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レコードなんて劣化する

 今の音楽はデジタルで録音され、デジタルで配信されるので、基本、録音された時の音質のまま我々の手元に届く…と考えられています。まあ、実際は再生環境が録音スタジオと我々の音楽環境とでは違うので「完全に一致」な音質であるとは言い切れませんが(笑)。それでも今は、かなり良い音質で、音楽が我々の手元に届けられているのは事実でしょう。

 でも昭和の時代ではそんな事はありませんでした。そもそもレコード音源なんて劣化するものだったからです。

 レコードって、物理的にプラスチック盤をダイヤモンド針が擦って音を拾っていたわけで、プラスチックとダイヤモンドだったら、硬いのはダイヤモンドなわけで、擦れば擦るほど、プラスチックはダイヤモンドに削られていたわけで、レコード盤は何度も何度も再生すれば、自然と盤面が粉を噴いて、音が刻まれていた溝がワヤヤになって、再生される音が何ともまろやかになっていったものです。

 同様にカセットテープでも音源は販売されていましたが、こちらは磁気テープを電磁石に擦り付けて音を拾っていたため、何度も何度も再生すると、磁気テープに記録されていた磁力がワヤヤになって、再生される音にホワイトノイズがほんのり載るようになったものです。

 そもそもミュージシャンの演奏が最初に演奏されるテープ自体がアナログ式のテープだったために、重ね録りやら編集のためのダビングやらを重ねるたびに音質劣化が避けられなかったし、再発のために録音されてから数年たったマスターテープから作られた音源は、初版のレコード盤と比べても、音がまろやかだったし、外国アーチストのレコードなんて、マスターテープのコピーが輸入され、それを元に国内でレコード盤を製作していたから、最初から国内盤の方が輸入盤よりも音がまろやかだったりして…、当時は「まあそんなもんだよね」と自然に受け入れていました。

 だからレコードなんて新品を買い求めるものだったし、お財布事情のため、セコハンレコードを購入した時なんて、音質は二の次でした。まあ私は、良い音質の新品レコードを1枚買うのなら、音質劣化したセコハンレコードを2~3枚購入するクチでした。まあ、それほど音質にこだわりがないのが私だったりします。

 でも音質劣化を受け入れられない人たちは…再生機器であるオーディオ機器に入れ込んでいて、アンプの出力を上げてみたり、大型のコンボスピーカを使ったりして、想定される録音スタジオで収録された音質を(妄想半分だけれど)追い求めていたりしました。実際、私の知り合いは、オーディオルームと呼ばれる、部屋の中に大型スピーカーを組み込んだような家を建てていたりしました。ううむ、すごいよね。

 そんな時代を生き抜いてきた私なんて、マスターテープがデジタル化され、我々の手元にもCDなどのデジタルメディアで音楽が届けられるようになった時は、ほんと、ビックリしたものでした。だって音楽の音質が、それまでとは段違いになったわけだし、いくら繰り返して聞いても音質が劣化しなくなったんだもの。

 音質が劣化しなくなり、庶民レベルでも良い音質で音楽が聞けるようになると、より音質が素晴らしい録音を求めるようになりました。やっぱり良い音質で聞く音楽は素晴らしいのだもの。

 いくら演奏が良くても、戦後まもなく録音されたフルトヴェングラーの第九よりも、最新録音の第九演奏の方が、より大きな感動を得られるのは当然だよね。それほど音質が与える音楽への影響って大きいと思うのです。

 まあ、もっとも一番音質が良いのは、最新録音の音源ではなく、生の演奏なんだけれどね。

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