楽器のレッスンには定番の教本があります。
例えば、フルートならアルテでしょ? ヴァイオリンはスズキか篠崎でしょ? ピアノは…今の時代は何でしょうか? 私の時代なら、まずはバイエルでしたね。そうそう、クラシックギターをかじった時はカルカッシを使っていました。
まあ、こんな感じで、楽器ごとに定番の教本があって、初心者はまずその手の教本を頭から順番に学んでいけば、一通りの事ができるようになります。
じゃあ声楽は?
コールユーブンゲン? コールユーブンゲンは声楽の教本と言うよりもソルフェージュの教本(ってか、ドリルかな?)でしょうね。
では、コンコーネ? 確かにコンコーネは声楽の教本だけれど、あれは初心者が一通り学べば歌えるようになるための教本ではなく、ヴォカリーズを磨くための教本であって、声楽を学ぶ人は一生をかけて何度も学び直すタイプの教本であって、決して初心者の入門用の教本ではありません。
結局、声楽の初心者のための教本って無いんですよ。
と言うのも、声楽の初心者と言えども、全く歌えない人って…普通はいません。誰もが自己流では歌えるのです。そこが楽器とは違います。楽器の初心者は楽器の演奏ができないどころか、正しく姿勢で楽器を持つことすらできないわけで、声楽と器楽では、初心者と言えども、その入口は全然違うわけです。
だから、すでに自己流で歌える人を、理想的なクラシック声楽のスタイルで歌えるように矯正していくのが、声楽のレッスンになるわけです。
自己流を矯正するわけですから、一筋縄にはいかないし、生徒が10人いれば、歌い方も自己流の癖も10通りあるわけです。各々の出っ張りを引っ込めて、凹みを埋めて平らにしていくわけです。短所を克服させ、長所を伸ばしていくのです。そうなってくると、自然とレッスンは生徒一人ひとりの個性に合わせたものにせざるを得なくなるわけです。
結果、声楽のレッスンはオーダーメイドの生徒個人に合わせたものになり、市販の教科書で一律に教えていくなんて事は無理難題なのです。だから、声楽には定番の教本が無いのです。
音楽教師という職業は大変な職業だと思うのだけれど、特に声楽教師は、音楽の教授力に加え、コミュニケーション能力とか調整能力も必要になってくるわけで、ほんと、大変な職業だなあと思うわけです。
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