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発表会の話 その3

 とにかく、ソロ曲は歌い終えました。あれこれあって、喜んでばかりもいれらませんし、凹んでもいられません。すぐにでも気持ちを切り替えて、次に備えないといけません。

 ボエームの準備です。

 私の出番は、ソロ曲が第一部の終わりの方で、第二部のボエームでは、最初に登場するので、その間の時間があまりないのです。もちろん、第一部と第二部の間には休憩が入りますが…たった10分だもの。厳しいのよ。

 私って人は、実は着替えが苦手…と言うか、着替えがトロいんですよ。いつまでも一人で、ずっと着替えている人なんです。第一部の準備のために、普段着からタキシードに着替えるのだって、たっぷり30分かかっていますからね。第二部の、タキシードからロドルフォの衣装に着替える時間も、30分あるかどうか…なので、脇目もふらずに楽屋に戻って着替えていたわけです。

 実際、着替え終わって、舞台袖に出てみれば、もう休憩も終わって、第二部が始まる直前でしたもの。危ない、危ない。

 ちなみに、ロドルフォは“貧乏なボンボン”という設定ですので、衣装もちょっと、それらしくしてみました。黄色いシャツにパリっとしたベスト。ヨレヨレの綿ズボンにきちんとしたベルトとカッチリした革靴。ワンポイントとしてキラキラのマフラー。何ともチグハグで落ち着きのない衣装にしてみました。ちなみに、もう一人のロドルフォは、普通に背広を着て、派手なネクタイをしてました。ああいうロドルフォもアリだな。

 ミミは貧乏な町娘ですから、第三幕までは貧しい格好で、第四幕で金持ちの愛人になるので、贅沢な格好をするのですが、実際の我々の衣装は、第三幕までがきらびやかな衣装のミミで、第四幕のミミ(妻です)が妙にみすぼらしかったです(笑)。

 さて、ボエームの開始です。ナレーションは私が書いたものを使用していただきました。あっちこっちで笑いが取れて、作者的には嬉しかったです。

 で、第一幕が始まって、私が舞台に出た時、ちらっと客席を見ました。正確には、録音機のある付近です。録音機の電池切れが心配だったので、“録音中”の赤ランプを確認しようとしたのですが、見当たりません。あれ? と思って、何気にその周囲を目で探してみると、座席にセットしておいた録音機でしたが、誰かが落としてくれたようで、床に転がっていました。おまけに、マイクの向き先も舞台ではなく、あらぬ方向を向いていました。

 「アチャー!」と思いました。やはり録音機材のすぐそばに信頼できる人を置いておくべきなのでしょうが…そんな人いないもんなあ。録音機を盗まれなかっただけでも感謝しないといけないんだろうなあ…と、ちょっぴり悲しい気分になりましたが、いつまでも憂鬱な気分のままでもいけないので、気持ちを切り替えて、第一幕を歌いましたよ。

 譜面台を立てて、演奏会形式での歌唱ですが、手振りだけでも演技をあれこれ入れてみました。やっぱり、衣装を着て、舞台に立って、ライトをあびると、人間は演技者になるもんだって(笑)。

 ええと、第一幕は、いつもの練習でも、あれこれあるのですが、本番は…練習以上にあれこれありました(笑)。なかなか練習のようにはいかないよね。まあ、ピアニストさんが強い意志を持って、音楽を継続してくれたので、なんとか終える事ができました。いやあ、ほんと、これはヤバい!という瞬間が何回かありましたが…たぶん、客席からは分からないと思いますが…肝が冷えた瞬間があったんです。いやあ、ハラハラドキドキ。

 とりあえず、第一幕の前半を終えた私は、楽屋に戻りました。録音機が床に転がっているのが、すごく気になります。すぐにでも客席に行って、録音機を設置し直したいのですが、音楽が止まる事はないので、それもできません(客席への出入りは曲間のみOKなのですが、第二部のボエームでは、曲間はナレーションが入るので、そういう隙間の時間が無いのです)。

 イライラしているうちに、時間は過ぎ去り、あっという間に第四幕の後半となりました。こちらは第一幕とは違い、芝居をしながら歌います。

 舞台が明るくなり、ナレーションが始まります。ナレーションの間に、ミミを舞台上のベッドまで運んで、友人たちが部屋から出て行くのを見送るというマイムをして、ピアノが前奏を弾き始めたら、ミミの元に戻って、ベッドの脇に座って、二重唱を始めます。二重唱は…まあ、良かったのではないでしょうか? 二重唱の間に客席を見たら…誰かが床に落ちていた録音機を拾ってくれたようで、椅子の上に載っていました。ありがたい。ただし、マイクの向きは相変わらず、明後日の方向を見てましたが…。

 二重唱が終わって、そのままフィナーレに突入です。生の舞台ですから、あれこれあったわけですが、一番の大事故は…ミミが勘違いして、予定よりも早く死んじゃった事。いやあ、あれにはビックリしました。ミミを元気づけに行ったムゼッタは、元気づけようと近づいたらミミが死んじゃったので、動揺していて、どうしたら良いのかと困っているのがアリアリと分かるほどだったもの。

 とにかく、まだミミには死んでもらっては困るので、すぐに生き返ってもらいました。さすがに、このミミの早死はお客さんにも分かったようで「あれ、一度死んだよね」と後で突っ込まれていた程です。

 他にもあれこれ事故はあったのですが、ミミの早死よりも大きな事故はありませんって。とにかく、ロドルフォの号泣まで、なんとかオペラを続ける事ができました。いやあ、ヒヤヒヤだよ。

 で、カーテンコールをして、お終いです。すぐにホワイエに出て行って、お客様のお出迎えです。秋のクラシックコンサートのピアニストさんが来てくれたので、秋に使用する楽譜を渡しました。秋もボエームを歌う私です。ピアニストさんは、ボエームの難しさ(ボエームって、ほんと、音楽的に難しい曲なんです)をちょっぴり心配してましたが、大丈夫、あなたの腕ならきちんと弾けますって。

 打ち上げでは、今回の発表会…と言うか、ボエームに取り組んだ件について、みんな大変だったけれど、楽しかったという事で意見が一致しました。単に、アリアを歌ったり、二重唱を歌うよりも、ハイライトであってもオペラとして、物語の中で歌う事の方が何倍も面白い事に、皆さん気づいたようです。そうなんだよね、物語を背負って歌うのと、そうではないのとでは、全然違うんだよね。おまけに、衣装をつけたり、演技をしながら歌うと…ホント、楽しいんだよね。

 一応、みんなであれこれ相談して、来年の演目も決まりましたが…まだ発表しない(ふふん)。でも、来年も楽しみだな。

 そうそう、今回のボエームの音源アップは無しです。理由は…聞かないでください(笑)。別に私が高いBを失敗したからアップしない…わけではないんだよぉ。いや、むしろ、オペラの中で歌う私の歌声は…自画自賛だけれど…実にカッコよいのだよぉ。ああ、アップできないのは残念残念。

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コメント

  1. チューリップ より:

    すとんさん、

    以前一回コメントさせていただきましたがお返事していませんでした。
    今更ですみません。
    発表会お疲れ様でした。いろいろハプニングはあったもののやはり楽しそうです。
    今まだ門下生一人しかいませんが、引っ越しのため先生を帰る予定ですので次回は賑やかな所を探します!
    来年の発表会も楽しみですね。何をされるのか発表を楽しみにしています。
    私もアマチュアです。プロのように歌えずイライラしがちですがすとんさんのブログを読むと純粋に歌が歌えることに感謝して楽しもうという気持ちになります。

  2. すとん より:

    チューリップさん

     コメントの返事の有無なんて、気にしてませんから大丈夫ですよ。

    >プロのように歌えずイライラしがちですが

     プロの方々は、音楽に人生とか生活とか色々なものを捧げているから、あの演奏ができるわけで、我々は彼らほどの供物を音楽の神様にささげているわけではないのですから、同列に並べると考える事じたいが、おこがましいって事だと私は思ってます。

     下手でいい…とは言いませんが、自分が楽しみ、お客さんが喜んでくれれば、ひとまずそれでいいやと思ってます。喜びと、少しの感謝。それが、アマチュアの演奏ってもんです。私はそう思ってます。

  3. チューリップ より:

    なんだか言葉が悪くてすみません。
    イライラというかどちらかというと自分の音源を聞いて下手だなあと落ち込む感じです。
    プロの方は音楽に時間もお金もものすごく投資しているので比べるのは確かにかなり失礼なことと私も思います。

    自分やお客さんが満足できるように精進することはもちろんですが、私もすとんさんのように自分も楽しみ聞いてくださる方も楽しめる音楽を目指します。

  4. すとん より:

    チューリップさん

     自分の演奏に満足がいかないのは、別に私達アマチュアだけの話ではなく、プロの方だって同様だと聞きます。世界中を飛び回り、CDだってバカスカ売っちゃうような方だって、自分の演奏には不満足で「下手だなあ…」と常に思っているそうなのです。

     だから、そういう点においては、アマチュアもプロも同じとは言えますし、天狗になったら、その人はそれで終わりだし…ね。

     下手くそで良い訳ありません。でも、下手だからといって落ち込むのも良くないのです。音楽を、勝負とか競争とか上手い下手とか、そういう軸で見ないことが大切なんだと思います。それがコンクール脳からの脱却かなって思ってます。

     大切なのは“幸せ”なんだと思います。演奏者と観客が幸せを感じられる演奏が良い演奏だし、幸せって上手い下手を超越している部分があります。で、音楽はそこを目指していくものだと、私は思うわけなのです。

  5. チューリップ より:

    マリアカラスも自分はなんて下手なんだろうといつも落ち込んでいたと聞きます。ある程度うまくなってこれでもう極めたなんて思ってしまったら成長が止まってしまいますね。

    おっしゃる通りです。下手で落ち込むのはよくないですね。
    すとんさんのコメントを拝見し技術ばかりにとらわれずに歌が好きなんだなーってお客さんに伝わり楽しんでもらえるような音楽が作っていけたらいいと思いました。

    舞台に立つとレッスンの何倍も上手になるとも聞きます。
    すとんさんの音源拝聴いたしました。素敵な声をされているし緊張されていた感じもしましたが、本当に歌うことを楽しんでいらっしゃるなあとお見受けいたします。

  6. すとん より:

    チューリップさん

     フェデリコでも聴かれたのかしら? まあ、大したもんじゃないですが、これも学習の結果…と言うか、途中経過なので、下手でもなんでもかまわないのです。だって、まだ道の途中ですからね。

     下手なのは下手なので、下手くそと罵られても良いのですが、少なくとも愛情を隠し味に入れておいて欲しいとは、常々思ってます。私は、愛されて、誉められて、ちやほやされて伸びるタイプなんです(笑)。

     まあ、楽しいですよ。楽しかったですよ。聞きに来てくださった方々も喜んでいましたので、それでいいやと思ってます。ネットにアップしているのは、あくまでもおまけです。

    >舞台に立つとレッスンの何倍も上手になるとも聞きます。

     これは本当です。なぜでしょ? やっぱり修羅場をくぐるからかな…なんて思ってます。

  7. チューリップ より:

    そうですwフェデリコです。
    褒められて伸びるタイプなんですね。
    厳しいこと言われてもただけなされるだけでアドバイスなし、愛もなしだときついです。厳しい中に愛は必要です。

    修羅場なんですね。まだまだ舞台に立ったことないのでいつか機会があればチャレンジしたいです。

  8. すとん より:

    チューリップさん

     そうなんですよ、修羅場なんです。シュラシュラバンバンです(笑)。

     もう、本番まで、あと一ヶ月ほどなんです。でも、まだ暗譜が終わっていない(汗)。頑張るしかないな、頑張ろう。

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