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これからフルートを買おうと思っている人へのアドバイス その4

 前回の続きです。

現状優先か、それとも未来指向か

 フルートは一本買えば、しばらく使うことになります。そして、人は変わります。成長もすれば老いもします。今を優先して買うか、将来的なことを考えて買うか、それはあなた次第でしょう。

 今を優先する…今の自分にピッタリする笛を選ぶことです。フルートの経験年数もある程度になった人なら、これで良いでしょうね。

 将来的なことを考える…若者やフルート経験の浅い人は、成長分を見越して買う必要があるかもしれません。そうしないと早晩またまたフルートの買換えになってしまうかもしれません。フルートは高価な楽器ですから、そうそう何本も買い換えるわけにはいかないでしょうから、なるべく買換えの本数が少なくなるように考えて買い物をする必要があります。

 また、ある程度の年配者なら、老いの問題があります。年を取っても長くフルートを楽しむために、今よりも吹きやすい、音の出しやすいフルートに買い換えるというのもありえます。それはダウングレードではなく、人生が新しい局面に突入しただけの話です。

Eメカは必要?

 悩む人多いですよね。でも話は簡単なんですよ。「Eメカは不要」と考えていなければ、付けておけばいいのです。Eメカなんて、付いていても困るものではありませんから。むしろ将来「ああ、Eメカ付きのフルートにしておけばよかった」と後悔することの方がイヤでしょ。だから、Eメカ不要論の方以外は、Eメカをつけておきましょう。

 Eメカを付けるとフルートが重くなるとか、Eメカ付けると音の響きが変わるとか、そういう人もいますし、実際そうなのでしょうが、その件については、Eメカ付きのフルートで試奏して自分が納得できれば、クリアでしょ。フルート自体の重さとか音の響きなんて、そのフルートの個性ですって。無問題ですよ。

 あるいは逆の選択肢として、わざとEメカのないフルートを選ぶという方法もあります。と言うのも、オプションとしてのEメカって、実はそれなりのお値段がします。そこでEメカを辞めて、その分のお金で、もう少し高価なグレードの高い楽器を選ぶということができます。その辺をどう考えるかは、あなた次第です。

 ですから、Eメカ以外の各種ギミックについても同様です。「不要」と思っていないなら、お財布と相談して、可能ならば付けときましょう。それが原因で後悔する方が勿体ないです。しかし、その分の投資で楽器のグレードアップが図れるなら、そちらを考えるのも一手です。

 ちなみに、私のアゲハには一切のギミックはついてません。すっきりしたもんです。だって笛先生がEメカ不要論の先生だし、私自身、Eメカの分でグレードアップを考えた人ですから。

リング式かカバード式か

 リング式かカバード式かで悩んでいる人も、好きな方を買えば良いと思う。リング式にはリングをふさぐ部材(なんて言うの?)もあるから、当座の心配はいらない(ただし、できるだけ早めに部材を取り除く方向でがんばった方が何かと良いらしい)。インライン・オフセットの違いも同様。少しでも心魅かれる方を買っておきましょう。あとはどうにでもなると思いますよ。ただし、本当に悩んでいるなら、カバードのオフセットにしておくのが無難でしょう。だって、リング式のインラインって、やっぱり楽器としての扱いが多少難しくなると思いますよ。

ドゥローン式(引き上げ式)か、ソルダード式(ハンダ付け式)か

 同じ規格のフルートでもトゥローン式よりもソルダード式のフルートの方が高価なので、ソルダード式の方が良さそうな気がしますが、価格差は楽器としての性能差というよりも、製造工程の差から来るものです。つまり、ソルダード式の方が手間がかかるので、その手間賃の分、高価というだけの話です。ドゥローンとソルダードで違いがないわけではありませんが、それにどれだけの意味を見つけられるかという事と、価格だけの価値を見いだせる事ができるかが、問題だろうと思います。

 私は、ソルダードの方が音の立ち上がりが良い分、若干音が固めに思えました。と言え、それは比較すれば…の話で、それほど大きな違いだとは思いませんでした。あと、一般的にソルダードの方が吹き心地が重いと言いますが…私にはその差は分かりませんでした。

 現代フルートは、元々ソルダードで作られていたもので、ドゥローンは比較的新しい技術だそうです。ですので、多くのメーカーでプロ向けの高級機種になると、ドゥローン式ではなくソルダード式になります。結果、多くのプロは、ソルダード式のフルートを使っています。ただし、ムラマツフルートは、総銀の1機種を除き、プロ用も含めてドゥローン式なので、ドゥローン式がダメというわけではないと思います。

 この問題も、結局、お店に行って試奏すれば、簡単にクリアできる問題なので、悩む暇があったら、サッサと試奏をして、その違いを感じてきてください。

 試奏して、吹き比べてみて、ソルダードの方が良いと思えば、多少高価だけれどソルダードにすれば良いし、ドゥローンの方が好みだなと思えばドゥローンを買えばいい。違いを感じないとか、違いは分かるけれど気にしないとかなら、安価だし(ハンダがはがれるなどの)トラブルも無いので、ドゥローンにしておけばよい。それだけの話です。

使用目的は合奏か? 独奏か?

 この点を考えずにフルート選びをする人がいます。それはそれで良いのでしょうが、主な使用目的が決まっているなら、それにふさわしい道具を選ぶのは大切な話だと思います。それにやはり合奏と独奏では、フルートに求められるものは自ずとが違うでしょ。

 合奏で要求されることは、ピッチが正しいこと。その団体のカラーに合った音色であること(またはその団体で多く使われているメーカーのフルートであること)。大きな音が出せる楽器であること。その三点でしょう。そこを踏まえるならば、実はそれほど多くの選択肢は残されていないと思いますし、案外、高価なフルートにはならないと思います。
 いくら素晴らしいフルートであっても、その団体の中で、音が浮いてしまって、周囲の音に溶けなかったら「アンサンブルぶちこわし、お呼びじゃないよ」になりますから、注意注意。基本的には、倍音が豊かで、高音になっても柔らかな音色の笛がいいでしょうね。

 独奏で要求されることは、個性と美しさです。それを考えると何でもありなので、お財布が許す限り、わがまま贅沢にフルートを選択するとよいでしょう。彫刻などもたくさん入れてもいいかもしれませんよ。

 もっとも、アマチュアの場合は、独奏と言ってもピアノとのアンサンブルが多いと思います。ピアノは平均律ですから、平均律で設計されたフルートがアマチュアのソリストには使いやすい笛になると思います。

主に吹くのは、ポップス? クラシック?

 ポップスの世界では、フルートは小音量楽器なので、マイクの使用が前提になります。そうなると、マイクのとおりの良い音、つまり過度に大きな音がせず、倍音も少なめの細くて硬い感じの音の方が何かと便利です。

 一方クラシックでは、マイクの使用はありえませんので、大きな音量で倍音豊かな美しい音色の楽器が求められます。美しい音色…大切ですよ。いくら練習を重ねて上手になっても、その楽器が本来持っている以上の美しい音は、どんな名手にも出せませんから。

 迷ったら、クラシック向けの楽器を選択して、マイクを使用する時は奏者側の工夫(例えば口の中を狭くして、わざと笛の音を貧弱にしてマイクに乗りやすい音にするとか)で乗り切るというのも、一つの方法です。

それでは、いくらぐらいのフルートを買うべきか?

 ずばり大人は「今の自分が出せる最大の金額で、贅沢なフルート(一生モノ)をババンと買う」ことをお薦めします。贅沢なフルートを買って、贅沢な気分を満喫しましょう。所有する喜びも、また趣味の大切な楽しみです。

 大人になれば人生の有限性を感じることでしょう。こまめにフルートを買い換える楽しみもありますが、それよりも有限な時間の中で、音楽そのものを楽しむことに集中しましょうよ。

 あと、高い楽器を買うと、下手くそを楽器にせいにはできなくなります。練習に励むしかなくなるのも、大人向けと言えましょう。[大人はすぐに言い訳しますから(笑)]

 一方、子どもや若者は話が別。まず、フルートは贅沢品であることを知り、その費用を捻出するために、大人がどれだけ大変な思いをしているかを知らないといけない。その上で買い与えられた楽器なのだから、たとえそれが実用品レベルの楽器であったとしても、文句をいうどころか感謝をしないといけない。どうしても、贅沢な楽器が欲しいなら、大人になった時に、自分でお金を稼いで買いなさい、以上。

結論

 試奏をしてみて、気に入った楽器、これだと思った楽器、惚れた楽器を買いましょう。そういう楽器と出会えなかったら、今、無理して買う必要はないでしょう。またの機会にすればいいと思います。それでもどうしても、今すぐフルートが欲しければ、その売場にある一番安い国産品を買っておくのが無難です。国産品であれば、どんなに安くても十分に使えるし、音楽を奏でることができますから。そして浮いたお金でおいしいもので食べた方か幸せというものです。

 それでは、みなさんに幸せなフルートライフがありますように。

 ではでは。

コメント

  1. くろねこ より:

    いつもながら、すとんさんの文章は整然としていてわかりやすいですね(^^)

    >現状優先か、それとも未来指向か
    私は未来指向ですね~。まだ始めたばかりだし・・・
    60歳で始めたら、きっと現状&将来の衰えを考えて買うと思います。

    >合奏か独奏か
    これについては考えもしなかったなぁ。
    いつかフルートアンサンブルに入りたいと考えてはいますが、
    実現するかどうかは解りません。
    単に自分が好きな楽器に決めました。

    >ポップス? クラシック?
    う~ん。どっちも(^^)
    ジャンル問わず、好きな曲ならジャズやボッサにも挑戦したい♪
    なので、そういう事も全然考えませんでした。

    こうやって考えると、楽器を買うのって熟慮が必要なんですね~。
    私ってば、猪突猛進型なもので…何も考えずに直感だけで注文しちゃいました。。。
    でもきっと幸せなフルートライフを送れると信じています☆

  2. すとん より:

    >くろねこさん

     私の場合は、先生がバリバリのジャズ・フルーティストなので、クラシック系の先生(多くのフルートの先生って、クラシック系の方ですよね)についている人とは、若干視点が違うんだろうと思います。

     例えば、楽器のメーカーとか値段とかにこだわらない。クラシック系の方だと、こだわりのある方多いでしょうが、ウチの先生は「楽器は自分の音が出れば、それでいい」のだそうです。いやむしろ、楽器の違いよりもマイクの違いの方が、音に与える影響が大きいらしく、最近はマイクにかなりこだわっています。と言うか、最近は知り合いのエンジニアと一緒になって、自分専用のマイクを開発(というと言葉がおおげさかな?)をしているくらいです。

     そんな人を先生にしているわけですから、楽器にはこだわりますが、ブランドやお値段にはこだわりがないので、こんな記事になります。

    >こうやって考えると、楽器を買うのって熟慮が必要なんですね~。

     それは買い物の常ですが、実はそうとも限らないと思いますよ。色々と調べて勉強してお店に通って、散々悩んだ挙句、最後の決め手は“直感”だったりします。要は“直感”に至る時間の長さだけの話で、結局、最後は悩んでも悩まなくても一緒だったりします。かく言う私も、最後は“直感”ですからね。

     ただ、色々調べて考えて買うのは、買うまでの時間を楽しめるので、ぜひするべきだと思います。しかし、実際の買い物とそれとはやはり別なので、買い物は直感でいいんだと思います。いやむしろ、勉強だけ知識だけで、直感を利用せずに買い物する方が怖いと思うし、後悔もしやすいと思いますよ。だって、人間の直感って、案外、正しいでしょ。

  3. ひゃらり より:

    すとんさん、はじめまして!

    初めてコメントさせていただきますが、
    ここ半月ほどほぼ毎日訪問して拝読しております。
    とても分かりやすく丁寧なテキストで、勉強させていただいております。
    今フルートの購入を検討しておりましてこちらのシリーズは特に念入りに読ませていただきました。
    すとんさんのアゲハちゃんみたいに惚れ込める楽器が私のところにもお嫁入りしてくれればいいのですが…

  4. すとん より:

    >ひゃらりさん、いらっしゃいませ。

     いやあ、だいぶ以前の記事にコメントくださって感謝です。実は自分で何を書いたか覚えていなかったので、記事を読み返しちゃいました。案外、いい事書いてますね、私(笑)。

     基本的な考え方は、今も当時も変わっていないです。現在の私が、これらの意見に付け加えるとするならば…「楽器屋に食われないようにする事」です。

     楽器屋に食われない…つまりは「ボラれないようにする」という事です。これは、フルートだけの時はあまり思わなかったのですが、最近、ヴァイオリン関係であっちこっちのお店に入って、強く感じるようになりました。

     実は楽器屋って、楽器を売る商売をやっている店なんですよ。

     どういう事かと言うと、店が客に薦める品は、必ずしも客にとって最善の品ではなく、むしろ店が売りたい品を薦めてくるという事です。なので、客としては、そこのところの見極めをしっかりし、自分が欲しいものをしっかりと手に入れないといけないという気持ちが、最近の私は、強くなってきています。

     店が客に薦める品と言うのは色々あるでしょう。例えば「高額な品」「(客の)予算いっぱいの価格の品」「仕入れ値の安い品」「在庫が多くてダブついている品」「長いこと売れずに店に居すわっている品」「まもなく、モデルチェンジをする予定の品」などなどです。そういう楽器の中に、自分にとって良い品があれば、別に問題ないですが、そういうわけでもなく、ただ単に、店の都合で薦められて、楽器を購入するなんて、悲しいでしょ。

     そのためにも、客は、もっと積極的に品を選び、能動的な買い物をしないといけないんだと思います。特に楽器は高額商品ですからね。フルートなんて、一本購入したら、一生その楽器と付き合うことだってありうるわけですか。ある意味、結婚相手を選ぶのと同じくらいの慎重さと大胆さがなければいけません。

     というわけで、大いに「楽器選び/お買い物」を楽しんでください。

     ひゃらりさんにとって、最高のパートナーが見つかりますように。

  5. いがぐり より:

    はじめまして、すとんさん。
    以前からフルートを買い換えたい~と思っていたアマチュア歴ウン十年のものです^^
    ずーーーっと愛用していた楽器と、自分の求める音とのギャップに悩んでいました。
    ある先生が「貴女の求めてる音は今のメーカーでは難しいよ。」と別のメーカーを勧めてくれました。それがアルタス♪
    すごく悩みました。だって苦楽を共にしてきたマイ楽器ちゃん。
    簡単に決められません・・・

    ところが、数ヶ月後にアルタスを試奏できることになったんです!もうこれは運命です(笑)
    いろんな種類のアルタスに、気になっていた別のメーカーも取り混ぜて、数時間・・・お値段もタイプも気にすることなく何度も何度も吹きました。

    その中にすごく気に入った音があったんです!もうすごーーーーく気に入りました。
    それがアルタスのALでした。予算オーバーでしたが買えないこともないし、ダンナさんの一押しもあり、今、手元にいます^^
    Eメカなし、リングキィと今までとは全く構造もキャラも違います。

    仲良しになれる日が早く来るようつきあいたいと思います。

    こちらの記事を拝読して、「自分の好きな音の楽器が一番!」と言ってもらえたようです^^

  6. すとん より:

    >いがぐりさん、いらっしゃいませ。

     アマチュア歴ウン十年となると、今まで使っていた楽器は、我が半身のようなものでしょうから、求めるものとはちょっと違う、と分かっていても、お別れするには勇気が必要だったことだと思います。

     しかし、そこでアルタスを薦める先生と言うのも、結構、サバけていますねえ。そして、ALをチョイスしたイガグリさんのセンスも素晴らしい。ALはいい感じの楽器ですよね。総銀にしては、かなりお高めの楽器ですが、プロ奏者も大勢使用しているほど“何か”を持っている楽器だと私は思います。

     ALはPSと並んで、私の垂涎の楽器です。とりあえず、今は1307で満足している私ですが、やがてフルートの買い換えを企てるなら、やっぱりALかPSだろうなあと思ってます。でも、この二つ、これで結構カラーが違うんですよね。

     新しいパートナーと、一日も早く、仲良しになってください。

  7. いがぐり より:

    お返事ありがとうございます。

    ALはキャラが違うので選びました^^
    1407は半身楽器(命名すとんさんです^^)とあまり変わらなかったんですよ。
    PSはそれよりも豪華なんだけど、もう少し温かみがあって上品な(失礼な表現ですが・・・)音がいいな~と思って。

    お値段聞いてびっくりしましたが・・^^;

    半身楽器も手元に置いてあります。
    「また、吹く機会があるかも!」って言うと、
    先生もダンナも「いやいや、たぶん吹かない(笑)」

    これからもいろんなお話きかせてください♪

  8. すとん より:

    >いがぐりさん

     私も半身楽器はもう吹かないと思います(笑)。ただ、ALに(あってはならないですが)事故が起こった時とか、オーバーホールで入院中とかの代役としてのお勤めはあると思いますので、手元に残しておくの良いでしょうね。

     PSは善かれ悪しかれ、サバサバした行動的な現代っ子なんだと思います。そこへ行くと、ALは昔気質のお嬢様ですからね、音に品格があると思います。同じメーカーのフルートなのに、そのキャラクター付けが、ああまで違うってのも、おもしろいですよね。

  9. とととぉ~ より:

    はじめまして。
    2008.10月のタイトル「これからフルートを買おうと思っている人へのアドバイス」に惹かれて一気に読ませていただきました。メールを送信を押してもできないのですが、どうすればよいでしょうか?

  10. すとん より:

    とととぉ~さん、いらっしゃいませ。

    >メールを送信を押してもできないのですが、どうすればよいでしょうか?

     この部分は“mailto”という、ありふれたコマンドが使われています。とととぉ~さんの状況が分からないので、なんともアドヴァイスできません。参考までに、以下の可能性が考えられます。

    1)ガラ携では“mailto”というコマンドは理解できない可能性があります。
    2)インターネット用メールアドレスをとととぉ~さんご自身が持っていないと送信できません。
    3)電話番号をメールアドレス代わりに使用している場合は送信できません。
    4)i-modeやmixiメール、その他SNS用のメールアドレスでは送信できません。
    5)メールソフトが壊れている。またはメールソフトが起動できないように設定されている。

     私は技術者ではないので、こんな事しか思いつきません。他にもうまくいかない条件はあると思います。メールがうまくいかないようであれば、コメント欄をご利用ください。

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