スポンサーリンク

フルートの試奏をしてきました その4

 前回の記事はこちらです。

 大展示即売会という、さほど勇気のいらない試奏会に臨んだ私は、約3時間かけて20本のフルート(約1500万円)の試奏をしまくりました。「買っちゃダメ」という笛先生のお言葉がなければ、すでに何本もの笛を購入しているかもしれない私です。それくらい、お好みの笛とたくさん出会っちゃったわけです。この中から、ベストな一本をチョイスするのって、楽しいけれど、つらい部分もありますね。ああ、お金と時間が欲しいです。

 ところで、たくさんのフルートを抱えて、試奏コーナーに店員さんも選定プロも連れ込んでいる私ですが、ちょっと冷静になって、周りを見回す(聞き耳を立てる)と…、いやあ、私、なんか浮いてない? だって、この場にいる人たちって、いかにもお金持ってそうなジイさんと、利発そうな坊ちゃん&お嬢ちゃんばかりじゃん。試奏をしている人もそれなりにいるけれど、誰も私のように、ハ長調の音階を吹いたり「イエスタデイ・ワンス・モア」みたいな、どポピュラーは吹いてないぞ。なにやら細かい音符をヒャララララ~って吹いてるしさ、あっちでもこっちでもドビュッシーやフォーレが聞こえるし…。

 参ったなあ…。「不思議の国のすとん」状態じゃん。もしかしたら、今の私って、すっごく、生意気? 生意気だとしても、命の次に大切なお金でフルートを購入しようとしているんだから、生意気だろうとなんだろうと、勇気を出して、笛選びを貫徹するぞ!

 オー!

 てなわけで、残ったポイントは、あと2点。サクサクと、まとめて片づけちゃいましょう。

7)頭部管銀、管体銀、総銀のフルートの比較をしたい
8)前回気に入った、B社、C社、D社のフルートの各製品を吹き込んでみたい

 前回どころか、今回も購入リストに残ったのは、この三社でした。選定プロさんも、同じ意見で、A社、E社、F社は私の場合は無いと言ってました。これはメーカーの善し悪しではなく、特にE社とF社の場合は、私とフルートの相性があまり良くないそうです。つまり人が変われば、E社もF社も素晴らしい音が出るそうだけれど、私では全然ダメなんだそうです。ふーん、つまり「楽器に選ばれていない」というわけだ。もっとも「F社のフルートは、本当に人を選ぶんですよ。相性の良い人の方が少ないくらいですから」選定プロさんに慰められました。別に慰めてもらう必要は全くなかったのだけれど…。

 だからここを読んでいるE社やF社のユーザの方はがっかりする必要は全くありません。単に、私とはタイプの違う笛吹さんだというだけです。ドンマイ。

 これは人の噂とか評判とかで、フルートを選んではいけないということだね。いくら評判が良くても、そのフルートに選ばれていなければ、買っても良い音など出るわけがないというわけだ。

 とにかく、B社、C社、D社の各ランクの楽器を吹き比べてみたところ、会社による音の傾向はそれぞれあるものの、商品ランクの差は歴然としてました。銀の部分が多いほど、丸く柔らかい音になり、銀の部分が少なくなるほど、軽快ではっきりした音になります。例えて言えば、銀が多いほどレディで、銀が少なくなるとガールなわけよ。で、私の好みは、銀の多い、丸くて柔らかい音、つまりレディな感じの音ね。

 で、吹いてみた感じ、頭部管銀は洋銀フルートにとてもよく似た感じでした。違うのは、いくら吹いても簡単に音が破綻しないこと。これは重要だね。だから、洋銀フルートのような軽快な若々しい音色が欲しいなら、頭部管銀のフルートをチョイスなんだろうな。

 総銀フルートは、当然ですが、私好みの色っぽくて複雑な感じの成熟した音色です。

 で、その中間になる管体銀はというと…、頭部管銀寄り? それとも総銀寄り? 私はその使用されている銀の分量からして、てっきり総銀寄りの音色がするものかと思ってましたが、実は頭部管寄りの音色でした。それもかなり近い感じです。頭部管銀と管体銀の音色の差はそれほど大きくないのですが、管体銀と総銀はまるっきり違う音色です。理屈抜きで分かるほど違います。

 つまり、銀の音が欲しければ総銀を。洋銀の音が欲しければ、予算に応じて頭部管銀とか管体銀を、って感じです。

 実は私、先日までは、フルートを買うなら、総銀フルートではなく、管体銀フルートでいいやと考えていました。だってこの両者は値段がかなり違うもの。私は「安さは正義だ!」と常日頃考えているような庶民なので、どうしたって安いものを買いたくなるわけです。それに、総銀と管体銀ではそれほどの音色の差がないものと思っていたのです。

 それどころか「音はマウスピースで作るもの」なんだから、頭部管銀と総銀の差も大してないだろうとタカをくくっていました。だから、フル洋銀とリップ銀の間に大きな溝があって、あとは連続的にダラダラと音が変わってゆくだろうと勝手に思ってました。

 でも、それは大きな間違い。総銀フルートとそれ以外のフルートの差が大きく、その違いの前では、頭部管銀も管体銀もほぼ同じ種類のフルートと言っても言い過ぎではないほど、差はありません。それくらい、総銀フルートは洋銀の入っているフルートとは別次元の楽器です。つまり、総銀と管体銀のあいだに大きな大きな谷があり、管体銀からフル洋銀までは親戚みたいな感じです。ま、これは私の個人的な意見ですけどね。つまり、総銀とそれ以外では別世界の住民なんです。

 別次元と言えば、ゴールドフルートも別次元だし、木管フルートも別次元。そういう意味では、フルート界は、木管フルート、ゴールドフルート、総銀フルート、洋銀系フルートの四つの世界に分かれるのだと、私の中で先ほど決まりました。[プラチナフルートは吹いていないので、ここでは除外します]

 洋銀系のフルートと総銀のフルート。住む世界が違うので、どちらが良いとか悪いとかはないと思いました。どちらを選ぶかは、完全に好みの問題だし、自分がやりたい音楽ジャンルの問題だと思います。で、私の場合、お財布の好みは洋銀系フルートなんですが、魂の好みはどうやら総銀系フルートです。

 やはりここは、お財布的には、とてもキビシイのですが、洋銀系フルートは購入リストから外すべきでしょうね。好みじゃないものをチョイスできないものねえ…。

 ああ、なんてこったい。残ったのは、お高い総銀フルートばかり。ショック!

 B社(ここはメチャ高い)の総銀が2本。なんでもトーンホールの作り方が違うそうです。C社の総銀も2本。リッププレートが銀のと金の。D社の総銀は3本。こっちは、銀メッキの奴と、メッキ無しで銀の含有率が違う奴です。

 散々吹きました。吹いてもらいました。だんだん絞り込めてきました。

 B社は、C社やD社ほど、ピンと来ません。最初は、選定プロさんイチオシだったのですが、どうやら私との相性はそれほど良くないみたいです。少なくとも、私とC社・D社との間にある親和性ほどの相性の良さはなさそうです。でも楽器そのもののクオリティの高さは感じました。こことの相性が良ければ、楽しいフルート人生が過ごせそうな気がします。そうは言っても、ここは高いメーカーなので、お財布的にちょっぴりホッとしました。

 C社はリッププレート金は前述のとおり、リストから消えましたが、リッププレート銀のものは、かなりいい感じです。さすがは前回、店員さんがお薦めしてくださっただけはあります。音色が好みというだけでなく、抜群の吹き心地です。吹いていて、とても気持ち良くなります。

 D社は銀メッキの奴と、メッキ無しで銀の含有率が平均的なのと、メッキ無しで銀の含有率が高いのの、三種類です。ちなみにメッキ無しで銀含有率の高い奴は、前回「身がよじれるほど美しい」と思った笛です。

 まず、メッキの有無の違いですが、吹きごこちという点ではメッキの有無は関係ありません。たかがメッキですが、若干、音色は変わります。これはもう好みの世界ですね。メッキをすると音の輪郭が多少はっきりするようです。あと、軽く華やかな感じかな? それに笛としての作りが多少変わってきます(メッキは商品ランクが下になります)ので、お値段が安くなります。聞き比べてしまうと…私はメッキ無しの方が好みです。でも聞き比べをしなければ、これはこれで十分美しい音色のフルートだと思いました。

 でも、どうして、高い方、高い方へと、選択してゆくんだい!>自分。お財布のことも少しは考えろ!>再び、自分。

 さて、メッキ無しの二本ですが、銀の含有率の高い方は、例によって「身がよじれるくらい美しい音色」です。特に今回は試奏室という吸音性の高い部屋ではなく、普通のイベントフロアです。部屋が広いせいでしょうか、前回よりも、もっと身がよじれてしまいそうな音に聴こえちゃいました。

 含有率が平均的なのも、メーカーが一緒のせいか、やはり同系統の美しい音です。

 ではこの二つの笛の音はどう違うか? それは“音の深み”かな? 含有率が高い方がより深く感じる音を出します。より“銀っぽい”音って感じでしょうね。さすがは含有率の高い銀を使っているだけあります。

 …と書くと嘘になります。ごめんなさい。

 実は試奏をしている時に「このフルートだけ、他のフルートと音が違うのはなぜ?」と言って店員さんにフルートを渡したところ「(笛の型番を見て)このフルートは銀の含有率がほかよりも多いやつですね」なんていうやりとりがあったくらいで、「銀の含有率の違い -> 音が違う」ではなく「音が違う -> 実は銀の含有率が違いました」です。つまり予備知識無しでも分かるくらい音が違いました。それも聞いた瞬間に分かるほど違います。不思議ですねえ…。

 でもね、吹き比べてみると、銀の含有率が平均的な方が吹きやすいのですよ。それに楽器自体も、こっちの方がよく鳴る。離れて聞いた感じも平均的な笛の方が良いと、店員さんは言いますし、選定プロは遠鳴りがしますと言ってました。(妻は「私はよく分からない」と答えました)。となると、高い方を選ぶ理由はないので、含有率が平均的な方(つまり安い方)を残すことにしました。

 いや、正直に言いましょう。本当は銀の含有率の高い方が欲しいのです。だって、含有率の高い方の音色は深くて美しいのです。吹いてて、うっとりするくらい気持ちいい音出すンだよ。でもね、高価なの(涙)。予算から大幅にオーバーします。高い笛は買えないよね。いくら一人前の社会人で“大人買い”ができると言っても、限界あるもんな。ローンを組むと言ったって、今現在、他のローンだってあるしサ。色々難しいんだよ。

 それに平均的な方と比べると、ちょっとばかり吹くのがラクではない。私の手に余る感じ? そういう事です。いや、そういうことにしましょう。さすがにこれは“高嶺の花”すぎます。だから、平均的な方をチョイスです。

 さて、20本あったフルートが、2本にしぼられました。C社の総銀とD社のメッキ無し平均的な銀含有率の総銀です。残った2本は、音の傾向は違うものの、どちらも好みの音色だし、吹きやすいし、いい感じ。あえて言えば「吹きごこちのC社」か「音色のD社か」って感じです。

 おっと、今日も記事が長くなってしまった。最終的に選んだのはどっちか? それは次回のお楽しみ~。

コメント

  1. かをり より:

    はじめまして。いつも楽しみにしています。
    私は別の楽器ですが 先日 念願のフルートを買いました。
    日本娘ですが 今はまだ 日本ではあまり出回っていないメーカーの リップとライザーのみ銀の物です。
    私自身はまだ頭部管での練習のみですが 楽隊仲間に吹いてもらった所 思ったよりも繊細な音色でした。
    以前 「中学生に45万の楽器はどう?」の記事を拝見しました。
    私は 賛成です。
    廉価モデルは お安く出来る理由があると思います。
    中学生の部活で楽器を始めた私ですが 学年が上がるにつれて グレードの高い楽器の良さを 子供ながらに ひしひしと感じました。
    ただ 私が恵まれていたのは 学校の備品だったということです。
    推測ですが 件の45万円の楽器は 私が中学二年生の時に使い また 社会人になって 初めて自分で購入したものです。
    趣味の範囲ならば 所謂「一生モノ」です。

    貴方様も記事にかかれている通り エントリーモデルは どうしても「底が浅い」感は否めません。
    では 何故フルートは 初心者モデル? それは フルートに惚れ込み過ぎない為です。

    楽器選びは難しいです。
    相性もあります。
    初心者にも可能な限り グレードの高いものを…は 私の個人的なな考えです。

    声楽の練習方法 とても参考になりました。
    レッスンで言われたことを 実践する 当たり前ですが とっても難しいです。
    練習方法は どのジャンルでも同じなのね と つくづく思いました。

    いろいろ生意気なことを書きました。失礼ありましたこと お詫び申し上げます。
    これからも楽しみにしています。

  2. すとん より:

    >かをりさん、いらっしゃいませ。

     フルートを買ったばかりですか、それはさぞ楽しい最中ですね。メーカーとか値段とかグレードとか抜きにして、自分の楽器ってかわいいものですからね。

     楽器とグレードの問題は案外難しいものがあると思ってます。グレードの高いものの方が色々と良いに決まってますが、グレードが良ければ良いほどいいのかと言われると?な部分もあります。

     初心者が楽器にお金をかけられないのは、ある意味当たり前ですが、あんまりグレードが低すぎて、作りがいいかげんだったりしたら本末転倒ですから、ある程度しっかり作られていることが最低条件です。それが本来のスチューデントモデルという奴なんだと思います。

     まあ、そこは最低条件って奴で、そこからどこまで上を狙うかは、人それぞれでしょうね。安い楽器の個性を愛する人もいれば、こまめな買換え&グレードアップを考える人もいるでしょう。一挙にバーンと良いものを買って“一生もの”として愛でるか…本当にひとぞれぞれですね。

     私は本来「安い楽器の個性を愛する」タイプなんですが…、ま、私自身のことは、追々記事に書いてアップしてゆきたいと思ってます。

    >では 何故フルートは 初心者モデル? それは フルートに惚れ込み過ぎない為です。

     あ、分かるような気がする。自分で自分にストップをかけているわけですね。

     私は本来、声楽メインでやってゆきたい人なんですが、最近はフルートにもだいぶ心が割かれています…。これがフィフティ・フィフティなら良いのですが、もしもフルートに対する愛情が、声楽へのそれに勝ってしまったら…、うれしい反面、悲しくなると思いますから。ですから、自分にストップをかけたくなる気持ち分かります。

タイトルとURLをコピーしました