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今は直しちゃいけない

 レッスン記事の続きです。この記事の前半部はこちらです。

 とにかく、部屋を出て、しっかりと頭を冷やして、柔軟体操をして、カラダをほぐしたものの、相変わらず、頭蓋骨の外も中も痛いのよ。痛みそのものは、実は、馴染みの痛みで、今までにも何度もあった痛みです。この前まで歌っていた、モーツァルトの「Dalla sua pace la mia dipende/彼女こそ私の宝」とか、イタリア古典歌曲の「Tu lo sai/あなたは知っている」などのように、メロディーが高音に偏っているような曲を歌うと、私は今までも、決まって激しい頭痛におそわれています。頭痛と言っても、その痛みの種類は、筋肉痛の痛さです。例えば、重い荷物をずっと持っていると腕がダルくて痛くなるでしょ、あの痛みが、頭蓋骨の中と外で同時多発的に起こっていると想像してもらえると、分かりやすいと思います。特に激しく痛むのが、コメカミと頭頂部と、上アゴです。これらの箇所は、高い声を出すと、持続的な痛みにおそわれます。あと、時折、胸が吊る時があります。こっちは、その時だけの、持続しない痛みです。

 「実は、高い音のある歌を歌うと、いつも激しい頭痛におそわれるんですよ」と先生に、何度目かの相談をしてみました。

 先生がおっしゃるには「無駄に表情筋を使っていない? 例えば、顔全体を後ろに持っていこうとしていない?」 …そんな意識はありませんが、私のカラダの使い方をよくよく観察してみると、確かにそんな感じの筋肉の使い方をしているかも…。ってか、そうしないで響きのある声を出すのは…現状では、ちょっと無理かも? 

 「発声と顔の表情筋は、全く関係ないよ」とバッサリ。つまり、声を出して、頭が筋肉痛になる(つまり、表情筋が発声に関与している)としたら、その発声自体が、発声の方法論として間違っているというわけです。

 ううむ、声楽を学び出して、ようやく五年。これまで、一生懸命積み上げてきたものが、実は大間違いであったと宣言されました。

 頭痛はともかく、先生がおっしゃるには、私の発声の特徴は『ノドが絞まっている』『鼻腔が閉じている』のだそうです(一つも良い所無しじゃん…)。この“絞まる/閉じる”という動作ですが『歌うと自然に閉じてしまう』という感じはなく『自分でわざわざ思いっきり閉じている』感じに聞こえるだそうです。つまり『ノドを開放しようとして絞めてしまう』『鼻腔を広げようとして全力で閉じている』のが私なんだそうです。発声に必要な運動の、全く真逆の運動を一生懸命にやっているから、それで疲れているのではないか?…と言うことです。

 と言うのも、正しい発声なら、コメカミやら頭頂部やらは脱力しているから、そこが筋肉痛になるはずなんてないんです。

 私の場合、間違った事をを一生懸命、虚しくやって、それでわざわざ筋肉痛になって、撃沈しているのではないかって事です。つまり、長年、自分でわざわざ失敗する方向に努力を重ねてきた結果が、この激しい頭痛でしょう…というのが、先生の見立てです。

 確かに高い音を歌おうとすると、声が塞がる感じがします。これについては、何度もブログに書いてますし、以前から先生にも言ってますが、これって、先生がおっしゃる通り、ノドが閉まって、鼻腔が閉まって…いるからなんでしょうね。

 しかし、私がうまく歌えない理由は、今までは『未熟さのため』と思っていましたが、実は『未熟さ』というよりも『声の出し方が根本的に間違っている』ためだったわけです。発声が『未熟』ならば、練習を重ねて熟練するのを待てば良いのですが『方法論的に間違っている』なら、今までの努力は無駄だったわけだし、これからの努力は自体をますます悪化させるだけのものだし、私の未来にも希望なんてありえないわけです。

 まあ、私に才能が無いのは…知っています。適性が無い事も…知っています。これら、才能や適性に大きく欠ける私ですが、それでもなんとか今までやれたのは、とりあえず私が『努力の人』だからです。努力だけを味方にして頑張ってきたから、ここまで来られたわけですが、その努力で積み上げてきたものの、裏切りを知ったわけで、なんかもう、何もかも、投げ出したくなりました。「私の五年の月日を返せ~」って気分です。

 最近、定期的にやってくる“声楽なんて辞めてやる病”が再発しそうですよ。

 しかし、先生の見立てである『ノドが閉まっている』も『鼻腔が閉じている』も、今はそれらを直してはいけない…って言われました。今後もしばらくは、ノドを絞めたまま、鼻腔を閉じたまま、頭痛を我慢しながら、歌った方がいいそうなのです。

 大間違いをしているし、苦痛も感じているのに、その間違いを直してはいけない…とは?

 と言うのは、間違っているとは言え、現状として、とりあえずガラコンサート用の「オペラ座の怪人」の曲は、今の歌い方で何とか歌えているわけです。だからガラコンサートまでは、この状況をキープしておきたいのだそうです。ここで、うっかり発声の間違いを直してしまうと、もしかすると発声そのものが総崩れになって「オペラ座の怪人」が歌えなくなってしまうかもしれないのです。そこを先生は恐れているわけです。

 ってか、たぶん、今から発声方法を全面的に変えたら、確実に歌えなくなるでしょうね。それを考えたら、今は間違ったまま突っ走って、ガラコンサートが終わってから、発声をやり直した方がいい…という先生のアドヴァイスの意味もよく分かります。極めて現実的な対処方法ってわけです。

 で、そのアドヴァイス、私も理性では理解します。しかし…私は性分として、結構、潔癖症なのよね。間違っていると分かったら、即座に正したい人、なんです。間違ったままでいるなんて、気持ち悪くて気持ち悪くて、それこそ生きた心地しません。でも、それなのに、今は、その自分の間違いを直しちゃいけないなんて…『かゆいのにかいちゃダメ!』って言われるよりもツライです。

 それに痛みにも弱いので、間違っているから痛いのなら、一日も早く、この痛みから開放されたい…とも願っています。

 もっとも、今の私のダメな発声を直したくても、どう直していいのか、そのやり方も分からないので、私一人では手のつけようがない…わけで、先生のアドヴァイスどおりに行動するしかない、と言うのも事実です。

 ああ、それにしても、発声が全然ダメだったとは…。凹むなあ…。

 それと、発声すると頭痛がするなら、音声外来の病院に行って、検査してもらうのも一つの手だと言われました。…気が乗らないけれど、近所だし、大倉山のサイダ先生のところに行ってみるかな?

 結局、レッスンの後半では、そんな話をしていたので、今回のレッスンでは曲は少しも歌いませんでした。妻からは「レッスンに行ったのに歌えなかった…」と恨まれました。ああ、申し訳ない。次回のレッスンは、私、お休みしますので、一人でたっぷり歌ってきてください。

 そんなこんながあって、気分的に、大いに凹んだまま帰宅して首輪を外してみたら、近年まれに見るほど、首輪の水晶が真っ黒になっていました。一緒にいた妻が「うわ! 水晶、真っ黒じゃん」と言っちゃうほどの黒さでした。コンコーネがうまく歌えなくて、発声が根本的に間違っていると言われて、気持ちが凹んで、私自身が邪気まみれになっていた……んでしょうね。ああ、ヤバイヤバイ。

 やっぱり、歌、向いていないんだよなあ…、頭も痛いし、声楽辞めちゃおうかな(嘘)。

P.S. 私は鼻腔の感覚が鈍いので“鼻うがい”を薦められました。鼻うがいをすると、鼻の通りも良くなるし、鼻腔を自覚しやすくなるので、お薦めなんだそうです。鼻うがいが苦手なら、きちんと専用の器具を買ってやると、簡単に出来ますよって言われました。鼻うがいの器具を買ってくるかな…。

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コメント

  1. おぷー より:

    鼻洗浄ですか?
    蓋が壊れて使えなくなった急須でたまにやってます。
    塩水を作って、こんな感じ。
    http://youtu.be/h04J7ExpX_Y

    口は必ず半開きにして開けて下さい。
    鼻の中の汚い物が全部出ます。
    あまり水を吹きだそうと努力すると、反対に良くないそうなので、気を付けて下さい。

  2. すとん より:

    おぷーさん

     はい、「鼻うがい」こと「鼻洗浄」です。動画をありがとう、イメージできました。

     私は鼻洗浄なんて、したくないんです。だって「痛い」じゃん。プールとか海で鼻に水が入ると、塗炭の苦しみじゃないですか? 鼻に水が入るって、つらくて苦しい(当社比)のに、なぜやらにゃあいかんのか…とすでに涙目でいます。

     でも、動画を見ると、ニコニコしてやっているなあ…。とても信じられないです。

     理屈は分かるし、鼻洗浄ができれば、鼻炎の症状はおさまるだろうし…でも勇気が出ません。一応、妻が専用機材を購入してくれたら始める事になってますが、彼女が鼻うがいの器具を買ってくれる気配がないので、今のところ、鼻うがいをせずに済んでます。

  3. だりあ より:

    >間違っていると分かったら、即座に正したい人、なんです。間違ったままでいるなんて、気持ち悪くて気持ち悪くて、それこそ生きた心地しません。

    この気持ち、よーくわかります。ほんとうによくわかります自分もすとんさんと似た性格でしたから。

    でも、最近、かなり変わってきましたよトシとともに。
    この世の中に「間違っている」ことなんて、人の道にはずれた犯罪以外にはないと思うようになりました。特に芸術の世界では、間違っていると人や師匠がおっしゃっても、「結果がすべて」なところがあると思うんです。

    今回のすとんさんのぶつかっている壁の場合は高音域の発声での「頭痛」ですよね。
    それが起きなければいいんですよね。頭痛は脳の血管が収縮するとき血流が変化するから起きるらしいんですよ。
    収縮するってことは、たぶん、首、が問題じゃないかなあと思います。首のところにムリな力が入ると、頭にいく血流が縮みますからその上でガンガン高音の音波が脳みそを刺激すれば痛むのは当然じゃないかなあと思います。

    キング先生のお見立てとはちょっと違うかもしれないけど、私は高音域にさしかかったときに首と肩に無意識にチカラがはいって脱力不足がおきてるんじゃないかな・・・。あとやっぱり体重ですよ・・・。太りすぎはいいことないですよ。体内の血流も変化すると思うんですよ・・・・。
    というのが私の推理なんですけど、さあてあたってますでしょうか。見当違いだったらごめんなさいm(__)m

  4. すとん より:

    だりあさん

    >頭痛は脳の血管が収縮するとき血流が変化するから起きるらしいんですよ。

     へえ、なるほど。私は頭痛の原因なんて考えたこともないけれど、血流のイレギュラーな変化が頭痛を引き起こすってのは、納得できますね。

    >たぶん、首、が問題じゃないかなあと思います。

     首ねえ…つまりは“ノド”だ。やっぱり、ノドや首が絞まっているのかな? 確かに高音を出す時に、舌根をグイと思いっきり下げるので、首の付け根と言うか、アゴの付け根付近と言うか、あのあたりが固くなっているのは確認できます。それが原因か?

    >私は高音域にさしかかったときに首と肩に無意識にチカラがはいって脱力不足がおきてるんじゃないかな・・・。

     かもねえ…。そう言われると、否定しきれません。どっちにしても、筋肉痛のような痛みを感じるのですから、どこかが脱力不足なんだろうと思います。

    >太りすぎはいいことないですよ。体内の血流も変化すると思うんですよ・・・・。

     そうそう、太りすぎだと、血流が悪くなりますね。血流が悪くなるから、その結果、心臓が頑張って働きます。で、そこでやせると、心臓がデブ仕様で頑張っていますので、今度は高血圧で苦しむ…という事になります。実際、私、体重が増えれば血圧が下がり、体重が減れば血圧が上がるんですよ。

     とりあえず「痛いのは間違い」と言うのが分かっただけでも収穫です。発声は、ガラコンサートが終わったら、ゆっくり直す事にして、今は声をキープした状態で、なるべく頭痛がしないように歌っていきたいです。

  5. rarara より:

    突然のコメント失礼致します。

    積み重ねてきた体の使い方が間違っているかもしれないと先生からご指摘あった事の挫折感を経験した事があります。その後、先生めぐりして現在の先生についてますが、先生ご自身が出来ないという事を経験している方ほど、どうしたら解決できるかとご存知のようです。

    頭痛の事ですが、首に無理に力が入っていると頭が凝りますね。
    以前、YahooのQ&Aでこんなのを読んだことがあります。
    首のストレッチです。参考までに。
    もし、必要なかったら、申し訳ありません。

  6. rarara より:

    済みません。首のストレッチ、こちらです。

    http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q146777524

  7. すとん より:

    rararaさん、いらっしゃいませ。

     私の頭痛の件は、私自身もその原因は、はっきりとは分かってません、が、おそらくはキング先生がおっしゃるような『自分でわざわざ…』という部分があるような気がします(でも、細かいところは分かってません)。

    >頭痛の事ですが、首に無理に力が入っていると頭が凝りますね。

     かもしれません。でも、私の場合、首に力が入っているかな? 自覚がありません。アゴやコメカミやマユなどに力が入っているんじゃないかという自覚はありますが。自分に自覚がない所が原因って事は十分ありますから、教えていただいた、首のストレッチは、簡単なモノなので、ちょっとやってみますね。これが良くなれば、良いですから。ただ、私の頭痛は、頭皮部分ではなく、頭蓋の深部なので、ちょっと違うかもしれません。

     トライ・アンド・エラーでも、正しい道にたどり着ければ、それで良しと考えていますので、色々と(今の発声を壊さない程度に)やってみたいと思ってます。感謝。

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