前回の試奏の記事はこちら
さて、またまたフルートの試奏に行ってきました。今度は、勇気を出さずに試奏ができる「大展示即売会」という名の試奏会です。で、それを良いことに、約3時間という長時間で、20本ものフルートを吹いてきました。総計、なんと1500万円程度? やったね!
今回の記事は時系列ではなく、ポイント別に書いてみたいと思います。というのも、フルート20本だよ、時系列で詳しく書いたら、何日もかかってしまいそうなので(笑)、勘弁してください。とは言え、大雑把には時系列順になってますが(笑)。
今回の試奏ポイントは以下のとおり。
1)前回吹けなかった、F社のフルートを吹いてみる。
2)前回吹けなかった、木管及びプラチナのフルートを吹いてみる。
3)前回はゴールドフルートを一本しか吹けなかったので、今度は違うメーカーのフルートを複数吹いてみて、ゴールドフルートの特徴を身体に入れる。
4)C社のリッププレートのみゴールドの総銀フルートを試してみる。
5)前回吹けなかった、外国メーカーのフルートを吹いてみる。
6)前回は総銀フルート(つまりお高いフルート)で各メーカーの比較をしたので、今回は洋銀フルート(庶民向けの笛)で各メーカーの比較をしたい。
7)頭部管銀、管体銀、総銀のフルートの比較をしたい。
8)前回気に入った、B社、C社、D社のフルートの各製品を吹き込んでみたい。
今回は、私たち夫婦と、途中から、前回もお世話になった店員さんに、選定アドバイザーという名のプロ奏者も加わり、あれこれ吹いてみたり聴いてみたりして試してみました。また時折、メーカーさんから熱い話を聞いたりして、前回以上に収穫の多い試奏会になりました。
1)前回吹けなかった、F社のフルートを吹いてみる
今回は「展示即売会」だから、試奏のハードルも低い低いと思って会場に着いたら、会場はイベント会場で展示即売会場ではありませんでした。へ?と思っていると、実は、展示即売会と同時に、各フルートメーカー主催のイベントがあって、イベントの受け付けに行って「展示即売会に行きたいです」と言うと、奥の大きな扉を開けて、次の部屋である展示即売会場に通してくれる仕組みになってました。
全然、ハードル低くないじゃん(汗)。
とにかく試奏は今回で二度目なので、気持ちも大きくなっていたので、受け付けに行って扉を開けてもらいました。慣れって怖いね。
会場に入って、真っ先に行ったのがF社のブース。前回吹いていないので、憶測で判断しちゃいましたが、実際のところはどうなんでしょうか? 確かめずにはおられません。
色々と吹いてみました。前回『無しだな』と思ったE社ほどではありませんでしたが、やはりあまり好きなタイプの音ではありませんでした。とは言え、さすが老舗。普通に「フルートの音」でした。こういうオーソドックスな音の笛も悪くないと思いました。でもすでに何本かお気に入りの笛が頭の片隅にある私にとって、このメーカーの笛が購入リストに復活することはありませんな。
2)前回吹けなかった、木管及びプラチナのフルートを吹いてみる
木管フルートはゴールドフルートほどではありませんが、やはり高額商品ですからね。すべてのメーカーが用意しているわけではないので、2社のブースで吹かせていただきました。
私は当初、木管フルートは、いかにも木管っぽい音がするものと思っていましたし、もしかするとリコーダーのような音がするのかな?とも思っていましたが、実際に吹いてみると、あにはからずや、普通にフルートの音でした。れれれ? そういう意味ではガッカリです。でも、私、こういう音、結構好きだな。
よく古楽系の演奏で聞く、あのフルートの音は、私には出せませんでした。たぶんあの音を木管フルートから引き出すには、奏者側に何らかの才能なりテクニックが必要なんだと思います。そういう意味では、木管フルートって、誰でも吹けるというわけではなさそうです。
で、木管フルート。私が吹いた感じで、現代の金属フルートと違うところと言うと…
ア)音量が小さめかな? でも優しい感じの音がする。音色そのものは私のツボです。
イ)カツーンと抜ける感じもしなければ、笛が鳴るという感じもせず、物足りない。
ウ)気を抜いて吹くと、すぐに音が破綻します。つまり、音のコントロールが難しい…というよりも、私には合っていない?
閑話休題。「音が破綻」と言うのは、意識的に息を抑えないと、音が飽和してしまうことの表現だと思ってください。オーディオ機器的に言えば「すぐにメーターが振り切れる」または「たちまちレッドゾーン突入!」って感じです。つまり、張った音を出そうとしたり、ヴィブラートをかけようとすると、その前に管体からイヤな感じのピーって音が出て、それ以上何もできなくなってしまうことです。未熟と言えば未熟がなせる技なのですが、笛を使いこなせていないという点では紛れもない事実。ダイナミックレンジが小さめの笛ほど音が破綻しやすいような気がします。話を戻します。
木管フルート、サブのフルートとしては、おもしろいかなあ…ってところですが、メインとしては、どうなの?って感じです。ともかく、値段も値段なので、購入リストには入りません。
プラチナフルートを吹いてみたかったのですが、私が探した会社のブースには置いてありませんでした。もしかしたらしまってあって、買ってくれそうなお客さんにだけ出していたとか? ゴールドも高いけれど、プラチナはもっと高いからね。プラチナを吹けなかったのは、残念でした。ま、絶対に買わないから、いいんだけれどサ。
3)前回はゴールドフルートを一本しか吹けなかったので、今度は違うメーカーのゴールドフルートを複数吹いてみて、その特徴を身体に入れる
前回はB社のゴールドフルートでしたが、今回はD社とF社のゴールドフルートを吹いてみました。
私が吹いた限りでは、総銀のフルートほど、一本一本の音の違いは分かりませんでした。つまり私はまだゴールドを吹き分けるほどの力がない(そりゃあそうだよね、フルート始めて、まだ三カ月だもんな)ということ。それでも分かったことは、どのメーカーのフルートであれ、やっぱり金は吹きやすい。吹いて音になる反応はやはり良い。音もとても簡単に出る。つまり、どのメーカーであれ、ゴールドフルートを吹いていると、それだけで幸せになれるのです。
だけど、音そのものは、ちょっと固めでエッジがしっかりした感じで、やはり私の好みではないなあ…という感じ。でも、どれも音量は大きいし、よく楽器が鳴っているのも分かるし、音が部屋に響き渡る感じも分かる。そういう意味では、音色が好みなら、ベストチョイスなんだけれど、そうではないので、私の場合、セカンドフルート候補でしょうね。
でもね、もしもゴールド・フルートを購入して、家で吹いたら、絶対に近所から苦情が来ると思う。それほど大音量だし、よく通る音が出ると思う。近所に民家が無いとか、専用の防音の練習室があるとかいった環境じゃないと、まともに吹くことすらできない。そういう意味では私には実用的ではないな。オーバー・スペックだよ。
そう言えば、後で出てくる選定プロさんにも「すとんさんには、ゴールドはお薦めですね」って言われたし、笛先生からも「金は必ず吹いてきてね」と言われていたもの。私って、よっぽどゴールド体質だと思われているんだろうなあ…、実際、ゴールド体質なんだと自分でも思うし…。
そうそう、自分でゴールドフルート吹いてみて思ったのは、プロ奏者は、単に見栄だけの理由でゴールドフルートを吹いているわけではないのだなあってこと。道具としてのゴールドフルートは、なかなか良いです。いや、ホント、ゴールドいいよ。
でもね、値段もかなりするし、音色も好みではないので、やはり私の購入リストには入りませんな。
4)C社のリッププレートのみゴールドの総銀フルートを試してみる
前回、とっても気に入ったC社の総銀フルート。これにリッププレートが金のモデルがあるので、それにしたら、金の反応性と銀の美音の両方が手に入って最強じゃないかと思ってましたので、さっそく店員さんにお願いをして、出してもらって吹いてみました。
結果。ちょっとがっかり。というのも、確かに息から音への反応性は良くなりましたが、音はかなり固くなりました。言い換えるなら「金っぽくなりました」って感じ? 金の音色は好きだけど、高くて手が出ないというのなら、リッププレート金という選択肢はあると思いましたが、私のように銀の音色のまま、金の反応性が欲しい人には、リッププレート金はお薦めではないです。
金の反応性と銀の音色、両立させるのは難しいみたいです。リップレートのみ金のフルートは購入リストから外れました。銀系のフルートにも、金ほどではないにせよ、吹きやすいものはいくらでもあるので、その中から選んだ方が現実的だと判断しました。
5)前回吹けなかった、外国メーカーのフルートを吹いてみる
外国メーカーも数社来てましたが、結局一社しか吹けません。と言うのも、なんか雰囲気的にウエルカムではなかったんですね。お値段的にも、全く購入リストには上らないものばかりだったので、私もそこまで積極的にはなれなかったという事情もあります。
たった一つだけ吹いてみたG社のフルートは、実は木管でして、それはさきほどリポートした2本のフルートの一つでした。ま、やっぱり日本男子たるもの、国産フルートを吹くべきなんでしょうね。そういう事にしておきましょう(笑)。
6)前回は総銀フルート(つまりお高いフルート)で各メーカーの比較をしたので、今回は洋銀フルート(現実的製品群)で各メーカーの比較をしたい
ある意味、今回のメインの目的はこれ。何しろ、自分の中での高級フルート、総銀フルートは見切りましたが、お財布の都合もあるわけで、現実的な製品群である洋銀フルートでの比較をぜひしてみたいと思っていました。
そこであるメーカーのブースに行って、洋銀フルートを吹いてみようとしたところ、???なんですよ。つまり「無い」んです。「洋銀のフルートはないのですか?」と尋ねると「当社はそのクラスのフルートは作っていません」だと。無いものは比較検討できないわな。
別のメーカーのブースに行っても、やはり洋銀フルートはありません。「洋銀フルートはないのですか?」と尋ねたところ「そのクラスのものは耐久性もなく、楽器自体も4~5年で使えなくなりますので、そのクラスの楽器は今回持ってきませんでした」という答え。あちゃー。なにしろ100万円台のフルートがいっぱい並んでいる、展示即売会だものね、そこに10万円以下のフルートは並べられないってのは、正直あるわな。無理を言って、ごめんなさい。
そこで「フル洋銀のフルートを吹き比べたい」と店員さんに言ったところ(売場には洋銀のフルートも当然あるけれど)即座に却下。理由は「お客様(私すとん)にとって、それは意味のない比較です」とのこと。その代わり「各メーカーのものを、頭部管銀で統一して比較するのが、現実的だと思います」との提案です。そう言われればそんな気もするので、そうしてみました。
というわけで、店員さんがはりきって、日本のフルートメーカーの代表的な6社(つまりA社からF社まで)の頭部管銀のフルートをズラリと試聴コーナーに並べてくれました。
たっぷり自分で吹いて試してみました。また選定プロのお姉さんにもたっぷり吹いてもらいました。結果はつまらないもので、各メーカーの音の傾向は、頭部管銀も総銀も同じでした。
つまり、メーカーが一緒なら、音作りの方向は、頭部管銀であれ、総銀であれ、同じということです(ある意味、当たり前)。だから、比べた結果としては、前回同様、A社の購入はありえず、E社とF社はリストからハズレ、B社・C社・D社が残りました。
店員さんが気を利かせて、一社だけ洋銀フルート(ただしリッププレートは銀製)を持ってきてくれました。吹いてみたところ、やっぱり現実的ではなかったです。あっという間に音が破綻しました。これはとてもじゃないけれど、使えない。洋銀フルートを吹くためには、私の場合、相当抑えないといけません。私には洋銀フルートよりも、真鍮フルートの方がまだ似合います。これでは確かに洋銀フルートの購入は、私の場合、現実的ではありませんでした。店員さんのお客さんを見抜く力はやっぱりすごいね。
一般的には、洋銀フルートは吹きやすく、銀が多くなるほど吹きにくくなり、金はとても吹きづらいと言われているようで、ネットでもそういう記述を良く見かけますし、おそらく、多くの人にとって、その感想は正しいのだろうけれど、私個人にとっては、それは全く、逆。
私には金が一番吹きやすく、銀がその次、洋銀は…ねえ? 真鍮は銀と洋銀の間くらいかな? 洋銀よりは銀に近い感じだけど。ま、何を吹きやすいと感じるかは、人それぞれってことで勘弁してください。
ところで、残るポイントは、あと二つ。しかし記事が例によって長くなってきましたので、続きはこちらで。
コメント
確かに金は人により鳴りすぎて聞いてる方が耳が痛くなったりします。先日レストランでフルート演奏つきお食事した時は高音が金属的な音が出すぎるフルートで(演奏者にもよると思いますが)辟易したことがあります。
私も銀独特の柔らかい音の方が好きです。
>あゆみさん
ゴールドフルートでも高音を優しい音で吹く人はいくらでもいますから、その演奏者は本来ゴールドフルートと相性が良くない人だったんでしょうね。でも、プロだからとか、人前で吹くからとか、の理由でゴールドフルートを選択したんでしょうね。
プロは見た目も大切ですからね。ナメられてはいけませんし。
フルート演奏つきのお食事は、ちょっとうらやましいですな。でも、今の私なら、食事の手を休めて、本格的に鑑賞しちゃいそうで怖いです。
数か月前のことでビギナーの真剣さで聞いて「何これ?」と思ってしまったわけで・・・。演奏者も真剣に演奏してなかったのかも・・・。演奏終了後「フルート習ってます」というと「えー!お耳汚しでした」なんて言われてしまったからです。
この人はムラマツ吹くとうるさすぎる(本人談)のでこのメーカー(比較的鳴りにくい)にしたそうですが、やはり合ってませんね。
確かに世界のプレーヤーで金で甘い音を出す人はいくらでもいますね。ランパルさんも柔らかい音だけど金だったと思いますが。
>あゆみさん
フルートと奏者の相性問題って、もしかすると、すごく根の深い問題なのかもしれませんね。今回、たっぷりフルートの試奏をして、一本一本、本当に違うなあ…と思うようになりました。そんな意味でもフルートのチョイスって,難しくっておもしろいのだと思います。
あと、どうやらフルートも人も成長するみたいで、今は相性が良くても、しばらくすると合わなくなったり、今はそれほどなくても、吹いているうちに、相性がだんだん合って来るパターンもあるみたいで、そんなことを考えると、その奏者さんは、愛機と相性が合わなくなりつつある時期だったのかもしれません。
奏者と楽器の相性うんぬんを考えるようになるなんて、フルートを始めて、また一つ、音楽を聴いて楽しむチャンネルが増えて、うれしいです。