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リズム変換の基本のキのお話[理屈編]

 フルートのレッスンで、リズム変換の基本のキを習ったよ。このリズム変換の基本のキとして、大切なのは、リズムをどう感じるかって事です。あなたはリズムをどう感じていますか?

 私はクラオタなので、もちろんクラシック寄りというか、学校の音楽の時間に習ったように感じています。つまり“一拍を基準”にリズムを感じています。

 一拍が二つまとまってグループを作っていればマーチを感じ、一拍が三つにまとまってグループを作っていればワルツだし、一拍が四つで…まあ普通の曲?って感じですか?

 この一拍ってのが、四分音符だったり八分音符だったりするけれど、まあ、拍子記号の分母に当たる数字に該当する音符がそれで、だいたいはメトロノームの数字と一緒に書いてある音符がそれでしょ。あと、一つのグループと書いたのは、いわゆる小節のことで、たいていは一小節のこと。たまに二小節で一つのグループだったりする曲もあるけれど、一拍が積み重なって、そのグループができていることには変わりない。

 たいていの場合、一つの曲は、一つの拍子(4/4とか3/4とか2/4とか)で通してできています。たまに、三拍子の曲に二拍子の小節が入り込んだりします(変拍子だ)が、それでも一拍が基準なので、何拍子の小節であれ、同じ曲の音符の時間的な長さは全く変わりません。そんなものです。これがいわゆるクラシック寄りなリズムの感じ方。

 習ったのはジャズを始めとする、黒人系の音楽(ポピュラー音楽とはあえて書きません。ポピュラーの中には極めてクラシック寄りの音楽、通常“白い音楽”というのがありますが、ここでいう黒人系の音楽とは、それとは違う、いわゆる“黒い音楽”のことです)のリズムの感じ方で、リズム変換というのは、黒人系の音楽で有効な考え方のようです。

 ここから先は、多少、不正確な描写となりますが、あえて、クラシック的な用語を使って説明しますので、ジャズ寄りの人から見れば「そこ、違うよー」と思われるかもしれませんが、ご勘弁ください。

 まずクラシック系は、一拍という基準を積み重ねて音楽を作っていきますが、黒人系はその逆で、一拍の時間を分割してリズムを作っていきます。

 まず一拍の概念が違います。クラシック音楽では基準の音符(多くは四分音符ですが)を一拍と考えますが、黒人系では一小節が一拍と思った方がわかりやすいです。

 例えば、手拍子。クラシック系(では手拍子は打ちませんが)なら、各基準となる音符ごとに手を打ちます。4/4拍子なら、四分音符一つ分ずつ手を一回。一小節で4回、一曲が16小節からできていれば、64回手を打ちます。この一拍が基準で、これを足したり、割ったりしてリズムを作るわけです。足したり割ったりしますが、あくまで一拍が基準なのです。

 そこへ行くと、黒人系では、一小節が基準なので、手拍子も一小節で一回と考えてください。ですから、16小節なら16回手を打つことになります。でも実際の黒人系の音楽は、とても複雑なリズムの曲が多く、実際は手拍子16回どころで足りるはずの騒ぎではなく、とても細かいリズムで出来上がっています。それはどういう訳かというと、その一回の手拍子の中の時間を細かく分割してリズムを作っていくのです。

 具体的にいうと、一小節(=一拍)を二つに分けたり、三つに分けたり、四つに分けたり、五つに分けたり…。そしてその分けたものを、順次組み合わせてリズムを作ってゆきます。つまり、一拍を細かく分割して、その分割したものを再構成してリズムを作るのです。だから、リズムが細かいのです。

 さらに具体的な話(ただし、かなり不正確で大雑把な話)をします。ここに4/4と表記され、四分音符が4つ並んでいる小節があったとします。そしてその次に3/4と表記され、四分音符3つ並んでいる小節が続いているとします。この二つの小節を続けてどう演奏するかですが、クラシック的な演奏法だと、四分音符は基準ですから、4/4であれ、3/4であれ、音符の長さは変わらず、小節の(時間的な)長さが変わっていきます。つまり、最初の小節は四分音符4つ分の時間(つまり4拍)で演奏され、次の小節は四分音符三つ分(3拍)の時間で演奏されます。

 しかし黒人系なら、ちょっと違います。そのような場合、最初の小節と次の小節の時間的な長さが同じになりますので、4/4で書かれた四分音符は短めに、3/4で書かれた四分音符は長めに演奏されます。つまり小節の時間的な長さが一緒で、音符の時間的な長さが変わります。

 お分かりですか? ついてこれますか?

 ですから、元々三拍子の「チムチム~」を四拍子で演奏しても、小節の時間的な長さは変わりません。拍子が変わったからと行って、音符の移動もありませんので、曲の演奏時間もおそらく変わらないでしょう。しかし、単純に三拍子の時と比べて、四拍子に変換した後は曲の速さが早く感じられるようになります。それは一つの音符の時間が短くなって拍が増え、リズムが細かくなったからです。つまりリズム変換をすると、拍子の数が増えるほど、同じ曲が早く感じられるようになります。でも早く感じるだけで、実際は全然変わらないのです。おもしろいですね。

 このようなリズム変換の利点を述べるなら、一つの曲の中にたくさんの拍子が混在できることです。三拍子の曲に部分的に四拍子を入れたり、その逆をやっても、小節の時間的な長さは変化しないので、いくらでも好きなだけたくさんの拍子を一つの曲の中に混ぜることができます。その結果、一曲の中にたくさんの拍子の音楽が混在してしまっているのが、黒人系の音楽です。それゆえに、黒人系の音楽を正確に五線譜に書き記すことは不可能ですし、なるべく忠実に書き記そうとすると、とても複雑なリズムの楽譜になってしまいます。

 そして、譜面はとても難しく書かれていますが、実際に演奏され、耳で聞いてみると、案外単純だったりするのは、そんなわけです。

 つまり、クラシック系と黒人系では、そもそものリズムに関する考え方が違うのです。そして、楽譜というのは、クラシック系の音楽を記述するために最適化されているので、黒人系の音楽を記載するには、かなり不向きなツールなのです。

 おもしろいでしょ。クラシック畑の人がポピュラーを苦手とする理由の一つが、リズムの取り方が基本的に違うため、うまくリズムがとれないことがあげられます。黒人系の音楽の基準が拍ではなく小節にあることで、曲の中にたくさんの拍子のリズムが複雑に混在してしまい、それがクラシック的なリズム感とは異質なものだからなのだと思います。

 こんな笑い話があります。

 私の知り合いで、黒人系のドロドロとしたジャズやブルースが好きな兄ちゃんがいるのですが、この兄ちゃんがある日、親戚の女の子(小学校低学年で個人のピアノ教室でピアノを習っている子)を車に載せてドライブをした時のこと。もちろん車内のBGMはいかしたジャズだったのですが、その女の子に「オジサン、その音楽、気持ち悪いからやめてくれない」と言われて、エラく心をえぐられたそうです。

 クラシック系のおしゃれなピアノ教室でピアノをお習いあそばしているお嬢様から見れば、ジャズは気持ち悪い音楽なんだそうです。たしかに、リズムとか音階とかが、クラシックとジャズでは違うから、その違いを「気持ち悪い」と表現されてしまっただけの話(ほら、子どもって、無神経な上に、語彙が貧困だからね)のようなのですが…。

 「コルトレーンのどこが、気持ち悪いんじゃーい」と私の前で叫んでも、それは遅すぎ。その子の前でちゃんと言わないとね、オジサン。

 今日は、とても分かりづらい文章で、その上、長文でごめんなさい。これ以上、私にはわかりやすくは書けません。ま、備忘録だから、私だけが分かればいいやと、今日のところは割り切ることにしました。きちんとリズム変換について知りたい人は、それなりの教則本をご覧になってください。よろしくね。

 で、この理屈を踏まえた、実際のレッスンの話は、また明日します。

コメント

  1. Cecilia より:

    >クラシック系のおしゃれなピアノ教室

    昔ながらの発表会定番曲はださいです。
    最近のピアノ曲にはジャズのテイストが含まれた曲も多いし、いろいろな発表会を見ているとそういう曲などを取り入れている教室はいろいろ頑張っているなあ・・・と感じます。(つまりおしゃれなだけでなく、いろいろ研究しています。)
    でもおかたい先生には指導はちょっと難しいかも・・・と感じます。
    湯山昭の「お菓子の世界」ってとても楽しいし、発表会でもよく使われるのですが、ジャズのテイストが出せないと魅力が半減してしまうのですよね。

  2. 小夜子 より:

    理屈で考えると…リズムってそうなんですね~。納得。
    私、あまりリズムって気にしたことが無いです。
    クラッシックもジャズも同じくらい好きだし、カラオケに行けばJ-POPを歌うし、
    若い頃はユーロビート大好きでエアロビクスに夢中。その後ダンスにハマり、ヒップホップに挑戦するも難しすぎて、ジャズダンスに流れた人(今はすっかり運動不足のオバサンですが(^^;)なので、ある意味オールマイティーなのかも。。。
    ありがたい事です♪

  3. すとん より:

    >Ceciliaさん

     おっしゃるとおり、“ださい”ですね。と言うか“古くさい”。私も以前、その手の記事(2007年12月5日 ピアノ発表会を見学して思うこと その7 演奏曲目は40年前から変わんないねえ… http://stone.tea-nifty.com/blog/2007/12/740_59d1.html)を書きました。

     最近の子ども向けのピアノ教則本にも色々とあるようですし、中にはジャズテイストのものもあるでしょうが、その一方で昔ながらの老舗の味を大事に守っているピアノ教室もあるわけです。そんな老舗の味にどっぷり使っているお嬢さん(たぶん、この子は大人になっても、クラシックのピアノ曲以外の音楽に興味を持たなかったりするんだよね)には、ジャズはわけの分からんものでしょうね。

     基礎基本は大切なので、そこはしっかりやるにせよ、やはり時代の空気というのも大切なので、特に子どもをメインにピアノを教えている先生は、その辺をバランスよく指導してやって欲しいと思います。

     って、私が書かずとも、みなさん、とっくにやってらっしゃいますよね。

  4. すとん より:

    >小夜子さん

     音楽を楽しむのに、本来、理屈は要らないのです。それは我々日本語を母語として話す人間が、文法の事を意識せずに話しているのと同様です。だから、音楽を楽しむ趣味人にとって「リズムがどう…」とか「音階がどう…」とか「和音がどう…」とかは、本来は不要な知識なんだと思います。

     というのも、みんな、その辺は“なあなあ”でやっているし、それで結構イケてるし、それで楽しいんだから、OK牧場でしょう。

     ただ、ちょっと面倒な事をやろうとした時に、無手勝流で臨むよりも、多少なりとも知識なり体系なりを知っていた方が楽というわけで、今回の記事は、そんな“多少なりとも知識なり体系なり”という、本当に私個人のための備忘録ですわ。

     でもね、ふと思ったのだけれど「私たちの身の回りにある音楽って、クラシック風味の音楽と、ジャズテイストの音楽とどっちが多いのかなあ…?」とか「コンピューターの打ち込み音楽のリズムの取り方もなんか違和感あるよねえ…?」とか、悩みだすときりがないですね。

  5. 夜希 より:

    ジャズのMidiファイルをきいたらなんてことないけど、スコアにしてみたらえらいことになってますね。
    コピー譜も、苦労して書いてあるけど、聞いたらそんなことないですね。

    曲をやるときは、臨機応変にやらないと、と思います。
    クラシックも装飾の仕方とか時代で違うみたいだし。
    やはり、趣味といってもある程度知識は必要なんですね。

  6. すとん より:

    >夜希さん

     楽譜というか、五線譜に頼りすぎないというのも大切なのかもしれません。無論、クラシック系の音楽の場合はそうではないし、身近なところでは、アルテは楽譜通りしっかりやんないといけませんが、いわゆるポピュラー系は楽譜にしばられ過ぎないように、信用し過ぎないようにする方が良いかもしれません。

     ポピュラー系のミュージシャンの中には、全く楽譜の読めない人もいますが、では彼らはダメなミュージシャンかというと、全くそんなことはなく、かなり腕こきのすごい人もいます。ただ、楽譜が読めないので、クラシック系の音楽は不得手としているみたいですが。

     つまり、クラシック系の音楽も、数ある音楽の中の一つのジャンルにすぎないってことと、今の時代の主流はポピュラー系だということなんだろうと思います。

     あれ? 脱線しすぎ? まあ、いいか(笑)。

  7. もり より:

    今日のお話、とてもとても面白かったです。
    3拍子を4拍子に変換するって全然想像もつかなくって、先日の記事以来、興味津々だったのです。

    私は、教会コーラスと平行してロシアコーラスに参加しています。
    レパートリーは、創設者が自ら耳で集めてきて、アレンジを加え混声に書き直したような曲ばかりなんです。
    現地の住民によって歌い継がれてきた民族の歌もたくさんあります。その中には、リズムとか5線譜をまったく無視したような曲が結構あります。無理に楽譜に起こしてあるから、5線譜のルールもヘッタクレもない。
    それをまた、指揮者のイメージで部分的に速く歌ってみたり、のばして歌ってみたりする、臨機応変な(笑)コーラスです。

    最初はすごく戸惑いました。「あー、気持ち悪い、ゾッとする、やめて~」と思うこともありました。でも、人間って諦めて許容すると結構すぐに慣れるものですね。

    しかしそのナゾが、ようやく言葉で説明してもらえて、スッキリしました!

  8. すとん より:

    >もりさん

     私はロシアコーラスと言うのは存じあげませんが、ロシアはヨーロッパに接しているものの、その文化は独自のものだし、おそらく音楽もまた独自のものがありそうな気がします。きっと、ヨーロッパのクラシック音楽とは、リズムとか音階とかが、かなり違うのでしょうね。

    >現地の住民によって歌い継がれてきた民族の歌もたくさんあります。その中には、リズムとか5線譜をまったく無視したような曲が結構あります。無理に楽譜に起こしてあるから、5線譜のルールもヘッタクレもない。

     でしょうね。

    >「あー、気持ち悪い、ゾッとする、やめて~」と思うこともありました。

     ジャズを始めて聞いた、女の子の気持ちに通じるものがありますね、きっと。

     でも、その“気持ち悪い”ところを通り越すと、何とも言えない、気持ちよさがそこにあるのでは? そこが民俗音楽の魅力なんだと思います。未知の魅力? ね、きっとそうなんだと思います。

  9. ことなりままっち より:

    私はジャズを初めて聞いたのが、多分小学校の6年生くらい。
    オスカー・ピーターソンのトリオでしたが、
    「うぉぉぉ~~すげ~~~!!」
    と、圧倒されまくりで帰ってきました。
    (なんでそんなのにいったかというと、父の仕事関係の方にいただいた)
    バリバリクラシックの私ですがこんなんでした。やっぱりちょっと変わってるのかしらん?

    今はバランスよくいろいろな時代の曲をという指導が多いですね。私はアメリカものの教本を結構メインで使っていますので、ブルースコードとかも出てきますよ。

    楽譜の不便さについては、私も編曲をやったり、エレクトーンではポピュラーを弾いてたので気づいたんですが、アドリブも楽譜に書いてあるとなんかちがうな~というものになってしまいますよね。

  10. すとん より:

    >ことなりままっちさん

     ま、世の中には“完璧なもの”なんて無いッてことでしょうね。(いわゆる五線譜の)楽譜は万能ではないというだけです。じゃあ、万能でないからダメなのかと言うと、そうでもなく、もしも楽譜がなければ、ここまで音楽というものが人類共通の文化財として残ったかと言うと、甚だ疑問。

     ま、楽譜というものには色々と欠点があるという前提で、それなりに有効活用していけばいいのではないかと思ってます。

     むしろ私にとって、それよりも腹立たしいのは、西洋クラシック音楽の優位性という奴かな? 私もクラシックが大好きなんですが、でもこの音楽って、所詮、彼らの音楽であって、我々の音楽ではないのです。我々という言葉に、日本音楽と入れようと、ポピュラー音楽と入れようと、諸国の民俗音楽と入れようと、それは自由ですけれど。

     西洋クラシック音楽の優位性があって、始めて、五線譜が楽譜としてのデフォルトの地位を占めたわけですし…。だから、ヨーロッパ人ではない私としては、ちょっと複雑な思いです。

     でもやっぱり、クラシック音楽は好きなんだけれどねえ…。

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