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男歌と女歌の違いについて

 クラシック声楽で歌われる歌には男性歌手に向けて作曲された男歌と、女性歌手に向けて作曲された女歌があります。

 オペラアリアなどは、そのアリアを歌う役に対して、声種が指定されていますので、そのアリアが男性向けのアリアなのか、女性向けのアリアなのかは、一目瞭然ですが、いわゆる歌曲やリートにも、実は男性向けの曲と女性向けの曲があります。

 それを見抜くのに、最もわかりやすい方法が、歌詞の内容です。日本の流行歌、特に昭和の演歌などは、歌詞の内容が女性目線であっても、男性歌手によって歌われているものがありますが、クラシック声楽の場合は、そういう事はほぼありません。女性目線の歌詞を男性歌手が歌うと…気味悪がられますからね。逆もまずありません。

 そういう点で、性に対する感覚は、我々日本人と西欧人は違うのでしょうね。なにしろ日本には、女形とか宝塚とか、あちらの人たちには全く理解できないエンタメ風習が伝統的にあるくらいですからね。

 無論、あちらにもズボン役という倒錯的な配役はありますが、あれはある意味、そういう設定を楽しむという高尚(?)な感覚だったりするわけです。

 なので、あちらのプロ歌手が歌っているレパートリーを見ることで、ある程度、男歌女歌の目安がつきます。

 もちろん、歌詞の内容的に男女どちらが歌っても構わない曲も、もちろんあります。いわゆる無性の歌詞ですね。

 じゃあ、そんな無性の歌詞なら、本当に男女兼用の曲なのかと言うと…実は作曲家的には違います。作曲家は、歌を作曲する際に、誰が歌うのか…という事を念頭に置いて作曲している事が大半なので、歌詞が無性であっても、メロディーは男性向け、女性向けであったりするわけです。

 では次に、男性向けメロディー、女性向けメロディーって、どうやって見分けるのでしょうか。実はこれも簡単です。それは、その歌で使われている音域の幅によって、その曲が男性歌手が歌う前提で書かれたのか、女性歌手が歌う前提で書かれたのかが分かります。

 実は、男女の声域って、かなり違うんです。もちろん、音程の高低の違いは顕著ですが、それ以上に、音域の幅が全然違います。

 多くの男性歌手の音域って、せいぜい1.5オクターブくらいです。2オクターブもあれば、それはかなり広い音域の持ち主なわけです。ですから、男性歌手が歌う前提で書かれている曲は、メロディーの音域がせいぜい1オクターブか、もう少し広いか…そんな程度で書かれています。それ以上の幅広い音域でメロディーが展開されていたら、まず大半の男性歌手は歌いこなすことができないからです。

 一方、女性歌手の音域は、2.5オクターブから3オクターブあるのが普通ですし、もっと広い音域で歌える歌手も少なからずいます。ですから、男性歌手が歌いこなせない、1.5オクターブの音域の曲とか、2オクターブの音域の曲ですら、女性歌手なら楽々と歌ってしまえるのです。

 つまり、歌のメロディーの音域幅が狭い曲は、男性歌手向けの曲であり、歌のメロディーの音域幅が広い曲は、女性歌手向けの曲であると言えます。

 ただし、音域幅が広い曲ほど、一般的に難しい曲ですから、初心者であったり若手の女性歌手は、男性歌手向けの無性の曲を、キャリアの初期には歌っていたりはします。そんなんです、男性歌手向けの曲って、女性歌手にとっては、比較的簡単に歌えたりするわけです。

 まあ、これは男女で持っている楽器(この場合は声帯ですね)が違うので、仕方ないのですが、男性歌手としては、なんとも忸怩たる思いがしたりしなかったりするわけです。

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