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LFJ2016 その7 4K上映は…まあ、当分はいいかな。

 マスタークラスの列に並んでいると、すぐそばの会議室で行われている催し物が気になって仕方ありませんでした。それは何かと言うと…4K上映って奴です。なので、ブラレイ先生のマスタークラス終了後、いくつか見ようと思っていたコンサートがあったのですが、またガッカリしてもイヤなので、おやつを少し食べて、ホールE(昨年までの展示ホールを改称したのです)を冷やかしてから、予定していたコンサートをパスして、4K上映を見に行きました。

クラシカジャパン 4K 2015スカラ座「アイーダ」

 4K上映は、クラシカジャパンと言う、CS局が行っていました。もちろん、自社番組の宣伝を兼ねた4K上映のデモなんですが、4K上映というものに初めて触れる私は、なんかワクワクドキドキしちゃいました。

 会場は壁いっぱいの大型スクリーン(120インチ…って言ってたような気が…)に、5.1chサラウンドの高級スピーカー(200万円の値札が付いてました!)の組み合わせです。いやあ、超豪華なホームシアターってか、小さめの映画館のような設備で、4K上映のデモが行われました。

 上映するのは、2015年にスカラ座で行われた「アイーダ」の第2幕第2場の“凱旋の場”でしたが、まずはその前にたっぷりと宣伝ビデオを見せていただきました。

 宣伝ビデオはとても面白かったですし、クラシカジャパンも良い放送をたくさんしているなあと分かりましたし、我が家はケーブルテレビなので、配信元に電話をすれば、明日からでもクラシカジャパンを見ることができるのですが、毎日が忙しくて、とても見ている時間はないなあ…と思いました。現役引退して、時間が余るようになったら、面白いけれど、現役のうちは無理って思ったわけです。でも、ほんと、良い番組が目白押しだなって思いました。

 で、肝心の「アイーダ」は、なかなか面白かったです。なんでも、スカラ座の新演出なんだそうで、今までやっていた派手派手なゼッフィレッリ演出を止めて、ヴェルディの初演当時の演出を可能な限り復元した、オリジナルに近いシュタインの演出で上演という事で、確かにウマもゾウも出ない、地味めな演出でした。何よりも「あれ?」と思ったのは、バレエシーンが一切カットされていた事です。何でも、初演の時はバレエはなかったのだそうです。

 正直、見慣れていないせいもあるけれど「アイーダ」って、グランドオペラでしょ? 祝祭オペラでしょ? こんなに地味でいいの? って感じでした。

 で、肝心の、4K5.1chサラウンド上映ですが…まあ、こんな感じ?って調子で、少し拍子抜けだったかな? 別にダメってわけじゃないんですよ。良いのですよ。でもねえ…って感じでした。

 まず、システムのオーバースペックさを肌で感じました。4Kって、ハイビジョンの四倍の高細密なんだそうですが、例えば我が家の場合、テレビはいわゆる“ハイビジョン対応のテレビ”なので、4Kの再生機を入れても、たぶんきちんと再生できません。

 じゃあ、テレビを4K対応に買い換えればいいじゃんとなるでしょうが、そんなに積極的に導入しなくてもいいかなって思いました。と言うのも、ハイヴィジョンと4Kの差は、おそらく超大型モニター(それこそ120インチ?)を導入して、やっと分かるかどかって程度の違いで、ウチの40インチテレビの場合、DVDとハイヴィジョンの差すら分からないのに、4Kなんて導入しても、DVD画質との差が分からないと思いました。

 結局、画質の良し悪しなんて、ある一定レベルを越えたら関係ないんだなって思ったわけです。だって、コンテンツの中身が良ければ、そこに集中しちゃうわけで、画質の良し悪しは、そこまで気になりません。

 それに、いくら4Kがホームシアター向けとは言え、我が家にホームシアターを構築する予定はないし、だいたい大型画面で楽しむなら、映画館に行って、メトのライブビューイングを見ちゃうもの。あっちは、本当の映画館での上映だから、画面だって比較にならないほどに大きいし、音響だって最高だよ。それと比べちゃうと、4Kって、どうにも分が悪いなあって思いました。

 4Kって、スペースの問題もあるけれど、都市部で流行らないんじゃないの? 土地に余裕があって、一部屋一部屋が大きくて、なおかつ、近隣に映画館がないような地方じゃないと、流行らないんじゃないかしら? だって皆ハイヴィジョンで足りているでしょ? それにだいたい、クラシカジャパンだって、ハイヴィジョン放送だしね…なんて思った私でした。

 …と書きましたが、案外、4K上映自体を満足して楽しんだ私でした。夕食は…ちょっと時間があったので、ガストに行って食べました。丸の内とか銀座だって、ファミレスはあるんだよね。

 夕食を終えて臨んだ最後のコンサートは、トリを飾るにふさわしいコンサートでした。

天地創造(ダニエル・ロイス:指揮、リュシー・シャルタン:ソプラノ、ゾエリーヌ・トロイエ:アルト、ファビオ・トゥルンピ:テノール、アンドレ・モルシュ:バリトン、ローザンヌ声楽アンサンブル、シンフォニア・ヴァルソヴィア)

 今年の(私にとっての)LFJ最後のコンサートは(私には珍しく)ホールAに行きました。

オラトリオ『天地創造(全曲)』[ハイドン]

 今年のLHFの話題コンサートの一つである、ハイドンの大人気オラトリオ『天地創造』を聞いてきました。会場はやたらと馬鹿でかいホールA(客席数5008席だって、信じられないよ。サントリーホールの大ホールの2.5倍の広さです)でした。まあ、馬鹿でかいと言っても、しっかりとP.Aが入っているので、どこに座っても決して聞こえないという事はないし、大型ディスプレイもあるので、どこに座っても決して見えないという事はないのがうれしいですが…まあ、クラシックを演奏するホールとしては、かなり邪道だとは言えます。本当は、オラトリオならば、1000席ぐらいのホールでの演奏が適切な大きさかな(サントリーホールでも大きすぎる)って思ってます。

 今回はそんな馬鹿でかいホールAのセンター前寄りの、普通ならば、良い席を確保できました。ま、ホールAは、どこに座っても関係ないんだけれどね(涙)。

 大型ディスプレイもあるホールでの演奏だから、当然、字幕サービスもあるだろうと思っていたら、字幕はなくて、入り口付近で訳詞の小冊子を無料で配っていました。去年の『マタイ受難曲』は有料で配布していたので、無料にしただけサービスが良くなったなあとは思ったものの…やはり字幕サービスを付けてくれてもいいんじゃないのかなって思いました。

 だって、ストーリーがあるのに、オラトリオだから演技はないのです。だからこそ、字幕サービスがないと、何を歌っているのか全然分からないじゃない。訳詞の小冊子を配っていても、客席真っ暗だから見れないし…。LFJと言うのは、日頃クラシック音楽との親しみのない人も楽しめるコンサートを行うのが主旨なのに、字幕サービス無しで訳詞を渡して会場を真っ暗にするなんて、主催者の頭の程度がよく分かります。

 来年もオラトリオを上演するのなら、ぜひ、字幕サービスを付けて欲しいものです。

 P.A.が入っているとは言え、やはりAホールは広すぎますね。合唱とかオーケストラは遠方からの集音マイクでの収録でも十分ですが、ソリストたちは、若い人たち中心で、声量にも差があって、マイクのレベル調整が難しかったみたいで、かなり聞きづらかったです。特に最初はテノールが本当に聞こえなくて難儀しました(とても軽い声なので、広い会場では声が散ってしまいマイクで拾いづらかったのだろうと思います)。

 ソリストは4人いましたが、かなりの部分はソプラノとバリトンで歌っていました。テノールは第1部と第2部では頑張っていましたが、第3部では最初と最後に少し歌っただけでしたし、アルトに至っては、第3部の最後の歌にちょっとだけアルトのソロパートがあるので、そこだけ歌っていました(ソプラノに較べて、アルトの仕事の何と楽な事よ!)。なので、最終曲は、元気のないテノールと、ヘロヘロになったソプラノとバリトンと、元気いっぱいでアゲアゲなアルトの組み合わせという、何ともバランスの悪い重唱となりました。ああ、ハイドン先生、これって絶対、作曲上のミステイクでしょ!

 日本ではオラトリオそのものが滅多に聞けませんし、『天地創造』という曲は、名ばかりが有名ですが、ほんと、演奏の機会の少ないオラトリオ(アリア中心のオラトリオなので、市民合唱団だと取り上げにくいのです)なので、それが聴けた事は大変うれしい事でしたし、演奏もすごく良くて、しばしばホールAで聞いている事を忘れてしまうほどでした。

 ああ、楽しかった。これで今年のLFJもお終い。今年の来場者数は45万9千人だったそうです。昨年が45万7千人だから、まあ、45万人強の入場者数という事で落ち着いてきたのでしょうね。

 来年のテーマは「ダンス」だそうです。今年よりは楽しい曲が並ぶでしょうね。来年に、乞うご期待ってところですね。

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コメント

  1. めいぷる より:

    今年初めて足を運びましたよ(笑)
    動機が不純だったので、、、
    …2日目は夕方の潤先生のフォーラム前にポッカリ時間が出来た…
    …3日目はマロオケに行かれなかった…
    「まぁ、こんなもんなんだろうねぇ」という雑把な感想を抱きました。
    恐らくリピーターにはならない客です…爆

    天地創造は聴きに行かれた知人が多かったです。
    ワタクシはその時間、新宿で呑んだくれておりましたが。(^^;)

  2. すとん より:

    めいぷるさん

    >「まぁ、こんなもんなんだろうねぇ」という雑把な感想を抱きました。

     いやあ、まさに正直な感想だと思いますよ。私も、例年の習慣になっている部分があるから出かけているわけで、今からの新規参入だったら、正直どうなんだろうと思わないでもないです。実際、例年は2日間出かけていましたし、今年も結果としては2日間出かけましたが、最初は1日行けばいいかって思ってました。実際、予定外の初日は楽しみましたが、当初からの予定の中日はあまり楽しめてません。

     たぶん、LFJは曲がり角をを曲がりきって、落ち着くところで落ち着いてしまったのではないかと思います。

     コンサートの質も量も、以前とは比べ物にならないほどに落ちてしまいましたし、正直、客を舐めてるんじゃないの? と思わないでもないラインナップだったりもしています。

     すべては、福島の原発事故のせいだと思っている私だったりしています。LFJがダメになったのも、福島の原発事故のせいなんだよなあ。

  3. とも より:

    天地創造、
    私が聴いた演奏会は、ソロ部分は合唱団の何人かが歌っていました。
    他の演奏会ではソロがいなかったです。
    コスト的に…ですね。

    Aホールで歌ったことはありますが、聴いたことはないんです。
    でかすぎてなにがなんだか。

  4. とも より:

    追記です。

    天地創造、私ですら2回歌っています。
    それなりに演奏会、開かれていますよ。

  5. すとん より:

    ともさん

    >ソロ部分は合唱団の何人かが歌っていました。

     確かに聞いている限りでは、独唱部分は音域もそれほど極端ではないみたいだったし、技巧的にも(ハイドンですから)それほど難しいわけではないですし、合唱団のソリでもイケるのかもしれません(ってか、おそらくハイドン的には、ソロではなくソリで行くつもりで作曲していたのかもしれません)。

    >他の演奏会ではソロがいなかったです。

     ソロがいなかった…と言うのは、ソロの部分をカットして歌った(合唱曲ではよくあるパターンです)と言うのでしょうか? だとすると、全体の7割程度を占めるソロ曲をカットしてしまったら、本当にあっという間に終わってしまいますね。特に第三部なんて、ほとんど無しになってしまいそうです。

    >それなりに演奏会、開かれていますよ。

     あらま、そうですか? 勉強不足ですね、私。となると、私のアンテナに引っかからないだけ…か、私の知り合いの指揮者さんたちが、ハイドンを避けているのか、どちらって事ですね。

  6. とも より:

    すみません、言葉が足りなかったです。

    アルトソロがいなかったということです。
    アルトソロが歌うべきところを、誰も歌っていなかったのです。
    この演奏会、私が歌ったときのことなので、事実です。

  7. すとん より:

    ともさん

    >アルトソロがいなかったということです。

     あ、納得。アルトソロって、本当に最後の最後に出てくるだけだし、ハイドン先生には申し訳ないけれど、いなければいないで、どうにかできちゃうものね。

     ほんのちょっとしか歌わなくても、ソリストを雇えば、一日分のギャラが発生しちゃうわけで、極端な話、大半をソロで歌うソプラノと、最後に一声だけ歌うアルトと、ギャラが同じとか、却って、アルトさんの方がギャラが高かったりするんだよね。それを考えると、アルトをパスするってのも、アリですね。

     合唱団員の誰かがアルトを歌えば…と言っても、それがなかなかできないんですよね。ソリストのアルトって、テノール同様に希少性が高くて、なかなか合唱団員では代用が効かないし、ギャラも高いんだよね。

  8. tetsu より:

    こんばんは。

    > アメリカ共和党大統領候補に近い男、ドナルド・トランプ氏

    アメリカという国は元理系崩れのこちらにとっては10代前半E.フェルミとR.ファインマンの国、数十年前会社の海外研修とかで1週間西海岸あたりに行ったときの真っ青な空とパステル色の建物のキョウレツな印象くらいです。

    町山智浩の「USAカニバケツ」という本が声出して笑ってしまうくらい面白かったのですが、最近ラジオで次のような発言をしています。

    町山智浩,トランプ氏が共和党大統領候補ほぼ確定した今について語る
    https://www.youtube.com/watch?v=KbIdZq_3M0A

    共和党に投票してきても何もいいことがなかった。
    金持ちの減税、福祉の切り捨て、貿易の自由化によって中国やメキシコに仕事をとられる。君たちは騙されています、と説得して回った。
    TPP反対、オバマケア賛成、年金保障とか反共和党的な政策を挙げている。
    ポピュリズムと言われているもので、普通の投票する人たちにとってのメリットのある政策ばかり打ち出す。
    日本、メキシコ、中国は徹底的に悪く言う。政策が国内向けすぎるので、外国との協調は考えていない。ドル切り下げとかとんでもないことをする可能性がある。


    TVではわかりにくいところがなんとなくわかったような感じです。
    もしトランプが大統領になったら、日本はUSAとの交渉がかなり難しくなるだろうし、、ドル切り下げされたらGPIFはぶっ飛びそうです。
    この先の展開が楽しみです。

    失礼しました。

  9. すとん より:

    tetsuさん

     アメリカの大統領選挙は、アメリカ国内問題だから…と言い切れない部分があるのが、厄介なところです。トランプ氏は、まずは大統領選挙に勝つことを目的としているわけで、今のところ外交戦略とかは二の次なんだろうと思います。

     それと、日本のマスコミは、基本的にアメリカの民主党の味方でしょうから、共和党候補(それも強力な候補)であるトランプ氏の事など、冷静に客観的に公平に伝えてくれないでしょうし、我々だってネットの情報が英語ばかりですから、読むのもかったるくて、彼の真の姿をなかなか理解できません。

     トランプ氏の何よりの長所であり、恐ろしい事は、彼にはスポンサーがいない事。自分の思い通りになんでもしてきて、これからも出来てしまうこと。誰も彼をコントロールできないところが、怖いでしょうね。私も怖いですよ。だって、何を考えているのか、分からないもの。暴走したら、手がつけられないでしょうね。

     だから、後は、アメリカの議会の良心を信用するしかないわけで、トランプ対アメリカ議会ってのが、彼が大統領になったら、勃発するんでしょうね。

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