クラシック音楽とポピュラー音楽のリズム感の違いについて簡単に書いちゃうと、クラシックは足し算で、ポピュラーは割り算かなって、私は思ってます。
クラシックの場合は、基本となる音符、多くの場合は四分音符なわけだけれど、この四分音符の速さ(ってか、時間的な長さ)を、まず決めるわけです。モデラートとか、アレグロとかね。で、その速さに則って、色々な音符をドンドン足していって、リズムを作っていくわけです。もちろん、四分音符の半分の長さは八分音符で、その半分は十六分音符で…とかね。
だいたい、最初に決めた四分音符の長さが、割りといい加減(だって、モデラート[中くらいの速さ]とかアレグロ[快活に速く]だよ、アバウトにも程があるってもんです)だし、そのいい加減さにも幅がある(少々速く感じるモデラートとか、まさに中庸なモデラートとか、ちょっぴりゆったりしたモデラートとか、まあモデラートにも色々とニュアンス違いがあるんですね)ので、リズムには色々とゆらぎが生じるわけです。そのゆらぎを合わせるために、合奏の際には、指揮者ってのがいるわけだし、リズムにゆらぎがあるから、クラシック音楽は面白いわけです。
なので、同じ曲の同じモデラート指定であっても、曲の頭にある四分音符8個分の長さと、曲の中程にある四分音符8個分の長さが、微妙に違っていても(あるいは、あからさまに違っていても)OKなのが、クラシック音楽ってヤツです。
おそらく、作曲家にも演奏者にも、四分音符を見ると「なんとなく、これくらいの長さ」という感覚があって、それを速度記号で補って、より正確に表記しているつもりなんだと思います。なので、勢い余ると、ついつい四拍子の曲の一小節にかかる時間が、4拍分ではなく、5拍分や6拍分になったりするのは、そういう事なんじゃないかって思います。
一方、ポピュラー音楽は割り算なんだな。基本になるのは、ビートってヤツです。ザックリ言えば、バスドラムの刻み。これが音楽の基本。で、このバスドラムの刻む瞬間だけは、皆さんバッチリ音を合わせる(あるいは、外す)のがポピュラー音楽のリズム感だと思います。
で、バスドラムの鳴っていない部分は、割りと(良い意味で)適当にリズムを刻んでいけば良しという感じだね。つまり、合わせるところだけ合わせてくれれば、後は好きにしていいよって感じだね。で、その好きにしていいよという部分が“割り算”なわけよ。
つまり、ビートが“1”なんだよ。で、その“1”に対して、作曲家なり演奏家が好きにリズムを刻んでいくわけだけれど、必ず“1”は合わせにくるわけなんだよ。つまり、リズムというか、音ってやつは、常に“1”に対して、小数だったり分数だったりするわけね。だから割り算なんだよ。
分かるかな? 分からなかった、ごめんね。でも、私はそんなふうに考えてます。
だから、クラシック曲の譜読みは、頭から順番に読んでいけば分かるけれど、ポピュラーの場合、そもそも楽譜はあまり意味がないし、ビートごとの音の塊として感じていけばいいんだと思う。なまじポピュラー曲を譜面に書いたり、書いた譜面をクラシックの要領で読もうとすると、すごく難しく感じてしまうけれど、実はビートに合わせること、ビートとビートの間は、適当に帳尻合わせをしておけばOKなんだよって事が分かっていれば、なんとかなると思うわけなんです。
実際、ポピュラー音楽じゃあ、厳密に楽譜通りに演奏するって、まずないでしょ? だいたい合っていればいいやだし、楽譜も「ここはおまかせ」なんて書いてあったりするわけだしね。
そういう点で考えると、クラシック音楽は作曲家の音楽だけれど、ポピュラー音楽は演奏家の音楽…だとも言えます。
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コメント
>分かるかな?
バッチリ、ビカッとLED20ワットが百個くらいいっぺんにパッとついたような感じです。
です。そうか・・・、ビートなんですね。自分も、いままでクラシックとポピュラーは聴いていてもなにかどこか根っこのところが違ってるなあ、なんだろう、メロディーの造作かなあ和声の展開かなあ、楽器の音色かなあ、とときどき考えたりしてましたが、ビート!、なんですね。そうかそうか・・・ビートの拍動間隔にいろんな音が割り算で入り混じって入ってきているってことなんですね。ビートは、クラシック音楽が大切にしている「テンポ感」とは別物なのですね。テンポは足し算で、ビートは割り算ですか。そういえば、私はくわしいわけではないですが、ジャズとかロックなども典型的なビート音楽のようですね。
だりあさん
そうなんですよ、ビートなんですよ。ポピュラーとクラシックを分けるモノは。
>ビートは、クラシック音楽が大切にしている「テンポ感」とは別物なのですね。
全然別モノだと思います。だって、テンポって揺れるでしょ? また、その揺れが音楽性につながるわけだし、歌心ってヤツにも通じます。でも、ビートは揺れません。大地に根をおろした大木のように、びくともしません。そこが大きな違いかもしれませんね。ですから、クラシックとポピュラーって、実は全然別種の音楽だと思ってます。
>そういえば、私はくわしいわけではないですが、ジャズとかロックなども典型的なビート音楽のようですね。
ビートを作り出す楽器の代表は、ドラムスです。ドラムスのバスドラです。ですから、演奏形態にドラムスが入っているモノは、ビート音楽って言えます。もちろん、ビートはドラムス以外の楽器によっても作れますが(例えば、ベース・ギターとか、ピアノの左手とか)、でもやはり、ドラムの有無がクラシックとポピュラーを分ける、分かりやすい目安かもしれません。
ドラムの無い、ジャズとかロックって、あんまりないでしょ?
こんばんは。
「音楽」のwikiでは
西洋音楽では、リズム(律動)、メロディー(旋律)、ハーモニー(和声)をもつものが音楽とされる。
とあって、このリズム、を前提に進めます。
元師匠に「リズムRhythme,タイムTime,ビートBeat,パルスPulse,グルーヴGrooveの違いわかる?」と聞かれて絶句したこちらに勧められたのは次の本でした。
http://www.amazon.co.jp/CJ119-%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0%E3%81%AB%E5%BC%B7%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E5%85%A8%E3%83%8E%E3%82%A6%E3%83%8F%E3%82%A6-%E5%A2%97%E8%A3%9C%E6%94%B9%E8%A8%82%E7%89%88-%E5%B8%82%E5%B7%9D-%E5%AE%87%E4%B8%80%E9%83%8E/dp/4813604056
リズムに強くなるための全ノウハウ(増補改訂版) 単行本(ソフトカバー) – 2007/3/25 市川 宇一郎
あと、、吹きながらカウントして合わせるときは無意識的にダウンというか顔を下へ振って合図していました。
元師匠によれば、アップでカウントしたほうが軽いし、留学先ではそのほうが普通らしいです。
最近はあちらではどうこう、こちらはという話では感慨もありませんが、西洋音楽の受容(変な言い方ですが)には似たようなところと全然違うところが混在しているのかもしれません。
失礼しました。
tetsuさん
まあ、クラシック音楽と言えども、近代音楽とか現代音楽という範疇になると、ビート音楽の側面も持ってますので、実は私が書いたような、単純な話でもなかったりするんですね。
>「リズムRhythme,タイムTime,ビートBeat,パルスPulse,グルーヴGrooveの違いわかる?
一応分かるかな? でも、厳密に言葉で説明しなさいと言われると難しいかも? でも、ポピュラーの世界では、割りと使う言葉たちだと思います。
結局、リズムって、時間をどう捉えていくかって事なんだと思います。クラシックとポピュラーの違いも、日本とヨーロッパの違いも、すべては時間感覚の違いがリズムの違いになって表されてしまうのだと思います。
私は、クラシック音楽よりも、雅楽や浄瑠璃などを聞くと、時間感覚の違いを強く感じますよ。