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高い声を出すヒント?

 前回のレッスンの後、色々と考えてみました。

 “私はなぜ人前だと、それまで以上に良いパフォーマンスができるのか?”
 “二重唱に出てくるAsは楽に歌えるのに、なぜアリアではGで苦労しているのか?”
 “ファルセットでは出せる音が実声で出せない、その理由は?”

 まずは最初の疑問。“私はなぜ人前だと、それまで以上に良いパフォーマンスができるのか?” つまり、他人が見ている時と見ていない時とで、何が変わるのか?

 おそらく“集中力”が違っています。他人が見ていると、失敗できない(失敗するとみっともない)と思うせいか、いやが上にも、歌に集中します、と言うか、とても気を抜いて楽には歌えなくなります。精一杯の心を歌に込めます。その結果、集中力が高まり、気を張った状態で終始歌い続けるわけです。それが良いパフォーマンスに繋がるのだと思います。

 集中する事で、アドレナリンも噴出して、日頃は動かない筋肉も動き、日頃は鈍い感覚も研ぎ澄まされ、それらが相互に作用して、その時点での最高のパフォーマンスにつながるのです。

 ですから、人前で歌い、良い結果を出すことは、それまでとは“一皮むけた”状態になれるわけです。そして、その成功体験が、次の段階に私を進ませてくれるのだと思います。

 そうやって、二重唱では、それまで出せなかったAsが軽々と出せるようになったのです。

 さて“二重唱に出てくるAsは楽に歌えるのに、なぜアリアではGで苦労しているのか?” 思い出してみれば、二重唱のAsだって、当初はすごく苦労してました。しかし、人前で「エイヤー!」と歌った事で、Asが楽に歌えるようになりました。あの時に、私は“何か”をつかんだのです。でも、そこでつかんだものは、二重唱では使えるけれど、アリアでは使えていないのです。だから、アリアではAsはおろか、Gあたりで苦労しているのです。

 私がつかんだ“何か”とは何か? それを見つけるために、歌っている時の自分のカラダの使い方の違いを探ってみました。

 二重唱は、先生に「重い!」と言われるほどの声で歌ってます。しかし、この重い声で歌うと、楽に高音が出るのです。曲に合わせて軽めの声で歌うと、Gはおろか、Fisあたりで天井にぶつかるような気がします。なので、まずは音程重視(ってか高音重視)で声質を捨てているわけです(すいません)。

 もちろん、これが良いことだとは思っていません。ただ、現在の私のテクニックでは、軽い声で歌うと、高音がコケしまうので、やむをえない処置だと思ってます。ま、軽い声で高い声を出すテクニックが身についていないと言うのは…たぶん、致命的な欠点なんだろうなあ…。特に私は、本来的には軽い声のはずなので、その本来の軽い声で高いところ歌えないというのは、色々と問題アリアリです。

 それはともかく、アリアは、二重唱とはちがっで、実は曲想の事も考えて、だいぶ軽く、そして優しく、切なく歌おうとしています。二重唱では軽さを捨てている(涙)のに、アリアでは軽さを捨てきれずにいるわけで、私自身の中でダブスタ状態なんですが、このあたりがスッキリしていない事が、案外、高音に苦労している理由かもしれないって思うようになりました。つまり、アリアも、二重唱同様に、ちょっと重い声で歌ってしまえば、案外、高音の問題もクリアできるのかもしれません。

 重い声と軽い声の出し方の違い。現在の私の感覚では、鼻腔をA点とし、肩甲骨の間の背骨をB点とした時の、直線AB上の、A点に近いところに声の中心があると“軽い声”になり、B点に近いと“重い声”になると感じています。

 つまり、声が「前に・上に」あると声が軽くなり、「後ろに・下に」あると重くなるというわけです。

 ま、この段階で、テクニックの無さがバレバレですね(汗)。本来、声の中心は“盆の窪”にないといけない(つまり「後ろに・上に」です)のですが…、そこにうまく自分の声を持っていけないわけですな。

 とにかく、現状では、音色優先ならば声はA点寄りに、高音重視なら声はB点寄りに、って(やむをえず)思ってます。

 さて、声をB点寄りにする方法ですが、私の場合、それは[イメージの中の]横隔膜を下に強く引っ張る事で達成します。つまり、横隔膜を下に引っ張れば引っ張るほど、声は重くなるけれど、高い声を出しやすくなるって寸法です。

 このやり方では、声の軽さと高さの両立はできません。それを両立させるためのテクニックが修得できていない現在、声が曲と多少合わなくても、重い声で歌って高音重視で行った方が良いのかな…?

 そして“ファルセットでは出せる音が実声で出せない、その理由は…実はよく分かりません。しかし、ファルセットの時って、声がノドから息もれして多量に消費しているような感じがします。そこで、その息もれを止め、少量の息で声を出すようにすると、不思議と声はファルセットから実声に自動的に変わります。

 だから、息もれを防げば、ファルセットで出せた音が実音で出せるわけですが、そのためには、まずは息もれを止める事が必要になります。そのためには…ノドを絞めるのが、一番手っとり早い方法なんですが、それは言語道断だよねえ…。では、ノドを絞めずに息もれを防ぐ方法は…ノドを下に引っ張ります。ただし、ノド自体でノドを下に引っ張ると、ノドが絞まってしまうので、要注意。

 私のやり方(正しいとは限りません)としては、横隔膜をしっかり下に引っ張って、横隔膜経由でノドを下に引っ張ります。これで、息もれが止まって、ファルセットが実声になります。

 なあんだ、結局、横隔膜をしっかり下に引っ張って、高音を出そうとしているんじゃん、私。

 このやり方の問題は、横隔膜をしっかり下に引っ張ると声が重くなってしまう事。さらに、引っ張りすぎると、声が“重い”を越えて、山羊の鳴き声のようなメエメエ声になってしまう事。横隔膜を下に引っ張るというのは、地味だければ案外重労働なので、ライフエナジーを一挙に多量に消費してしまう事。これらが問題です。

 さらに、横隔膜の引っ張りが甘いと、息が漏れて声が裏返ってしまうか、ノドそのものが閉まって声が出せなくなります。ある意味、バクチなやり方ですね。

 なので、このやり方が正しいという事でなく、過渡期的な対処方法って奴になるのだろうと思います。ま、正解へのヒントって感じでしょうか? 体力にせよ、テクニックにせよ、短時間で身につくわけではありませんから、地道に努力を重ねていくだけです。

 それに『横隔膜を下に引っ張ればいい』と思っていても、アリアの終盤に来ると、その横隔膜を下に引っ張れるほどの体力が残っていなかったりするんです。それプラス、音取りの不確かさ? 特にAは曲の最後にしか出ませんし、普段は出さない音ですから、今一つ音に対するイメージが明確ではありません。そんなこんなで、それはそれで、大問題なわけで、ああ、やっぱり前途多難だな。

コメント

  1. GON より:

    はじめてコメントさせていただきます。
    いつも楽しみに拝見しています。といっても、声楽とか発声のカテゴリーですが・・・(^^ゞ
    合唱を始めて4年になります。それこそ、一生懸命先生はご指導いただけるのですが、
    ほんと実践はむずかしいです。横隔膜もなかなか言うことをきいてくれません。すとんさんのレベルには、とてもとてもですが、これからも参考にさせていただきます。
    よろしくお願いします。

  2. すとん より:

    >GONさん、いらっしゃいませ。

     合唱ですか…私もそのうち再開したいなあ。合唱には合唱にしかない楽しみがありますからね。発声がある程度完成したら、また合唱を始めてもいいかなって思ってます。

     さて、私も経験がありますが、合唱の指導って、どうしても指導者一人に対して、学ぶ団員が複数になるので、個人レッスンと違って、微に入り細に入りってわけにはいかないと思います。カラダの使い方は、実に一人一人違いますし、どうしても言葉では伝えられない部分があると思います。その分、学ぶ側に想像力が必要とされます。

     大切な事は、自分のカラダをどうコントロールしていくかという冷静なマインドと、結果オーライなノリノリな情熱ではないかと思います。想像力豊かな人なら、セルフコントロールができると思いますよ。私のようなボンクラは、先生のご指導って奴が必要になりますが(笑い)。実際、私の場合、合唱をやっている時は、本当に発声が上達しませんでした。声楽に移り、特に個人レッスンになってから、ようやく亀の歩みを始めたところです。ま、すべての人が私のようなボンクラってわけではないので、想像力を働かせ、焦らずに頑張ってみてください。

  3. Yテノール より:

    凄いですね。まるで王貞治選手のバッティングホームのように、多数のチェックポイントによって実に緻密に管理されているんですね。

    私の場合、実にずぼらでアバウトな性格なので、何でも単純化しないと理解できないし実行もできないということで、チェックポイントは今のところ以下の3つです。

    1.呼吸は、背筋の下部、腸骨のすぐ上の辺りでしょうか、そこを常に意識し緊張させています。おしっこを我慢する感じでしょうか。

    2.発声ですが、私の声帯は、頭上の後ろの方に浮かんでいます〜笑

    3、共鳴機関としては、頭上の声帯から下、口の奥そして鼻腔までを共鳴胴という風にイメージしております。

    私も目下、最高音Hで苦戦しておりますが、発声の位置をB(B♭)の位置よりさらに上の部屋か棚にヒョイと乗せるイメージで頑張っております〜汗

    剣玉もそうだけど、そう簡単に乗ってくれないんですよね。練習しかないですね〜♪

    ピアノ合わせまで秒読み う〜ん

  4. すとん より:

    >Yテノールさん

     チェックポイントは多々あっても、それを厳密に全部チェックできるかとなると、話は(悲しいけれど)別ですね(汗)。ほら、先日もキング先生が「すとんさんは、色々と考えて分析するけれど、それとやる事は別だから」って、おっしゃっていた、その通りです。もっとも、私的には「やる事」ではなく「やれる事」が別なんですけれど。

     “…分かっちゃいるけれど、出来ないんだよー!”と、叫ばせてください。

     さて、

    >2.発声ですが、私の声帯は、頭上の後ろの方に浮かんでいます〜笑

     これ、いいじゃないですか? 理想の姿ですよ。ちなみに私の声帯は…その位置は解剖学上の位置と一致してます(ダメじゃん)。

    >3、共鳴機関としては、頭上の声帯から下、口の奥そして鼻腔までを共鳴胴という風にイメージしております。

     このあたりが私の弱点です。自分の中での共鳴器官とか共鳴腔のイメージがまだまだ曖昧なんです。だから始終先生に「声、後ろ!」って注意されるんだと思います。

    >発声の位置をB(B♭)の位置よりさらに上の部屋か棚にヒョイと乗せるイメージで頑張っております〜汗

     そうなんですよね。力業で音程を届かせようとすると、美しくないし、だいだいそれが撃沈の原因だったりするんです。本来は、脱力気味に軽~い声で楽々と“声の棚”にヒョイと載せないといけないだと分かってますが、それができれば苦労はないんですよ。

     分かっていても出来なければ、それは分かっていない証拠…ですね。ううむ~。ピアノ合わせまでには、撃沈せずに済むようになりたいのですが、それは今のところ、私の場合、無理っぽいです。でも、撃沈をうまく回避できるようになっていないと、その先の表現の領域に踏み込めないので、撃沈回避は目下の最重要事項です。

     テノールに撃沈は付きもの…とは言え、撃沈したくないですねえ。

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