先日、地元で行われている「アートフェス」の一環として行われた「シャンソン&カンツォーネの集い」を見てきました。これは、地元でシャンソンやカンツォーネの愛好者たちが集まって、年に一回行う、発表会のようなもの…です。ですから、出演者たちは、当然ですが、素人の愛好者たちで、年齢層は一番若い方で五十代だそうですが、大半は私の親世代の方々でした。また「シャンソン&カンツォーネ」と言いながらも、歌われる歌の大半はオールド・ポップスでした。まあ“古い洋楽を歌って楽しむ人々の発表会”だったのです。
以前からこの会の存在は知っていたので、一度見たかったのですが、なかなかスケジュールが合わず、今年ようやく見ることでできたわけですが…ううむ、なかなかに面白くて良い発表会でした。私、オールド・ポップス好きなんだな…って思いました。
独唱ですが、クラシック声楽ではないので、マイクを使用して歌います。会場は、私も歌ったことのある、地元の市民会館の小ホールなのですが「こんな小さなホールなのにマイク使うんだ…」と思ってしまったのは、私がクラシック脳だからですね。クラシック発声なら、マイク無しでも余裕なホールですが、ポピュラー発声の方なら、どんなに狭い会場でもマイクは必須ですよね。ふむふむ。
伴奏はカラオケではなく、生ピアノでした。で、このピアニストさんが、舌を巻くほどに上手な方で、どんなに歌が縒れても、どんなにフリーなテンポになって、瞬時に歌に寄り添って伴奏してくださるわけで、これなら無敵な気分で歌えるというものです。ほんと、上手な伴奏ピアニストさんなのでした。で、伴奏が上手なだけでなく、途中で、ピアノソロでショパンの演奏があったのですが、これも魂を持っていかれるような演奏で…このピアノが今回の発表会を支えている大事な要素だなあ…と思った次第です。
歌の方は、12名の方々が順繰りに登場して歌っていきました。二部構成になっていたので、それぞれの部で1曲ずつ歌っていきます。もちろん、素人の歌唱ですから、あれこれキズはあるし、上手さも人それぞれですが、皆さん、味がある歌唱で「本当に歌が好きなんだなあ…」と強く伝わりました。
歌って、上手なだけじゃダメなわけで、聞いている人の魂を揺さぶられないとダメだと私は考えます。素人の歌唱なんて、正直、技術的には下手くそだったりするかもしれないけれど、人前で歌わずにはいられない、やむにやまれない熱意というものがあるわけで、それが伝わると、例え技術的には未熟でも、聞いている人の心を打つものです。だからこそ、私はアマチュアの歌唱/演奏が好きだったりします。だからこそ、素人の音楽発表会を愛するのです。
とは言え、技術的には色々と残念だった人が多かったのは事実です。愛好家集団ですから、おそらく、歌唱テクニックを教えるくださる指導者の方がいないのでしょうね。伴奏してくだざるピアニストさんが、一応、この会の指導者ポジションのようでしたが、ピアニストさんが指導者では、リズムと音程は教えられても、歌唱テクニックは教えられません。
でも皆さん、熱意はあるんですよ。だから彼らの歌を聞きながら「ウチのY先生のところで歌唱テクニックを学んだら、一足飛びに、もっと素敵な歌が歌えるようになるのになあ…ああ、残念だなあ」と、余計なことを思ってしまいました。
歌って、リズムと音程が正しいだけでは、全然残念なんですよ。
でもまあ、十分に発表会を楽しませていただきました。感謝感激です。
で、ここからは余談なのですが、発表会の最後に、出演者一同が舞台に並んで登場し、客席には歌詞カードを配って、会場一体になって、歌を一曲歌うというのをやったわけです。まあ、この手の発表会だと、たまにあるアレですね。そんなわけで、今回も最後の最後で、舞台と客席が一体となって歌ったわけです。
当然、私も歌いましたよ。でも、テノールの私にはキイが低かったせいもあるし、こんなところで本気を出すのも大人げないと思い、軽く鼻歌程度のノリでフムフムと歌ったところ…歌い終えたら、あっと今に周囲にいたお姉様方に取り囲まれてしまいました。「あなた、どこで歌っていらっしゃるの?」と、あるお姉様に尋ねられてしまいました。後で思うに、ここの会へのスカウト?だったのかもしれません。
なんでもお姉様方に言われると、舞台にいる誰よりも声が響いていた…というわけです。まあ、舞台の方々、皆さん、マイク使わずに歌っていたからなあ。そりゃあ、こんな狭いホールだもの。軽く歌っても私の声が突き抜けてしまうかもしれません。実際、隣にいた妻は「軽くていい声で歌えてるじゃん」と思っていたそうです。
すでに発表会そのものは終了した事もあり、私はそそくさと荷物をまとめながら「私ですか? 私は普段はクラシックを歌っています」と言って、逃げるように会場から出てしまいました。だって、いきなりお姉様方に囲まれたら…逃げるしかないじゃん。お姉様方は、私がクラシック歌いだと知ったら「ほお~」と言った顔してました。一般人にはまだまだ「クラシック最強伝説」が根強いのだなあと思いました。
まあ、音楽ジャンルが違うのだから、発声が違うのは当たり前だし、マイクを使わずに歌うなら、クラシック声楽の方がポピュラー歌唱よりも、声が響くのは当然なんだけれど…今回のこの体験は…なんか、後からジワジワとうれしくなりました。だって、これって私の声を褒めてくれたわけでしょ? あまり他人から褒められることがない私なので、こんな些細なことでも、褒められると、うれしくなってしまいます。別に承認欲求なんて持っていないつもりだったけれど、やっぱり他人に認められるって、こんなに嬉しいんだなあと、年甲斐もなくウキウキしてしまいました。
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