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アドリブかますのって、楽しい楽しい

 声楽のレッスンの続きです。
 いつも書いているけれど、ドイツ語って難しいです。子音はしっかり喋りながらも、母音はレガートに流れるように歌っていかないといけません。特に、今やっている、8番「Morgengruss/朝の挨拶」はテンポがゆっくりなだけに、ドイツ語の発声のアラも見えやすいので、なおさらに注意と完成度が要求されます。
 それにしてもウムラウトはまだまだです。もっと感覚的に発音できないとダメですね。
 さて、今回のドイツ語問題(?)は“r”の発音をどう処理するかです。
 古語のドイツ語で歌っている人は“r”を思いっきり巻いて「ルルルル…」と発音すれば良いのだけれど、私のように現代語のドイツ語で歌っている人は“r”を英語の“r”のように処理して歌っているわけなので「ルルルル…」とはやらないわけです。良くて「~ル」程度、言葉によっては「…ル」ですらなく、曖昧母音にして歌っているわけですが、この曲のようにゆっくりした曲を現代ドイツ語で歌うと「なんか寂しい」と先生はおっしゃるわけです。
 でもね、ここまで現代語で歌っているのに、急にこの曲だけ古語で歌うのもなんだしね。“r”が物足りないというのは、あくまでも気持ちの問題だけれど、その気持ちは、私だって聞き手としては分からないでもないのです。じゃあ、どう解決するべきかだけれど、気持ちには気持ちで答えるしかないわけで、“r”の気持ちを幾分強く持って、現代語として“r”を歌う…という結論に達しました。だって、そうするしかないじゃん。なので、曲がゆっくりな分だけ、心を込めて“r”を歌う事にしました。具体的には『しっかり舌を巻く』ってだけですが(笑)。
 さて、次はヘンデルの「セメレ」の「Where’er you walk/あなたがどこを歩くとも」です。初めて先生の前で通して歌ってみたよ。もちろん、ダ・カーポで戻った後は、バリエーションを入れて歌ってみました。
 バリエーションを入れる…と言っても、先生がおっしゃるように事前に作曲しておいたフレーズを歌うのではなく、考え方としてはバロックフルートにおけるカデンツァのように、とは言え根本的なフレージングの組み立て方としてはジャズフルートにおけるアドリブ的な発想で、ポピュラーヴォーカルのフェイクのテクニックを使って、控えめに歌ってみました…って、何を書いているか不明でごめん。結論から言えば「私の総力をあげてバロック的なフェイクをかました」って事です。
 なので、同じことは二度とできません。再現性は全くありません。そんな感じで歌いました。でもデタラメじゃないよ。アドリブに関する基本的な事柄は、ジャズ的なモノについては笛先生から、バロック的な要素はH先生から習っているから、それを自分なりに精一杯やってみましたって感じです。
 しかし…アドリブって楽しいっ! よくジャズセッションとかで、アドリブパートになると、延々とアドリブをかましつづけるプレイヤーがいるけれど、あの気持ちがちょっぴりだけ理解できました。アドリブをかましていると、何か変なアドレナリンが湧き出すんだよ。普通に歌っている以上に、気分が高まるんだよ。その高揚感って、もう言葉に出来ない感じです。いやあ、アドリブ楽しい。
 あんまり楽しすぎて、ついついやりすぎてしまうような気がして、だいぶ抑えて歌いました。少なくとも、元のフレーズの形をあまり崩さないように気を使いました。アドリブって、コード的にOKだったら、別のフレーズを展開していくのもアリだけれど、あまり遠くに行ってしまうと、帰って来られなく恐れもあったので、ほんと、控えめ控えめです。 アドリブ以外では、ヘンデルの音楽特有の神々しさを忘れないように歌いました。具体的には「響きはやたらと高く」です。そのためには、めっちゃ腹筋を使うわけで、ヘンデルのメロディって、聞くと簡単そうだけれど、実際に真剣に歌うと激しく疲れます。案外、体育会系のメロディなんですよ。ほんと、腹筋がちぎれるかと思いますよ。ある意味、イタリアオペラよりもしんどいかもしれません。
 神々として天空を飛び続けるのは、案外大変なのです。たかが人間が神様を演じるのって、ほんと大変なんです。

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