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キャリアの短い人ほど、上達するんだそうです

 声楽のレッスンの続きです。

 まずはローザ作曲の「Star vicino/側にいること」のレッスンです。この曲は、いわゆるイタリア古典歌曲って奴です。高声用の楽譜を使用します。

 この歌は…歌うだけなら簡単です。でも、歌えるかどうかが問題なのではなく、必要なテクニックをきちんと行使しながら歌えるか…という点が大切なのです。

 今回のポイントは、息の使い方。とにかく軽く歌うのです。そして、息を流しながら歌うのです。だからと言って、息をたくさん使うわけではないのです。少ない息を速い速度で常に一定量を保っていられるように加減しながら、吐くのです。音量は要りません。とにかく、軽くて速い息で歌うのです。ですから“軽く歌う”と言っても、ふわっと歌うのではなく、身の入った充実した声で軽く歌うわけです。イメージするのが…難しいですね。

 曲の途中にバリエーションの指示がありますが、今回は本来の楽譜の指示通りではなく、バリエーションの方を採用して歌うことにしました。理由は…その方が音楽的だから(笑)です。もっともバリエーションと言っても、言葉の譜割りが本来のものと異なっているだけで、音符の並びは一緒なんですが、言葉の譜割りが異なると、当然、ブレスの位置が変わってくるので、注意です。

 曲の中で、いわゆるメロディーが“転がる箇所”がありますが、この箇所の音程は、腹圧で滑らかに変えていきます。絶対にノドで音程を作ってはいけません。

 あと、私の歌が全体的にややぶら下がり気味だけれど、これは息の流れが悪いからです。もっとトルクの強い息で歌うことで、音程が改善されます。そのためにも息をきちんと流す事が大切です。

 と言うわけで、今回のレッスンでは、

 1)息を流す
 2)腹筋を使う

 この2点を重点的に見てもらいました。そうしたら、時間が無くなってしまったので、ベッリーニ作曲の「Vanne, o rosa fortunata/お行き、幸せなバラよ」のレッスンはパスとなりました。まあ、いいや。実は私、この曲に関しては、まだ練習が足りなくて、舌がうまく回らなくて、あっちこっち言葉が不明瞭なんだよね。先生も、もう少し勉強してから、この曲のレッスンに取り組みたいのだそうです。なにしろ、この曲、まず絶対にバリトンでは歌わない曲なので、あまり馴染みがないんだそうです。まあ、たしかに、この曲はソプラノのために作曲されたはずだけれど、実際の演奏会場で歌っているのは圧倒的にテノールだよね、それも軽めのテノールさんばかりです。。

 さて、レッスンの最後に先生と、ちょっと面白い雑談をしたので、書きます。いわゆる“歌手年齢”って奴です。

 人は年を取ります。声も年を取ります。だからと言って、生物学的な年齢と声の年齢、とりわけ歌声の年齢は、必ずしも比例するわけではないそうです。あまり歌っていない人の声は、生物学的に年を取っていても、若い声なんだそうです。で、歌声と言うのは、ある程度歌っていると、やがて完成し、一度完成した声は、少しずつ少しずつ衰えていくのだそうです。ですから、声に関して言うと、老化すると言うよりも、使い減りをする…と考えた方が良いのかもしれません。

 そうなると大切なのは、歌手としてのキャリアなんだそうです。キャリアの長い人ほど、使い減りをしているわけです。ですから、キャリアの長さが歌手としての年齢のようなものに相当するそうです。キャリアの短い人の声は、まだまだ声が若くて未完成で、子ども同然で成長の余地があるけれど、キャリアが長くなってくると、完成されつくして、それ以上の上達は難しく、あとは段々と衰えてくるだけなんだそうです。

 だから歌を学ぶなら(子どもはカラダそのものが未完成なので、横に置いといて)一般的には、若ければ若いほど良いのだそうですし、オトナであっても、歌ったことのない素人さんほど良いのだそうです。とにかく、子どもであれオトナであれ、歌手としての経験の短い人ほど、伸びしろも多く、変な癖もついていないので、教えれば教えるほど伸びていくのだそうです。

 だから、歌うのが好きで独学で歌っていたとか、カラオケファンだとか、合唱マニアだとか、とにかくカタチは何であれ、歌っていた期間の長い人ほど、教えるのが難しいんだそうです。

 ちなみに「私はどうですか?」と尋ねたら「…大変です」と即答されちゃいました(汗)。ま、そうだよね。分かりますって。そんな私ですが、実は歌のキャリアって、休んでいた時期がたっぷりあるから、そんなに長くないんだよね。全部足しても、だいたい10年くらいなんだよね。それでも、歌を学ぶには、長すぎるキャリアなんだな。

 一般的に考えると、変声期が終わって10年って言うと…ヘタするとアラサーだもんね。アラサーと言えば、大学も卒業した年齢だから、そこから何かを学ぶには、少なくとも“早い”というイメージはないよね。

 と言うわけで、実年齢もジジイだけれど、声年齢的にも決して若くない私なのでした。

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コメント

  1. chako より:

    おはようございます

    最近どうもフルートレッスン
    ぐだぐだです_| ̄|○

    頭打ちかな~ぁ

    気分転換必要なのかも

  2. アデーレ より:

    こんにちは!興味深く読ませていただきました!ナルホドね、、。声は使い減りするんだな、確かにそうかも。しかし、コーラスだけ長くやってなる方って、声が若いというか、お子様のような発声の方がかなりいらっしゃいますね!声楽を個人レッスンされてる方は年数は短かくても発声やポジションがしっかりしてくるからか大人の声、コーラスだけの人よりオトナなお澄まし声ですね!コーラスを20年とかやってる方は若いだけど、あまり使い減りすることがないのかしら、本当に若い可愛らしい声のままで。やっぱり声楽は腹筋を鍛えてしっかりと息を支えて歌うから年数のわりに使い減りするのかもしれないなあーと思ったりしてますが、、。私的にはコーラスの歌い方、迷いがあり、どう考えても独唱の方が好きかな。実際、コーラスでしっかりと発声ができてるのは私が知る限り?◯◯大学とか、◯大学とかレベルだとほぼ足並み揃え見事な感じですが、、。だから、素人コーラスは出来てなくて普通かな。なるたけ使い減りするのを遅らせつつ、歌いたいですね!効率よく早く正しい発声をお得したいです!日々、考えます!先生のようにオーケストラも飛び越える声は一体、何が違うのか?ピッチが高いのか、周波数が高いのか、とにかくコーラスをバックにしても絶対に混じらない声の質でそりゃ、素敵!目指してるものが高いのはわかっていますが、素敵なんだもの!正しい発声で無駄に使い減りすることなく、頑張りたいですね!すとんさん、昨日、今日となかなか、興味深いタイトルで嬉しいです!!

  3. すとん より:

    chakoさん

     歌もフルートも学校の勉強でもスポーツでもなんでもかんでも、上達と言うのは、1次方程式のように直線でスムーズに上昇していくものではありません。階段を登っていくように、上昇と停滞の繰り返しです。上達する時は一気にガガンと上達しますが、その後はしばらく現状維持というか、内なる力を貯めこむ時期がやってきます。で、内なる力が貯まると、またガガンと上達し、現状維持の時期がやってきます。その繰り返しね。

     で、ちょっとサボったりすると、現状維持の時期が長引いたりするし、うっかり間違った事をやっていると、階段ではなく下り坂になっていたり…まあ、色々あります。

     あ、ダイエットも同じようなモンかもしれません。減量を始めて、しばらくは面白いように体重が落ちていきますが、やがてストップするんですよね。でも、そこで諦めずに続けていくと、また体重が落ちていくんです。その繰り返しでやせていくんですね。

     歌もフルートもダイエットも、現状維持の時期に怠けずに前進していく事が大切なんだなと…私は経験則から学びました、はい。

     頑張れ、私も頑張る。

    >気分転換必要なのかも

     …かもね。ガンガン遊び吹きをしてみたら、いかが。結構初見力付きますよ。

  4. すとん より:

    アデーレさん

     たぶん、声の減り方って、歌のジャンルによる違いとか、個人差とか、歌い方による消耗度の差とか、色々あるんじゃないかって思います。あと、生活のスタイルも関係するかも。プロの歌手の場合は、健康で体調管理をしっかりされている方は声の減りが遅く、享楽的で自堕落な生活を送っていたり、恋に悩み苦しんでいるような人は、割りと早く声が減ってしまうのかもしれません。

     我々アマチュアの場合は、基礎基本をしっかりと学び、自分の声にあった曲をレパートリーにしていると、たぶん声の減りが遅く、テクニックはさておき、力任せにあれもこれも歌っていると、案外早く声が減ってしまうのではないかと、私は考えます。

     まあ、声の減りを気にするのも大切だけれど、歌いたい歌を歌わなければ、アマチュア歌手をやっている意味ないと思うので、そこは難しいところです(笑)。それに合唱だと、自分の声に合うとか合わないとか、考えている余裕もないし…。

    >先生のようにオーケストラも飛び越える声は一体、何が違うのか?

     カラダとテクニックだと思います。歌手のカラダを作る事が先決ですね。で、その次は出来上がった歌手のカラダを効率よく使って歌うテクニックが必要です。カラダは楽器、テクニックは演奏技術ですから、そう考えると分かりやすいでしょ? 発声練習というのは、本来、カラダとテクニックの両方を修得するためのエチュードなんですよね。決して、本番前の準備体操の類じゃないんです。

  5. genkinogen より:

    こんにちは。
    声って消耗するんですね。ハードなコンサートで一時的に消耗するのはわかっていましたが、歌いすぎるのもよくないんですね。まあ程度次第だと思いますが。
    よく、バレエなどは、練習を一日でも休むとよくないなどと聞くので、同じ体の一部である声帯を使う歌手は少しずつでも歌った方が良いのかと思っていました。
    以前、ソリストで来てくれたK音楽大学のソプラノさんは、ボイストレーニングは耳のいい人に1週間にに一回ぐらいいじってもらう方が良いわねと言っていました。音楽大学在学中には声は完成しないので卒業しての精進も大切よ・・とも。

    大学時代は、週4回の練習と春・夏・パート・強化合宿と空き時間練習や朝練・昼練と歌いづくめで、友人の中には「音声障害になるからもう歌うな」と言われる者もいましたが、それでよい団のという雰囲気でした。私は、喉が丈夫の方で大声を出しても声が枯れることがあまりなかったのですが、そのことで「フォルテで手を抜いているのではないか。」と陰口いわれたことがあります。(怒り)

    何もわからずがむしゃらに過ぎてしまった学生時代、今回、専門家のアドバイスをいただいてもう一度勉強しなおしたいと思います。でも、きっと、先生にとって私手ごわいです。癖が・・・

  6. すとん より:

    genkinogenさん

     長く歌っていると、声も減るでしょうが、癖が強固になってきますよね。良い癖なら良いのですが、悪い癖だと大変です。私にも悪い癖があって、それが取れずに困ってますよ。悪い癖なら良いのですが、前の先生に習ったことがしっかり身についていて、これが正しい発声の習得の邪魔をしていたりすると、なんか悲しくなります。

     ま、それもこれも私の人生なんですがね。

     でも一つ言えることは、これからの人生の中で“今が一番若い時”なんです。過去を振り返っても時間は戻りませんからね。ならば、今走り出すことが大切なんじゃないか…私はいつもそんな気持ちです。

  7. たまごっち より:

    癖って、本当にやっかいですよね。
    この癖をつけずに覚えられてたら…なんてつい思ってしまいますが、一旦はこの癖を身につけないと意図することができなかったのだし、正しい吹き方の良さも分かるのだから、きっと自分の身になってるはず・・・!と思うことにしています。

    そんな私も、身についてしまったガンコな癖を治す練習を今のメインにしています。
    ちょっと治ったと思ったら、次の瞬間には顔を出す。
    ホントに癖って怖いですね。なによりもしっかり身についてしまって。

    でも、大人だから治すことにせいが出せるのかなぁとも思います。子供のときだったら、私はきっと無理です(;´Д`)面倒くさがりなので…。

  8. すとん より:

    たまごっちさん

     癖には、良い癖と悪い癖があり、レッスンなどで身につけるべきなのは“良い癖”なんですね。問題は、独学とか部活とか流派の異なる先生に学んだ結果、現在の先生から見れば“悪い癖”が身についている場合です。この悪い癖だって、独学とか部活とか異流派の先生の時には“良い癖”だったりするわけです。それが先生が変わって、メソッドが変わって“良い”と思われていたものが悪者扱いになるわけです。

     なんか、厄介ですね。そういう意味では、先生はあまり変えない方が良いのかもしれません…が、それではその先生を越えることはできませんし、その先生の教えてくださった以上には成長しませんから、そこも厄介です。

     ああ、面倒くさいし、厄介です。

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