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新国立劇場の「カルメン」を配信で見た

 ありがたい事に、新国立劇場が「カルメン」をYouTubeで、無料ネット配信してくれましたので、感謝しつつ見ました(ちなみにすでに配信は終了しています、情報が遅くなって、ごめんね)。
 主なスタッフと出演者は以下の通りです
 指揮:大野和士
 演出:アレックス・オリエ
 カルメン:ステファニー・ドゥストラック(メゾ・ソプラノ)
 ドン・ホセ:村上敏明(テノール)
 エスカミーリョ:アレクサンドル・ドゥハメル(バリトン)
 ミカエラ:砂川涼子(ソプラノ)
 オーケストラ:東京フィルハーモニー交響楽団
 合唱:新国立劇場合唱団、びわ湖ホール声楽アンサンブル
 児童合唱:TOKYO FM少年合唱団
 感想ですが、良くも悪しくも、これが日本のトップのオペラ公演なのだなっ感じました。
 歌手の皆さんの歌にも演技にも、大きな不満はありません。そういう意味では、きちんと自分たちの役割を果たしている公演だなって思いました。内容的には大満足です。
 個人的には演出に???を感じましたが、だからと言って、これがダメな演出なのかとは思いません。思った事は「オペラという芸術はオワコンである」という事と「所詮オペラは外国のものであって、我々のモノではない」という事かな? なので、日本のオペラの現状には大いに不満を感じるものの、新国立劇場と歌手やスタッフの皆さんには大いに感謝と称賛を捧げる私です。
 もう少し具体的な話をしますと、今回の演出では、どうやらカルメンは現代に時代設定されているようですし、おそらく場所も日本?なのかな?って感じました。つまり、時は今、場所も我々の生活圏って感じで、カルメンを身近な物語として演出しているわけです…が、それって無理あるよね。
 カルメンは、某ロックバンドのヴォーカルだったり、ジプシーの団体は、ヤクザなのかな? とにかく悪の何かの組織に置き換わっています。まあ、そういう事にする事で、見ている私たちに、物語によりシンパシーを感じて欲しいと願っているのだろうなあとは分かるのだけれど、歌詞はフランス語だし、歌詞の中には、タバコ工場も出てくるし、ホセは伍長さんだし、帰還のラッパは鳴るし…つまり、設定と歌詞が合っていないんだよね。まあ、これは新国立歌劇場のオペラに限った事ではなく、全世界的に流行っている演出の方向なのだけれど、こういう尖った演出をすればするほど、いくら良い歌唱&演技であっても「オペラってオワコンだな」って思うのです。たぶん、伝統的なオーソドックスな演出をしてくれれば「オペラって、今や、時代劇とかファンタジーとかなんだろうなあ…」は思うものの、オワコンとまでは思わないのかもしれないけれど、こういう小細工をされればされるほど、オワコンだなって思ってしまうのです。
 で、フランス語上演なんですよ。日本の劇場で、出演者が(一部の主役を除いて)ほぼ日本人にも関わらず、外国語で上演されてしまうと「ああ、これは借り物なのだな」って思ってしまうのです。私は日本語上演されるオペラって、あまり好きではないのだけれど、日本の劇場で出演者も観客も日本人なのに、外国語で上演される事に、強い違和感と言うか、置いてけぼり感を感じてしまい、借り物感を感じるのです。
 さらに、数少ない外国人出演者が主役をやり、その他の脇役や合唱を日本人で固めると、さらにさらに借り物感を強く感じてしまうのです。
 たとえオワコンであろうと、たとえ借り物であろうと、私はオペラが好きです。質の高い公演を無料で配信してくださる事には、大いに感謝しています。
 でも、これが日本のトップのオペラ公演なんだなと思うと、何とも色々と考えてしまうのです。
 そんだけの話なのです。

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