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メトのライブビューイングで「皇帝ティートの慈悲」を見てきた

 メトのアンコール上映を見てきました。実はこれ「アルミーダ」を見に行った翌日に行ってきました。アルミーダが夜の回で、22時頃に終演し、一度帰宅して、翌日の15時の「皇帝ティート」を見てきたわけですが、正直、2日連続だったら、東京に泊まればよかったと思いました。何気にシンドかったです。

 それはさておき、今回のスタッフ&キャストを書いておきます。

 指揮:ハリー・ビケット
 演出:ジャン=ピエール・ポネル

 ティート:ジュゼッペ・フィリアノーティ(テノール)
 セスト:エリーナ・ガランチャ(メゾソプラノ)
 アントニオ:ケイト・リンジー(メゾソプラノ)
 ヴィッテリア:バルバラ・フリットリ(ソプラノ)
 セルヴィリア:ルーシー・クロウ(ソプラノ)
 プブリオ:オレン・グラドゥス(バス)

 「皇帝ティートの慈悲」はモーツァルトの最晩年のオペラです。「魔笛」と同時に作曲されていたオペラ・セリアで、作品番号的には「魔笛」よりも後で、モーツァルト最後のオペラと言っても間違いではない作品です。

 モーツァルトの作品の割には、それほど有名ではないのは、オペラ・セリア(悲劇)だからでしょう。モーツァルトのオペラは、ブッファ(喜劇)の方が有名で、セリアはそれほど有名な作品はありません。おそらく、モーツァルトは、あまりオペラ・セリアが得意な作品ジャンルではなかったのかもしれません。

 あと、オペラ・セリアは、主人公をカストラートがやるわけで、この「ティート」にも、2人のカストラート役があります。今回はそれをメゾソプラノがやっていますが、カストラートの役があるというのも、上演頻度が下がってしまう理由の一つでしょう。いくら音域的な問題があるとは言え、女性歌手が男を演じるのは、色々と無理があるからです。

 今回は、2012年シーズンの上演(もう10年前になるわけです)で、ズボン役の2人は、あまり女性らしさを感じられず、まるで宝塚の男役のような、少女漫画に出てくる王子様のような雰囲気の2人だったので、割と見られました。たまに、割りと多い、小太りなオバサン歌手がズボン役をやっていると、ビジュアル的に厳しいモノがあるんだよね。そういう意味では、ガランチャもリンジーも、良いズボン役です。特にリンジーは、動きが男性っぽくって、あまりズボンを意識させない、名歌手だと思います。

 この上演の演出は、ポネルの演出で、今の読み替えが盛んになる前の、割とストレートな演出を好んでいた時代の、往年のメトのスタイルのもので、分かりやすい演出でした。でも、こういう演出は今ではお金がかかるから、あまりできないんですよね…。

 ちなみに、このオペラ。アリアはすべてモーツァルトの作曲ですが、レチタティーヴォ部分は弟子のジュースマイヤーの作曲だそうです。それもあって、モーツァルト作品の中では、評価があまり高くないのかもしれません。ま、それを言ったら「レクイエム」だって前半こそはモーツァルト作曲だけれど、後半部はジュースマイヤーなわけで、それで評価が下がるというのは納得できません。

 とは言え「ティート」は、ストーリーは正直、そんなに面白い作品ではありません。いや、ティートの善人ぶりは無理がありすぎるくらいです。音楽の方も、正直、キラーソングがあるわけでもありません。同時期の「魔笛」や「ドン・ジョヴァンニ」と比べると、見劣りします。このオペラは、カストラートとテノールに力を注がれて作曲されていますが、モーツァルトって、たぶん、カストラートやテノール用のメロディを書くのがあまり得意ではないんだろうね、他のオペラでも、モーツァルトはカストラートやテノール向けの名曲、つまりヒロイックな曲は書いてませんから…。モーツァルトは、ソプラノ向けの技巧的なアリアとか、バリトン向けの渋いメロディが得意なんだろね。こればかりは、得意不得意があるので仕方ないですが。

 そんなわけで「ティート」は、モーツァルトの有名ではないオペラなわけですが、この上演では、スタッフ&キャストが頑張っていて、それなりに見せてくれます。

 そもそも「ティート」は、有名なモーツァルトオペラは一通りやっつけました…という、いわば通人向けのオペラだし、それなのに平明な演出で、万人向けを意識した上演だと思いました。

 まあ、興味がある人が見ればいいレベルの上演だと思いました。

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