賑々しいポピュラーコンサートの後は、渋いブラームスのコンサートでした。
ブラームスコンサート(塩崎めぐみ:メゾソプラノ、正田響子:ヴィオラ、宮崎真利子:ピアノ)
こう言っては申し訳ないのだけれど、ここまでが前座で、ここからが本番って感じの出演順を感じました。それにしても、ブラームスは渋くてカッコいいです。
6つの小品より、第1番『間奏曲』
子守歌
2つの歌『沈められた憧れ』『聖なる子守歌』
1曲目の『間奏曲』はピアノ独奏でした。ffは十分に大きかったのだけれど、ppは極めて繊細だったので、静かな会場で聞きたかった演奏でした。いやあ、本当に音響の良い音楽ホールで聞いてみたかったですよ。ここはエアコンの音がうるさすぎる(涙)。
2曲目の『子守歌』は、いわゆる『ブラームスの子守歌』って奴で、メゾソプラノ+ヴィオラ+ピアノの編成で演奏してくれました。
で、これが良かったんですよ。歌が立体的にカラフルに聞こえたんですね。おそらく、子音をとてもきれいに歌ってくれたから立体的に、母音を明瞭に歌ってくれたのでカラフルに聞こえたのだと思います。私はドイツ語はほぼ解しませんから、言葉の意味的なモノは分かりませんが、言葉の響きが旋律の流れに伴って、声という楽器を楽しませていただきました。
同じ事は3曲目の『2つの歌』でも言えます。イタリア好きな私ですが、リートもいいなあと思いました。それに言葉の意味は分からなくても、メゾさんの声の表現を聞いているだけで、おおよその事は分かります。これってすごいことだよね。無料コンサートにはもったいない演奏でした。アンコールをしても良かったなら、ぜひアンコールを求めていたと思います。
ピアノ連弾(松岡磨美・安岡奈緒:ピアノ)
動物の謝肉祭[サン=サーンス]
この曲は、本来は2台ピアノのための曲なんだそうだけれど、今回は連弾用にアレンジされたバージョンで聞きました。私はピアノに詳しくないので、アレンジされて、どう変わったかなどは分からないけれど、とても面白く感じました。それにしてもこの曲、絶対に真面目な曲ではなく、ジョークソングの一種なんだろうなあ…。
小品集ですし、なんかしょーもない曲もありましたが、それでも光る曲もあって、私的には『水族館』『化石』『白鳥』は、やはり名曲だなあって思いました。しかし『白鳥』に関しては、オリジナルのピアノで聞くよりも、よく耳にするチェロ編曲版の方がいいなあと思った事も事実です。白鳥が優雅に泳ぐ様は、減衰音ではなく持続音で表現するべきだと思ったわけです。ですから、チェロが最高だけれど、フルートの演奏でも、ピアノよりはいいんじゃないかなって思いました。
ピアノでメロディを歌うのは難しいなあ…と思いました。
お二人の演奏は、息もピッタリの丁々発止で、楽しめました。
クラシックコンサート(田代華菜:ソプラノ、内田尚志:テノール、三浦千佳:フルート、武田早耶花:フルート、久保朱那:ピアノ、田町公美:ピアノ、大久保愛:ピアノ、大橋理香:ピアノ)
一時間ほど前にポピュラーコンサートを行った新入社員5名に、2年目と3年目の社員さんを加えてのクラシックコンサートでした。同じメンバーだけれど、ポピュラーとクラッシクでどう演奏の切り口が変わるのか、楽しみでした。
歌劇「ファウスト」より『この清らかな住まい』[グノー]
歌劇「ルサルカ」より『月に寄せる歌』[ドボルザーク]
組曲「鏡」より第4曲『道化師の朝の歌』[ラヴェル]
カンタービレとプレスト[エネスコ]
さて1曲目は、テノールアリアの『この清らかな住まい』です。クラシックコンサートだし、当然、テノールが歌うわけですから、もう私はワクワクが止まりませんでした…と言うのも、このパソナのコンサートの出演者は、毎年毎年ほぼ女性奏者だけなんです。だから、珍しく登場してきた男性の出演者には期待しますし、それがテノール歌手となれば、もう期待値マックスな私なのでした。
テノールの彼ですが、先ほどのポピュラー発声とは変えて…あれ? あんまり変わっていなような気が…。うむうむ…うむ?って感じでした。で、よくよく耳をそばだてて聞けば、多少は声に張りと深みがあるかも…しれません…かもしれません。
いやあ、実に小声量で、よく聞こえないのです。舞台で歌った声が、観客の手前の水田にボトボトと墜落しているんです。ああ、残念。音波としては感知できるのですが、歌としては、我々の手前で失速して墜落しているのです。ほんと、残念。
でも、彼の名誉のために書き添えておくと、歌は…技巧的に上手いと思いました。さすがはプロだねって感じです。実際、このグノーの『この清らかな住まい』という曲は、難曲中の難曲であって、まあ、普通のテノール歌手ならば、なかなかコンサートにはかけないだろうというほどの難曲(ハッキリ言っちゃえば、コンサートではなくコンクール向けの曲…と言えば、分かるでしょ)なのですが、それをわざわざコンサートに持ってきて、難なく歌っているんだから、それは立派なものです。聞かせどころのHi-Cだって、ファルセットぎりぎりの一番美味しいところで歌えているんだから、本当に上手だなって思いました。
でもね、ここは学校ではなく、コンサート会場なんだよね。
学校なら上手にミスなく歌えると、良い点がもらえるのだろうけれど、コンサートではミスなんてあったとしても、それ以上の感銘を客に与えられたらOKなんだよね。大切なのは、客に感銘を与える事であり、そのためには、まず、客に歌を届けないと…ね。ミスがあろうがなかろうが(だいたい客は、歌っている歌そのものを知らない事も多いから)、そんな事は客的には、どうでもいい事なんだな。
素直に感じた事を書くと…技巧に声が伴っていないのかな?って思いました。音楽なんて、観客に届けてナンボでしょ。まあ、歌唱テクニックはともかくとして、今後は当然発声テクニックを磨いていくでしょうから、今後に期待って事になるのかな? まあ、まだ若いんだし、何とかしてくる事でしょう。
とにかく、Hi-Cなんて美味しい箇所を難なく歌っちゃダメだよね(笑)。それじゃあ客が喜ばないよ(大笑)。ああいうところは、楽に出せたとしても、苦しげに歌い「とっても大変な歌を苦労して歌っているんですよ」というのをアピールしないといけないのがプロなのにね。歌の聞かせ方を考えながら歌わないと…ね。
発声も含め、数年後に期待です。これだけの技巧を持っているんだから、これで声が出るようになり、歌の聞かせ方が分かってきたら、鬼に金棒って感じになると思いますよ。
2曲目の『月に寄せる歌』は、ソプラノ+フルート+ピアノの演奏で、音楽的にもエンタメ的にも、十分水準に達していて、すでにお金のいただけるパフォーマンスだと思いました。
だって、三人とも若くて美人だし、演奏も上手だし、ソプラノさんは美声だしね。ただ、問題があるとしたら、このくらいの美人で演奏が上手で美声な人たちって、今のクラシック界には掃いて捨てるほどいるって事です。ソプラノもフルートもピアノも、過当競争だからね。水準以上の力があっても、プロとしてやっていくには、色々と難しいんです。売れるかどうかは、マネージャーの腕次第でしょうね。
それにしても『月に寄せる歌』という曲は、名曲ですね。実に美しい曲です。まあ歌詞がチェコ語というハンディがあるせいか、余り歌われないのが気の毒になってしまうほどの名曲です。もっと多くの人に知られてもいい歌だよね。
以上で新任社員の部は終了。次は2年目のピアニストさんによる『道化師の朝の歌』でした。この曲、LFJではよく聞く曲です。この曲『~朝の歌』というタイトルで、なんかさわやかな雰囲気がしそうな気もしますが、実は「飲み過ぎてグデグデになって朝を迎えた、朝帰りのオッサンの歌」なんだよね(笑)。しかし、そういうグデグデな感じを一切感じさせない、パリッとした演奏でございました。
お次は3年目のフルートさんによる『カンタービレとプレスト』でした。いかにもフルートっぽい曲で、フルートの音色を楽しむには良い曲だと思いました。聞いていて、思わず演奏に引きこまれてしまいました。まあ、曲自体は、無名な曲なんだけれどね…。良い曲なのに、無名な曲って奴を聞く度に、フルート音楽そのもののマイナーさを感じて、なんとなく寂しくなってしまう私でした。
ここまで6連続、パソナに居座ったままコンサートを聞いていた私ですが…この後もまだまだ居座り続けるのでした(笑)。
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コメント
こんばんは。
> カンタービレとプレスト[エネスコ]
> まあ、曲自体は、無名な曲なんだけれどね
そうなんですか!!
フルートでは以前紹介した
Flute Music by French Composers
http://www.amazon.co.jp/Flute-Music-French-Composers-Available/dp/0793525764
にも含まれている定番です。でもこの業界の定番は他では??というのもなんとなくわかります。
エネスコはヴァイオリニストとしてよく知られていました。SPは持っていませんが、CDではよく聴きました。
http://francesco.exblog.jp/4929387/
失礼しました。
tetsuさん
そうそう、フルート業界では有名曲なんですよ、それは私も知っている。でも、有名なのは、狭い狭いフルート業界だけで、そこから一歩出れば「何それ?」ってなってしまうことです。
ヴァイオリンだって、ピアノだって、声楽だって、他業界にも名を轟かす名曲がゴチャマンとあるのに、フルート曲と来たら(さすがにゼロとは言わないけれど)、そういう曲を探すのが大変なくらいに不作だという事です。
愚痴っても世界は変わりませんが、何かこう、隠れた名曲っぽいのが、発見されて、ババンと売れて、世界中の人々に「フルート音楽と言えば、この曲!」みたいになるといいなあと…ちょっぴり思っていたりする私です。
> 何かこう、隠れた名曲っぽいのが、発見されて、ババンと売れて、世界中の人々に「フルート音楽と言えば、この曲!」みたいになるといいなあ
仰る通りです。
以前コメントしたかもしれませんが、Cl.とかOb.の方からはフルートはビゼーのメヌエットとかグルックの精霊の踊りのような曲があってうらやましい、と言われたことはあります。
かみさんが伴奏している合唱団の仲間うちでのコンサートで精霊の踊りを吹いたら、ピアノ伴奏のかみさんは初めてでしたが、合唱団の方々からはみなさんご存知でメチャうけでこちらもビックリしました。
J.S.バッハのマタイ受難曲の第49曲 Aus Liebe will mein Heiland sterben のオブリガートは大好きです。これほどの曲でもメジャーでしょうか?
武満のエアーは名曲です。こちらはこのためだけにH管は吹けなくて、C管で書いてくれていたら(by A.マリオン)とマジおもいます。
なかなか難しいですね。
tetsuさん
>フルートはビゼーのメヌエットとかグルックの精霊の踊りのような曲があってうらやましい
おっしゃるとおり、この2曲は、(オリジナルの)フルート音楽としては、掛け値なしの名曲ですね。そういう意味では、フルート名曲はゼロではないわけです。おそらく、他にも探せば、オリジナルのフルート名曲がもう少し見つかるかもしれません。
でもやはり、フルートで演奏できる名曲って、たいていオリジナルはフルート音楽ではないし、オリジナルのフルート音楽は、フルート業界人しか知らない曲ばかりであるというのは、そんなに間違った認識ではないと思ってます。
まあ、大好きなフルートの事をあまり否定的に書くのは、自分でも気が進まないのですが、ほんと、ピアノとかヴァイオリンとかがうらやましいわけです。