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立派な声で歌いたがる…のはダメなんです

 基本的に人前で歌いたがる人間は、自覚の有無はともかくとして、目立ちたがり屋で自己主張の強い人間です。かっこいい自分を見てもらいたいのです。できれば称賛してもらいたいのです。たとえ他人に褒めてもらえなくても、自分で自分にご褒美をあげたいし、自分を褒めそやしたいのです。まあこれも承認欲求の一種であり、その発露であるとも言えます。

 それもあって、歌う人は、歌が上手くなりたいし、上手くなったと実感したいのはもちろん、自分でそれを感じたい人間でもあります。

 特に、ソリストさん、特にソプラノとかテノールとか派手なメロディを歌う人は、概ね、そんな感じです。同じソリストさんでも、メゾさんとかバリトンさんだと、そこまで承認欲求は強くないかもしれません。合唱歌手さんだと、もっともっと控えめかもしれません。

 というわけで、テノールさんたちの話です。

 テノールさんは、基本的に目立ちたがり屋だし、輪の中心にいたい人だし、カッコいいのが大好きな人です。歌う声も、誰よりも大きくて、誰よりも高くて、誰よりも響く声で歌いたいものなのです。

 彼らにとって、歌は声であって、声さえ響き渡れば、それだけで気分は上々なわけです。

 ですから、テノールさんは、プロであれ、アマチュアであれ、ベテランであれ、初心者であれ、朗々とした立派な声で歌いたがるものです。実際に、そんな立派な声で歌える人なら、朗々と歌えばいいのです。問題は、大半のアマチュアテノールさんは、そんなに立派な声じゃないし、朗々とは歌えないのです。いや、それどころか、色々と発声に問題を抱えている事すらあります。ま、だからアマチュアなんだとも言えますが…。

 発声に問題を抱えているのなら、謙虚になって発声を学べばいいのだけれど、それが難しいのがテノールという人種なのです。別に彼らが謙虚ではないとは言いません。謙虚に発声を学ぶ姿勢がない…なんて言いません。ただ、彼らは常に立派な声で歌いたがるだけなのです。

 発声を学習している最中でさえ、ついうっかり立派な声で歌ってしまいます。その立派な声とは、客観的に“立派な声”というよりも、自分にとって“立派な声”だからタチが悪いのです。で、すぐに、ついうっかり立派な声で歌ってしまいますから、全然正しい発声が身につかないのです。

 ダメだなあ…。

 自己流の立派な声で歌い続けると、どうなるかと言えば、早晩、声が壊れます。実際、私、キング先生のところで、危うく声を壊してしまうところでしたから。まあ、私の場合は、壊れる前にキング先生から離れたので、今があるのですが、そうでなければ、今頃は声を壊してしまい、歌を辞めて、フルート一直線なオジサンになっていたと思います。

 それはさておき、テノールが希少種だと言われる理由の一つに、テノール初学者たちが、その学習過程でドンドン壊れてしまい、モノになる人が少ないので、結果として希少種になってしまうというのがあります。ま、そもそも、男声は基本がバリトンであって、テノールなんて最初から人数が少ないのに、それがどんどん壊れちゃうんだから、そりゃあ希少種にしかならないわな。

 声を壊さないためには、立派な声で歌わない…というのが大切なのですが、それが出来ないのがテノールと呼ばれる人々の気質なんですよね。レッスンで、立派な声を自制できるくらいなら、テノールやってないだろうし(笑)。

 なので、テノールを指導される先生方って、ほんと大変だろうなあって思います。

 かく言う私も、レッスンでは、ついつい大きくて、自分基準で立派な声で歌っていまいます。鳴りが強い…ってのは、まさにそんな状態の声です。

 ダメだなあ、分かっちゃいるけれど、全然できない(涙)。

 

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