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新赤盤を聞いてみた

 新赤盤というのは『The Beatles/1962 – 1966 (2023 Edition)』の事で、赤盤こと『The Beatles/1962 – 1966』のリミックス盤の事です。

 ビートルズファンなら知っていて当然の話だけれど、ビートルズ解散直後に、赤盤と青盤という2組のベスト盤が作られたわけで、つまり赤盤は「ビートルズ前期をまとめたベスト・アルバム」なのです。ちなみに青盤はキャリアの後期をまとめたベスト・アルバムだね。

 名前の由来は、レコードジャケットの周囲が赤く縁取られていたし、当時のレコードがリアルに赤盤だったので“赤盤”と呼ばれていました。

 で、今回、ビートルズ最後のシングル“ Now and Then ”の発売に伴い、ベスト盤の赤盤青盤がジャイルズ・マーティンによって、曲目が増やされ、すべての曲がデミックスをされた上でステレオミックスをやり直された、新しいミックス盤として発売されたわけです。

 で、今回のリミックス盤を聞いてみて思った事は、オリジナルミックス盤やそれに準じた2009年版のリミックス版等、旧来のモノは、スピーカーで聴く事を大前提としたミックスだったんだなって事です。

 ビートルズの音源を聞く時に、よく言われるのが「ビートルズはモノラル音源で聴くのがベストだ」とか「ステレオ盤は左右の音が泣き別れをしていて聞きづらい」とかですが、実はビートルズって、たとえモノラルであれステレオであれ、スピーカーで聴けば、それほど違和感を感じる事がないのですよ。特に昔のような、右と左のスピーカーの間隔がせいぜい50cm程度しか無いようなオーディオシステムで聴けば、モノラル/ステレオ問題など、大して気にならないのです。

 実際、私も昔々、レコードでビートルズを聞いていた時は、当然スピーカーで聞いていたわけで、その時は、レコード音源がモノラルであろうと、ステレオであろうと、疑似ステレオ(昔はそういうのがあったんです)であろうと、別に気にはなりませんでした。

 おそらく、モノかステレオかとか、泣き別れがどうのこうのと言われだしたのは、ウォークマン普及後の、音楽をイヤホーン(当初はヘッドホーン)で聴くようになったあたりからじゃないのかな? 音楽をイヤホーンで聴くようになると、今までスピーカーで聞いていた時に気にならなかった事が、気になるようになってきた…というわけです。

 それはプロデューサーのジョージ・マーティンも気づいていたわけで、だからビートルズの初CD化の際には、初期4作はステレオではなくモノラルにしてCD化し、その後の「Help」から「Rubber Soul」までの中期の作品は(当時の技術でできるだけ自然に聞けるように)泣き別れをなるべく解消するべくリミックスし直したわけだけれど、これは当時のファンたちには不評でした。で、それもあってか、2009年に出た(オリジナルマスターからの)リマスター盤では、すでにジョージ・マーティンが引退していた事もあって、会社の方針なのでしょう、ジョージ・マーティンの心遣いは無いものとされ、かつての泣き別れステレオ音源が復活し、今に至るわけです。

 当時からのファンにとっては、ビートルズのステレオ盤は、左右の音が泣き別れでなければならなかったのでしょうね。それ以外は認めない…って意見が多かったのだろうし、泣き別れ支持派にとっては、モノラルミックスなんて、いくら5人目のビートルズと言われたジョージ・マーティンの仕事であっても、信じられない話だったのでしょう。

 でも、曇りなき耳で聞けば、そんな泣き別れ音源は、イヤホーンで聞きづらいのはホントです。あれが素晴らしいと感じるのは懐古主義であり、原典主義であって、今の時代の音楽鑑賞には似つかわしくないわけで、実際、若い世代がビートルズを聴くのは、後期の作品ばかりで、初期~中期が聞かれないというのは、ある意味、当然なのでしょうね。いや、後期の作品だって、別に積極的に聞かれているわけではなく、あくまでも前期~中期と比較しての話のようです。

 だから、2015年の「1+」(ビートルズの21世紀版のベスト盤です)以降、ジョージ・マーティンの息子であるジャイルズ・マーティンを中心としたチームが、ビートルズの音源をリミックスして、今の若い世代にも聞いてもらえるように頑張ってきたわけです。とは言え、技術的な限界があって、これまでは後期の作品を中心にしてきたのですが、ドキュメンタリー「Get Back」の際に開発されたデミックスという技術によって、中期以前の音源のリミックスが可能になり、実際に2022年の「Revolver」はデミックスを使用して、リミックスを行い、素晴らしい作品となりました。

 で、今回の「新赤盤」は、そのデミックス技術を使ってリミックを行ったわけですが、これが実に素晴らしくて、イヤホーンで聴くと、実に聞きやすい作品に仕上がったわけです。なので、音楽をスピーカーで聴く人には不要でしょうが、イヤホーンで聴くのなら、この「新赤盤」は買いです。ほんと、すごいのよ。

 泣き別れが解消されただけでなく、歌や楽器がステレオで今風に定位されていて、各楽器の演奏が実に聞きやすくなりましたし、今までよく聞こえていなかった音が聞こえるようになりました。これは新しい喜びです。特に、今までは、たとえ泣き別れステレオ盤でも、ゴチャッとまとめられていたドラムスやパーカッションとベースが、それぞれ定位が分けられたおかげで、よく聞こえるようになり、改めて「ロックンロールはダンス音楽である」と思った次第です。だって、聞いているだけで、なんだかカラダが動き出してしまうのだもの。改めて、リンゴ・スターって凄腕のドラマーだったんだなって思ったりします。

 ただ、あくまでもデミックスをしてリミックして、各楽器の定位を今風にしただけで、各楽器の音は、あくまでも当時の1960年代前半の音なんですよね。おそらく、これはわざと、そうしているのでしょう。なので、21世紀を生きている我々の耳には、楽器やヴォーカルの音に、今なら当然あるべき、ツヤツヤ感とかキラキラ感とかが感じられません。なんとも、ヌボーっとした音だったり、ボヤっとした音だったりして、音色や音質には“古さ”を感じてしまうわけです。まあ、これは仕方のない事なのでしょう。実は、私的には残念ポイントだったりします(特にベース音は、もう少しどうにかならなかったのか残念です)。

 ちなみに「青盤」に関しては、まだ私の手元には届いていないので、聞いていなかったりします。

蛇足 私は少しでも安価に買おうと思って、アマゾンで輸入盤を選択してボチしたのですが、当然、アメリカのキャピトル盤が来るだろうと思っていたら、ドイツのユニヴァーサル盤がやってしました。ちょっと意外でした(笑)。

蛇足2 記事中のリンクは輸入盤ではなく国内盤へのリンクです。ビートルズ通の方は、少しでも安い輸入盤を購入されるのが良いでしょうが、それほどでもない方は、少々お高くても国内盤を買われた方が良いですよ。国内盤なら、歌詞の和訳や曲目解説などがしっかり付いています。輸入盤は、その手の情報が不要の方か、英語に不自由を感じない方向けの商品だと思います。

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