「アルミーダ」とは、ロッシーニが作曲した、めったに上演されないオペラの一つです。このオペラが、メトの2010年シーズンに上演され、今回、アンコール上映で再び見られるようになったので、見てきました。
スタッフとキャストを書いておきます。
指揮:リッカルド・フリッツァ
演出:メアリー・ジマーマンアルミーダ:ルネ・フレミング(ソプラノ)
リナルド:ローレンス・ブラウンリー(テノール)
ゴッフレード:ジョン・オズボーン(テノール)
ジェルナンド:バリー・バンクス(テノール)
ウバルド:コービー・ヴァン・レンズブルグ(テノール)
このオペラがめったに上演されない理由は、キャスティングの難しさにあります。
まず、主役を歌うソプラノが歌唱的に難しい上に、ほぼ出ずっぱりなので、タフでテクニカルな歌手を確保するのが難しいこと。次にロッシーニが歌える主役級のテノール(高音を楽々歌えるテノール)を5人確保すること。主役は魔法使いなので、演出的に魔法が表現できること。ね、難しいでしょ?
今回のメトでの上演でも、主役ソプラノと演出の問題はクリアしても、主役テノールを5人確保するのは大変だったと思います。今回だって、主役のリナルドを歌っていたのは、黒人のブラウンリーでした。このオペラ、実は魔法こそ出てくるけれど、基本的には史劇で十字軍遠征の話なんだよね。「リナルドはイタリア人」という設定があり、これが第一幕の騒動の原因なので、本来的には黒人歌手がリナルドを歌うことはありえないのですが、今回のメトは、これをファンタジー劇として読み替え演出をしていたので、まあリナルドが黒人でもアリと言えばあり得るよね…というふうに逃げていました。
まあそれくらいの事をしないと、トップクラスのテノールを5人も揃えるのは無理だよね。メトではなく、私が持っている別の歌劇場の公演では、十字軍遠征の話ではなく、ラグビーの試合というふうに読み替えた演出をしていましたが、これくらいの事をしないと上演できないオペラ…なんですね。
というわけで、このオペラ、実になかなか面白いオペラです。とにかく、歌手たちが歌いまくります。ソプラノがこれでもかっと言うくらいに歌うのは当然として、テノールたちが、ソロに重唱に大活躍です。第三幕には、テノールの3重唱なんて、他にはない歌が聞けます。見ものだよ。
テノールが5人と書きましたが、役的には6人必要です。つまり、一人のテノールが2つの役を掛け持っています。なので、本当なら、6人の主役級テノールが必要なのですが、さすがのメトでも、そこまでは用意できなかったわけです。
ファンタジー劇に読み替えている事もあり、この演出には、愛と復讐という、黙役が二人出演しますが、この二人が出てくる事で、ストーリーの見晴らしがすごく分かりやすくなっていて、この演出は実に良いです。
それと、今回の上演はノーカット上演なので、第二幕の長大なバレエシーンをきちんと演じてくれるのもうれしいです。オペラを見ながら、しっかりとバレエを堪能できるのは、一粒で二度の美味しさです。
とにかく、このメトの「アルミーダ」はオススメです。めったに見られないものが見られるという希少性もありますが、単純にエンタメとして面白いオペラなのです。ディスクがあったら、ぜひ欲しい公演なのですが…そういうのに限って、商品化されていないのですよ、残念。
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コメント
>>>同じ音楽なのに、こんなにも眠くなるんだな
オーケストラの生演奏を聴いて、
眠くなった、実際、寝ちゃった、ことって、
私も何度か、ありますが、
ウィーンで聴いたウィーンフィル、
ボストンで聴いたボストン響(それも小澤征爾指揮)、
ニューヨークで聴いたメットオペラ(カルメン)、
1ミリも眠くなりまへんでした~、
だって、あまりに美しかったから。
自慢交じりの、この書き込み、
お許しくだちゃい。
ヽ( ̄▽ ̄)ノ ヽ( ̄▽ ̄)ノ ヽ( ̄▽ ̄)ノ
(-A-) (-A-) (-A-) ← ざっくぅ
おしまい
オペラ座の怪人の怪人さん
音楽を聴いて眠くなる…というのは、それは演奏が心地よいからです。少なくとも、下手くそ過ぎて耳障りな音楽ではなかった…という事ですね。
もっとも、心奪われるような演奏、例えば怪人さんが聴かれた演奏などは、眠くなるはずもないでしょうが(笑)。私もオペラを見ていて眠くなる…という経験は、たまにしか無いのですが(笑)。まあ、眠くなる演奏というのは、可もなく不可もなくって演奏なのかもしれません。