スポンサーリンク

歌曲は難しい?

 声楽のレッスンは、発声が終われば、次は歌唱指導になります。さすがに、発表会を控えているので、歌唱指導も指導ポイントが多岐にわたりました。一つ一つ書いてゆきます。

 「音取りの宿題」が出ていました。まずは、その確認からです。確認と言っても簡単な話で「とりあえず、通して歌って」です。

 もちろん、私はやってきましたよ。音程を確認し、リズムを確認し、歌詞と音符の関係(譜割り)も確認し、とりあえずインテンポで歌えるようにして歌いましたが…、それでは不十分だと言われました。何が足りないのかというと、音楽の表情。少なくとも次回から「音取り」と言われたら、リズムと音程と譜割りだけでなく、楽譜に書かれているすべての音楽記号まできちんと確認しておくように言われました。

 楽譜通りに歌えること…これがレッスンの出発点です。再確認しました。

 では、具体的なレッスンです。まずは譜割りのチェックが入りました。歌ですから、音符に言葉が載るのは当然で、言葉のどの部分がどういう風に音符に載るのかが大事なポイントです。

 音符に載るのは母音のみ…これは大原則なんですが、複合母音の場合は“アクセント”のある母音だけが音符に載ります。

 たとえば“miei”という単語。アクセントは真ん中の“e”ですから、この母音が音符に載ります。って事は、“miei”を“mi-e-i”と三つに分けて考えれば、音符に載るのは“-e”だけですから、“mi-”の部分は音符よりも先に歌わないといけないし、語尾の“-i”は音符の後にくっつけて歌うわけです。特に、音符に先付けして“mi-”を歌うのが、慣れないので、結構大変。気持ち的にはプチ気味にアウフタクトです。だって、こういう音韻構造している語って、日本語にはないじゃん。ああ、外国語ってメンドいのよ。

 発音関係で言えば、“r”も要注意。巻き舌です。もちろん巻く。しっかり巻く。ついつい英語レベルの巻き舌で“r”を発音してしまいがちだけれど、イタリア語は英語よりもしっかりと“r”は巻いて発音。きちんとしよう。

 閑話休題。巻き舌が苦手な人やイメージできない人のために書きます。「サッポロラーメン」とやや大きめな声ではっきりと活舌良く言ってください。“ロ”の前で舌が不穏な動きをしたでしょう。これが“巻き舌”です。巻き舌が苦手な人は「サッポロラーメン、サッポロラーメン、サッポロ…」と言い続けて、巻き舌のイメージをつかんでください。
 話を戻します。語中にある“r”は単純にしっかり巻けばいいけれど、語頭にある“r”はプチ気味なアウフタクトで、音符の前でたっぷりと巻く。

 さらに語尾の“r”の場合は、しっかり巻くだけでなく、どこで巻くかもちゃんと考えないといけない。特に語尾のみならず文末の“r”は要注意。たとえば、「~cor.」となっていて、これが四分音符に載っていたら、音符に載るのは、“co-”であって、“-r”は音符には載らない。だから、“r”は四分音符の終わった次の拍の頭で思いっきり巻く。忘れずに巻く。ここが大切。

 とにかく“r”は、きちんと巻かないといけないし、巻くにしても、どこでどれくらい巻くかを、常に意識的にやらないといけないので、結構面倒です。面倒だけれど、こういう細かいところをいいかげんにしちゃうと、カタカナのイタリア語になってしまうので、注意注意。

 無論、歌詞の発音だけでなく、意味についても、もう少し考えてくること。なぜその歌詞にそのメロディーが付いているのかを考えれば、歌い方にも自然と変わってくるはずと言われました。そりゃ、そうだ。ラジャー。

 この曲には、速度記号とか強弱記号とか表情記号とかたくさんの音楽記号がついております。各小節ごとに2~3個ずつですね、ほぼ満載と言っていい状態です。これらの音楽記号のひとつひとつをきっちりと行ないましょうと言われました。そりゃ、そうだね。本来なら、音取りの段階である程度、読み込んでおかないといけなかったのだから、なおさらです。

 特に気をつけるのが、速度に関する記号。どこからテンポを落とし、どこまでその遅いテンポで行き、どこで元の速さに戻るのか、それもすぐに戻るのか、徐々に戻るのか。そういうところまで、しっかりと意識的に行ないなさい、なのである。テンポは揺れまくりなのである、結構大変なのである。例えば、アラルガンドの最中のテヌートとか、ラレンタンドの最中のリタルダンドとか、なんか感覚的によく分かりません。ちょっと試行錯誤しておきますわ。

 さらに言えば、全体としてはレガートに、しっかり音楽が流れるように歌わなければいけないし、声の響きに注意が必要。特に歌いだしの部分は音高が少し低めだけれど、響きは常に高く高くと意識する。当然、頭蓋内はオープンしまくりです。

 テンポに関して言えば、この曲はほぼ歌手が自分でテンポを決めて、そのテンポで歌っていいのだけれど、ところどころピアノと息を合わせるところがあるので、そこはしっかりとピアニストの存在を意識して、自分一人で突っ走らないようにすること。

 あと……そうそう、そう言えば、いらぬ疑惑をかけられたよ。私の歌を聴いた先生が、私がたくさん音源を聴いて、それをトレースして歌っているのではないかと疑ってたね。確かに今まではそうしていた(だって楽譜読むのが苦手だから、音源聞きながら楽譜をチェックしてたわけよ)ので、疑われても仕方がないのだけれど、今回に関して言えば、それは全くの濡れ衣。濡れ衣なんだけれど、そう思われた。日頃の行いが悪いので仕方ないと言えば仕方ないのだけれど…。

 まあ、確かに、数回は音源を聴いたけれど(これは嘘ではない)、暗記するほどは決して聴いてないし、参考にもしてない。ましてや、音源聞きながら楽譜を開いたことはない。今回は、結構これでも真面目にこの曲の楽譜とは取り組んでおるのよ。

 ただね、一日の練習の最後に仕上げとして、カラオケと合わせて歌ってはいるよ。やっぱり上手なピアノ伴奏に載せて歌いたいじゃない。

 ところが、このカラオケが歌いづらくてね…。最初はカラオケとは全然合わなかったのだけれど、何度か合わせをしているうちに、カラオケのピアノの癖を飲み込んで、なんとなくはまってくるようにはなったけれど…、たぶん、先生はその事を言っているのだと思う。

 で、結局、カラオケ使用禁止になっちゃいました。カラオケは、音楽を均一化するので、ダメだって。ピアノが弾けない分をお金で解決したつもりだったけれど、結局、伴奏無しで練習するはめになりました。ま、仕方がない。カラオケCDも含めて、他人の演奏は一切聴かないことにしました。

 以上、たくさん注意を受けました。発表会が迫っているのだから、注意点が細かくても仕方がない。きっとこれだけ頑張れば、一皮むけるよ。

 さてさて、今回も宿題が出ました。それは…しっかり母音だけで歌ってくること。以前、みるてさんが「母音だけでリズム読み」というのを教えてくれて、忙しくって手がつけられなかったアレですよ。アレの音程付きをやってくることになりました。これをやるとレガートに歌えるようになるんだよね、ガンバ。

 それと、これは宿題というわけではないのですが、メロディーを一度フルートで吹いてみるといいですよとも言われました。理由は…歌だと歌詞がついているために(歌詞におんぶして)スラーとかタイとかがいいかげんになりがちなところを、フルートだと、しっかりとその辺を意識できるから、ぜひフルートで演奏してみましょう、だそうです。ちなみにキング先生も新曲はチェロ(ちょうど音域がテノールと一緒)で弾いてみるそうですが…フルートはフラットが4つも付いている調性は苦手なんです。ああ、弦楽器がうらやましい。

 「歌曲って難しい…」と愚痴ったところ「難しいのではなく、どこまでやるか、なんですよ。ここまでで良し、思ったら、歌曲の学習は終りです」と言われました。と、いう事は、(自分にとって)難しい事を要求されているのは、そこをクリアできると見込まれているからというわけですね。よしよしよし、がんばってクリアしていきましょう。

コメント

  1. たかさん より:

    >すとんさん

     私のところは、今年の吹奏楽コンクールで、O.レスピーギの「ローマの祭り」をやります。イタリアの音楽です。音楽の中でイタリア語と思われるフレーズが出てきます。

     管楽器での演奏も、日本語とイタリア語の違いが現れていて、なかなかイタリア語になりませんでした。特に「巻き舌」は重要なのですが、高校生だと、具体的にイメージできないのです。

     イタリア語会話のCDや、カンツォーネのCDなどを聞かせて、イメージ作りをしていました。

    「サッポロラーメン」はいいことを教わりました。さっそく今日、生徒に教えます。ありがとうございました。

  2. Cecilia より:

    巻き舌、苦手です~!(苦笑)
    「サッポロ・ラーメン」は声楽をやるよりも前に高校の合唱部の友達に教えてもらったので今でも時々やっていますが・・・。

    キング先生、音楽作りにも厳しいですね!
    おそらくそこのところはいい加減に済ませている先生が多いと思うのですが・・・。
    少なくとも私がついた何人かの先生はプロ演奏家のCDをカラオケ代わりにしていた私のやり方を見逃していらっしゃったと思います。
    まあ私も基本は自分で弾きながらの練習でしたが・・・。
    ある先生からは「きっとあなたはピアノがうまいですね。和声感があります。」と言われました。(その先生の伴奏は超へたくそでした。)
    また別な先生からは譜読みが早いと言われましたが、ピアノ専門の人と比較して早いほうだとは思えないので驚きでした。
    もしかしたら歌の人と比較したら早いのかもしれませんが、どうなのでしょう?
    みんなそんなに遅いのかな?
    あと自分もそうでしたが、楽譜どおりの音の長さにする・・・ということには無頓着な歌い手が多いですよね。
    私は長いことかなり適当でした。
    最近は一応意識していますが。

  3. すとん より:

    >たかさん

     レスピーギですか、「ローマの祭り」ですか! あれはいいですねえ。イタリア語と言うか、イタリア人気質と言うか、ハデハデの力業なサウンドがいいですね。

     歌はもちろんですが、やはり器楽でも、作曲家の母国語の影響がフレーズに現れるのですか? そうなんでしょうね。

     歌の人は、ひとまず片言でも言葉の勉強をします(しないと歌えませんから)が、器楽の人は、ベートーヴェンをやるからドイツ語を…とか、ドビュッシーをやるからフランス語を…とか、バーンスタインをやるから英語を…とかは、なりませんよね。

     でも、留学帰りの人の演奏がどこか違ったり、作曲家と同じ国で育った演奏家のモノがどことなく味があったりとか…、そういうちょっとしたところに、その国の言葉を知っているか知らないか、使えるか使えないかが、関係するのだと思います。

     歌の場合、カタカナで歌うのと、その言語の音韻で歌うのとでは、格好良さが違いますが、それに通じるものが、器楽の場合でもあるのでしょうね。

  4. すとん より:

    >Ceciliaさん

     巻き舌、私だって得意とは言えません。それこそ、英語レベルなら問題ありませんが、イタリア語やドイツ語レベルはなかなか…。フランス語の巻き舌は全く歯が立ちません(涙)。

     キング先生は音楽に対して真面目な方なんです。その真面目さを私は尊敬してます。あと、発表会だからと言うのもあると思います。

    >もしかしたら歌の人と比較したら早いのかもしれませんが、どうなのでしょう?

     日本レベルで考えると、歌をやる人の多くは、とても言葉は悪くて申し訳ないと思うけれど、ピアノ挫折組だったり、吹奏楽挫折組だったりするじゃないですか。だから、譜読みが遅いとか、和声感がないとは思えないですが…ヨーロッパあたりでは、声が良いというだけで、ある日いきなり、ずぶの素人さんが歌手をめざして、それでなんとかなっちゃったりするので、譜読みが遅い(極端な話、譜が読めない)人も結構いるそうで…。

    >みんなそんなに遅いのかな?

     もしも私を“歌の人”に入れてくださるなら、とても遅し、不正確ですよ(爆)。

    >楽譜どおりの音の長さにする…ということには無頓着な歌い手が多いですよね。

     だいたい皆さん、長めですね(笑)。おまけにテンポはゆっくりめで(大笑)。さらに言うと、リズムは丸め気味だし…(汗)。だって、声を出している事自体が気持ちの良いことですから、どうしても、ゆっくりのたっぷりになっちゃいますね。それではいけないのですが。

     私もしばしばキング先生に、四分音符は四分音符として、二分音符は二分音符として、ちゃんと歌いなさいと、注意されます。私も長めに歌うタチですから(爆)。だから、フルート吹きなさいって言われるのだと思います(汗)。

  5. たかさん より:

    >すとんさん 

     そうなんです。器楽でも母国語の影響は現れると私は思います。「ローマの祭り・主顕祭」の最後に「我らローマ人」のフレーズが現れるのですが、日本人がやると演歌ぽく聞こえるんです。今の高校生はJ-POP風ですが…。

     昔ヴェルディのオペラを聞きに行った時、主役と指揮者がイタリア人でしたが、全然違いました。オーケストラの場合、指揮者がイタリア人だと、音楽もイタリアの香りがしてくるのがとても不思議でした。

     歌手の森公美子さんが、イタリアオペラを勉強するために、イタリアに留学した時のお話ですが、イタリアに行っただけではダメで、生活習慣までイタリアにどっぷり浸からないと、イタリアオペラを表現しきれなかったそうです。

     で、どうしたかというと、スパゲティを毎日食べたそうです。半分冗談かもしれません。

     でも、私がオーストラリアに行った時、太陽の光と青空の色が日本と全然違うなと思ったことを覚えています。

     英国風のフィッシュ&チップスを食べ、日本では味わえない、とても美味しいリプトン紅茶を飲むと、自然とオージーイングリッシュになっていました。

     オーストラリアの友人達と一緒に行動していたので、ツアーで来ていた日本人達には、私は日本人と思われなかったようです。

    「なんか日本人ぽいけど、違うよね。英語しゃべっているもんね(どういう意味?)」なんて話していたので、「私は日本人だ」と日本語で急にしゃべったら、逃げていきました。(笑)

     

  6. お散歩さんぽ より:

    >アラルガンドの最中のテヌートとか、ラレンタンドの最中のリタルダンドとか

    そういった速度指示も、「Akkegro」や「moderarto」のような指示と同じくニュアンスがあります。
    アラルガンドは音楽が堂々と広がっていく感じ。大河が海原に広がっていく感じかな? ラレンタンドは自然に緩んでいく感じで、リタルダンドはわりとブレーキっぽい感じに受け取っています。もっと詳しい人に聞けば解かると思います。テヌートは長く保つだけではなく大切にしたり重さをのせたり(載せるんであってどすんとやっちゃいけないけど)特に大切にしてねって意味であとは文脈でどうにでもってコトでよいと思います。なのでアラルガンドの中に出てきたらためちゃっていいのかな。
    ラレンタンドの中のリタルダンドはそこでちょっとブレーキをかけちゃうのかなあ?
    難しいですねえ。そんなのを要求されてるなんて! 上級ですよ。それ(笑)

  7. すとん より:

    >たかさん

     旅行の話、興味深いです。言葉だけじゃなく、現地の水を飲んで空気を吸わないと本当の意味での、西洋音楽の演奏ができないのではないかと、ちょっとビビり始めてます(笑)。

     そう、音楽って言葉とか生活とかと密接な関係があると言うか、結局、言葉にフシをつけたものが歌であり、生活の中に音楽があるわけで、そこのところの壁をどう乗り越えていくが、外国人演奏家に求められていくことなんだろうなあと思ったりしてます。

     で、話は飛びますが、だからジェロ(有名な黒人演歌歌手ですね)はすごいと思うのです。血液に幾分かの日本人の血が入っているとは言え、アメリカ生まれのアメリカ育ちで、彼の母国語は英語で…。それなのに、あれだけの演歌を素直な節回しで歌える…。ある意味、クラシック音楽をやる日本人は、ジェロを見習うべきなんだろうとすら思います、マジな話で。

  8. すとん より:

    >お散歩さんぽさん

     詳しい解説ありがとうございます。

     結局、音楽用語って言っても、イタリア語なんですよ。イタリア人作曲家が、イタリア人詩人の書いた詩に作曲しただけで、そこにある音楽用語だって、音楽用語というよりも、演奏する時の覚え書きとかメモとかヒントとか…そんな調子なんだろうと思います。

     日本語に訳してしまうと、訳がわからなくなりますが、おそらくイタリア人的には、きちんと区別されているのでしょうね。あとは、そのニュアンスをどうくみ取り、どう再現していくか、私に求められていることなんだろうと思います。

    >難しいですねえ。そんなのを要求されてるなんて! 上級ですよ。それ(笑)

     なら、私も鼻高々なんですが、この曲、割とキャリアの浅い人間が歌うことが多い、簡単というわけではないのだけれど、学びやすい曲なわけで、上級者でなければ歌えない、高難度の歌など、それこそ星の数ほどあります。

  9. みるて より:

    母音だけで歌ってくるように宿題でましたか(笑)
    最初コルクくらいの大きさのものを「かんだまま」母音で歌ってみるのもいいですよ。
    のどの奥を空けたまま母音をかえる練習にもなるし、ね。
    歌の練習って細かいつまらないことも多いですが絶対声に反映されますからがんばってね。

  10. すとん より:

    >みるてさん

    >母音だけで歌ってくるように宿題でましたか(笑)

     はい、出ちゃいました。と言うよりも「母音だけで歌ってきましたか? え、やってない? じゃあ、宿題!」ってノリでした(汗)。

     コルクかあ…たしかにノドが開きそう。でも、ウチは飲んべえの一家じゃないので、コルクがないので、何かで代用しないと。菜課いいかなあ。電池じゃ重いし(笑)。フィルムケース? これがいいかな。目の前に未使用のフィルムケースがなぜか一つあるし、これでやってみるかな。

    >歌の練習って細かいつまらないことも多いですが絶対声に反映されますからがんばってね。

     はい、がんばります。

タイトルとURLをコピーしました