よく歌声を楽器に例えますが、私が思うに、歌声は管楽器。それも金管楽器ではなく木管楽器、更にもっと言えば、笛なんだろうと思います。
笛と言うのは、縦笛。つまりリコーダーあたりを想像してもらうと、良いと思います。
リコーダーの特徴と言えば、まず音域が狭いこと。通常の音域は10度で、これは下のドから歌のミぐらいで、普通の人の声域なんて、この程度でしょ? 無論、上手な人が吹けば、上のミが、上のソぐらいまでいけるかもしれないし、もっともっと上手な人なら、さらに上のドまでいけるかもしれないけれど、それ以上はどうやっても無理。そこが縦笛であるリコーダーの限界です。
中には声が横笛の人がいます。横笛は縦笛よりも強い息に対応できる笛なので、そういう声の人だと、音域がさらに1オクターブばかり広がりますが、まあそんなもんです。
私は、普通の人と、訓練された男声は縦笛のようなもので、一部の訓練された女声が
横笛のようなものだと思ってます。
歌声が笛のようなものだと思えば、音域に制限がある事も分かるし、なによりも音量に制限がかかる事も分かります。
笛は、低音を大きな音量では吹けませんし、逆に高音はある程度の大きな音量でないと吹けません。高音を弱音で吹くのは難しいです。とは言え、大きな音量と言っても、あくまでも“ある程度の大きさ”の音量であって、笛では本当に大きな音では吹けません。
そうなのです。笛という楽器は、そもそも小音量の楽器なのです。
と言うのも、笛は音程と楽器に吹き込む息の量に強い相関関係があるし、それは歌声も同じです。弱い息では音になりませんし、強い息を使っても、大きな音にはならず、音が破綻するだけなのです。
だから、大きな音量が必要なら、楽器の数を増やさないといけません。歌だって同じで、だから合唱という演奏形態があるのです。
歌声が弦楽器ではないなあと思うのは、弦楽器って、弱音から強音まで、音量と音程に関係はなく、そのあたり、割と自由にコントロールできるんですよね。
とは言え、歌声は笛よりも弦楽器っぽいなあと思う部分も無いではないのです。それは、歌声と弦楽器は、音色の幅が広いのですが、笛は音色の幅が狭い事です。音色の幅に関しては、歌声は弦楽器並か、それ以上の幅があります。
もっとも、歌声の音色の幅は口腔で作られるものであって、楽器としてのノド(声帯)に関して言えば、音色の幅はさほど無いので、そういう意味では、やはり歌声は笛みたいなものなのかもしれません。
息をエネルギーにして音を作っているという点も、歌声と笛には共通点があります。そう考えると、やっぱり歌は笛だな、木管楽器だなって思うのです。
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