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メトのライブビューイングで「ドン・カルロス」を見てきた

 またも水戸の旅行記を中断します。
 この週末にメトのライブビューイングで「ドン・カルロス」を見てきました。「ドン・カルロ」ではなく「ドン・カルロス」です(笑)。いわゆる、フランス語五幕版ってヤツですね。いやあ、長かった(笑)。とは言え、今回はその五幕版を、三幕に再構成して上演したのだけれど、これってメトでいつもやっているヤツの、歌っている言葉だけを変えたヤツじゃないかしら? と言うのも、メトで普段やっている「ドン・カルロ」も、イタリア語五幕版を三幕に再構成して上演しているわけだから…ね。どちらも上演時間はトータルで210分前後だから、細かく見ると違うところもあるのかもしれないけれど、まあ、観客的には“言葉以外はほぼいつもと同じ”って印象です。
 あ、演出はデイヴィッド・マクヴィカーによる新演出で…私はマクヴィカーの演出が大好きです。保守的だし、ストーリーが分かりやすいし…難点は、いつも舞台が暗いって事ぐらいかな(笑)。
 さて、その言葉の違いだけれど…私はイタリア語にしてもフランス語にしても、どちらもよく分からないのだから、どちらで歌われても同じようなモンとも言えるけれど、それでも耳になじんでいるのはイタリア語の方なので、知っているアリアの歌詞が違うのは、少しだけ違和感があったけれど、まあその程度の違いです。イタリア語の方が歯切れが良いとか、パワフルとか言えないわけでもないけれど、それは主に言語の違いによる印象の違いでしょうね。何しろフランス語って、そんなに歯切れのよい言語じゃないから(笑)。
指揮:パトリック・フラー
演出:デイヴィッド・マクヴィカー
ドン・カルロス:マシュー・ポレンザーニ(テノール)
エリザベート:ソニア・ヨンチェヴァ(ソプラノ)
エボリ公女:ジェイミー・バートン(メゾソプラノ)
フィリップ二世:エリック・オーウェンズ(バスバリトン)
ロドリーグ:エティエンヌ・デュビュイ(バリトン)
大審問官:ジョン・レリエ(バスバリトン)
 むしろ今回「あれ?」って感じたのは、指揮が、ヤニック・ネゼ=セガンから急遽パトリック・フラーという若い人に変更になった事です。ネゼ=セガンの体調不良のための交代なので仕方ないのでしょうが、この交代、あんまり上手く行ってないような気がします。
 特に今回、オーケストラと合唱がうまく噛合っていない箇所が何度もありました。合唱って、オーケストラと比べると、動きの重い楽器だからなあ…。急な指揮者の変更には、うまく対応し切れなかったんじゃないかしらと邪推してしまうほどです。ソリストたちが良い感じだっただけに、少し残念です。
 で、そのソリストたちにも変更があって、エボリ公女がエリーナ・ガランチャからジェイミー・バートンに変更されていました。なんでだろ?
 最初、私は「ガランチャはロシア系の人だからなあ。今、メトではロシア人音楽家の出演は拒否られているから仕方ないのかな?」とか思ってました。実際、ロシア系のネトレプコ(ロシア生まれでイメージ的にはロシア人だけれど、実は国籍はオーストリアなのでオーストリア人って事になるんだよね。むしろ彼女の場合、国籍よりも、熱心なプーチン支持者であるという事がマイナスなんだろうね)はメトで拒否られ、彼女の代役として「トゥーランドット」ではウクライナ人歌手のリュドミラ・モナスティルスカに変更になっているしね。ミエミエのロシア人排斥&ウクライナ優遇処置だよね。
 一方、ガランチャは生まれはロシアだけれど、国籍はラトビアなので、ラトビア人です。ラトビアはNATO加盟国で、反ロシア側です。彼女自身もウクライナ戦争が始まるや否やプーチン批判をしているので、プーチン支持者のネトレプコとは事情が違うっぽいけれど、どうなんだろ?
 とにかく詳しい事情は分からないけれど、ガランチャからバートンに変更になっていて、歌唱的にはともかく、ビジュアル的には大きなマイナスになりました。と言うのも、バートンって、ウルトラデブ(笑)なんだよね。この人が侍女役ならともかく、美女という設定の役をやるのは…21世紀の現在、ちょっと無理でしょ? ましてや、今回のソプラノはヨンチェヴァでしょ? ガランチャならバランスも良いけれど、バートンでは視覚的にとてもとても無理がありすぎます。そんなわけで、ビジュアル的にも少し残念です。
 あと、ロドリーグ役のデュピュイの髪型が何故か“モヒカン”でした。いや、厳密にはモヒカンっぽい謎の髪型なのですが「ロドリーグがモヒカン?」と言うのが私の正直な感想です。このモヒカンは誰のせいなのでしょうか? デュピュイの個人の趣味? それとも演出家や衣装デザイナーの指示? 分かりません。でも、最後までモヒカン姿のロドリーグには違和感バリバリでした。
 と言う訳で、今回のこの上演は、メトには珍しく、オペラ初心者にはあまりオススメできないかな? 「ドン・カルロ」が初めてって人は、昔のメトのイタリア語でやっているDVDを見るのが良いと思うよ。今なら、ドミンゴ主演のヤツが安く売っているからね。こっちの方がオススメだよ。
 映像は古いけれど、これはオススメです。私はパイオニアから出ていたヤツで持っているけれど、今はユニバーサルから出ているんだね。名盤は古くなって、きちんと発売されるってわけですね。よかよか。

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