歌を習い始め頃、当時の先生(このブログによく登場するキング先生ではありませんよ:念のため)に言われたのは「普段から、歌声で話しましょう」って事です。ほんと、どの先生も判で押したように、そう言うんですよね。
でも言われた方としては「歌声で話すって…どういう事?」と、疑問しか浮かびません。
それでもなんとか「歌声で話す」というイメージをアレコレ頭の中で思い浮かべると…アリアを歌い上げている歌手の歌声で話す? 「うわーっ!」って大声張り上げて歌っているイメージ? この声で話すわけ? でも、そんな人いないし、そんな事できるわけないし…となると、どう考えても雄叫びをあげながら話すのが「歌声で話す」という事ではないよね。
ならば、世間で言うところの“オペラ声”で話す事かな? オペラ声と言うのは、張りがあるけれど、ちょっとクチの中にこもった感じの声? でも滑舌は割と良いんだけれど、何となく、日本語とは違う感じの発声をする声の事を言う…で合っていると思うのだけれど、まあ、これは全くのハズレではないだろうけれど、アタリとも言えないような気がします。だいたい、これをそのまま行ったら、かなり変だよね。あまりに、日常っぽくない話し方になります。まるで、舞台演劇の役者さんそのものだよね。あれは舞台だから許容されるわけで、常日頃からあんなしゃべり方する人、当の役者さんですらしないじゃん。
あれこれあれこれ、色々と考えた挙句、私がたどり着いた「歌声で話す」というのは、『しっかりと声を息で支えて、口腔内を大きく広げて、母音をクチビルでなく舌で構音して』話す事ではないかという事です。つまり、発声のメカニズムを歌声のそれと同じにして話す事が「歌声で話す」事ではないのかってわけです。
たぶん、大きく外れていない答えなのではないかと思います。
この発声方法でしゃべると、普通の話し声と較べて、やや声の通りが良くなり、やや滑舌が良くなり、ややうるさい声になる程度で、もちろん、その人の普段の話し声とは変わってしまいますが、だからと言って、話し声としては違和感はあまりなく「こんな声の人もいるよな」程度の声になると思います。
「歌声で話す」ために気をつけないといけないのは…まずは声を支えるために、普段から腹筋を入れて生活していく事かな? インナーマッスルが強い人なら、別にそんなことは日常茶飯だから何とも無いでしょうが、私のような体幹の弱めの方は、腹筋を入れて生きていくなんて、ほんとシンドイです。ここが最初の鬼門になるかな?
普段から腹筋を入れているだけで、だいぶ歌声っぽい感じの話し声になると思いますが、さらに歌声っぽくするなら、常に気分は“高貴な感じ”でいる事が大切かもしれません。女性ならお姫様気分で、男性なら執事長(あれ、高貴じゃない!)にでもなった感じで、落ち着きながらも、ちょっと甲高い声で、他人を教え諭す…と言うか、上から目線で指図するような…と言うか、いかにも慇懃無礼な…と言うか、なんかそんな感じ(笑)で話すと、自然と口腔内が広くなると思いますよ。あくまでも、お姫様気分で話すのは、口腔内を広く保つためであって、実際に“上から目線な”態度で他人と接すると嫌われてしまうので注意が必要です。大切なのは、話し方とか発声方法だけ“上から目線”で話す事です。何はともあれ、『声のポジションを高く保つ』であったり『声を上から出す』と、口腔内が広がり、歌声っぽく聞こえるかもしれません。
母音をクチビルでなく舌で構音するためにイメージするのは、腹話術です。腹話術師にでもなった気分で話すといいのかもしれません。となると…高貴な腹話術師気分って感じでしょうか!
腹話術での話し方は、クチビルをほとんど使わずに、たいていの音を舌だけで構音するやり方です。ですから、腹話術では子音も舌で構音しますが、歌うように話すためには、母音を舌で構音する必要はありますが、子音はそこまでやる必要はないので、普通にクチビル等を使用して構音すればいいと思います。
で、歌手の皆さんは普段から歌っていて、声を息で支えるとか、口腔内を大きく広げるとか、母音を舌で構音するとかの行為が身についているので、話し声も美しく、セリフ入のオペラであっても、歌だけでなく、セリフ部分も美しい声で語れるのだろうと思います。
私は声が美しくない人なので、本当は日頃から歌うように話すことで、少しでも美声にたどり着けるように努力すべきなんだろうなあと思います…が、体幹が弱くて、すぐに弱音を吐いてしまうので、なかなか歌うように話すことが身につかないのでした。
チャンチャン。
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コメント
歌声で話すって、多分、男性なら喉仏を下げて話す、女性なら舌根を下げて話す、例えは宝塚の娘役なんかが、《わたくしはフランスの女王なのですから〜☆》と、言うような声と言ったらわかるかしら。。ちょっと鼻腔に引っかかる声というかな。あの、池田理代子さん、ベルばら作者にて、今は声楽家、あの方は話し方、まさにそんな話し方しますよね?わたしがやったら、《今日、どした?なんか変》といわれてしまいそうだからやめとくかな(笑)しかし声帯に負担がかからなくていいとは思いますよ〜!
アデーレさん
>歌声で話すって、多分、男性なら喉仏を下げて話す、女性なら舌根を下げて話す
それでうまくいく人と、いかない人がいると思います。うまくいかないのは、私のように、喉仏を下げると声を掘ってしまうタイプの人。これは危険です。むしろ、口蓋垂を上げる方向の声の方が危険度が低くて、万人に推奨できる声だと思います。
>しかし声帯に負担がかからなくていいとは思いますよ〜!
声帯に負担をかけない話し方というのは大切だと思います。ぜひそうするべきだと思います。で、テノール歌手のグリゴーロの話し方は、まさにそんな感じで、結構声は飛ぶのだけれど、そよ風のような声で、いかにも「声帯使ってませんよー」って感じの話し声なんです。あ、でもこれは“歌声で話す”とは、ちょっと違うかも(笑)。
こんばんは。
> なぜ歌手は話し声が美しいのか
歌手の方と直接お話しする機会はあまり多くはありません。ただ、アマオケでベートーヴェンの「合唱付き」を何回か演奏する機会があって、何人ものソリストがいらっしゃいました。
本番でメチャよかったバリトンの方は話し声も喉に引っかからずお腹から息が流れているようないい声でした。ビックリするくらい違います。
先日、マティアス・ゲルネのリサイタルに行ってきました。
話し声を聞くことはできませんでしたが、溜息がでるようなところから次に子音が出て次に母音がでてくるのは衝撃的でした。ブレスが自然なのは当然ですが、R.シューマンの曲もよくて最高でした。ここしばらくフルートを聴いてこういう感覚は味わったことありません。
失礼しました。
tetsuさん
歌手にしても、笛吹きにしても、皆さん、息の使い方が上手で、全然ひっかかりがないんですね。それこそ「息を吐くように息を吐いている(笑)」わけで、ほんと、うらやましいです。
さらに常に口腔内を広く保って、よい声色なわけで、普段が美しいから、演奏する音も美しいんだなあって、納得しちゃいます。
吹奏楽部なんかで、楽団の音を美しくしようと思ったら、団員の話し声に気をつけさせるだけで、相当に音色が美しくなるんじゃないかしら?…なんて思う私でした。