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メトのライブビューイングで「ランメルモールのルチア」を見てきました

 ルチアをやった、ナタリー・デセイって、何者? あの人、スゴすぎる。

 もちろん、メトでプリマをやるくらいだから、声がキレイとか、歌が上手いのは、当たり前。有名な「狂乱の場」が鳥肌モノだったからと言って、そんな事では私は驚かない。じゃあ、何がスゴイのかと言うと、演技。あの演技力は、オペラ歌手のそれじゃないよ。次元が違う。あれは、普通に、舞台女優の演技レベルでしょ。

 だいたい、オペラ歌手というものは、声のためにすべてを犠牲にし、声が良ければすべてが許される存在です。最近は、多少、世間の目が厳しくなったとは言え、やっぱり基本的にはそんな感じ。だから、オペラ歌手はデブでもOK、ブスでもOK、大根役者でもOK。なのに、デセイはデブじゃないし、ブスでもないし、大根役者どころか、他の出演者を圧倒するほどの演技力。うむ、まさにディーヴァって感じだね。

 いるんだね~、こういう歌手が。

 例えば、最後のエドガルドの自殺シーンなんか、分かりやすい例でしょう。このシーンのメトの演出だと、幽霊というか、亡霊というか、死霊と言うか、とにかく死んでしまったルチアが霊的な存在になって登場して、エドガルドを死の世界に誘惑して、その自殺を介助して、死んでしまったエドガルドに身を寄せて恍惚となる…という演技があるのだけれど、その演技を黙役としてやれちゃうデセイ。歌手なのに、歌わないでも説得力のある演技ができるなんて、ちょっと半端ない演技力です。

 このデセイを見るだけで、十分満足です。いやあ、スゴい「ランメルモールのルチア」でした。

 それにしても、デセイはよく走ります。舞台の上を、スカートをたくし上げて走る走る。それも結構速い。私は“走るオペラ歌手”と言うのは、始めて見たかもしれません(笑)。

 あえて、デセイの残念な部分を言うと…画面がアップになると、年齢を感じさせるって事かな? ベテランなんだよね、はっきり言っちゃうとオバサン。でも、オペラって舞台芸術だから、本来は顔がアップで映される事ってないわけで、そういう点では、ライブビューイングって、オペラ歌手にとっては、ちょっと酷な事なのかもしれません。それと年齢的に、全盛期と言うものを、そろそろ越えている事。私はよく知らないけれど、おそらく10年前の方が、もっと色々とすごかったでしょうね。

 今回の上映は、川崎の映画館(109シネマズ川崎)が計画停電のために「ランメルモールのルチア」を決まった日程で上映できなかったための、振り替え上映でした。私はこの映画館に行くのは始めてでしたが、駅からつながっていて便利な立地条件にある映画館ですね。本来の日程の時に横浜へ「ルチア」は見に行くつもりだったのですが、同日に地元の映画館で「カルメン」の3Dオペラ上映があったので、そっちを優先してしまったため「ルチア」を見逃していたのですが、振り替え上映で見られて良かったです。だって、スゴかったんだもん。

 とにかくデセイのスゴさはいくら語っても言葉では語り尽くせないので、もう書きません。このデセイ、来年は、メトのクロージングアクトである「椿姫」を主役をやるんだそうです。ううむ、それ、絶対に見たい。

 デセイのヴィオレッタなら、最後は本当に死にそうになるんだろうな…。椿姫って、主役のヴィオレッタが、最後は不治の病で衰弱死するんだけれど、大抵のオペラ上演では、どうしてもヴィオレッタが衰弱して死ぬようには見えないのですよ。皆、元気ハツラツで血色のいいデブなんだもん。それだけ太って健康的なら、死ぬはずないだろ?って感じなんだもん。だけど、デセイがヴィオレッタを演じたら、間違いなく、ヴィオレッタは死にそうに見えるだろうなあ…。ああ、楽しみだ。

 他の出演者にも触れておきます。あまりにデセイがスゴかったので、後回しになってしまいましたが、エドガルドを演じたジョセフ・カレーヤは良かったですよ。デブだし、大根役者だし、演技なんてロクにできてないけれど、その声は輝かしくて、オペラ歌手としては、とっても良いです。相手がデセイでなければ、私、カレーヤをベタボメしてますよ。でも、今回はダメ。デセイ、すごすぎます。

 エンリーコを演じたルードヴィック・テジエも良いバリトンだったし、ライモンドを演じたクワンチュル・ユン(アジア系だけど、中国人? 韓国人?)も良いバスだったし、アルトォーロを演じたマシュー・プレンクというテノールは、スマートでちょっと美形で良かったけれど、みんなみんな、デセイの圧倒的な存在に霞んでました。

 改めて「ランメルモールのルチア」って、ソプラノのためのプリマドンナ・オペラだなあって思うし、そのプリマがピカイチなら「もう後はなんだっていい」と思えるタイプのオペラだって思い知りました。そして、このデセイの「ルチア」は、素晴らしい、実に素晴らしい上演でした。

 ほんと、手放しで、私はデセイを認めるよ。

コメント

  1. グレッチェン より:

    2、3日前から なんとなく 喉に白い膜が掛かっているような気がして 体も熱かったり寒かったりするような気がして あ ここにきて風邪なんか引き込んじゃ堪らないから、たった4分でも 狂乱やるんだから って ビタミンс飲んだり マスク掛けたりしたら多少は良くなったみたいな… それにしても色んなルチアさんがいるなー サザーランド 背が高くて ナマ舞台見た人は 壁みたいだったって言ってたけど それじゃアルトゥーロは何もしなくても吹っ飛んじゃうだろうな、でも 真面目でひた向きな感じが大好きだな ディヴィーアも綺麗に歌うけど 理性的だな 追い詰められたら逆に相手を剣じゃなくて 言葉でやっつけちゃうかも。ボンファデッリは最初からちょっと イッちゃってる感じが強いな でも綺麗な人だ マシスは従姉とか 憧れのお姉さまみたい レニャバ好きだな グルヴェローバは可愛らしすぎて アタシがアルトゥーロだったら エドゥガルドと結ばれるよう手を貸すかも知れないな でも一番凄いなと思うのはデセイね[E:kissmark] ルチアはごくフツーの女の子がだんだん追い詰められていって 気が狂ってしまう悲劇だと思うのだけど、その辺の凄さが なんというか 衝撃。狂乱の場で 悪役の兄の脚にかじりつくところなんか迫真すぎて相手役怖かったろうな[E:bomb] でもしっかり相手を責めて死んでゆくところさすが西欧[E:good] で 本来ならこんな大曲出来っこないのに ちゃっかりやらせて貰えるなんて アタシはラッキー[E:scissors]ビバ アマチュア! さ 今日はいちんち マスクと生姜紅茶[E:cafe]

  2. すとん より:

    グレッチェンさん

     あれ、お風邪ですか? それはお大事に。

     喉に白い膜って…それはきっと、ノド(おそらく声帯)がちょっと腫れているのかもしれませんね。どうしても歌の練習をしてしまうと、ノドに負担がかかってしまうのはやむをえません。どうしたって、多少なりとも腫れてしまいます。そこは、訓練と休養のバランスで、少しずつノドを強くしていくしかないわけで、そこは焦っても仕方ないですね。とにかく今は、ノドの腫れを取るのが最重要事項でしょう。

     ノドの腫れの取り方は、ひとそれぞれですが、私の場合は、基本はビタミンB類の大量摂取から始めます。ビタミンBはサプリで毎日摂取してますが、体調が悪くなったら、普段の1.5倍から2倍近い量に増やします。なに、ビタミンBは水溶性ビタミンなので、過剰摂取しても排泄されるだけなので心配ありません。それよりも、自分のカラダに常にビタミンBが充実しているように、大目にこまめに摂取します。食事も普段は野菜中心ですが、風邪気味の時は、肉中心に切り換えます。ビタミン系の薬用ドリンクとかゼリーも取りますよ。それと何と言っても大切なのは、睡眠。とにかく寝ます。熱が出そうだなって感じたら、むしろ積極的に熱を上げます。熱を上げて汗を多量にかきます。自分的にはデトックスのつもりで積極的に汗をかきます。これでなんとかなります。

     ノドが痛い時は、カロリーの少ないタイプのノド飴を舐めます。痛くてたまらない時は、薬効を求めて薬用ノド飴を、唾液の分泌を求める時はコンビニで買える薬っぽいノド飴にしてます。ノドが熱を持っている時は、氷を舐めたり、アイスクリームを食べたりするかな?

     ま、私の場合はそんな感じ。

     あと、練習は二日前までで収めておく方がいいです。私は前回の発表会の時、前日に声の調子がよかったので、たっぷり練習してしまい、当日、声がなくなっていました(馬鹿です)。そういううっかりを避けるために、前日は練習をせず、軽い発声練習程度にしておくといいですよ。

     あ、デセイのルチアは確かに鬼気せまる感じですごいですが、この人は“歌う女優”さん(もともと演劇畑からオペラに転向してきた人)ですから、なにをやらせても、そりゃあスゴいです…が、発声はマネしない方がいいです。デセイの発声にはやや難がありますよ。

  3. グレッチェン より:

    すとん様のお薦めもあって 今Βのサプリ買ってきましたよ[E:bag]サプリって普段は飲みませんけど 必要なときは必要(当たり前か)ですからね 肉に関しては ナンチャッテベジータなので 人と会食の時以外はあまり食べないのですよー チキンでも良いのかな[E:chick] ところで 鳥類って 恐竜の末裔というか つながりがあるんでしょ?じゃ恐竜の肉もチキンみたいだったのかな、ティラノザウルスの唐揚げなんていって 捕るのに命懸け[E:run] 今日は庭木の手入れ半分にして バカもこれくらいにして薬飲んで寝てましょ[E:sleepy] そうそうデセイ女史の真似 私しないから大丈夫ですよ。てか誰かの真似出来るほど実力ないんです[E:despair]では おやすみなさいませm(_ _)m

  4. すとん より:

    グレッチェンさん、おやすみなさい(笑)

     肉は基本的になんでも良いと思いますが、どうせ食べるなら、ビタミンBが少しでも多く入っているものがよいので、私は豚肉中心で食べる事が多いかな? 私もナンチャッテベジータで、普段は肉類を食べませんが、たとえ健康続きな日々であっても、時折は肉類を食べるように心掛けています。まあ、頻度的には週に一度は肉をクチにしようって感じかな? と言うのも、肉食じゃないと取れない必須アミノ酸ってのがあるので、ベジータな人って、どうしてもそのあたりが不足してしまうので、気をつけてます。

    >ところで 鳥類って 恐竜の末裔というか つながりがあるんでしょ?

     以前は恐竜は爬虫類だと言われていましたが、最近では鳥類じゃないかって説ですよね。爬虫類も美味しいのでしょうが、爬虫類を食べる人類よりも鳥類を食べる人類の方が圧倒的に多いので、おそらく爬虫類よりも鳥類の方が美味しいと思います。で、恐竜が爬虫類ならば…やっぱり美味しいんでしょうね。ティラノザウルスの唐揚げって、たぶん、すごぶる美味だったんじゃないでしょうか? もっとも、人間とティラノザウルスが共存していた時代は無い、というのが現在までの定説ですので、ティラノザウルスの唐揚げを食した人類はいそうもないですが(笑)。

  5. ぽよりん より:

    こんばんは。[E:night]
    突然ですが、初めまして。[E:happy01]

    ナタリー・デセイさんの記事、楽しく読ませてもらいました。
    私もナタリー・デセイさん、すごいって思います。
    歌うだけじゃなくて、動きも素晴らしいですよね。
    魔笛の「夜の女王のアリア」も圧巻と思います。[E:up]

    11月に来日するとのことで、私のココログで記事[E:memo]
    にしてみましたので、もしよかったらのぞいてください。
    http://poyorin.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-87dd.html

  6. すとん より:

    ぽよりんさん

     ああ、デセイの日本公演ですか! 情報、サンクスです。さっそく、ブログを拝見させていただきました。

     うわー、デセイは私も好きですが、妻が好きなんですよね。でも、歌モノは、かぶりつきで見たい私たち夫婦なんですよ。理想は指揮者のすぐ後ろ(爆)。もう、そんな席は残っていないだろうしなあ…。だいたい、そんな席、高いし(爆)。

     11月の来日では、ルチアを歌うんでしょ? うわー、デセイのルチアか! やっぱり見たいなあ…。ウズウズ。

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