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見知らぬ方々の発表会に行ってきた

 いや、ほんと、全く知らぬ方々の声楽の発表会に行ってきました。それも、かなりの遠方の発表会。どこから情報を?…って、そりゃあネットからですよ。今や、アンテナさえ高くしていれば、ネットでかなりの情報を仕入れられますからね。で、ネットで見つけた、見知らぬ方々の声楽の発表会を見に行ったわけです。

 場所は、我が家から電車で約2時間の某地方都市の公民館のホール。100名も入れば一杯って感じのミニミニホールでした。出演者は、年配の趣味の音楽愛好者さんたちを中心に、約20名。お一人2曲ずつ歌うという形式の発表会。

 指導されている先生は、まだ三十代とおぼしき若手のオペラ歌手さん。一般国立大学の大学院(理系)を卒業されて、イタリアに渡って、あちらで歌の勉強して、しばらくはヨーロッパの歌劇場で研鑚を積んでいたという経歴の持ち主。日本に戻ってきてからも、オペラ出演をしながら、声楽教室も開いているというパワフルな先生です。

 まあ、アマチュアの声楽発表会なんて、あっちこっちで見ている私ですが、だからと言って、それらの感想など、いちいちブログに書かない私ですが、今回は色々と感じる事があったので、わざわざブログに感想を書きます。

 その“感じる事”なんですが…まず最初にあげると、この先生、たぶん、教えるのがすごく上手なんだと思います。それが出演する生徒さんたちの歌を聞いていると、よく分かるんですね。

 先生の年齢や経歴や、生徒さんたちの歌い方からしても、この声楽教室は、そんなに古い教室ではないと思います。生徒さんも割と最近まじめに歌に取り組み始めました…って感じの方々ばかり。せいぜい、一番古い生徒さんでも、たぶん、私とそんなにキャリアは変わらないんじゃないかな?…と思われる人々の発表会でした。

 …でもね、だいぶ違うんですよ。

 声楽発表会…に限らず、アマチュアの発表会ってのは、上手くない人から始まって、徐々に上手な人が登場するような登場順番になってます。まあ、そうしないと、上手な人の後に出てくる、上手じゃない人がかわいそうだからね。

 で、今回見に行った発表会も、早い順番の方は、音程しか合っていない(ごめん)歌を披露してくださって「ああ、初々しいなあ…」と思って聞いていたのですが、次々と出てくる生徒さんたちが、ズンズンとレベルアップしていって、全体で2部構成だったのですが、その最初の第1部の真ん中あたりで、キング門下ならトリを取るレベルの人が出てきちゃったわけですよ。「え?」って感じですね。

 別にキング門下をディスるつもりはないので、誤解しないでください。キング門下のような、音楽愛好者を中心とした典型的な門下のレベルを遥かにしのぐ、ハイ・レベルの発表会が行なわれていた…と思ってくだされば有り難いです。

 とにかく、第1部の真ん中で、そのレベルですから、第2部なんて、チケット代を支払っても惜しくないほどの、立派な歌唱が続きました。ほんと、私、三千円ぐらいまでのチケットなら、喜んで支払っちゃうくらいのレベルだったんですよ。

 それぐらい、見事な発表会だったし、アマチュア歌手と言っても、それぐらいのレベルの歌唱をしちゃう人がゴロゴロいる門下もあるもんだなあって思ったわけです。いや、実際、すごかったですよ。

 そして、歌唱は実に見事だったけれど、ステージマナーは素人丸出しだし、ところどころに見え隠れするアマチュアっぽさは、さほどのキャリアのないアマチュアさんだなって感じさせるものでした。それらの見え隠れする部分から、私とキャリアがさほど違わないだろうなあって思わせるんですよ。

 でもね、歌手としての力量は、私とは雲泥の差なんですよ。「同じアマチュアなのに、この差は何?」って思いました。もちろん、個人の資質の違いもあるでしょうが、それだけでは説明が付かないほどの差は何?…ですよ。で、出てきた結論が“先生の教える力量の差”って奴です。

 それを妻に話したところ「だって、この先生、きっと頭がいいんだよ。頭がいいから、教え方も、きちんと筋が通っていて、理詰めで合理的で効果的なんだよ」という返事。確かに、一般の国立大学の大学院を卒業しているわけだから、頭が悪いわけないわな。おまけに、本場ヨーロッパで学び、そちらで修行しているわけだから、持っている技術もホンモノだろうし、自分の音楽的な才能だけで、ここまでのし上がってきたわけじゃないわけで、きちんとするべき下積みをしてきた人は、コーチャーとしても優秀なんでしょうね。

 「ああ、この先生に習いたい!」って思いました。…まあ、あまりに遠方過ぎるし、今習っているY先生もなかなか優秀な方なので、すぐに先生を変えるつもりはないけれど、何かの縁で、私が引越しをして、当地に住まうことになったら、真っ先に、この先生の門下の扉を叩きたい…そう思わされました。

 とにかく、素晴らしい発表会だったんですよ。特に、何人もの人が歌っていた、日本歌曲が素晴らしかったです。

 日本歌曲については、先日、Y先生のコンサートで聞いて、なかなか素晴らしい音楽だなって思ったばかりですが、今回の発表会で聞いて、やはり日本歌曲って、曲自体は素晴らしいものがあるなあ…って思った次第です。

 では、なぜ、私は今まで日本歌曲を軽んじていたのかと思いを馳せてみたところ、どうやら、今まで聞いた日本歌曲があまりにヘタクソだったからじゃないかという結論に、思い当たりました。無論、プロの歌手の歌唱の話をしています。

 日本歌曲は日本語で歌われます。日本語である以上、日本語の響きで歌わないといけません。同時にホールでの生歌唱ですから、クラシカルな発声で歌わないといけません。その両立が、昔の歌手はできなかったというか、その両立の方法論を見つけ出していなかったのではないかと思いました。

 ちょっと前までのオペラ歌手の発声って、あまりに日本語の響きとは違っていて、噴飯ものだったでしょ? 子どもの頃、オペラ歌手の歌い方のマネとかして遊んでいませんでしたか?(そんな事をするのは、私ぐらいか:笑)。そんな発声で日本歌曲を歌われても???だったと思います。

 専門的にどうかという話は別として、一般的にクラシカルな歌手の発声が日本語に適応してきたのは、鮫島有美子氏が鏑矢じゃないかな? この鮫島氏の歌う日本語の歌は、違和感なく受け入れられて「クラシックの歌手でも、ちゃんと日本語歌えるじゃん」って事になってきたんだと思います。

 それ以降の、いわゆる若手の日本のクラシカルな歌手たちは、日本歌曲を普通に聞ける歌として歌ってきたと思いますが、私はオジサンなので、どうしても鮫島以前の歌手のイメージが強くって「日本歌曲って、なんか変だよね」って思っていたのかもしれません。

 なんて事を、アマチュアの発表会で感じてくる私も、どんなもんでしょうね(笑)。

 まあ、そのくらいのハイレベルなアマチュアさんたちの声楽発表会を聞いてきたというわけです。

 振り返って、我がY門下の発表会のレベルはと言うと…過去1回しか聞いていないのですが、勝負になるかなあ、ならないかなあ…。まあ、発表会は勝負ごとではありませんし、歌の上手さで劣るなら、エンタメ性で勝負するのもありだと思ってます(今回、見てきた発表会は、歌は素晴らしかったけれど、エンタメ性は、ほぼゼロでしたから)。

 でも、Y門下は、譜面ガン見OKだし、衣装も普段着OKだからな、やっぱり勝負にはならないかな? せめて、私だけでも頑張ろうっと。そのためには、まずは…喘息治療だな。そして、練習練習だな。

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コメント

  1. 河童 より:

    鮫島有美子氏・・・・いいですね~。彼女が日本語で歌っているCDを何枚も持っています。
    確かに昔は「舟は行く行く」が「ホネハヨコヨコ」になるとオペラ歌手も自嘲していましたから。

  2. すとん より:

    河童さん

    >確かに昔は「舟は行く行く」が「ホネハヨコヨコ」になるとオペラ歌手も自嘲していましたから。

     発声のためには、発音を犠牲にするわけですよ。私もやりますよ、イの発音で発声するのが難しい時は、エにしたり、アにしたりして発声します。まあ、これは国内で外国語の歌を歌う時は許される(ってか、目こぼされる)けれど、同じごとを日本歌曲でやったら…そりゃあ大変な事になります。そういう風に、発声の都合で発音を変えるという事が日本歌曲ではできない訳で、そういう点で、日本歌曲は外国語の数倍難しいと、私は思ってます。

     だから私は日本歌曲をあまり歌いたくないんですよ。

     今の歌手は、それだけ昔の歌手よりも、発声も発音も高いレベルの人が大勢いらっしゃるって事なんだと思います。

  3. tetsu より:

    > アマチュアの声楽発表会なんて、あっちこっちで見ている私ですが、

    他の方の演奏をいろいろと聴いてみたい、というすとんさんの行動力には敬服します。
    こちらは、他所のフルートの発表会は指追って数えるくらいしかきいたことありません。演奏を聴くのはきらいではなくて、以前は管打楽器コンクールのフルート部門とか、神戸国際を聴きに行ったことはあります。自分と比べるようなレベルではありませんが、聴き比べるといろいろとあって楽しいです。
    今年は日本音楽コンクールのフルート部門があって、このコンクールはTV放送だけでしかきいたことがないので、どこか1日行きたい、とおもっています。

  4. すとん より:

    tetsuさん

     そう言えば、声楽の発表会と言うのは、結構情報が流れてくるものですが、フルートの発表会ってのは、なかなか情報が流れてこないものです。少なくとも、私のアンテナには引っかかってこないです。今までだって、見に行ったフルートの発表会というのは、すべて友人がらみで“見知らぬ人の発表会”ってのは、フルートの場合ないです。

     …ってか、私の情報のアンテナにひっかかってくる発表会ってのは、音楽関係だと…ピアノ、声楽、合唱、カラオケ、吹奏楽…ぐらいかな? もちろん、市主催のアマチュア音楽発表会とか、某大手楽器店の発表会は除きますが。いや、それらをのぞいたって、フルートって、めったに無いよね。

    >こちらは、他所のフルートの発表会は指追って数えるくらいしかきいたことありません。

     だから私も似たようなものです。フルート教室という文化のせいなのか? フルート教室って、絶対に、あっちこっちにあるはずなんだし、発表会もやっているはずなんだけれど、全然情報が入ってきません。旧門下(笛先生の門下は、門下ごと余所の先生に移動したのです。ちなみにウチのごく近所にお教室があります)の発表会情報すら入ってきませんからね。

     フルート業界は極秘主義なのか?

  5. tetsu より:

    > 声楽の発表会と言うのは、結構情報が流れてくるものですが

    逆にいうと、声楽の発表会の情報が流れる、というほうが笛吹きからすると不思議です。声楽教室のwwwサイトで公開されているのでしょうか。
    フルートの場合、複数の元師匠の様子をはたからみていても、会場手配、プログラム作成、伴走者との調整あたりは声楽と同じですが、パツパツという感じで、広報の余裕があるようには見えませんでした。または先生同士のつながりとかで伝わりやすいのでしょうか。

  6. すとん より:

    tetsuさん

     いえいえ別に変な手は使ってませんよ。一番簡単な方法は、ホールの使用予定をチェックするだけです。市民会館とか市民センター、公民館などの公的なホールはもちろん、音楽関係者がよく使う民間ホールなど、とりあえず、いくつかのホールの使用予定を定期的にチェックするんです。結構、発表会って、その手のホールの予定に入っているんですよ。

     あと、音楽喫茶とかジャズバー、画廊やレストランなどでも発表会をやる教室はあります。そういうところもチェックですね。そうやって、場から検索をかけるのが簡単です。

     あとは、人脈頼み? 友人関係からの垂れ込みとかお知らせも馬鹿にできません。

     でも、フルートの発表会は、なかなか“場からの検索”では見つけられません。うまく、アンテナにかかってこないんですよ。だから、もっぱら友人関係の発表会くらいしか、フルートの発表会って見れないんですね。

     フルートの発表会って、どこでやっているんでしょうね?

    >または先生同士のつながりとかで伝わりやすいのでしょうか。

     H先生は大先生に当たる人なので、すでにお弟子さんや孫弟子さんたちもフルートの先生をやっています。ですから、先生に尋ねれば、いくらでもフルートの発表会なんかは、教えてもらえますが、逆に尋ねちゃうと、必ず行かないといけなくなりそうなので、怖くて聞けません(笑)。

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