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声は消費するのか?

 よく言われること(私もかつてはよく言ってました)に「歌いすぎると声がなくなる」と言うのがあります。

 具体的には「声がなくなる」と言っても、短期と長期の二つのパターンの考え方があると思います。短期の方は“控室で熱心に歌いすぎて、本番では声が出なくなっていたオペラ歌手の例”であり、長期の方は“子どもの頃から歌っていた歌手ほど引退が早くなる”という話です。両方ともプロの話なんだけれど、いかにも“声は消耗品”であるという考え方に基づいた話です。

 “声は消耗品だから、大切に使いましょう”という意味なら、私にもよく分かります。また、歌いすぎた直後に声が出づらくなる事も、経験的に分かっています。早く歌い始めた人ほど引退が早い…かどうかは私には分かりませんが、私のような超スロースターターには関係のない話だろうと思ってます(てへっ)。

 それはともかく、声って本当に消耗品なのか、声って消費をするのか?という事について、少し考えてみたいと思います。

 まず短期の方。歌いすぎると、なぜ声が出なくなるのか?

 私、合唱をやっていた時は、そうそう簡単に声が出づらくなる事はありませんでした。と言え、さすがに1時間半とか2時間とかを連続で歌うと、声が出づらくなってましたね。独唱に移ってからは、キング先生時代だと1分ほど歌うと、もう声が出づらくなっていました。モーツァルトのアリアだと最初の4小節でもうアウトでした。

 これから言える事は「合唱よりも独唱の方が早く声がなくなる」って事でしょうが、これは、今思うに、単純に、疲労の問題ではないかと思われます。

 合唱って、長時間歌っているつもりでも、案外、休み休み歌っているモノです。一つのパートが最初から最後までずっと歌っている事って、あまりないし、練習ならば、パートごとに歌うことだってあるわけで、当然歌っていない時間がたくさんあります。また自分はロクに歌っていなくても周りがきちんと歌っていると、なんか歌っている気分にもなれます。練習時間的に2時間であっても、自分が歌っている時間は、ちょっとずつの細切れだし、その時間だって合わせてみれば、せいぜい30分とか小1時間で、合唱の練習って、思っているほど声を出しているわけじゃないんです。

 それに合唱は、休み休みの上に、あまり頑張って歌うものではないわけで、だから1時間や2時間は、割と平気で歌い続けることができるわけです。逆に言えば、いくら合唱でも、それくらい歌うと、さすがに疲れて、声が出づらくなるわけです。

 独唱の場合は、声が丸裸ですから、手を抜いて歌うわけにはいきません。特に私の場合は、常に気合を入れて全力全身で歌っていましたから、カラダじゅうのあっちこっちに力が入って、あっという間に疲れてしまっていました。発声方法のマズさもあって、1分も歌えばクタクタになってしまうので、声がそこまでしか保たなかったわけです。やっぱり短期における「声がなくなる」は、疲れて声が出づらくなる事だと思います。

 だから、休み休み歌えば、それなりの時間歌えるし、負担の少ない上手の発声方法ならば、長く歌えるわけです。

 あと、以前の私のような勢いだけの歌い方をしていると、歌う度にノドを痛める(つまり、細かな小さな怪我をする)わけで、ノドを痛めれば、そりゃあ声も出なくなるよね。

 ちなみに筋肉と言うものは、小さな筋肉ほど疲れやすく、回復しづらいものなんだそうです。発声に関わる筋肉のうち、ノド周辺の筋肉は小さい筋肉が多いので、ノド周辺に負担のかかる発声(ノド声ですね)をしていると、簡単に声が出づらくなってしまいます。

 長期の方に関しては、私には実感としては分かりません。

 しかし、長い年月歌っていると、やがて声が出づらくなってくるだろうなあとは思います。その理由の一つはノドの変質であり、もう一つの理由は加齢です。

 ノドの変質とは、どんな人でも思いっきり歌えば、多かれ少なかれ声帯を痛めるわけです。プロのオペラ歌手さんたちは、いつもたいてい(医学的な見地で言えば)ノドが腫れているものです。ノドを傷つけては治癒し、傷つけては治癒しの繰り返しをしていると、声帯はどんどん変質していきます。一般的には固くなっていき、物理的に強くなり、柔軟性を失っていきます。これがノドの変質ね。だから、長期間歌っていくと、高い声が出づらくなっていく原因の一つがこれだろうと思います。

 あとは加齢ね。単純に年を取っていくと、筋力が衰えていくし、水分不足になっていきます。これは本来、歌おうが歌わなかろうが関係のない事ですが、歌っている人にとっ、加齢で高音が出づらくなるとか、声にツヤがなくなっていくとかは、これらが原因なのではないかと思います。

 「声は消費する」のかと尋ねられると「消費する」という言葉の定義に迷ってしまいますが、短期においても長期においても、歌っていれば「声は出づらくなる」とは言えると思います。この「声が出づらくなる」ことを以って「声は消費する」というのなら、声は消費するのだと思います。

 では、声を消費せず、長い時間歌い続けるためには、どうしたらよいのでしょうか?

 答えは簡単です。ノドの健康に気をつけていればいいのです。ノドが常に健康で、無理せず、疲れずに、正しい発声(カラダに負担をかけない発声)で歌えば、さほど声を消費せずに済むと思います。

 キング先生に習っていた頃の、1分も歌えば、声が無くなっていた理由は、単純に“間違った発声”で歌っていたからです。ただ、それだけ。Y先生のところに移って、根本的に発声方法を変えた現在、1分で声が無くなるという事はありません。もっともだからと言って、無限に歌えるわけではなく、たくさんたくさん歌えば、疲れてしまうわけで、それを克服するには、筋トレと体力づくりが必要なんだと思います。

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コメント

  1. アデーレ より:

    あらま!私にとってタイムリーな話題だわ(笑)この間から、そんなコトを考えてましたよ!
    というのも、つい一週間前、今までになく?恐らく最強に声の調子がよい日があり、、あんまりにも声が調子良いもんで、、凄い歌いすぎてしまいました。ま、休み休みながらも、軽〜く5、6時間はぶっ通しのフルな声でね。ま、オペラアリア並びに高音のロングトーンありの、コロのタップリな歌曲と。そしたらね、、まだ回復しない、、。あれから一週間か。。。そう言えば、すこぶる調子良かったというのその日は、考えると、約一ヶ月はほとんど歌ってなかったかしらん。ここ、3年くらい、歌いすぎはあっても一ヶ月も歌わないなんて、なかったのよ。。だから、なんか、声の目減りと蓄積を感じたわー。汚い例えですけど、、トイレタンクにお水が貯まるように?歌わないとなんか、いい感じに。でもね、長く歌うとスッカラカンで、なのに、日をおかずにまた歌うと、なかなか水が貯まらないよー、って話でさ(笑)プロならその間隔は短くても大丈夫でしょうけれど、、そこは、バランスの悪い?アマチュアの喉ですからね。。。気を付けないとね、、声を大事に節約して歌おうと思いましたよ、つぐづく。ま、レイトスターターだから、年数的には、まだまだ伸びがあるかと思いますけれど!だから、実際に声に出さない練習も大事かと思いますね。いわゆる、口パクというか、歌うときに使うであろう筋肉だけを使う、で、声は出さず。これ、なかなかいいですよ!いつの間にか巻き舌やらがうまくなる?そう、きっと舌根周辺の筋肉が強化されるのかしら。腹筋もかなりいいかんじになるのよね、必ずお腹を使ってね、声出しなしでも。で、声は大事大事にとっておく!これしかありませんぜ!(笑)あとは鏡を見て頬を上げる、口角をあげて歌う真似ね。全部、真似や歌ったつもりでね、、結構、頬の筋肉疲れますぜ(笑)すとんさま、いかがかしら、。しかし、プロでもリハで歌いすぎて本番、出ないなんてあるんですか?ひゃー、ならばアマチュアならこりゃ、当たり前だのクラッカーですね《古!》

  2. すとん より:

    アデーレさん

     そうそう、声は大切にしないとね。大事に節約するのが吉です。

     私もここ数日、全く声を出していません。たぶん、たくさん声が溜まっている事でしょうね(笑)。今なら、Hi-Cも楽々と出せちゃうかもね(笑)。

     いや、実際、声の休養って、とても大切だなって思ってます。

    >実際に声に出さない練習も大事かと思いますね。

     そうそう、アデーレさんのおっしゃるとおり、声を出さずに発声の筋肉を鍛えるのも大切だと思います。ただ問題は…やっぱり声を出したいんですよ、私(笑)。声を出さないトレーニングをしても、結局、声を出してしまう私でありました。いやあ、ほんと、自分の事ながら、参っております。

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