さて、声楽レッスンの続きです。
曲は三曲目のヘンデル作曲の「Ah, mio cor/ああ私の心である人よ」です。この曲には、いくつか音程が跳躍する箇所がありますので、その部分の練習をたっぷりしました。
音程が下から上に上がる時は、声を素直に下から上に持っていくと、ノドがしまってしまうので、それはNGなわけです。音程が跳躍する時は、跳躍する前の音を歌っている時に、支えをしっかり入れて(その際に響きは多少低くなります)、そこから一気に高い響きに持っていくと、音程も自然と高くジャンプできるのだそうです。つまり、音程の移動ではなく、響きの移動であると考えた方が簡単に出来るのだそうです。
で、音程の跳躍は、身体運動である以上、いわゆる“ジャンプ”と一緒なのです。高く飛ぶためには、その直前に身をかがめ、足を溜める事が必要です。弓矢で言えば、弓を引かなければ矢は飛んで行かないわけです。それと同様で、音程でも、高く飛ぶためには、一度身を低くするのです。その身を低くするいう発声的な動作が、支えをしっかり入れるって事のようです。
支えをしっかり入れると言っても、腹筋の動き的には、支えを入れて保持する動きと、そこから上にジャンプさせる動きは違うので、そう言った腹筋の動きの切り返しを同時にしないといけません。それが不器用な私には案外難しい。
音程の跳躍でなく、高い音から歌いだす時も、実はテクニック的には同じなんだそうです。ただ、違うのは、前の音符の時に声の響きを低くしてから、高い音を出すのではなく、前の休符の時に息の響きを低くしておいてから、歌いだしの高い音に備えるのです。
この“休符の時の息の響き”って奴が、また厄介な奴なんです。
そうそう、ジャンプした先の高い音は“歌う”というよりも“ポイと投げ捨てる”感じの発声の方が結果が良いようです。とにかく、歌うという気持ちがあると、どうしてもノドに力が入ってしまうので、歌うのではなく、投げ捨てる気分の方がうまくノドが脱力できるみたいです。
もちろん、音符一つ一つの確認はしませんでしたが、やはり響きは常にテノールっぽく、音の上につけて歌うことは言われました。特にこの曲は全般的に音程が低いので、油断しているとバリトンっぽい歌い方になってしまうので、要注意です。
それらが一通りできたところで「今度は広い場所で歌っているつもりで歌ってください」と言われました。広い場所だからと言って、大きな声はNGです。より響く声で歌わないといけないのです。より響く声を出すためには、今まで以上に、ノドを縦開きにして歌うのです。さらに立派な声で歌おうとすると、どうやら逆効果で、むしろ立派な声ではなく、若々しい声で歌おうと思った方が、結果が良いようです。
危険なのは、音程が下がると響きも下がりがちなので、そこは注意をして、音程が下がった時こそ、響きは上へ上へという気持ちでなければなりません。また音程が上がったからと言って、響きを上に持っていこうとすると、今度はノドが絞まってしまうので、音程が上に上がったら、しっかりと支えを入れていく必要があります。
とにかく、背筋と腹筋をたっぷりと使って歌っていくことを教わりました。
もう、ヘトヘトです。発声練習から三曲連続のレッスンは、ほぼ休みなく1時間ほど歌いっぱなしです。疲れ切ったカラダには重労働ですが、声が枯れたり、ノドが痛くなったりしないのは、幸せな事です。
さて、一通りのレッスンを終えた後は、秋のクラシック・コンサートに向けての選曲作業です。
ソロで歌う曲は割とあっさりと決まりました。私が歌いたがっていた、ダウランド作曲の「Come again/来たれ、今いちど」はOKです。もっとも「歌うのはいいけれど、レッスンは地獄になるよ」と脅されました。と言うのも、「Come again/来たれ、今いちど」はルネッサンスの音楽なので、私が今やっているトスティ(ロマン派ですね)とは発声方法が違うので、苦労するけれど、まあいいんじゃないのって事です。
で、「Come again/来たれ、今いちど」と合わせる曲だけれど、私は(ロマン派:笑)のトスティの曲を何曲か候補にあげたのだけれど、どれも「Come again/来たれ、今いちど」と一緒に歌うと苦労しそうなのでペケとなりましたが「Ideale/理想」なら素直な発声でいけそうだからと言われてOKをいただきました。
と言うわけで、ひとまず、秋のクラシック・コンサートではソロの方は、ダウランドの「Come again/来たれ、今いちど」とトスティの「Ideale/理想」で頑張ってみる事にしました。
問題は二重唱の方です。そうなんです、今回のクラシック・コンサートでは、ソロだけでなく二重唱もやってみようと企んでいるわけなんですが、こちらの選曲が難航しています。私の方で候補にあげた曲はすべて却下。先生曰く「テノールの二重唱は、どれもこれも難しいんだよね」との事。で、代わりに先生が推薦してくれた曲は、フランス語の上に全部歌うと14分もするような大曲。さすがにこれはないかなって思いました。
というわけで、ただ今二重唱の選曲で悩んでいます。場合によっては、二重唱は先生に頼らずに自分たちで仕上げるとか、別の先生にご指導をお願いするかも考えないわけではありません。だって、ステージを作るのは、歌手とピアニストなわけで、先生はあくまでもアドヴァイザーだからねえ。
とは言え、こんなところで先生と対立しても仕方がないので、とりあえず、再度候補曲を数曲用意して、もう一回先生と相談です。
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コメント
scher-ni-toのところですかね?
scheの時にポジションを上の位置に変えなくちゃダメですね。
言葉は違うけど、先生の言われる通りだと思います。
男声と一緒に二重唱は?
ビゼーの「真珠取り」なんかどうかな?
優しく歌う訓練になりますね。
おぷーさん
>scher-ni-toのところですかね?
当然、そこも入ります。とにかく、以前の先生には「音程が上がる時はポジションを上げて、でも音程が下がる時はポジションを下げない。一度上げたポジションは死守する」と習っていたので、音程が上がってもポジションを上げないと言われて、ちょっと面食らった私でした。
まあ、発声方法にも、色々あるんだなって思いました。
>ビゼーの「真珠取り」なんかどうかな?
フランス語はいけません。まだ人前で歌う自信ありません。あと、オペラの二重唱は何を持って行ってもダメなような気がします。次回のクラシック・コンサートは、いわば“アウェーの舞台”なので、あまり冒険はできないんですよ。なので、今のところ、歌曲系の二重唱をする予定です。
ポジションを上げる、と言う言い方が悪いと言うか、響かないのですね、すとんさんには。
女声の場合は、低い音を出している間に素早く頭声を使うポジションに変える感じなんですけど、男声の場合はどうなんでしょうか?
一度上げたポジションは死守しなくてもいいけど、前の先生がおっしゃりたい事は、音程が下がる時に、おなかを緩めて、安心して声の支えまで落としてはいけない、と言う意味じゃないかと思います。
歌曲だと、ブラームスなんかに良いのがありますよね。
イタリア語じゃないとダメなんですか?
おぷーさん
響かない…とも言えますし、理解できなかったとも言えます。結局、私は彼が言っている事がちゃんと理解できていなかったし、私が間違った方向に行っても、それを指摘できなかった(あるいは、放置した)んだと思います。
>女声の場合は、低い音を出している間に素早く頭声を使うポジションに変える感じなんですけど、男声の場合はどうなんでしょうか?
前の先生は、あからさまに頭声を使うと×でした。あくまでも頭声は混ぜるもので、気づかれないように使う程度だと教わりました。当然ファルセットなんてものはアウトでした。今の先生は、頭声だけの発声でもOKどころか、NGだったファルセットでも歌えるように指導されています。高音に対するアプローチが、違うような気がしていますが、それは教える人が違うのだから、やり方も違って当然と割り切ってます。
>歌曲だと、ブラームスなんかに良いのがありますよね。
ブラームスは不勉強で知りませんでした。メンデルスゾーンに良い二重唱曲があると聞いていますが、ドイツ語の歌曲はまだまだ不勉強で、これからたくさんの良い曲と出会える楽しみがあります。
>イタリア語じゃないとダメなんですか?
とりあえず、そうなるのかな? 英語の曲はダメって言われてます(バーンスタインとか歌いたいですよぉ:涙)。日本語は(難しいので)パスですし、フランス語は無理です。ドイツ語はダメではありませんが、まだまだ私にはハードルが高いです。とりあえず、現時点で2曲、候補を考えてます。決まったら、ここに書きますが、これで決まるかな?って感じです。
頭声に変わったと気づかれても、それが表現力に満ちて人に歌が伝われば、OKですから、今の先生がそういわれるのでしょうね。
私はあまり男声のファルセットだけの歌い方は好きではないですが、
女性の声を真似したりとか、男声合唱団のテナ1がファルセットを
柔らかく響かせる歌い方なんかは良いと思います。
おぷーさん
おそらく、前の先生は“すぐに結果を求める”タイプで、今の先生は“経過を重んじる”タイプなんだろうなあって、理解しています。ただし、両先生の求めている結果が同じ…とは限りませんが。
私は、個人的にはファルセットで歌うのはキライです。キング先生の前に短期で世話になっていたテノールの先生に「ファルセット(で歌うの)は負け」って言われて、それがしっかりと身に沁みているからです。何はともあれ“負け”るのはイヤなんです(笑)。