあります。メトロノームの音楽は電子音声で案内されるようなもので発音は聞こえるのだけど意味にならなくて、聞いた側の頭の中でもう一度組み立てて理解するという時間がかかります。歌の言葉(これは器楽も同じですが)も、聞いた瞬間に風景などが浮かんでくるくらいに理解してもらう必要があります。それはしゃべっている時と同じですね。ですから、私もいつも歌詞を読むように言われます。ですから「歌は語り」と言われるのだと思います。ギターなどの器楽は「歌うように演奏する」ということが基本ですが、歌がメトロノームだと器楽も『歌のような演奏』(皮肉っぽくですが)になりますね。

    さて、それをどうやって自分の物にするか…、それは先生にお任せしないと私ではどうすることも出来ませんが、やはり今までの常識とか経験とか知識とかを捨てて真っ白になることでしょうか。そして理解するより感じていくことでしょうか。生徒の心と体の中で変化していってもらうしかできないので、先生は働きかけることを一生懸命続けるのみですね。

    あ、そうそう、リズムで一つ練習できることがありました。階段を上がるとか歩くとかが自然なリズムなので、それを自分のメトロノームとして歌を頭に流していくことを日常的にすると、機械的ではない回転力や前進力が生まれると思います。ぶらんこに乗るとかね、腕を振り回すとかね、海の波の中で立ってるとかね、自分の生活の中で割と得られやすい方法を編み出すのがいいと思いますよ。実は呼吸もリズムなんですけど。

  3. 橘深雪 より:

    頭の中でメトロノームなんて、凄い!私は無理です。いつも感覚だけで吹いているのです。
    基礎練習のときぐらい、まじめにメトロノームを使うことにします。

  4. すとん より:

    >ダリアさん

     私の方こそ「『親』みたいなもの」という表現で、目がパチッと開いちゃいました。そうそう、親というか、優秀なトレーナーというか、そんな感じかな。上手い具合の距離感が大切なんでしょうね。

  5. すとん より:

    >ticoさん

     やっぱり心の中は丸見えなんですか。そうでしょうね、そうだろうと思ってました。確かに、先生とのデュエットもライブも、何となく相手の気持ちが分かるものです。そういう意味では、音楽は、本当に信頼している人間関係でないと、うまくはできないものなのでしょう。

     カウントとリズムは違う…よく分かりました。確かにカウントでは、音楽に必要な推進力は生まれませんからね。良いリズムは、音楽を心地よく前進させてくれますものね。歩くリズムを音楽のリズムにするというのは、私の日常生活(普段からたくさん歩く生活をしてます)からの応用が効きそうな気がします。この方向で少し試みてみます、ありがとうございました。

    >実は呼吸もリズムなんですけど。

     でしょうが、ここを下手にいじると、また発声の迷宮の森に入ってしまいそうなので、私の場合、当面は傍観しておくことにします。

  6. すとん より:

    >橘さん

     頭の中でメトロノームと言っても、頭の中の小人さんが勝手に鳴らしているものですから、あんまり凄くないと思います。それに、これは鳴らさない方がいいものだし。

     ただ、練習の時は、頭の中でなく、リアルにメトロノームを鳴らした方がいいとは思いますけれど。と言うのも、自分のテンポって、やっぱり揺れてくると思います。同じテンポで吹いているつもりでも、無意識に、楽なフレーズは早めに、難しいフレーズは遅めにやってしまいそうです。

     ピアノの発表会を見に行くと、楽なところはぶっとばして、難しいところはソロソロと演奏する子どもをたくさん見かけます。ああいう演奏は絶対にしたくないものだと、常に思ってます(だって、聞いてて聞き苦しいもの)ので、メトロノームを愛用し、一定テンポで演奏できるようにこころがけているだけです。

  7. tico より:

    >でしょうが、ここを下手にいじると、また発声の迷宮の森に入ってしまいそうなので、私の場合、当面は傍観しておくことにします。

    そうですね。私もそう思って、詳しく書かないことにしました。

    >「頭の中からメトロノームは消しなさい」

    もう一度読んでみて、コメント追加を思い立ちました。生徒の思っていることはすぐに伝わるということと関連してですが、結局、頭の中で考えていることが伝わるということです。ですから、メトロノームを考えていると、人に伝わるのはメトロノームしかないということです。音楽や感じたことや風景などは全く見えないことになります。誰だってメトロノームを聞きたくないですもんね。

    NHKラジオで合唱コンクール参加校の放送を聞いていると先生の批評が毎回あるのですが、いつも素晴らしいことを教えてもらえます。先日も何度も同じことを違う学校への批評でおっしゃってたんですが、「リズムにはゆらぎがあります。例えば、同じ音がミミミと続くとしますと、同じに歌ってはいけないのです。」と。

    私はこの辺のこと、つまり音楽の作り方というか、歌わせ方についてはギターで教えてもらいました。結局声楽でも器楽でも音楽の基本は同じだと思います。

    あ、それから、メトロノームでの練習の仕方ですが、あれは定規のようなものなので、音符を読んだだけではリズムをどう取ればいいのかわからない時に部分的に使うものです。2小節~4小節程度で。それとか激しいリズムから緩やかなリズムになる時にひどく狂う時の修正用に使うとか。これに関しては曲によっては全く同じテンポにしなくてよいこともよくありますので、一概には言えないですけどね。いずれにしても、柔らかさとか激しさとか表現が色々ありますので、先生をすっかりまねるのが一番だと思います。

  8. すとん より:

    >ticoさん

    >ですから、メトロノームを考えていると、人に伝わるのはメトロノームしかないということです。

     うわ、これはイヤだな。客からすれば最悪のつまならない、いわゆる「機械的な音楽」って奴になりかねないねえ…、おお、クワバラクワバラ。

     それとメトロノームでの練習の仕方も参考になりました。

     今、メトロノームをメインで使っているのは、フルートのレッスンの時なんですが、それもよくよく考えてみると、練習曲の時だけですね。もっとも、練習曲をメインにやってますので、そればっかりという印象なのですが、フルートでも、曲集の曲をやる時は、先生みずから「メトロノームは関係ないです」と軽くおっしゃってました。「メトロノームの数字は気にしないで、あなたが好きなテンポで始めればいいから」って感じでした。もちろん、曲の途中でテンポを揺らすのも有りでした。

     練習曲はメトロノーム至上主義というか、あの機械的なテンポで機械的に演奏できるようにするという点に重点が置かれているようなのです(あくまで私の推測ですが)。何しろ、私、フルート始めたばかり(今もそうと言えばそうですが)の頃は、旋律を好き勝手に歌って吹いてまして、全くフリーダムと言うか、好き勝手なテンポでノビノビやってましたので、そこのところの矯正も兼ねて、メトロノームを意識するような方向でやっていたのだと思います。

     無論、声楽の練習では、メトロノームは全く使わない、と言うよりも、使えないのですが、私はフルートを吹いていても、歌を歌っていても、私であることは確かなので、まあ、フルートで学んだことが良い意味で声楽に影響してくるならともかく、悪い意味での影響は、やはりマズイですね。

  9. tico より:

    音楽の本質をつく問題点を孕んでいますね。

    >練習曲はメトロノーム至上主義というか

    練習曲という音楽についてですが、簡単に言うと練習の為の曲という意味ですよね。では練習とはなんぞやですが、これが進み具合によってかなり幅広い意味になります。単なる材料になりますので、その練習曲を何の為に使うかは、人によりけりとなります。

    最初の段階では音符を読む練習になります。音符というのは、すでにご存じの通り、単純に算数の世界です。1小節にいくつ分の音符があるかということです。これの間違いをなくす為にはメトロノームは絶対的な意味があります。

    次には野球で言えばキャッチボール、バッティング練習、ノック練習、フライを受ける練習、フォーメーションの練習、などなど、試合に臨むまでの部分的な練習が音楽の練習曲の意味になります。そういう部分的な練習が出来ていなくて突然試合をしても、とまどうばかりですもんね。
    ですから、練習曲は練習、有名な曲の演奏は試合っていう具合でしょうか。ライブや発表会などが野球の試合ってことですね。

    練習曲というのは材料であって、順番にこなしていくと無意識であっても必要なことを学べるように並んでいるものです。例えば小学校1年生から算数を習っていて次第に知らず知らずのうちに計算ができるように仕組まれているのと同じだと思います。

    この中でメトロノームが力を発揮するのは最初の音符を読む段階だけです。というわけで、メトロノームにきっちり合った音楽というのは、音符をきちっと読めていますよという主張にしかならず、「ではあなたの言いたいことは?」と問われていることに対して全く何も答えていない音楽なのです。

    初めはそう言われても答えることができないのが普通ですので、先生をしっかりまねることで、次第に自分の意見を持つことができるはずです。

    >あの機械的なテンポで機械的に演奏できるようにするという点に重点が置かれている

    これはたぶん、きっちり指を動かす練習になっていると思います。練習曲というのはなかなか振り返ることが少ないのですが、もっと上手になってからもう一度やってみると、必ずどういう風に自分の感情を表現しようかと考えると思うはずです。練習曲が名曲よりくだらない音楽というわけではないです。

    声楽のコンコーネも順番にやっていくと、作られた意図が見える気がします。この段階ではこれを学んでくださいと言われているようです。また医者の処方箋のような感じで、「ナニナニが苦手ですが…」「では、この練習曲をやってください。」てな感じでも使えますね。

    ついでですが、メトロノームを使って練習する時に1拍目だけメトロノームを鳴らす方法もかなり有効です。例えば160の四分音符の時に40で鳴らして4拍数えるとか。

    それから、メトロノームを身体に入れる練習としては、速度はいくつでもいいですので、メトロノームのカチッという音と同時に何かを叩いて音を出すという練習が有効です。これは表拍。これができたら裏拍の練習もかなり有効です。(カチッと言わない空白部分で物を叩く。この時、表拍は足とか別の部分で必ずカウントしておくこと。)

    長くなりましたが、よい方向へ結果が出ますように、お祈りしております。

  10. すとん より:

    >ticoさん

     メトロノームの使用法、一つとっても、色々と考えるべき点が多いですね。

     野球の例えは分かりやすかったです。うん、キャッチボールやノックはとても大切です。毎日毎日繰り返さないとダメです。有名な曲の演奏は試合というのもおもしろいです。ただ、私の中の感覚では、野球での試合というと、かなり重い意味になってしまうかな…と思ってます。むしろ、武道における乱取り(試合形式の練習)のようなものかなって思います。で、発表会やライブのような人前での演奏が試合って感じかな。

     とにかく、メトロノームに支配された音楽は、音楽のようだけれど音楽ではない、という点は了解しました。実際、パソコンに演奏させた音楽はおもしろくないですものね。

     それと、私は指は動きません(自慢)。だから、私には、メカニカルな練習はとても大切だと思います。どの曲を見ても、頭の中では音楽が鳴ったとしても、フルートでは指が追いつかなくて、いつもいつもまどろっこしい思いをしてます。歌なら簡単なんだけど…と言いたいのですが、歌でもちょっと難しいそうな、細かくて速いフレーズが連発するのがフルートの世界なので、指は本当の本当にまわりません。課題です。

    >メトロノームを使って練習する時に1拍目だけメトロノームを鳴らす方法もかなり有効です。例えば160の四分音符の時に40で鳴らして4拍数えるとか。

     四拍子の曲の時は、2~4拍目のメトロノームは参考程度にして、1拍目は死守するなんて練習をやってたりします。メトロノームを使いながらも「ポピュラーならバスドラに、クラシックなら指揮者のタクトに合ってりゃあいいじゃん」みたいなノリでやってます。少し自分に甘いかな?

     私が思うに、メトロノームを使った練習は、テンポ感…一定の速さを刻むとか、速さの感覚をつかむとか、拍子の感覚を体に入れるとか…の獲得に役立つのだろうと思ってます。まあ、メトロノームはベートーベンの時代に作られたマシンであって「音楽が先かメトロノームが先かと聞かれれば、音楽が先」ということは、よく分かっているつもりです。

  11. tico より:

    >むしろ、武道における乱取り(試合形式の練習)のようなものかなって思います。

    なろほど。それもそうですね。
    じゃあ、もう一つ付け加えると、乱取りはクラシックで野球の練習試合はジャズセッションかな?

    >「音楽が先かメトロノームが先かと聞かれれば、音楽が先」ということは、よく分かっているつもりです。

    メトロノームは一番の基礎で、楽譜の拍を理解する上で重要なことです。言い換えると楽譜をきっちり読めているという意味ですが。リズムは抑揚ですね。リズムに関しては私よりもっと専門の人に直接習っていただく方がいいです。かなり深い内容ですので。よくリズムをすごく動かして抑揚をつけて気分よく演奏しておられても、結局は自分勝手で全く楽譜を理解しておられない人もあります。楽譜をきっちり弾くこととメトロノームに合わせることとは同じではないということです。

    新しい曲に入ったらきっちりとメトロノームで拍を取り、その上でリズムの抑揚やゆらぎをつけて音楽に作り上げていきます。必然性のあるゆらぎが必要になります。もちろん、楽譜がすぐに読める段階になっておられる人はメトロノームの段階をすっとばして音楽を作っていけるようになります。

    私はギターの先生に14年間習い、かなりきっちり教えていただいて、今は私も生徒に教えることができています。先生のおっしゃることを信じて理解しようとついていけば、時間がかかってもいい音楽表現につながると思いますよ。習っている間はズーーっと頭にハテナマークが付きっぱなしだと思いますが、それがよい練習を生むと思います。ぼちぼちがんばってくださいね!

  12. すとん より:

    >ticoさん

    >じゃあ、もう一つ付け加えると、乱取りはクラシックで野球の練習試合はジャズセッションかな?

     野球って、攻守がはっきり分かれているので、むしろバスケとかサッカーの方がいいかもしれませんよ(って、小さな違いですが)。

     楽譜をきちんと読むというのは、難しいことだなあと思います。私は元々、楽譜なんざあ、からっきし読めない人ですが、声楽やってフルートやって、少しずつ楽譜も分かるような気分になってきました。きっと、声楽やフルートの練習が知らず知らずのうちに、楽譜を読む勉強になってきているのだなあと思います。

     とはいえ、人前で「私は楽譜が読めます」と言えるほど、読めるようになっていないのが悲しいですがね。

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