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声楽は…人気がない?

 カルチャーセンターのような趣味系専修学校の音楽のコースは、人気コースなので、どこの学校も結構賑わっております。

 ピアノ教室がないカルチャーセンターなんて、まずありません。ヴァイオリンやフルートも人気教室で、たいていの学校で講座が開講されています。他にも器楽系の講座はなかなか盛んで、ギターとかウクレレはもちろん、場所によっては、サックスや三味線や胡弓等の講座も結構みかけます。

 歌系の講座としては“うたごえ”系の講座はたいていあります。昔々、歌声喫茶に通っていた人たちが、今ではその手の趣味系専修学校で、声を合わせて歌っているのかもしれません。その他、カラオケ系の講座とか、コーラス系の講座も人気です。ジャズやシャンソンの講座も、たいてい開講されています。

 でもね、クラシック声楽の講座って、なかなか見かけないんですね。じゃあ、その手の学校には、クラシック声楽の講座は無いのかって言うと、全くそんな事はありません。むしろ、事実は逆で、どこの学校でも、一つや二つぐらい、クラシック声楽の講座が開かれているんです。

 ま、そりゃあそうだよ。日本中で、毎年、実に大勢の方が音大の声楽科をご卒業なされているわけで、それらの方々の大半が、演奏家として生きていける程、演奏の仕事の需要があるわけではないので、専門教育を受けたにも関わらず、やむをえず演奏家以外の仕事に従事せざるをえない現実があります。

 その中には、すっぱり音楽を辞めて、音楽以外の業種で生きていく人もいますが、やはり、それまでの人生、音楽に打ち込んで生きてきたわけですから、音大卒業後も演奏家として活動していくことは難しいかもしれないけれど、なんとか音楽関係の仕事をしていきたいと考えるのは自然な事です。

 それら大勢の方々の受け皿として、学校の音楽の先生だったり、音楽事務所やレコード会社に勤務するとか、楽器店などの音楽関係の会社に就職する等の道があります。カルチャースクール等の音楽系専修学校の先生をやるのも、そういう選択肢の一つであります。

 なので、カルチャーセンターに声楽の講座がないって事は、まず無いんです。だって、教える人を見つけるのは、そんなに大変な事じゃないでしょ? 生徒集めは、カルチャーセンターにノウハウがあるわけだから、ど~にだって、なるわけです。なのに、実際にカルチャーセンターを尋ねたり、そのホームページを見たりしても、声楽の講座を見つけるのは、そんなに簡単な事ではないんです。

 それって不思議ですよね。そこにカルチャーセンターのノウハウって奴が生かされているわけなんですね。

 実は、多くの声楽系の講座は“声楽”とは名乗らずに“ヴォーカル・レッスン”とか“ヴォイス・トレーニング”と名乗っています。

 皆さんは“ヴォーカル・レッスン”とか“ヴォイス・トレーニング”と聞いて、何を想像されますか? 

 私は“ヴォーカル・レッスン”と聞くと、ポピュラー系の歌を習うんじゃないかって思います。ロックとかポップスとか歌うためのレッスンって思います。だって、あの手の音楽では歌手の事を“ヴォーカリスト”って呼びますからね。でも、クラシック声楽だって、ウォーカルと言えばヴォーカルなわけで、そこに嘘はないんだけどね。

 とりあえず『歌を上達したい』と思っていたら、ヴォーカル・レッスンに興味を持つでしょうね。

 一方、“ヴォイス・トレーニング”と聞くと……私は合唱経験者ですから“ヴォイス・トレーニング”つまり“ヴォイトレ”が何なのかは知っています。発声練習の事ですね。か弱い歌声をしっかりした声にしたり、音域を広げる訓練であるとか…そういう事をやるトレーニングである事を知っています。

 でも、もしも私が合唱未経験者で、音楽の世界に疎かったら“ヴォイス・トレーニング”と聞いて、どんな事を想像するか、脳内でシュミレートしてみました。

 おそらく合唱未経験な私なら、“ヴォイストレーニング”と聞くと、文字通り、声の訓練。つまり発声の訓練かなって思います。

 そこで想像する発声というのは、歌の発声もそうだけれど、舞台演劇などの発声訓練をまず最初に思い浮かべます。なにしろ、学生の頃、よく演劇部の連中が「アメンボ、アカイナ、アイウエオ~」とかやっていたのを聞いていますので、あんな感じのモノを思い浮かべます。だから、歌にも演劇に通じるような、基本的なヴォイス・トレーニングをしてもらえるのかな? って思います。

 そこでヴォイス・トレーニングに興味を持ったら、カルチャーセンターに問い合わせてみる事でしょう。ここで開講されているヴォイストレーニングが、音楽系のものなのか、演劇系のものなのか、まずそこを問い合わせるでしょうね。

 で、音楽系のヴォイトレだと耳にしたら、そのヴォイトレを受けたら、カラオケで上手く歌えるようになれるのかと尋ねるでしょう。だって、一般人にとって「歌」=「カラオケ」でしょ? カルチャーの返事は、もちろん「カラオケはバッチリです」という答えでしょうから、カラオケを上達したいと思っている私なら、受講してみようかなって思うでしょうね。

 そこが、カルチャーセンターの思うツボって事なんですよ。まずは、知ってもらい、足を運んでもらうのです。

 “ヴォーカル・レッスン”とか“ヴォイス・トレーニング”と名乗ることで、クラシック声楽に興味も関心もない人を呼び寄せるわけです。つまり、新規顧客の需要を呼び起こすって事です。ほんのちょっとでも興味を持ってもらって、問い合わせでもしてくれたら、こっちのモンです。後は磨き抜かれた接客の技で巧みにお客の興味関心を呼び起こして、その気にさせて「まずは体験してみてください」ってところに持っていっちゃうわけですね。人の良い日本人は(って、たいていの日本人は人が良いんです)、そこまで言われると断りきれずに『まあ、体験ぐらいなら、いいかな?』とか思って、体験レッスンを受けちゃうわけです。

 で、体験しちゃうと『習ってみませんか? まずは三カ月、いかがですか? 気に入らなければ、辞めるのも自由ですが、まずは三カ月、いかがですか?」とか来るわけです。人が良い日本人は断れなくて(笑)。

 三カ月もいれば、講座の先生とも人間関係ができてしまうので、もう辞められません。ま、こんなところですって。 

 これって“声楽”という看板では集められない客を“ヴォーカル・レッスン”とか“ヴォイス・トレーニング”とかいう看板で呼び寄せるわけです。で、一度網にかかった獲物は…磨かれたプロの技で籠絡されちゃうわけで、つまり、最終的にはクラシック声楽の魅力にハマルようになるのかもしれないけれど、少なくとも、入り口の段階では、半ば騙されるようにして習い始めるわけです。実際、そういう人、多いよ。キング門下なんて、そういう人たちばかりだったからね。

 私? 私ですか? 私も騙されたクチよ(笑)。私は、元々、合唱がやりたくて、そのために個人的にヴォイス・トレーニングをしてもらうために、キング先生の門を叩いたわけで、最初っからクラシック声楽をやりたかったわけじゃないです。

 そんなわけで、クラシック声楽、つまり“声楽”って看板では、客は集まらないみたいです。ずばり言っちゃえば、声楽って人気がないし、需要もない…って事なのかもしれません。

 でも、それって、本当は食わず嫌いなんだよね。私もそうだったけれど、ちゃんとやると、結構、楽しいのよ。こんなに面白い趣味もないだろうに…と思うけれど、でも一般人は、その楽しみを知らないわけで、だから人気がないんです。

 なんか、もったいない話だよね。それって、海のほとりに住んでいるのに、マリンスポーツの一つもやらない、デブったオヤジみたいじゃん(って、それって私の事か:笑)。

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コメント

  1. 椎茸 より:

    そういえば、わたしも、「歌を習っています」とだけ言うと、大抵「ボイトレですか?」って聞かれます。
    ボイトレの教室はよく見かけますが、声楽はそんなに大々的に看板掲げたりしていないので、あまり意識されないのでしょうね。

  2. すずめおばさん より:

    人の好き好きなので何とも何ともですが、多少歌えるという自信があった私も、声楽というのを知ってから自信喪失です。
    もっと大きな声で、人間の持てる声を最大限に活かして歌いたい!!と思えば、やっぱり声楽は避けては通れない道だなあと思います。
    カラオケ大会で賞をもらっても、声楽家の声には敵わない(><;)

    でも、やっぱり声楽は難しい~~!!

  3. すとん より:

    椎茸さん

     ある意味『歌を習う』って、発声の見直しをしているわけなので、ヴォイトレと言えば、ヴォイトレなわけで、だから『クラシック声楽』という看板ではなく『ヴォイス・トレーニング』という看板も正解と言えば正解なんだと思います。

     個人的には『クラシック声楽』と『ヴォイス・トレーニング』は、ちょっと違うんだけれどなあ…と思いますが、これって、私の思い上がりかしら?

     記事では『人気』と書きましたが、思うに無いのは『人気』以上に『知名度』なのかもしれません。歌って、始めると面白いのにねえ、みんな、その楽しみを知らないんだよね、モッタイない。

  4. すとん より:

    すずめおばさん

     どうも『すずめおばさんさん』と書くと、落ち着かないので『すずめおばさん』って呼ばせていただきますね。

     私は元々、そんなに歌える人ではなかったので、声楽家って、まるで一流のアスリートのようだなって思ってました。なんで、あんなに巧みに歌えるんだろう?って思ってました。特にナマ歌を聞くと、そう思ったものです。

     私は「歌える」という自信は皆無でしたが「声を持っている」という自負はありました。でも、いくら声があっても、そのコントロールが難しい難しい(汗)。やればやるほど、その難しさを感じています。

     カラオケ大会で賞……欲しいなあ(笑)。私がカラオケで歌うと『マイクが(または、スピーカーが)壊れるから、止めろ』とあからさまに言われます。これは、声が大きすぎるからなのか、あるいは、音程がフリーダムすぎるから言われるのか、未だに分かりません(涙)。五年も習っていても、この程度です。

     いやあ、声楽、難しいですね。

  5. 第九を歌っています より:

    二回めのレッスンに行って来ました。

    一分程度軽く発声し、初めて持ち込んだ、最後の歌を披露をしました。

    それなりに予習してきたので自信を持って披露できました。
    今回は初回より声の調子もよく、低音から高音まで均一の艶のある響きがでましたし、二度めの慣れでリラックスでき、音程は一音も外す事無く、フレーズの終わりには繊細な音楽表現もつける事もできました。テノールの作法である最後の高いラも綺麗に出す事もできました。

    指導された事は
    表情、手足の動作。(これが苦手です。)
    イタリア語のアクセント。(辞書を買って確認が必要ですね。)
    でした。
    また、リズム感も指摘されました。(便利なレコーダの音源でだけに頼り楽譜を見ないでメロディを安易に記憶している弊害です。)

    私に取って声楽のレッスンは歌の練習と言うより演劇の練習です。

    一ヶ月後の次回のレッスン迄に最後の歌を自分の物にするまで練習するように言われました。
    また11月の発表会用にアリアを選んで頂けるようです。

  6. すとん より:

    第九を歌っていますさん

     うっかりお返事する事を失念して、コメントの順番が後先になってしまった事をお詫びします。

     さて、初回のレッスンで、べた褒めされ、二回目のレッスンでトスティを披露し、三度目のレッスンではオペラアリアをいただける……夜道は気をつけた方がいいですよ。さっさと、デビューなされた方が、スッキリします。

     翻って、私の二度目のレッスンではどうだったかと言えば…立ち姿だとか、呼吸だとか、歌以前の事ばかりを練習していた記憶があります。未だに、呼吸とか、クチの開け方、クチビルの使い方とか、首やら肩やら胸やらの使い方など音楽以前の事ばかり注意受けます。トスティだって、数年かかって、やっとたどり着いたわけですしね。ほんと、才能の違いって、恐ろしいですね。

     第九をうたっていますさんって、本当に、豊かな才能に恵まれているんですね。私にも、その爪の垢ほどの才能でもいいから、分けてほしいくらいです。

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