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高音はテクニックで歌いなさい

 声楽のレッスンに行ってきました。

 ピアニストさんと、我が家の前で待ち合わせをして、三人で彼女の車に乗り込んでレッスンに行きました。つまり、ピアニスト持ち込みのレッスンをしたわけです。

 せっかく、ピアニストさんがいるので、いつもの発声練習はそこそこにして、すぐに曲の練習に取りかかりました。

 それにしても、ピアニストさんがいると、先生はピアノを弾かずに済むわけで、その分、レッスンに集中できるので、ピアニストさん持ち込みのレッスンは、先生にとっても、うれしいんだそうです。なにしろ、私たちのレッスンは、夜の遅い時間にやってますが、先生自体は、朝も早くからレッスンをやってらっしゃるようなんですよ。

 生徒さんを減らす予定のY先生でしたが、どうやら、先日亡くなられたK先生のお弟子さんたちを引き受けたよう(一時的か、永続的かは知りませんが)で、なんかとてもレッスンがお忙しくなってしまったようなんです。ま、オペラ歌手なんて自営業ですから、忙しいうちが華ですね。先生、がんばれ~。

 普段は、ピアノ弾きながら、しゃべりでレッスンを進行しているY先生ですが、ピアノ伴奏から解放されたら、もう、ボディランゲージ出しまくりで、踊るは跳ねるは手振り身振り付きで一生懸命レッスンされていました。まるで、指揮台にいるバーンスタインみたい(笑)。こういうレッスンも面白いですね。

 レッスンは、本番に向けてのレッスンなので、先生はピアニストさんにも、色々とアドヴァイスをされていました。演奏の難しい箇所は、先生が実際にピアノを弾いて、お手本を示すなどをしてくださったので、ピアニストさんも勉強になったようです。

 しかし、ウチのピアニストさんも、なかなかの凄腕だけど、やはりピアニストとして主役でピアノを弾くのと、伴奏者として歌手に寄り添ってピアノを弾くのは、だいぶ違うみたいです。そのあたりの事を中心に、Y先生はご指導されていました。

 それにしても、Y先生も、かなりのピアノの達人じゃないかな? さすがはピアノ教室でピアノ教師をやっていたという経歴もある人です。“声楽家が弾くピアノ”のレベルは越えているんじゃないのかな? これだけ弾けるなら、歌手じゃなく、伴奏ピアニストとしても、プロとしてやれるんじゃないの? いや、マジで。

 ですから『優雅な月よ/Vaga luna, che inargenti』のような、合わせの難しい曲も、歌手としてやるべき事を私に、ピアニストとしてやるべき事をピアニストさんに、それぞれにアドヴァイスをしてくださいました。例えば、ブレスがあるためにうまく合わないところは、待っている時のピアノの弾き方とか、具体的にどこの音符で止まって、どこで合わせていくかをピアニストさんに指示し、ブレス前の音符の処理の仕方や休符でのカラダの使い方などを私に指示して下さいました。

 私とピアニストさんだけで合わせていると、どうしてもうまく行かない部分があったのですが、そういう所も、先生のそれぞれに下さるアドヴァイスで、なんか段々と上手く、歌とピアノがかみ合う様になってきました。やっぱりピアノ合わせは、二人でやるより、三人で力合わせてやった方が、何倍もスムーズにいきます。

 それと、先生のピアニストさんへの指導を見ていると、ピアニストさんには、こういう言い方で話をすると通じやすいのか…などと言った感じで、勉強になります。
 
 
 さて、私の歌に関する、レッスンの様子を書いていきます。

 まずは『優雅な月よ/Vaga luna, che inargenti』。この曲の聞かせ所には、高いGがあります。この音を歌うのは、私にとっては博打で、成功する時もあれば、失敗して撃沈してしまう時もあります。ま、以前から高音は博打だったので、私的には気合を入れて、その箇所を乗り切るしかないだろうと思ってましたが、Y先生的には、それではダメって事なんです。

 高い音は、気合ではなく、テクニックを使って確実に歌いなさい…そう言う事なんだそうです。でもね、問題は、高い音を出すテクニックって奴を、私は知らないんですよ(涙)。

 先生も、私があまりに無防備に高音に突入していくので、それをとても不安に感じていた様です。私の歌は、あまりに無手勝流で、その結果、思いっきりノド声となって、撃沈していく、典型的な悪いテノールの歌なんだそうです。

 しっかり息を支えて歌う事。クチ大きく開いて、ノドを下げる事。これらは当然の事だけれど、高音発声では、それらに加えて、胸筋を上手に使っていかないとダメだと言われました。ま、当然ですが、私は胸筋などを意識して使って歌った事ないので、そりゃあ、無手勝流になるよね。

 と言うわけで、しばしの間、胸筋の使い方の練習をしました。肩を引いてみたり、腕をネジってみたり、手のひらを開いてみたり、肩甲骨を上げたり寄せたり…ひと言で「胸筋を開く」と言っても、色々なやり方と、どこまで開けるのかと言った事もあって、たかが胸筋ですが、どうにも奥深そうです。

 「Gの前に、しっかり息を支え、クチと胸筋を大きく開いておき、それで歌いだすなら、高い音も、博打にならずに、必ずうまく歌える」と先生はおっしゃいます。確かにそうなんですが、問題は、そこまでの準備を発声前にしっかりできるか…だね。そこに行くまでにバテバテになっている事だってあるわけだよ。難しい問題だね。
 
 
 歌うところと、しゃべるところは、しっかりと分けて、しゃべるところは、しっかりしゃべらないとダメなんだそうです。と言うのも、しゃべりの箇所は、ノドを休めている箇所だから、しゃべりのところでノドを休めて、歌うところで思いっきり歌うようにする。だいたい、曲そのものが、そのように出来ているので、そう歌いましょうと言われました。

 どうも、テノールという人種は、どこもかしこも歌いたがって、その結果、歌いすぎて、撃沈する…という過ちを何度も繰り返す(笑)人種のようなので「とにかく、休めるところは休む。楽をしながら歌う」という事を常に念頭に置いて歌うように言われました。

 高い音が続く箇所は「うわ~、高い音が続くよ。大変だなあ」という気持ちで歌ってはいけないそうです。それは撃沈の原因になります。「高い音が続いているね。それがなにか?」というような、上から目線のタカビーな態度で歌う事が大切なんだそうです。また、高い音の連続の中に、たまに低い音が交じっているようなフレーズの時、その低い音は、土下座している人間を上から見下すような態度で歌うのがgoodだそうです。…なんか、人間が悪くなりそう(笑)。

 ザックリ言えば「高い音なんか楽に出る」「低い音なんて捨ててやる」って態度が大切って事です。…そんなキャラ、私の中にはないよ(笑)。

 先生がおっしゃるには、私はかなり高い音まで出るタイプの声(ホントかな?)のようです。ただ、あまりにテクニックが無さ過ぎて、持って生まれた高音をうまく発声できずに、それで撃沈しているようなんです。

 だから、私の場合“高い音を出す練習”は、あまり意味のない事なんだそうです。だって、放っておいても高い音は出るから…だそうです。むしろ、足りないテクニックをきちんと磨いて、中音域をしっかりと楽に歌えるようになれば、高い音で撃沈する事は…少なくなるそうです。

 少なくなる…まあ、テノールってのは、その日の体調次第で、プロでも撃沈するので、撃沈自体は、どうやっても避けられないようです(笑)。

 とりあえず、高い音をしっかり確実に出すには、1)体調管理をしっかりする。2)高い音以外を楽に楽に歌う。3)高い音はテクニックで出す。 これら3点をしっかり守ることが大切です。

 あ、本番の前日は運動会じゃん。私、疲れ切っているかもしれない(涙)。

 「どうやら本番は、高声用でいけそうだね」と先生からOKが出ました。この曲、どうしても歌えなければ、中声用の楽譜に切り換えて本番ステージに上がるという選択肢もあったわけです。だって、いくら難しい曲とは言え、中声用の楽譜なら、テノールの私には楽勝な話ですからね。でも、これで本番は高声用の楽譜で歌いますよ。ただ、その日の体調次第で撃沈もあるかもという事も折り込み済みですが(笑)。

 なにしろ「テノール」と書いて「げきちん」って読む…わけですからね。
 
 
 記事もだいぶ長くなってきたので、残りはまた明日アップします。

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コメント

  1. operazanokaijinnokaijin より:

    Y先生、ピアノがうまくて、でも、本職は歌。
    ああ、天は2物をお与えなのですね。
    羨ましい。ひょっとして、ギターも弾けたりして。
    朝ドラの梅ちゃん先生を見ていたら、
    はぐれ者のおじさん(鶴見しんごさん)、
    昭和30年代、ギター弾き弾き、月光仮面を歌って、
    子どもたちに慕われていました。
    昨日のブログと今日のブログとを拝見し、
    ピアノやギターが弾けるといいなあ、などと
    感じた次第です。
    ( ̄▽ ̄;)

    一方で、私、思うに、っていうか、
    ま、吉田先生のご著書にあった、と思うのですが、
    ピアニストさんは、音程をご自分で作るという苦労がないので、
    ピアニスト出身の指揮者は、音程作りをわかっていないかも、
    みたいな。
    その点、Y先生は、問題ないんでしょうね。
    ま、ピアニスト出身の歌手ということではなく、
    ピアノも達人の、歌手、でいらっしゃるのですね。
    ( ̄□ ̄;)!!  

    あと、昨日のブログのお話ですが、
    >>日銀さんがババンとお札を刷り増しして、
    >>市場に出回るお金の量を増やして、マイルドなインフレを
    うん、この、マイルドなインフレってのが、難しいんですよね。
    そもそも中央銀行がインフレを志向するってこと自体に、
    日銀の方々は抵抗があるでしょうし、しかも、
    「マイルド」ってところに持っていくのが、至難の業(わざ)。
    マイルドでない、ハイパーなインフレになっちゃったら、
    どうしましょう、という危機感は当然ありましょう。
    ( ̄~ ̄)ξ

    一方で、ハイパーなインフレを望んでいるのは、財務省。
    国債の償還が一気に楽になりますからね。
    というわけで、結局、日銀と財務省との、駆け引き?
    かなと、私は思っております。
    ( ̄ー+ ̄)

    てなことを、つらつらと書いてしまった私を、
    どうか、すとん様、お許しください。
    (/_\;)

  2. すとん より:

    operazanokaijinnokaijinさん

     声楽家の大半は、音大卒ですが、実際のところ、ピアノがあまりお上手ではないと言う方は大勢いらっしゃいます。その一方、数は少ないのですが、ピアノが得意という方もいらっしゃって、Y先生は“得意な方”に属しているみたいです。ギターが弾けるかどうかは、今度尋ねてみます。ちなみに、私はギター弾けるし、得意です(笑)。

     確かにピアニストさんは、音程を自分で作るという事がない反面、常に和音の中にいますので、和音の感覚が知らず知らずに身についてるようです。フルートもそうだし、とりわけヴァイオリンとか歌のように、自分で音程を作っていく楽器は、勢い、単音楽器だったりするので、うっかりすると、和音の感覚が育たないまま、ある程度のところまで行っちゃう事があるようです。

     たまに、フルートアンサンブルなどで、楽譜どおりに演奏しているのに、なんか音が汚かったり、うるさかったりする演奏ってあるじゃないですか? あれって、奏者の中に和音の感覚がない人がいるからじゃないかな?って思ってます。和音の感覚がないと、どうしてもピタって感じにハモるのが難しいんですよね。まあ、単なる私感に過ぎませんが、

    >しかも、「マイルド」ってところに持っていくのが、至難の業(わざ)。マイルドでない、ハイパーなインフレになっちゃったら、どうしましょう、という危機感は当然ありましょう。

     日本のようなデカイ経済をハイパーインフレに持っていくのって、並大抵の事ではないと思いますよ。おそらく、億兆単位のお金を注ぎ込んだって、マイルドなインフレどころか、デフレ脱却だって難しいんじゃないかな? それに私は財務省じゃないけれど、ハイパーなインフレは大歓迎です。だって、インフレって、国内のモノの値段は確かに上がるけれど、お給料はそれ以上に上がるし、輸入品はタダみたいに安くなるし、個人的には大歓迎。まあ、輸出産業に従事している人にはやっかいなものでしょうが…。

     日銀と言うか、銀行マンってのは、インフレを嫌いますよね。なにしろ、自分たちの商品である“お金”の市場価値が下がるのがインフレだから。逆にデフレは“お金”の市場価値が高いわけで、デフレの方が銀行マンはうれしくてホクホクは分かるけれど、デフレで喜ぶのは銀行マンだけでしょ。世間の人は、経済が活性化するマイルドなインフレの方がうれしいはずだけれど、銀行マンはインフレを避けたいから、日銀はお札の発行を渋り、日本をこのままデフレの不景気のままに置いておきたいんでしょうね。

     つまり、日銀が、日本の不景気の元凶?って事かな? どうなんでしょ?

  3. 椎茸 より:

    声楽は、目覚めるのが楽器に比べてゆっくりなのかもしれません。
    高校で合唱部→歌に目覚める→音大に入るためにピアノ猛練習
    という人がけっこういるのでしょうね。
    かと思うと、ずっとピアノで音大入るつもりでやってきたけど、
    突如歌に目覚めて声楽科に入るという人もいます。
    声楽の道は懐が深いなあと思います。

  4. すとん より:

    椎茸さん

     ピアノやヴァイオリンなどの弦楽器は、小学生の頃からお稽古を積んでいないと…、各種管楽器でも中学生ぐらいからはマジで始めていないと…、なかなかプロ奏者の道は開けないようですが、声楽はおっしゃるとおり、だいぶ遅咲きのようです。「少年合唱団からやってました!」という人もいますが、その一方、椎茸さんのおっしゃるような、かなりの遅咲きさんもいらっしゃいます。元々、別の楽器をやっていたけれど、ある日「君、声がいいね、声楽科を受けてみないか」なんて薦められて、声楽に転向したなんて話も結構聞きます。

     どちらにせよ、声楽は、声変わりをしてからでないと、何も始められませんから、どうしてもスロースタートになるみたいです。キング先生は、元々チェロをやっていたそうです。Y先生は何をやられていたのだろう? 知り合いの歌手さんの中には、元フルーティストさんもいらっしゃるし、高校三年まで、全く音楽をやった事がなかったという強者もいます。それでも、声が良くて、才能のカケラが見いだされれば、プロの道が開けるわけです。

     確かに声楽の道は、懐が深い…かもしれませんね。

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