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すとんが薦める初心者向けオペラ その3「愛の妙薬」

 さて、本日私が薦めるオペラは、ドニゼッティ作曲の「愛の妙薬」です。

 今まで薦めた「道化師」や「椿姫」と言ったオペラは、シリアスなオペラで、いわゆる“悲劇”という奴ですが、今回の「愛の妙薬」は、バカバカしいお話で、いわゆる“喜劇”というジャンルに属するものです。

 とにかく、話がバカバカしくて、ありえない事だらけなんです。でも、それでいいんです。お笑いですから(笑)。このオペラは、そんな馬鹿話と、それに付随している音楽を楽しむタイプのオペラです。だから、別に名歌手が演じているモノでなくても全然かまいません。誰がどうやっても、それなりに楽しいオペラなんですよ。

 ストーリーは以下の通りです。

 頭がちょっと足りない小作人の子であるネモリーノ(落語で言えば“与太郎”の位置です)は、農場主の娘であるアディーナに惚れています。アディーナは、ネモリーノよりも年上だし、美人だし、教養もある娘なので、当然ネモリーノとは釣合いません。だから、どんなにネモリーノがアディーナに惚れていても、アディーナは軽くあしらい、全く相手にしませんでした。

 ある日、村外れに駐屯している軍隊からベルコーレ軍曹が村に遊びにやってきました。軍曹は若くてイケメンでなかなか立派な人なので、アディーナは軍曹に一目惚れしてしまいます。その様子を見たネモリーノはガッカリしてしまいます。

 そんなところに、旅の薬売りであるドゥルカマーラがやってきます。ネモリーノは彼に“愛の妙薬(惚れ薬)”はないかと訪ね、ドゥルカマーラは手元にあったワインを愛の妙薬と偽って、ネモリーノに叩き売ります。

 薬をあおって、アディーナの元に現れたネモリーノだけれど、アディーナはだらしなく酔っ払ったネモリーノの姿を見てガッカリして、彼へのあてつけもあって、つい勢いで軍曹と結婚の約束をしてしまいます。そこに本隊の方から、急にベルコーレ軍曹の隊に進軍命令が出て、この地を去らなければならなくなったので、急遽、軍曹とアディーナが結婚する事となります。

 明日になれば、愛の妙薬の効果が現れると信じているネモリーノだけれど、その効果が現れる前に、大好きなアディーナが軍曹と結婚してしまうと知り、ガッカリします。そこで、ネモリーノはドゥルカマーラのところに再び現れ、追加の愛の妙薬を買おうとするが、お金を持っていなかったので、購入できません。

 アディーナの事が諦めきれないネモリーノは、恋敵であるベルコーレ軍曹のところにやっていき、軍隊に入隊したいと申し出て、その給料を前借りして、そのお金を持ってドゥルカマーラのところに行って、追加の愛の妙薬を買い、さっそく飲み干します。

 そんな時、村に一つの噂が流れてきました。それは、ネモリーノの大金持ちの伯父さんが死んでしまい、その財産をネモリーノが相続するという噂です。貧乏で馬鹿な青年であったネモリーノが、村一番の大金持ちになると知った村娘たちは、さっそくネモリーノを誘惑し始めます。

 急に女性たちにもて出したネモリーノは、これも愛の妙薬の効果のせいと信じます。村娘たちにちやほやされているネモリーノを見たアディーナは、なぜかイラツキます。そして、実は自分はネモリーノに恋している事に気づきます。その上、ネモリーノが自分の気をひきたいために、命を投げ出して軍隊に入隊してお金をつくって、そのお金を愛の妙薬という、デタラメ薬に費やして、いわば詐欺にカモられているを知り、そこまで自分の事を愛している事を知ります。

 アディーナは、ベルコーレ軍曹との結婚を取りやめ、ネモリーノの前借りした給料を軍隊に返し、入隊契約を破棄させて、彼に愛の告白をします。アディーナとネモリーノの二人は、こうして結ばれました。

 …というお話です。愛の妙薬が出てきたり、都合よく金持ちの伯父さんが死んで財産が転がってきたり、軍隊への入隊も簡単なら、契約破棄も簡単すぎて、色々とご都合主義なんですが、いいんです。だって、これ喜劇ですから。コメディーなんです。コントに毛の生えたようなモノなんですから。

 さて、私が推薦するディスクは、パヴァロッティがネモリーノを歌っているこのディスクです。推薦理由は…安いから。確かにパヴァロッティはネモリーノを得意としていた歌手ですが、別に誰が演じても、そんなに大きく違うわけじゃありません。たとえほぼ無名なオペラ歌手が演じていたからと言って、このオペラの価値が大きく下がるわけでもありません。たまたま安いのでパヴァロッティのディスクを薦めますが、本当はどれでもいいんです。

 とにかく、気合を入れてみるようなオペラではありません。肩の力を抜いて、おやつでも食べながら「バカだな~」とか「ありえないだろ(笑)」とか笑いながら見ていれば良いのです。その程度のオペラです。

 さて「愛の妙薬」と言うと「人知れぬ涙」というアリアが有名です。YouTubeに、昨年のメトロポリタンで上演された「愛の妙薬」でのマシュー・ポレンザー二の歌がアップされていたので、それを貼ります。ちなみに、この時の公演はライブビューイングとして上演されて、私もそれを見て、感想をブログ記事にしてアップしています。そちらをご覧になりたい方は「メトのライブビューイングで『愛の妙薬』を見てきました」をご覧ください。

 「愛の妙薬」は出演者の数が少なくて済むし、オーケストラも小編成でいいので、実に多くの団体が頻繁に上演しています。どの上演でも、そんなにハズレる事はないので、ぜひ、ライブ上演でも、DVD鑑賞でも良いので、ご覧いただけるとオペラの楽しさをご理解いただけると思います。

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コメント

  1. tetsu より:

    こんばんは。

    今回の連載、メチャ面白くで、楽しいです。
    NHKで毎年放送されているガラコンはだいたい見ているので、アリアだけだとなんとなく見当つくのですが、アイミョウのストーリーは今回初めて知りました。こんなお話だったのですね。道化師も通して聴いたことないので、今度聴いてみます。

    オペラのwikiを見たのですが、operaはラテン語の単語opus(作品)の複数形主格operaに由来するらしいです。こんな初歩的なことも今回初めて知りました。

    こちらもあまり詳しくなくてもオペラのお勧めはあるのですが、今回の連載が終わってから、といたします。
    今後の連載も楽しみです。

  2. すとん より:

    tetsuさん

     喜んでいただけると、うれしいです。実は今回の連載、少しめげていたんですよ。なにが原因かと言うと“あらすじ”です。これ、私が自分の言葉で書いているのですが、これが案外時間がかかるんですね。色々と思い出しながら、時によってはネットで検索をしながら書いているので、ほんと、時間がかかってます。その割には、大したことなかったりするんですが(汗)。

     頑張りますよ!

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