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結局、フルートは音色が命なんだな

 先日、フルートのコンサートに行ってきました。セミプロ(?)の方のコンサートなので、お名前は伏せさせていただきます。

 で、そのコンサートはしゃべり半分、演奏半分で、なかなか面白かったのですが、その中でも、おもしろい事をなさってました。

 それは、同じ曲を、フルート一本での演奏、フルート二本(つまりフルートデュエット)での演奏、それにピアノと歌を加えた演奏の、三パターンで演奏されました。

 で、その中でどれが一番良かったのかと言うと、個人的には、フルートのソロの演奏でした。フルート一本での演奏を「家で練習していると、こんな感じですね…」なんて、卑下していましたが、いやいやどうして、なかなかに素晴らしかったです。

 使用フルートは、木管と見間違えるばかりに真っ黒になった銀管フルートでしたが、その音色が実に甘美で甘美で甘美で…。実にうっとりな感じでした。

 フルートデュエットでは、相方の方のフルートの音が少々硬めだったので、ソロよりも残念な感じがしましたし、ピアノや歌が入ってしまうと、いくらフルートが美しく吹いても、主役は彼らに持って行かれてしまいます。どんな音色でどんなに美しく吹いていても、それは特に問題にはなりません。

 なんか、フルートという楽器の特徴が、ちょっぴり見えたような気がしました。

 フルートって、音域的にソプラノ歌手と同じですから、メロディを演奏するのに適した楽器だと思われがちですが、音色が優しいので、他の楽器と共演すると、影が薄くなってしまいます。

 まあ、相手が歌手やピアノなら仕方ないと言えるかもしれませんが、もしも相手がヴァイオリンやトランペットやエレキギターでも、やはり仕方ないって事になるのかな? サックスだったらどうだろ? クラリネットやオーボエでは? なんて、色々な楽器との共演を脳内でシュミレートしてみると、いずれの組み合わせでも、フルートって食われてしまいそう…。どうもフルートって、そんなに押しの強い楽器ではなさそうだなあ…って思いました。

 フルートデュオを始めとする、フルートアンサンブルではどうかな? ヴァイオリンはソロでもいけるし、弦楽合奏もなかなかいけます。フルートの場合、ヴァイオリンにとっての弦楽合奏のようなフルートアンサンブルという形態があるにはありますが、弦楽合奏がやがてオーケストラという形態に発展していったのと比べ、フルートアンサンブルって、笛系の人以外には「???」って演奏形態なんですよね。クラオタですら「フルートアンサンブル? なんすか、それ?」ってのが現状。つまり、それくらいに、フルートアンサンブルって、マイナーな存在なんです。無論、フルートアンサンブルがマイナーな存在であるには、それなりの理由があるわけで、その理由を掘り下げるほど、私はヤボではありません。

 フルートアンサンブルは、悪くはないけれど、メジャーじゃない、って事です。つまり、フルートって『一人孤高に吹いた時が一番美しい』のかもしれません。

 それって、もしかするとフルートに限らず、笛全般の性格かもしれませんね。日本の古典文学を見ても、笛って、ソロで活躍しているシーンがたくさんありますから。

 一人孤高に吹くならば、そこに一番求められるモノは、心にしみる音、つまり“美しい音色”ではないでしょうか? その美しい音色を求めるために、笛吹きはフルートの音づくりにエネルギーを注ぐ…って事なのかなって思いました。

 実際、先のコンサートでの、フルートのソロ演奏って、フルートしか鳴っていないのに、音楽的には不足を感じませんでした。なんででしょ? 音さえ美しければ、それでもう満腹って感じがするんです。少なくともフルートの場合は。

 声楽だと、そうはいかないですね。やはり、伴奏は無いよりもあった方がいいです。でも、フルートの場合、必ずしも伴奏は必要ない…ケースだってあります。

 今回は、そんな事を考えちゃいました。

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コメント

  1. tetsu より:

    こんばんは。

    フルートの起源のひとつのパンの笛の神話自体、上品な話ではないです。管楽器ではたとえばトロンボーンは「神の楽器」とかでプライド高いですが、それにくらべることはできません。
    ハーメルンの笛吹きでは、笛を吹くと子供たちが日常生活をしていた街を飛び出してしまいます。J.ルノワールの「大いなる幻影」では笛が鳴ると城を脱走して、またここからの話がかなり長い、というあたりは大好きです。
    笛というかフルートには日常的でないものへの脱走というか憧れを抱いています。

    好みの音色感はあります。元師匠の話では音色に拘るのも英米に比べると日本では多いらしいです。ひとつの音に聞き入るとか。

    相変わらず変な話で失礼しました。

  2. だりあ より:

    無伴奏のフルート曲って、聴かせますよね。鳴っている音に耳がスーッと寄って行ってつい集中してしまいます。私は最終的には、レッスンができる健康があるうちに、バッハの無伴奏パルティータの全曲をやってみたいと思っています。が・・・・・先生には、まだ音色がちゃんとできてないから無伴奏バッハはムリ、と言われて修行中です。
    がしかし、あんまりのんびりしてると、・・・・いろいろな意味で焦りますよ。早くオーケー、ゴーサインが出ないかなあ。無伴奏フルートパルティータが吹ける日をおいかけて、音色修行、がんばろうと思ってます。

  3. すとん より:

    tetsuさん

     tetsuさんが上げたヨーロッパの例では、フルートはあまり良いイメージではないようですね。と言うか、日本人の持っているイメージとは、だいぶ違うみたいです。それにしても、ハーメルンの笛吹きか…たしかにオドロオドロシイ印象だなあ。

    >元師匠の話では音色に拘るのも英米に比べると日本では多いらしいです。ひとつの音に聞き入るとか。

     日本人と西洋人では、音の処理に関する脳の使い方が違うと言うのは有名な話です。例えば虫の音を、日本人は左脳で処理するけれど、西洋人は右脳で処理する…ってアレね。笛の音のこだわり方の違いも、その辺に起因する事だったりして。

  4. すとん より:

    だりあさん

     無伴奏のフルート曲って、いいですね。それこそ、月に向かって吹き鳴らしたいような曲が目白押しで、ワクテカな気分になります。

     バッハの無伴奏パルティータですか…思わず、今、iTUNESで再生しながらこのコメントを書いてます。ああいい曲だなあ。

     確かに先生のおっしゃるとおり、音色がちゃんと出来てないと、フルートの音がむき出しになる分、キツいのは確かだけれど、人生にはタイムリミットというのがありますからね。もしかしたら、だりあさんの先生ってお若い方かしら? だとしたら、こちらから言い出さない限り、人生のタイムリミットについては気がつかれないかもしれませんよ。なにしろ、人生のゴールは見えない限り、無いものと錯覚しがちですし、若い人でゴールを見定めている人なんて、ほぼ皆無ですからね。

     ドンマイ。

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