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ディナーショーに行ってきた

 ディナーショーに行って参りました…とは言え、豪華ホテルの豪華ディナー付きの豪華で高価なディナーショーではございません。都内のこじゃれたレストランでリーズナブルなお値段のディナーショー(形式のサロンコンサート?)って奴に行ってきたわけです。

 お目当ては、テノールのK先生こと、小城龍生さん。ちなみにお名前は『こしろ・たつお』ではなく『こじょう・りゅうせい』と読みます。ま、難読ネームかもしれませんね(笑)。

 いやあ、遠かった…。距離的に遠かったのはもちろん、人身事故って奴で、電車が大幅に遅延していたもんで、時間的にも遠かった。余裕をだいぶかまして到着する予定だったのに、現地に到着したのが開場30分前だもん。ほんと、ぎりぎり(笑)。何しろ土地勘がないものだから、とりあえずお店の所在地を確認して、近所のガストで軽食を食べてから(笑)、ディナーショーに臨みました。まあ、ディナーショーと言っても、料理の質はともかく、量的には全く期待していなかった私なんです。食事って、ほんの少量だけ胃袋に入れると、かえって飢餓感が増すんだよね。食べるなら食べる、食べないなら食べないというメリハリが人生には必要なわけです。

 さて、ガストで軽食を食べて(笑)、開場時間になったので、お店に向かいました。店の外で、K先生が待ち構えていました。お客さん、一人ひとりを出迎えているようです。到着するや否や、ドリンクを確認されて、指定された席に着きます。真正面で舞台にかぶりつきの席でした。あれ? こんな良い席でいいの?

 会場は普通の“町のレストラン”って感じで、座席数は(数えたら)33席でした。チケットは完売って事ですから、お客さんは33人入るわけです。ざっと計算すると、まあ悪くない売上になります。

 お客さんはたった33人しかいないので、全員揃ったところでコンサートが開始されました。と言うか定時になってもお客が全員揃わなかったわけです。5分ほど遅刻された方がいたので、その方を待ってコンサートが開始されたわけです。

 当日のセットリストは、以下のとおりです。

君は我が心のすべて(レハール)
カロ・ミオ・ベン(イタリア古典歌曲)
マレキアーレ(トスティ)
最後の歌(トスティ)
ニュー・シネマ・パラダイス(モリコーネ)
私に愛させて(レオンカヴァッロ)

休憩

帰れソレントへ(カンツォーネ)
マリウ、愛の言葉を(カンツォーネ)
ブリア(カンツォーネ)
つれないお前(カンツォーネ)
忘れな草(カンツォーネ)
誰も寝てはならぬ(プッチーニ)
ヴィーヴェレ(カンツォーネ)

アンコール

フニクリ・フニクラ(カンツォーネ)
オ・ソレ・ミオ(カンツォーネ)
慕情(ポップス)
グラナダ(ララ)

 コンサートのテーマは『イタリアを歌う』だったので、なんと半分以上がカンツォーネ!でした。やはり“テノール+イタリア=…”と来ると、答えは“カンツォーネ”か“トスティ”になりますわな。で、今回はカンツォーネメインでしたというわけです。ああ、それにしても、一度は歌ってみたい曲ばかりが並んでいました。

 1曲目の「君は我が心のすべて」は、元々はドイツのオペレッタ「ほほえみの国」のアリアであって、ドイツ語歌唱が普通なんですが、この曲をイタリアの某ポピュラー歌手がカバーをしてカンツォーネとして歌って以来、イタリアではイタリア語で歌われるようになったそうです。そんな理由で、今回はイタリア語バージョンでの歌唱となりました。

 で、この歌は1曲目という事もあって、曲紹介をする前に歌い出したので、私、歌を聞きながら「これ、何の曲だっけ?」と一生懸命頭を回しました。「メロディは確実に知っている…でも、この歌詞の曲は知らない…え?なんで?なんで」と、ちょっとパニクりましたが、曲が終わるまでには曲名が分かりました。だって、数年前の発表会で歌った曲じゃん(笑)。

 5曲目の「ニュー・シネマ・パラダイス」はジョシュ・グローバン版の(当然だけど)歌詞付きです。6曲目は、レオンカヴァッロの珍しい歌曲です。

 ここまで歌って、休憩。休憩時間に食事が出ました。食事は、サラダと肉と魚にワインとパン。女性なら、これで良いかもしれないけれど、私には(当然だけれど)足りませんでした。ちなみに肉料理は…ローストビーフのような料理で、肉もそこそこ厚みがあって美味しかったです。魚はカジキだね。私の前に座っていたカップルはシャンパンを持ち込んで、グイグイやっていました。…慣れているね。

 皆さんの食事が終わった頃を見計らって、第2部が始まりました。第2部は、怒涛のカンツォーネ特集です。ここからアンコールまで、ノンストップで12曲歌われました。

 よく知っている曲ばかりなんだけれど、8曲目の「ブリア」と13曲目の「ヴィーヴェレ」は始めて聴く曲でした。「ヴィーヴェレ」なんて、まるでK先生の生き様を歌ったような曲でした。7曲目の「マリウ、愛の言葉を」はよく聞くけど、譜面持ってないや(残念)。12曲目の「誰も寝てはならぬ」では、以前からの予告どおり、今回唯一のスープラ・アクートを披露されました。うむ、Y先生のおっしゃる“勝負どころ”って奴は、これなんだな。

 アンコール以降は、イタリア語縛りは解除して自由な選曲になりました。イタリア語縛りから逃れた「慕情」と「グラナダ」はすごく良かったです。

 K先生の歌唱スタイルは、場所が狭くて天井が低い(だって普通のレストランだもん)せいもあって、軽く歌っていました。軽く歌っていたけれど、声はかなりギラギラで、声の中にたくさんのギラギラ成分が入っていました。

 歌手の歌声って、クリーミーな成分(横に広がる、周囲と溶け合う声)と、ギラギラな成分(指向性が強くて、周囲から突き抜ける声)があって、それらが適度に混ざり合って絶妙なバランスの上に成り立っているのが、いわゆる美声って奴ですね。K先生の声は、かなりギラギラなんだけれど、たっぷりクリーミーでもあるので、聞いていると、実に輝かしい金管楽器のような声なんです。やっぱり、歌手にとって必要なのは、個性的な歌声なんだな…と思いました。

 それにしても後半12曲、ノンストップだったけれど、歌のスタミナは豊富だなあ。

 発声そのものは軽い発声なんだけれど、音量はすさまじかったです。K先生の声量に負けじとピアノ(ミニグランドでした)も頑張っていましたが、ピアノの音は割れ気味で、音量的には歌手の勝ちだったと思います…ってか、軽く歌って、あのヴォリューム(普通の歌手のフルヴォイスよりも音量大:笑)ってのがスゴイなあ。声量が、息の強さとか多さとかではなく、響きによってもたらされるという事の、リアルな証明でした。

  なぜそんな声が出せるのか、私も不思議に思って、K先生が歌っている様子を一生懸命観察してみました。で、おそらく腹筋の使い方にヒントがあるんじゃないかな…って思いました。腹筋を背中側に凹ませているのではなく、肺の方にえぐるように凹ませているように見えました。つまり腹筋…と言うか横隔膜で、肺をポンプアップしているような感じなんです。ですから、胸郭を思いっきり広げて、下からグイグイ息を押し上げている感じなんです。その上で、クビもノドもラクラク脱力しているようです。だからよく響くんだな。

 もちろん、骨格的なアドヴァンテージもありますね。胸が厚くて、よく響きそうだし、アゴがしっかりしていて、いかにも口腔内の容積が広そうだし…。クチの開き方は大きくて、極端な程に縦開きでした。

 よく考えてみれば、Y先生がいつも私に注意している事と同じ事を実践しているだけなのかもしれません。つまり、Y先生とK先生は、同じ発声メソッドを使っているってわけです(そりゃあ、イタリアの同じ都市で勉強していた留学仲間なんだから同じメソッドを学んでいても不思議ないよね)。Y先生にレッスンのたびに、毎度のように指導されて、見本を見せてもらっても、バリトンさんの見本では、今ひとつピンと来てなかった私ですが、同じことをテノールがやると、こうなるのか…と思いました。良い見本を見せてもらったわけです。

 あと、K先生は、歌いクチが独特ですね。少なくとも日本人歌手としてはかなり珍しい歌いクチの歌手です。もちろん歌っているんですが、聞いていると、歌うと言うよりも語る感じなんです。で、語っているんだけれど、しっかり歌っているんです。日本人の歌手は、よく歌う人は多いけれど、語りと歌を両立させて歌う人は少ないと思います。この歌いクチがK先生の強い個性となっていると思います。

 K先生の本業はもちろんオペラ歌手だけれど、副業で、外国語学校のビジネス系のイタリア語の先生をやっているくらいイタリア語が得意なので、そういう事が出来るんだろうなあって思いました。今回歌った曲の多くは、私も学んだ曲なので「テキストの処理がすごく上手…まるで生粋のイタリア人の歌を聞いているみたいだ」と思ったわけです。

 とにかく、選曲と良い、歌いクチといい、発声といい、私大好きですよ。とても気に入りました。あと、人間的にも気が合うしね(笑)。なので、コンサートが終わって挨拶に行った時に「ぜひ、次も来たいです!」と言っちゃいました。次の予定を、メールで教えてもらう事にしたので、楽しみです。うふふ。

おまけ ネットでこんなのを見つけたので貼っておきます。K先生とフルーティトさんが共演している動画です。曲は…ララの「グラナダ」です。どこぞのレストランでのライブっぽいですね(食器がカチャカチャなる音がしてます)。

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