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クラシックはルールの音楽、ポピュラーは音色の音楽

 ルールとは規則のことであり、狭く言えば楽譜のことです。クラシック音楽とは、楽譜に書かれた音楽を忠実に再現する音楽で、その忠実度が高ければ高いほど、素晴らしい演奏であると言えます。

 一方、ポピュラー音楽では、音色が大切です。ここで言う音色とは、狭義の音色をもちろん、声色、空気感、雰囲気、演奏家の熱量、観客の熱気…そういうものを広く指し、それらがとても大切です。なので、ポピュラー音楽では、そもそも楽譜は重要視されません。その代わり、実演された演奏とか、それを記録した録音が重視されます。

 ショパンの音楽は、プロのピアニストが弾いても、お隣のお嬢さんが弾いても、演奏の巧拙はあっても、同じショパンの音楽ですが、ポピュラー音楽では、本家本物の演奏家が演奏したものだけが本物であって、それ以外の演奏は、どんなに上手くても、素晴らしくても、心を打つ名演奏であっても“カバー”と呼ばれて、本物とは区別されます。なぜなら、オリジナルとカバーは別物だからです。

 つまり音楽の大切な要素として「メロディ」「ハーモニー」「リズム」が言及される事が多いけれど、それはクラシック音楽に限った話で、ポピュラー音楽には、それらに加えて「音色」という要素が加わります。

 つまり、同じ曲でも、誰が歌うかで、誰の演奏なのかで、その演奏の価値が異なってくるわけです。

 音楽は、人間が演奏するものから、徐々にAIによってコンピューターが生成するものに代わりつつあります。AIを使えば、過去の名演奏家の演奏データーを用いて、今まで聞いたことのない演奏や音楽を作り出すこともできます。本来は、カバーでありながら、オリジナルになりうる演奏だって作り出すことができるかもしれません。

 AIの美空ひばりは、何とも気味悪かったです。しかし、AIによって(ポール・マッカートニーは否定していたけれど)生成されたジョン・レノンの歌声は、多少の違和感はあっても受け入れられるものでした。技術の進歩には驚くばかりです。やがて、そんな小さな違和感すら感じさせないような歌声をAIが作り出せるようになるでしょう。それもそんなに遠くない将来ではないか? と私は思うわけです。

 これからの音楽は、どこに向かっていくのでしょうか?

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