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マスクとフェイスシールド

 ホールとか劇場とかが、ぼちぼちと再開してきました。ウチの近所の市民会館もピアノの発表会とかが行われるようになりました。
 器楽演奏は良いのですが、歌は…まだまだ色々と厳しそうですね。極端な話、ピアノはマスクをしたままでも演奏できますが、歌はどうなのかって話です。
 少なくとも私は無理です。第一にマスクをしたまま歌うのは、息が苦しすぎます。短い歌ならともかく、ある程度の長さの歌を真剣に歌うなら、マスクは相当にヤバいです。さらにマスクをしたまま歌っていけば(当然ですが)マスクがズレていきます。私の場合は、マスクがズレて、クチの中に入ってしまいます。「マスクを食べる」という状態になりがちです。そんな状態では歌は歌えません。
 なので、私は歌うならフェイスシールドの方がマシかなって思ってました。少なくともフェイスシールドなら息苦しくはないし、歌っていてズレる事もありません。問題があるとするなら、声がシールド内に籠もり、歌っていて違和感を感じる事です。でもまあ、これは慣れの問題になるでしょうから、やがて慣れてしまえば、大きな問題ではないでしょう…なんて思っていました。
 どうやら、そんなに簡単な問題ではなさそうです。
 こちらの動画は、東急文化村の“ブンカムラチャレンジ”にアップされた「東京フィルハーモニー交響楽団が新時代の演奏・鑑賞スタイルを模索する」という動画で、なかなか興味深く面白い動画なのですが、この中で面白い試みをいくつかしています。
 その中で、ベートーヴェンの第九の合唱を、マスクをして歌うのと、フェイスシールドをして歌うのとを比較しています。歌声をマイクで拾って、それを聞いているので、正しく聞こえていないのかもしれませんが、仮に小細工なしでマイクで収録したのだとするならば、フェイスシールドで歌うのは無しかもしれません。
 フェイスシールドを着用して歌った場合、声が全然飛んでないのです。いかにも“籠もってます”って声に聞こえるんですよね。これならマスクの方が何倍もマシに感じます。
 この動画を見ながら妻が言っていたのですが、音って音波(空気の疎密波)だから、マスク等の紙や布は通過できても、フェイスシールドのアクリル板は通過できないのかもしれない…。
 確かにそうかも。マスクは空気が通過できるけれど、フェイスシールドは全く通過できないものね。音が空気の疎密波である以上、空気が通過できなきゃ音も通過できるわけありません。
 マスクならば、紙や布が邪魔をして、疎密波の振動が弱まることはあったとしても、振動そのものは通過できちゃうわけです。でも、空気はアクリル板を通過できません。声という空気の疎密波は、アクリル板に当たって、一部はアクリル板を振動させて、アクリル板経由で外部に音を伝えるでしょうが、残りの大半はアクリル板に跳ね返されてしまいます。いわゆる“声が籠もる”わけです。プロのオペラ歌手ならば、声が籠もるのではなく、声が自分に直撃してくるでしょうから、自分の声で自分が参ってしまうかもしれません。
 要するに、マスクは空気の疎密波をそのまま通過させるけれど、アクリル板は、音を効率良くは伝えてくれません。大半を跳ね返してしまうし、外部に音として伝えるとしても、振動を、空気→アクリル板→空気というように変換させ、途中で振動する媒体を変えて声を伝えるわけです。問題は、途中にアクリル板の振動を挟む事です。空気とアクリル板では、伝えやすい振動は当然違うわけで、アクリル板を途中で挟む事で、音質の変更は行われるでしょうし、振動の方向性も変わってしまうと思います。それが聞いた感じで「音が飛んでいない」と感じさせてしまうのかもしれません。
 もしそうだとしたら、フェイスシールドは使えませんねえ。かと言って、マスクをしながら歌うのも気乗りしないし、やはり一番いいのは、距離をとって、何も着用せずに歌う事かな? それこそ2mのソーシャルディスタンスを守って歌えば、なんとかなるんじゃない?
 と、考えたところで、先程の動画ですよ。あの動画では、合唱団員が12名なんですね。各パート3名の4パートで12名です。歌手と歌手の間の距離を十分にとれば、普段は200名ぐらい乗れる舞台でも12名なんですね。頑張れば、距離を保ったままでも、もう少しは歌手が乗れるかもしれませんが、それでもおそらく20名前後が限界かな? そう考えると、合唱はかなり無理です。独唱や重唱ならともかく、合唱は無理だよね。少なくとも、ベートーヴェンの第九は無理って言わざるを得ません。
 第九を歌うならマスク着用…って事になるのかな? でも、マスクをしたまま第九を歌ったら、息苦しくって倒れる歌手が出てくると、我は思うよ。いや、まじで、ほんと、マズイって。かと言って、フェイスシールドを付けて合唱したら、客席まで声届かないし。
 一応、“歌えるフェイスシールド”という、フェイスシールドとマスクのいいとこ取りのようなモノがあるそうですが、ネットで見たところ、家内制手工業製品らしくて、まったく量産化されていないので、私のような趣味人の選択肢には入ってきません。いやはやなんとも。あと、海外には歌手用のマスクと言って、まるでペリカンのクチバシみたいな形状のマスクもあるそうですが、これとて日本在住の私では入手は難しいです。
 ほんま、どないすんねん。

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