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東京音楽コンクール(声楽部門)を見てきました

 えっと、標題通りです。いつもの年なら、音楽コンクールを見てきても、記事にしたり、ましてやアップするなどしていないのですが、今年は特別です。どこが特別なのかと言うと…今年は二次予選と本選と両方見てきたからです。

 実は数年前から、東京音楽コンクールを見てきました。最初の年は、本選だけ見てガッカリして…と言うのも、本選がつまらなかったからです。上手いのかもしれないけれど、全然面白くない人たちが面白くない曲を歌うだけの、実に退屈なコンクールだったからです。

 まあ、コンクールなんだから、つまらなくても仕方ないよね…と当時は思っていたものでした。で、その年の予選の表を見てみたら、予選の方が色々な声種の人たちが出場していたし、中には面白そうな曲を歌っている人もいるし、本選はオペラアリアだけだけれど、二次予選は歌曲も歌わないといけないし…というわけで、本選よりも面白そうに思えたのです。

 で、次の年は二次予選(一次予選は非公開なのです)を見に行きました。実に面白かったですよ。なんだ、コンクールと言っても、とても上手な人たちのガラ・コンサートとして楽しめるじゃんって思ったわけです。で、わくわくして結果発表を待っていたら、本選に進んだのが、面白くない歌を面白くなく歌った人だったので、ガッカリして本選は見に行かなかったわけです。

 そんな感じで、それ以降も、二次予選を楽しんだら、本選はパス…という楽しみ方をしていたわけです。で、今年も例年通りのやり方で楽しもうと思って、二次予選を見に行ったわけです。

 で、二次予選です。例年の通り、お上手な方々が揃っていました。ま、そりゃあそうだよね、コンクールだもの。オペラアリアあり、歌曲ありだし、色々な声種の方が歌っていて、例年のように楽しみました。

 私は、私自身がテノールですから、テノール歌手さんの歌を楽しみにしています。でも、コンクールに出てくるテノールさんって、例年、コンクールでは勝ち残れそうもない(ごめんなさい)方が多くて「まあ…ね」って感じで、正直「テノールってきっついなあ…」と思っていたのですよ。

 でも、今年はちょっと違いました。テノールさんはお二人出場していたのですが、小堀勇介氏が、めっちゃ良かったんですよ。何が良かったのかと言えば、声です。正直言うと、コンクールの二次予選に出てくる段階で、みんな上手なんですよ。少なくとも、素人の耳では、判断がつかないくらいに、皆さん上手なんです。だから、素人的には、声の凄さでしか感動できない…という状態なんですよ。いや、それくらいに皆さん、実力的に拮抗しているんです。

 で、声が凄い…ってタイプの歌手さんは、あまりコンクールには出てこないのですね。コンクールに出てくる人たちは、みなさん「歌が上手」というタイプの方々で「声が凄い」タイプの人って…たぶん、コンクール向きじゃないんでしょうね。

 で、この小堀氏は、実に声が素晴らしかったのですよ。いや、ビックリしちゃいました。ここ数年、コンクールを見てきましたが、小堀氏はピカイチじゃない? そう思いました。

 でもね、もっと凄い人がいたんですよ。

 コンクールの最後から2番目に歌った、ザリナ・アルティエンバエヴァ(ソプラノ)氏、今回(おそらく)唯一の外国人だと思うのですが、この人が第一声を聞いて、びっくりしました。いやあ、レベルが違うんですよ。この人が歌った途端に、今までの出演者の事を忘れちゃいましたもの。それくらいに、声の凄さのレベルが違うんです。

 二次予選のチケット代って500円なんですよ。でもね、このアルティエンバエヴァ氏の歌だけで、500円以上の価値があるなって思いました。それくらいに、私、感動しました。コンクールでは感心する事はあっても、感動する事なんて無かった私ですが、たぶん始めて、コンクールで感動しちゃいました。

 なので、このアルティエンバエヴァ氏の後に歌う人(登場順で言えば最後の人)は、可愛そうだなって思いました。だって、こんな凄い声の持ち主の後だもの、何をどう歌ったってダメじゃっ…ってね。

 確かに、次の人(ソプラノの種谷典子氏)は、声ではアルティエンバエヴァ氏にはかなわないかな…って思いましたが、その妙な雰囲気に惹かれました。なんだろ、歌っている姿に気持ちを持っていかれるんですよ。フリや簡単な演技を付けて歌うのは、皆さんやっているんだけれど、この人の場合は、なんか違うんですね。歌も演技も含めて、なんか心に残るんです。

 で、当然、本選出場者の中には、上記3名の方が残りました。なので、今年は本選を見に行くことに急遽決めました。だって、この3名が歌うなら、絶対に本選は面白いに決まっているじゃないですか。

 この段階の私の予想では、テノールの小堀氏とソプラノのアルティエンバエヴァ氏の一騎打ちかな?って思っていました。

 で、本選です。この日は仕事でしたが、早退して会場に向かいました。地方勤務だと、定時まで働いちゃうと、東京のコンサートには間に合わないんだよね。

 本選は、この3名を加えた5名で争いました。結果は…

第1位&聴衆賞
ザリナ・アルティエンバエヴァ(ソプラノ)

第2位
小堀 勇介(テノール)
種谷 典子(ソプラノ)

第3位
(なし)

 いやあ、だって、アルティエンバエヴァ氏の歌唱は、最初っから最後まで凄かったもの。あれにはなかなか簡単にケチは付けられません。私は一騎打ちかなって思っていた小堀氏は、最後の方で、声に輝きがなくなってきて…たぶん、ペース配分を間違えちゃったんだろうなあって思います。失敗は無いんだけれど、声にキラキラがなくなってしまいました。そこでアルティエンバエヴァ氏と差が着いちゃったなあって感じました。種谷氏は声とか歌とかは(ごめんなさい)上記の二人ほどではないのだけれど、やっぱり不思議なオーラを感じさせる人で、歌い始めると心を持っていかれてしまいます。小堀氏と同順位だったのも納得です。残りの二人の方は…例年のコンサートの出演者でした。上手いんだけれど、素人ウケはしないよなあ…って感じで、ごめんなさい。

 それにしても、アルティエンバエヴァ氏(舌を噛みそう…)は凄いソプラノさんでした、ファンになっちゃいそう…。小堀氏もなかなかのテノールさんで、ファンになっちゃいましたよ。いやあ、この二人の歌唱を1000円(本選のチケット代です)で聞けたのは、ほんと、お得でしたよ、マジ感動でした。

 というわけで、例年は書かない、コンサート感想記を書いちゃったわけです。

 なお、東京国際音楽コンクールのホームページはこちらです。

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コメント

  1. tetsu より:

    こんばんは。

    >ザリナ・アルティエンバエヴァ(ソプラノ)氏、今回(おそらく)唯一の外国人だと思うのですが、この人が第一声を聞いて、びっくりしました。いやあ、レベルが違うんですよ。この人が歌った途端に、今までの出演者の事を忘れちゃいましたもの。それくらいに、声の凄さのレベルが違うんです。

    ザリナ・アルティエンバエヴァという名前は初めてです。ご紹介ありがとうございます。ご存知かとおもいますがググったら次がありました。コンクールに出て結果がどうこうというレベルではなくてそのまま楽しんで聴けます。都内でコンサートがあったらぜひ行きたいです。
    Zarina Altynbayeva “The Jewel Song”
    https://www.youtube.com/watch?v=9BNkMewALRc

    Zarina Altynbayevaのチャネル
    https://www.youtube.com/channel/UCkSiQf4nE3ZGBBULHZPpnQA

    には
    “Omir-Anyz” Zarina Altynbayeva
    https://www.youtube.com/watch?v=9m_RwhOCK4Y

    なんてのもあって顔と声は似ていますが発声は全く別物です。

    DIMASH KUDAYBERGEN ft ZARINA ALTYNBAYEVA – Question of honour (Universiade 2017) HD
    https://www.youtube.com/watch?v=0CChMk9Oi4Y

    こんなのもあっていろいろな経歴をたどった方なのでしょうか。純クラッシクもいいけれどそれ以外もよさそうです。

  2. すとん より:

    tetsuさん

     いやあ、探しますね。確かにこの人です。コンクールの時は“かわいいお嬢さん”って感じでしたが、YouTubeでは、かなり勇ましい感じの人のようです。どっちが素なんだろ?

     それにしても、この人、すでに母国(カザフスタン)の国立歌劇場専属の歌手さんのようですが、なんでそんな人が日本のコンクールを受けているんだろ? 仕事を広げたい? 拠点を日本に移したい? 日本でクラシック音楽で食べていくのは大変だけれど、カザフスタンはどうなんだろ? 日本よりも厳しいのかな?

  3. tetsu より:

    >いやあ、探しますね。

    企業名を出すのも変ですがGoogleはメチャスゴイです。何かわからなかったり気になった時誰かにきくよりまず検索してしまいます。インターネットとかWWWが始まったころは英語サイトしかありませんでしたが今は日本語で手取り足取り答える丁寧なサイトまであります。自分なりに検索してすぐ答えが出る範囲とそうでない範囲はわかっているつもりではいますが。
    20c.前半くらいまでにはあった「埋もれた才能」みたいな伝説は全く消えてしまいました。今埋もれているのはマジ埋もれていてコワイくらいです。

    失礼しました。

  4. すとん より:

    tetsuさん

     確かにネットは広いし、Googleは凄いです。私も恩恵に預かっているクチですからね。

     私、時々思うんです。ネットは確かに広いけれど、すべてがネットにあるわけじゃないし、中には、うっかり、または、あえて、ネットから距離を置いている人やモノがあったりします。そういうって、ネットで検索をかけても、当然、見つからないわけです。

     ネットに無いと、世の中から存在しないような扱いを受けている…ような気がしないでもないのです。それだけ、世の中がネットに依存した世界になってしまったかのような気がするんです。

  5. tetsu より:

    こんばんは。

    >ネットに無いと、世の中から存在しないような扱いを受けている…ような

    こちらはデジタルネイティブの世代とはかけ離れていてPCの使い方とか近所のレストランとか検索したらメチャ丁寧な情報が得られるツールでそれ以上でもそれ以下でもありません。このブログではコメントに書き散らしてすみません。

    デジタルネイティブはこちら。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%83%8D%E3%82%A4%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%96

    昔からよくある定型的典型的な世代論ですがデジタルネイティブは何か違いがありそうな感じがしてしまいます。社会科学系はド素人で統計学も実際には使えず実証できませんが。

    失礼しました。

  6. すとん より:

    tetsuさん

     デジタルネイティブなんて言葉、知りませんでした。いやあ、勉強になりました、感謝です。

    >学生時代からインターネットやパソコンのある生活環境の中で育ってきた世代
    >パソコンによるインターネット利用が中心で、携帯電話を補完的に利用している世代

     あ、私はこれに合致します。…って事は、私は76世代?

     …なんて事はないわな。一回り以上も私は年上だぜよ。つまり、私なんて、かなり尖った環境で勉強してきたので、そういう先進的な学習環境が用意されていたんだろうなあって、今なら分かります。

     なので、デジタルネイティブなんて、世代論にならないような気がしますよ。どれだけの環境の中で学習してきたかってだけの話で、むしろ知的階層論の方が話はスムーズに流れるかなって思います。今の時代だって、尖った環境で勉強している子たちは、10年先の未来の中で勉強していると思うわけだし…ね。

  7. tetsu より:

    こんばんは。度々で失礼します。

    >10年先の未来

    すとんさんが考えていらっしゃる「10年先の未来」ってどのようなイメージでしょうか。
    こちらはあまりにも地味すぎてやりたいことは好きにやっている程度です。

  8. すとん より:

    tetsuさん

    >すとんさんが考えていらっしゃる「10年先の未来」ってどのようなイメージでしょうか。

     すごくつまらない答えなんだけれど、やっと世の中が10年前の自分たちの状況に追いついたんだなあと、10年経ってから、ようやく分かる世界…です。つまり、渦中の自分は、自分が未来の世界にいるとは夢にも思わず、ただ現実を生きているだけなんだけれど、実は自覚がないだけで、未来において普遍的になる世界の中で今を暮らしているって事で、まあ、後付けの未来感なんですよ。

     言い換えれば、タイムマシンに乗って10年先には行けないけれど、10年前の自分はタイムマシンに乗って10年先の世界で生きていたんだなあって、しみじみ思えるのが“10年先の未来”です。

     分かりづらくて、ごめん。

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