ええと、今年は声楽の方は発表会がありません。その代わりに「門下勉強会」というのがあります。で、今年の門下勉強会は、公開レッスンでございました。女性の先生をお迎えして、女性の生徒の皆さんに、日頃キング先生からは習いづらい「オンナのカラダの使い方」って奴を習いましょう、って企画です。ま「女声による女声のための声楽レッスン」ってやつですね。私的には、傍観者的な立場の勉強会となりました。ま、それでも「へえー、そうなんだー」と興味深くレッスンを拝見させていただきました。
なので、姉妹弟子たちは、この時とばかりに、たっぷりボディタッチをしてもらいながら、それこそ文字通りの「手取り足取り」のレッスンを受けたわけです。
と言うわけなので、レッスンの大半は、カラダの使い方のレッスン。特に下半身を中心とした“息の支え”に関する事を、お互いのカラダを触りあいながら確認しあいながらのレッスンでした。聴講生としては、はなはだ蚊帳の外状態なのです(笑)が、これは仕方ないし、そこでの会話も軽く聞き流していました。
と言うのも、腰回りの構造って、男女で明らかに違うでしょ。だから、聴講内容も、どこまで受け入れたら良いのか、私には分かりません。で、聞き流したわけです。間違った情報を入れてはいけませんからね。
どこが男女では違うか。まず骨格が…特に骨盤の形が全然違うわけで、当然、その周辺に走っている筋肉の走り方が違うわけです。肛門括約筋なんて、まるっきり違うでしょ。さらにヘソの位置だって男女じゃ違うし、当然、内臓は無い物が有ったり、有るべき物が無かったりと、まるで違うわけです。“丹田”という言葉一つにしても、その言葉が“ヘソ下”という意味なら、男女では明らかに位置が違うわけだし…。
というわけで、今回は、そのあたりはスルーして(と言うことは、公開レッスンの内容の大半をスルーしてしまいますが…)、その他のレッスンでのやりとりの中で、私が興味深く感じたことを列記します。つまり、備忘録って奴です。
ミ~ソは、女声のチェンジの箇所なので、気合を入れて歌いましょう
この部分はテノールとも重なりますね。ちなみに私はF~F#あたりがチェンジ箇所です。バリトンやバスの人だと、もっと低い音でチェンジになりますね。そういう点では、テノールは女声との共通部分も多く、彼女たちの発声から学べる事もたくさんあるんだろうなあ。
女性は基本の呼吸が胸式だから、常に支えを意識して歌うこと
これは何度もおっしゃってました。確かに姉妹弟子たちは、緊張しているせいもあるのだろうけれど、ちょっと気を抜くと、息が浅くなって、肩を上下して胸で歌ってしまいがちのようです。男は間違っても肩を上下して呼吸することなんて無いですから、そこは確かに、女性にとってはハンデと言えるかもしれません。
この言葉はウラを返すと「男性は基本が腹式だから、女性ほど呼吸を気にしなくてもいい」と言う意味に取られがちですが、男性である私は、支えを意識しないと、ノドで歌っちゃいます。胸で歌うか、ノドで歌うかの違いで、男女ともに、やっぱり支えは意識しないとダメです。そうでなければ、とんでもない所で歌っちゃいますよ。男女ともに、支えを意識することは、とても大切な事だと思いました。
口は拡声器だから大きく開いて歌う事
目からウロコが落ちました。そうだよね~、そうなんだよね~。ラッパを見れば、一目瞭然で、音の出口は大きく広がっていないと拡声できません。先生がおっしゃるには、指が縦に三本入るほど開くように、ですって。そんなに口を開いて歌ったことなど無いよ。
さらに「横隔膜がエンジン。声帯で音を鳴らし、口で拡声する。その他の部位は単に音が通過するだけなので、なるべくジャマをしないように広げておくこと」だそうです。妙に納得です。
共鳴は鼻腔の奥でするから、常にそのあたりを意識して歌うこと
鼻腔共鳴って奴ですね。でも、私はそのあたりを意識すると鼻声になります。これは男女の違いのせいか、それとも個人的な体格/骨格の問題か? 私には分かりません。分からないので、後日、キング先生に尋ねてみたところ「鼻腔の形のせいじゃないですか?」とのお答え。つまり“個人的な骨格の問題”という事です。
鼻腔共鳴は必須なのだけれど、人によって鼻腔の形が違うので、前の方に声を当てていった方が良い人もいれば、むしろ後ろにひいた方が良い人もいるわけで、その辺りの話は、結局“試行錯誤”になってしまうのだそうです。で、試行錯誤をするのは良いのだけれど、そのために間違った道に入ってしまうのはいけないので、常に正しい方向を見ながらの試行錯誤が必要なんだそうです。
息は鼻から吸うのが基本です
これは流派の違いのせいか、性別の違いのせいか、分かりませんが、キング先生とは意見がちょっと違う部分でした。キング先生は“どこで吸う”かよりも“一瞬で息を吸える事”と“吸った息をどう支えていくか”に重点をおいています。なので、口で吸おうが鼻で吸おうが、素早くきちんと吸えれば、それで良い、です。ま、色々な先生から色々な事を学んで、その中から自分にあった方法をチョイスしていけば…いいかな? ちなみに私は…どこで息を吸っているんだろ?
五線よりも上の音の母音は、自分が発声しやすい曖昧母音で歌っちゃいましょう
女声の高い音程の箇所は、正直、何を言っているのか分かりません。「イ」と言っているのか「エ」と言っているのかなんて、前後の文脈で判断しているのが事実ですね。ですから、どうせ聞いて分からないのだから、歌っている方は、自分の発声しやすい母音で歌っちゃえ~という事のようです。ま、これもノウハウの一つですね。
ちなみに、男声はいくら音程が高くなっても、母音の違いが分からなくなる事はないので、どこまでもはっきりと歌っていかないといけません(笑)。
ヒールを履いたら、重心をしっかりヒールに載せて歌いましょう
ヒールのついた靴なんて履かないからなあ…。ヒールを履くと、重心が前のめりになりすぎるのだそうです。だから、ヒールを履いた時は、しっかりヒールに体重を載せて、気分的には後ろにのけぞるような気持ち(実際にのけぞってはいけない)で歌うとちょうど良いのだそうです。もし女装して歌う事があったら、気をつけてみたいと思います。ちなみに、男声は多少は前のめりになって、ファイティングポーズで歌うと良いのではなかったかな?
高い音は頑張ってはいけない、常に楽に歌うこと
これは男女ともに共通な事ですね。
自分の歌声は聞かない事
これは誤解されやすい言い方だけれど「自分の体内に声を残さない事」と同義です。つまり、声はすべてカラダから出してしまいましょうって事です。これはおそらく男女ともに共通な事だと思います。
自分の声を聞こうと意識すると、声が体内に残ってしまいます。そうすると、自分の中ではよく歌えているような気になるのだけれど、結果的には、声がウチにこもってしまう事になり、お客さんにまで声が届かなくなります。自信がない時ほど、自分の声を聞きながら歌ってしまいがちですが、そこは思い切って、ババーンと歌っちゃうべきなんでしょうね。
キング先生が「壁から返ってきた歌声を聞きましょう」というのと、同義だと思います。
歌手はナルシストなくらいでちょうど良い
「美しい私の歌声を聞いてくださ~い!」と言う気持ちが大切。慎ましい日本女性には難しいことかもしれませんね。歌う人はすべからく“オレ様”“お姫様”であるべきなのかもしれません。でなきゃ、人前で大声出して歌えませんって。
イタリア語の母音は深い。対して日本語の母音は浅いので、常に深い母音で歌うようにする
難しいですね。つまり、日本語の母音でイタリア語を歌うなって事です。
LとRをゴッチャにしない。しっかり、分けて発音する
これは歌詞をカタカナ変換しちゃダメって事ですね。イタリア語の歌詞をカタカナ変換して、ラ行をすべからく巻いちゃうという乱暴な事をしがちですか(え、私だけ?)、それはダメって事です。
…実は私はカタカナ変換しない人ですが、それでも時折、LをRのようについつい巻いて発音しちゃう時があります(逆はあまりありません)。外国語って難しいです。
Sの発音に注意
イタリア語のSの発音は難しいです。Sが語頭に来る場合“S+母音”ならSは濁らないけれど“S+子音”になると濁ります。ただし“S+F”の場合は濁らない。さらに語中にある場合でも“母音+S+母音”は濁るけれど、それ以外は濁らない。ああ、難しい。
歌の練習をする時は、歌詞をしっかり朗読する
これはキング先生にもよく言われてますが、実際にはなかなかできません。だって、歌いたいじゃない。歌詞の朗読なんて、面倒だよね。でも、これをするかしないかは大きな違いとなります。朗読ができるようになってから、メロディに載せて練習するくらいが、ちょうどよいのだそうです。
こうやって書いてみると、男女で違う部分もあり、同じ部分もあり、おもしろいですね。まあ、男女では、いや男女に限らず、声種が違えば、持っている楽器が違うわけですから、同じ部分もあれば、違う部分もあって、当然なわけです。
私とキング先生は、ほぼ声が同じ(つまり、持っている楽器の種類が一緒)ですが、姉妹弟子たちは、当然、声が違う(楽器が違う)わけです。声が同じ先生に習った方が良い部分もあるだろうけれど、それでは単なるモノマネになって終わってしまう事もあります。声が違えば真似る事はできませんから、自ずと自分のやり方を追求せざるをえません。その代わり、同じ声だから分かる、細かなニュアンスは教えてもらいづらいです。そういう点では、普段は違う声の先生の元で自分を探しながら学び、時折、同じ声の先生に学ぶというのは、いい環境なのかもしれません。
私も若くてカワイイ女声の先生について発声を習ってみようかな? …なんてね。
コメント
うらやましい企画ですね。
私のほうも例のヴォーカル講座が近づいてきてわくわくどきどきです。
しかも同じソプラノの先生ということでなお楽しみですね。
>Ceciliaさん
おもしろい企画でしょ。多くの先生に師事したCeciliaさんなら、キング先生の企みもよく分かる事だと思います。最近は、声楽/音楽を習うなら異声の先生が、直接的な発声を習うなら同声の先生の方が、色々な意味でアドヴァンテージがあるかな?って思うようになりました。もっとも、同声/異声の前に、先生と生徒さんの相性の方が重要ですが(笑)。
>しかも同じソプラノの先生ということでなお楽しみですね。
でしょうね。声って、自分では気がつかない変わってしまうものらしいので、きっと久しぶりの先生にアレコレたくさん直していただけると思いますよ。特に同声ならではの指摘もあるでしょうから、とても楽しみですね。
フルートでも、胸式呼吸から腹式に切り替える、ということを
先生からだいぶ指導されました。
女の人は日常において、100%近く胸式なので、
今でも慣れるまで困難があり、ほうっておくと胸式になるようです。
特に私は小柄ですから・・・。
楽器としての声だと、女声が好みです。
それは自分の音域に近く、なじみがあるからだと思うのです。
ところで私はほとんど女性歌手ばかり聴くのですが、
男性の声で愛だの、恋だのの歌詞をささやかれると、
なんとなく恥ずかしくなるからです(笑)。
>かさん
>それは自分の音域に近く、なじみがあるからだと思うのです
分かります。私も楽器としての声は、男声、それもテノール限定で大好きです。だから、楽しみで聞く歌手も、ほぼテノールだらけです。
よく、素晴らしい歌を聞くと「心に響く」って言うじゃないですか? 私の場合、素晴らしい(テノール歌手の)歌を聞くと「体に響く」んですよ。この「体に響く」快感が大好きなので、テノール歌手の歌ばかり聞くんだと思います。
他の声種の歌手の歌は「心に響」いても「体に響」かないのね。そこが残念。
…本当は自分の歌が自分の「体に響」いて、快感が得られればいいのですが、そこまでの声ではないのが、これまた残念です(笑)。
>女の人は日常において、100%近く胸式なので、今でも慣れるまで困難があり、ほうっておくと胸式になるようです。
やっぱりそうなんだ…。ではやはり、そこに男女における大きな違いがあります。これは歌だけでなく、息を使うすべての楽器(つまり管楽器)でも同じ違いがあります。ならば、やはり、フルートも同性の先生に習った方が、呼吸や支えなどの面では、いいのかもしれません。
私の場合、は息の支えはキング先生に見てもらっているので、フルートの笛先生が女性であっても、別に支障はありません…。
>男性の声で愛だの、恋だのの歌詞をささやかれると、なんとなく恥ずかしくなるからです(笑)。
かわいいですね。
中学生みたいで
ほんとうに、おかしいですよね。。。[E:wobbly]
でも、本当に照れますし、
歌の中で叫ばれたりされますが、実際では絶対しないだろうに(笑)
なぜ、歌の中だけ??と突っ込みたくもなります・・・[E:gawk]。
実は、先生は男の人なのですが、
男の先生のいいところは、いつも安定していることですよ。
気持ちも状態も。
あと、客観的な見方をできることでしょうか。
自分の主観は示しつつ、主観を押し付けないところとか。
女の人とは相性があって、尊敬できる女性でないと、
習いたい気になれないですねえ~~。
子どものうちは、女の先生でよかったです。
>かさん
>歌の中で叫ばれたりされますが、実際では絶対しないだろうに(笑) なぜ、歌の中だけ??と突っ込みたくもなります
そこが“歌の良いところ”なんですよ。歌の中では、誰もがヒーローであり、ヒロインなんですよ。歌を歌っている/聞いている時は、誰もがファンタジーの世界にいるんです。だから“素”になってはいけないんですよ。たっぷりと、その世界に浸りきらないと…。そういう意味では、歌は、映画や芝居と同じなんです。
>女の人とは相性があって、尊敬できる女性でないと、習いたい気になれないですねえ~~。
あ~、分からないけれど分かる(笑)。そういう意味では、確かに相性って大切だねえ。男同士でも相性ってのはあるけれど、そこまでシビアじゃないかも。
>男の先生のいいところは、いつも安定していることですよ。気持ちも状態も。
いやあ、男も人間ですから…そういつもいつも安定しているわけじゃないんですよ。ちなみに、私は、空腹の時は…荒れます(笑)。何か食べると…落ちつきます。
だから、太るんだよな(爆)。