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夫婦ゲンカの最中にレッスンに行きました

 私は“ことなかれ主義”だし、夫婦ともに“争いごとを好まない性質”なので、お互い不平不満があっても、ぐっと胸に飲み込むタイプだし…。なので、私たち夫婦は“夫婦ゲンカ”というものを、滅多にしないのですが、それでもまったくしないわけではありません。

 もう、原因をとやかく書けるほどの立派なモノはなく、実につまらない、後から考えれば、本当にどーでもいいような事で、ヒートアップをして、夫婦ゲンカをしてしまいました。

 で、そんな宴たけなわの真っ最中に、レッスンに行かなきゃいけない時間になったので、一時的に休戦して、声楽のレッスンに行ってきました。

 今回も二重唱の練習は無し。簡単に発声練習をしたら、すぐにマノン・レスコーの「美しい人の中で/Tra voi, bello, brune e bionde」を歌いました。

 いやあ、この曲、譜読みの段階から、心が折れます。だって、難しいんだもん。まずは、テンポがあまり一定ではないし(短い曲なのに)実にたくさんの音楽用語が並んでます。例えば、ポコ・メノ、リテネンド、ラッレンタメント、ア・テンポ、ピウ・モッソ・マ・ポコ、リタルダンド、コメ・プリマ、ストリング…こんなのが、楽譜のあっちこっちに散りばめられている。もちろん、要所要所では、メトロノーム記号でその部分のテンポが直接数値指定されていたりするし、クレシェンドやデクレシェンドはあっちこっちにあるし。ほんと、心が折れちゃいそうです。

 なので、前回のレッスンから約一週間、毎日毎日楽譜を見てました。なんとか、ドレミでたどたどしく歌えるようになったので、そのメロディに歌詞を載せて歌い始めたのが、やっと前日の話です。いやあ、大変でした。

 とにかく、歌ってみました。…当然、舌が回らない。時々、落ちます。ひどい状態だけれど、レッスン初回としては、こんなんでもアリでしょ。

 私が浮かない顔をしていたからでしょうか? 先生曰く「プッチーニという名前を意識しすぎ。この曲は“オペラアリア”として歌ってもらうために与えた課題ではありません。これは“発声のメソッド”として与えましたので、発声の事だけを考えて歌ってください。ちなみに、この曲には、すとんさんの苦手がたっぷりと詰まってますよ…」ですって。

 まあ、浮かない顔をしていたのは、曲のプレッシャーに負け気味というのもあるけれど、心理的に夫婦ゲンカの最中なので、気もそぞろで、音楽に集中できないって事実もありました。

 まずは、今回のレッスンで見て貰ったのは、転調する前の10小節分だけです。(ちなみに、この部分を、次回までにしっかり練習しておくように言われました)。

 真っ先に注意するべき事は、ポジションです。私はガッツポーズでムリヤリに声を出すやり方が何となく分かりかけてきましたが、このガッツポーズ発声は万能ではなく、あくまでそのポジションでの上限の声をヒャーーって出す時のテクニックであって、大切なのは、その声が出せるポジションで歌っている事なんです。

 まずはポジションありき…なんですよ。で、この「美しい人の中で」は最初から最後までポジションを高くしたまま歌う曲なんだそうです(確かに私はそういう曲が苦手です)。

 「この曲、誰かプロのの歌で聞きましたか?」と尋ねられたので、正直に、ドミンゴとモナコとパヴァロッティで聞いた事を言いました。

 私的にはベストはやっぱりドミンゴ。楽譜が見えるような歌い方をするので、とても勉強になります(先生曰く「どんな曲でも遅く歌うから、ドミンゴはダメ」…学ぶ側としてはゆっくり歌って貰った方が良いのですが…)。モナコは、声は好きなんだけれど、一本調子? 善くも悪しくもモナコ節でございます。パヴァロッティは…声がキンキンしてウルサイ(笑)。

 聞いてみたところ、三者三様で、ちょっとも参考になりませんでした。こんな短い曲だけれど、それぞれの個性がにじみ出た歌い方なので、私は私なりに歌うしかないというのが、結論かな?

 この曲はポジションを高くしたまま歌う曲なんだけれど、それがよく分かるのはパヴァロッティの歌い方。とにかく、声がキンキンで、いかにも「ポジション高めだよね~」って歌い方です。でも、聞きやすさで言えば、モナコが一番聞きやすくて好き。

 「モナコの地声はすごく太いのです。だから、実はかなり高いポジションで歌っていても、我々の耳には低いポジションで楽に歌っているように聞こえてしまうのです。だから、モナコのマネしちゃダメだよ。モナコのマネをして、声を壊した人はたくさんいるからね…。マネするなら、パヴァロッティの方がいいよ」と言われました。確かにパヴァロッティは聞きやすくないけれど、いかにも高いポジションで歌ってますって感じだものね。

 それにしても、未だに「高いポジション」って奴で悩んでます。何となく分かるんだけれど、すっきり分からないと言うのかな? 何かをツカミかけているような気はするんだけれど、それでいいのか、分かりません。ああ、難しい。

 ポジション以外の注意としては…歌詞をきちんとイタリア語として発音する事を言われました。

 プッチーニは歌詞に合わせてメロディを書いているので、歌詞を正しく発音していくと、自然と正しい発声になり、メロディも楽に歌えるけれど、歌詞を正しく発音できないと、発声もおかしくなり、かえって難しくなってしまうのだそうです。

 “Tra voi, belle,”の“belle”は“bel-”と“-le”で、ファ・ドとなっているけれど、ここは“ll”をしっかり発音する事で、ポジションを下げずに、楽に“-le(ド)”が歌えようになります。また、“dal labbrorosa”の“labbrorosa”は“lab-”と“-bro-”と“-ro-”と“-sa”で、ミ・ファ・ソ・レとなっていて、高音ソの“-ro-”が美しく歌えないのは、そのソでポジションがきちんと上がっていないから。それは“-ro-”の“r”の時にポジションを上げようとするから、間に合わず失敗するのであって、むしろ“labbro-”の“-bb-”を発音する時に“-bb-”と一緒にポジジョンを上げてしまうと良いし、“-bb-”ならポジションを上げやすいでしょ。…こんな感じで、子音を頼りにポジションの維持や切り換えがうまくできる様に作られているので、それを最大限に利用する事なんだそうです。。

 と言うわけで、この曲は“歌う”曲ではなく、むしろ“音を当てる”曲と考えましょうと言われました。朗々と歌い上げるのではなく、声をポンポンと軽く当てながら歌っていくタイプの曲として歌うのです。ああ、苦手だ~。

 最後に先生が模範歌唱をしてくれました。「次回までに今歌ったとおりにコピーしてきて!」 おぉ、耳コピの完コピですか。それって難しいよね。

 今回のレッスンは、これだけでした。ご苦労さまでした。

 で、家に戻ってから、ケンカの続きをしました。ひとしきりガンガン言い合って(言い合うだけです。ウチの夫婦ゲンカは基本的に“クチゲンカ”なんですよ。妻も私も絶対に手を出しません)、言いたい事を言って、せいせいしたら、後はなんとなく“仲直り”です。

 ほんと「夫婦ゲンカは犬喰わない」って真実だね。実際、しょーもないんです。でも、その、しょーもない事に、心が乱されたりするんです。だから人生っておもしろいというか、シンドイっていうか(笑)。

コメント

  1. グレッチェン より:

    言いたいことが言えるの、いいですね ウチではケンカはよくしますけど お互いに黙って姿の見えない所に行って気が済むまで隠れてますもの[E:coldsweats02] プッチーニってアリアは綺麗だけどそこに行き着くまでがむずかしそう メロディもあるようなないような(私メロディがはっきりしないのダメな人[E:down]) すとん様のアリアは指示が半端じゃないのですね。イタリア語はローマ字みたいに読めばいいって言うけど ディクション全然ちがいますよね。いつもそれで泣かされるの[E:weep]私はあのアリアはパヴァロッティのが一番良いと思いました。明るくて キーンとくるけど 劇場のような広い場所だと映えるような気がします。モナコって声確かに太いですね。オテロが好き。

  2. すとん より:

    グレッチェンさん

    >言いたいことが言えるの、いいですね

     いやいや、普段は言いたいことは、お互い、胸の中にしまって我慢してます。で、たまに爆発して、お互い、言い合うわけど、すべてを言ってるわけじゃないですよ。私は言いたいことがあっても、うまく言葉にできなくてイライラしちゃう方だし、妻はかなり言っているように見えても、やはり女性だから、どこかで身を引いている部分があるような気がします。

     本当は、すべてをきちんと言葉にして俎上に上げる事が大切なのは分かってますが、なかなかそうも行かなくて…。それに、言葉にできないものとか、言葉では伝わらないものとかもあるわけで、だから夫婦ゲンカは犬も喰わないんだと思います。

    >イタリア語はローマ字みたいに読めばいいって言うけど ディクション全然ちがいますよね。

     そうそう、ドイツ語ほどではないにせよ、やはり子音の扱いは日本語とは違うし、言葉のリズムだって全然違う。確かにローマ字っぽい部分もあって親しみやすいけれど、それで甘く見たら、痛い目に合いますよね。

    >あのアリアはパヴァロッティのが一番良いと思いました。

     私は、先日、DVDで見た、ホセ・クーラの歌がいいなあって思いました。テンポはドミンゴよりもずっと遅い(笑)のですが、よく歌い込まれているのが好感モテました。それにしても、ホセ・クーラは高音が苦手なのかな? どの曲でも高い声は、ヨッコラショって感じで、声を押して歌ってました。あれはいただけないなあ…。

  3. プリロゼ より:

    うーん、ポジション・・・。
    今日のレッスンで少し習いましたけれど、やっぱりわからん[E:crying]
    コンコーネ1番だから、簡単なはずなんだけれど、レッスン3回目ぢゃねぇ[E:coldsweats01]
    でも、すとんさまの記事でお勉強してレッスンに行っておりますっ!!
    夫婦喧嘩したまんまレッスンなんて、ちょとツラいわねぇ。
    ワタクシだったら・・・とりあえず、いじけたフリするかな。
    で、言い争いは回避して、後日機嫌のいいところを見計らってぶちかます[E:bomb]
    そうそう、アリアね、ワタクシもグレッチェンさまと一緒でパヴァロッティのが好きかも[E:heart01]

  4. すとん より:

    プリロゼさん

     ポジションって…分からないよねえ。もしもそちらで何か分かったら、お知らせください(って、業務連絡かい!)。

     コンコーネ1番が簡単? 私、結構、苦戦した(コンコーネは全部苦戦しているけれど:笑)。

     ところで、プリロゼさんもパヴァロッティの方がいいの? 女性って、男性の太くて低い声にひかれるものと思っていたけれど…。ふーん、じゃあ、私にもチャンスはあるのかな(って、なんの?:笑)。

    >で、言い争いは回避して、後日機嫌のいいところを見計らってぶちかます

     一番、イヤなパターンだな…それをやられると、本当にオトコは凹みます(涙)。

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