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フルートの試奏をしてきました その2

 昨日の記事の続きからです。

 とにかく、A社のインライン・リング式総銀モデル、B社のカバード・オフライン総銀モデル。B社のインライン・リング式ゴールドモデル。C社のリング式・オフライン総銀モデルの4本を、たっぷり一時間かけて、ピーヒャラピーヒャラ試奏をしたところまで、お話は進んでいたと思います。

 しばらくして、店員さんがやってきたので、店員さんにこの四本のフルートを吹いてもらうことにしました。私よりもずっと上手な人に吹いてもらえば、また笛の印象も変わるかもしれないと思ったからです。あと、聴く人の立場になって、これらのフルートの音色を観察したいと思ったからもあります。

 店員さんは持ってきてくれた順番で快く吹いてくれました。「ほんのアマチュアなんですが…」と言ってましたが、どうしてどうして、メチャメチャうまい人でした。

 A社のフルートは…店員さんが吹いても私が吹いても音色には大差なし。店員さんの方がずっと上手なので、高音を巧みに出してましたが、所詮それだけの話です。きっと、この笛は誰が吹いても同じ音しか出ないんだと思います。A社のフルートは絶対に買わないぞと心の中で決めました。

 B社の総銀のフルート…店員さんの音は私の音とは、別の楽器かと思うくらい、全く違います。どっちが良いとか悪いとかの問題ではなく、それは好みというか個性というか、そのレベルの違い(もちろん技術面は大いに違いますが)だと思いました。演奏者によって、これだけ音の変わる楽器は、きっと購入しても、こちらの上達度に応じて、その音を変えてくれるのではないかと思いました。すこしばかり高価ですが、それだけの価値はあるフルートだなあと思いました。

 C社のフルートは…店員さんの音は、とてもきれいで私の好きな音です。私の中のフルートの美しい音のイメージにまさにぴったり。私の吹く音とは違いますが、全く違うというわけではなく、私の出す音の延長線上に店員さんの音がある感じです。ですから、奏者の腕前に応じた音を出しますが、それでも楽器としての自己主張もきちんとしているという、B社の総銀ほど幅広い音色は持ち合わせていないようですが、これはこれで、購入したら楽しめる楽器だなあと思いました。とにかく美しい音を奏でるフルートです。

 ゴールド・フルートは同じB社のフルートとは思えません。B社の総銀フルートは深みと潤いのある音を出しましたが、ゴールド・フルートは音も固めであんまり好きではありません。吹いているとあんなに楽しいのに、聞いている分には取り立てて、どおってことない感じです。私が吹いても、店員さんが吹いても、好印象にはならないって、金って、プレイヤーズフルートなのかな?

 店員さんに感想を求められたので、正直に伝えたところ、さらに二本のフルートをもってきてくれました。

 D社のフルートは総銀ですが、吹いてみたところ、すごくいい音がします。なんか身がよじれるくらい美しい…。C社のフルートの音が気に入っていた私ですが「C社もいいけど、D社もね」って感じになりました。聞けば、D社のフルート。これもハンドメイドだそうです。さらに言うと、他のフルートとは使っている銀の純度が違うそうです。「お客様はこちらのような音がお好みではないかと思いまして…」と来たもんだ。短時間で客の好みを見抜くとは、凄腕店員だ。ちなみに店員さんが言うには「銀の純度が違うと音が変わる」んだそうです。で、私の耳は純度の高い銀の音が好きってわけだ。でもこいつ、総銀のくせにメッチャ高いのよ。

 このあたりで、さすがに「イエスタデイ・ワンス・モア」に飽きたので、今度は音を探しながら、ビートルズの「イエスデイ」を吹き始めた私です。はい、イエスタデイつながりで~す。

 E社のフルートは「これはどうでしょうか…」と何やら言いたげに渡してくれました。このフルート、リッププレートとかその他のところに部分的に金を使った銀のフルートです。吹いてみました。ゴールド・フルートほどではありませんが、これもなかなか気持ちの良い笛です。リッププレートだけでも金だとやはり違いますね。演奏している感じはなかなか良いです。ゴールド・フルートが欲しくなった私ですが、リッププレートが金ってだけでも、かなり満足できるかもしれない。しかし、このフルートの音は、全く私の好みではありません。これはおそらく素材のせいだけではなく、メーカー自体の目指している音色がキライなんだと思う。

 E社の部分的にゴールド・フルートは吹いていて気持ちいいけれど、その音は全く好みではないので、なんか吹いていて不思議な気分になりました。でも、このメーカーの音が好きという人の気持ちは分かるような気はします。なんか華やかな音なんだよなあ、薄っぺらだけど。繊細でたおやかな感じだね。低音ですら頼りなげではかなげで…。私の購入リストからは、A社同様消えました。

 ちなみに今回、有名な国内有力フルートメーカーである、F社のフルートは試奏しませんでした。それは私を観察した店員さんが、これは合わないと思って出さなかったのだろうと思います。だいたい、色々なフルートブログで、C社とE社&F社の音色は対極にあるように解説されている事が多いですが、私の好みはたぶんC社の音色なんだと思う。そんな私の好みを短時間で見抜いた店員さんは、だからF社のフルートを持ってこなかったんだと思う。私はこの店員さんに、すっかり笛の好みを見抜かれていたわけです。すごいぞ、店員さん。

 と言うわけで、試奏してないけれど、F社も購入リストから消しておこうっと。

 六本のフルートを取っ替えひっかえ吹いていたら、あっと言う間に2時間が経ってしまいました。試奏って、本当に楽しい! もう夜も遅くなっていたので、やめましたが、時間さえ許されれば、あと4~5時間は吹いていたい。

 っていうか、よくも2時間も笛が吹けたものです。それもラクラクと。

 チャイナ娘を2時間吹き続けるのは、たぶんできません。だって、そんなに楽に吹けないもの、チャイナ娘。

 今回吹いた、六本の笛は、好き嫌いはたしかにあるけれど、みなどれも、良い笛だと思います。最初こそ、音が出しづらかったりしましたが、すぐに慣れてしまい、慣れてしまえば逆に楽に吹けました。

 初心者の頃より、いい笛を持って練習を始める人は、すぐに上達する、という話を時折耳にしますが、納得しました。音を出す、ピッチを合わせるというところに気を使わずに、すぐに音楽と面と迎えることができるのは、とても良い条件でスタートラインに立っているのも同然です。道具は良いに越したことはありません。

 私のチャイナ娘も、もう少し道具として、良いレベルのものだったら良かったのになあと思いますが…値段が値段なんだから、文句を言ってはいけませんね。

 ちなみに、今回冷やかしたフルートの総額は約400万円ですよ。余裕で乗用車が買えちゃいますね。すごいですね。六本合わせても、私、片手で持てますよ。それで400万円。ほんと、フルートって高価な楽器です。

今回の試奏のまとめ

 1)インラインでもオフラインでも、とにかく私的には問題なし。

 2)リング式は練習をすれば、きっとすぐに乗り越えられる。それまでは部材で穴を塞げば問題なし。

 3)素材や設計による音の差もあるだろうけれど、メーカーによる差はかなり大きい。とにかく、A社はありえない。E社は好みではない。おそらくF社も好きにはなれないだろう。買うなら、B社かC社かD社の三択だな。

 4)現時点の力量や好みやお財布の中身で考えればC社で決定だが、将来に渡って使用する渾身の一本と考えるとB社の総銀もあり得る。予算に余裕があればD社の純度の高い総銀モデルも良い。

 5)予算にもっともっと余裕があれば、ゴールド・フルートもありと言うか、予算に余裕がなくてもゴールドが欲しい。B社のゴールドは音色的には取り立てて言うべきことは無いけれど、何より吹いている自分がとても楽しいのが良い。ああ、ゴールドが欲しい。

 6)リッププレートだけゴールドと言うのもかなり良い。今回は試奏しなかったけれど、C社には総銀(だけどリッププレートだけゴールド)というフルートが何本がある。これなら、ゴールドのレスポンスにC社の総銀の音色になるので、無敵ちゃうだろうか?

 7)今回試さなかったけれど、金メッキのフルートってどうなんだろう? 総銀に金メッキなら、これもなかなか良いような気がする。

 8)外国製のフルートも今回試せなかったけれど、外国製であってもなかなか良いものがありそうな気がする。

 9)楽器の音の善し悪しは、楽器だけの性能では決まらないみたい。演奏者の技量というか、ずばりクチビルの個性が大いに関係していそうだ。フルートは実に演奏者によって出てくる音がかなり違う。ブランドで楽器を選ぶと失敗するかもしれない。そういう意味では他人の意見(インターネットやブログを含む)はあくまで参考意見。ただただ自分のフォースを信じて楽器選びをしないとね。

 10)Eメカのようなギミックはたぶん無くても大丈夫。自分にぴったりの楽器を選ぶことができれば、なんとかなりそうな気がする。

 11)木管やプラチナを吹いてくるのを忘れた! 残念。

 12)試奏はやっぱり根性が試される。一人で行ったら、勇気ある撤退をしていたかもしれない。そういう意味では同伴者がいると、後に引けないので、良いかもしれない。

 13)試奏は楽しい。時間があっと言う間に過ぎてしまう。私もまたやりたい気がするけど…最初のハードルが高いんだよ。でも、そのハードルを乗り越えてしまうと、とっても楽しいものよ、試奏って。

 ああ、B社のゴールド・フルートが欲し~~~い。とお~~~っても高いけど。ああ、欲しい欲しい欲しい、ゴールド・フルートが欲しい! こうなるのを恐れていたのに、予感的中、私混乱中。

 今回は、総銀という共通項で各メーカーごとの音色の違いについて検討した試奏でした。これでそれぞれのメーカーごとの音の傾向というのを、だいたい把握できたような気がする。次はメーカーを一つに絞って、材質の違いによる音色の違いについて試奏できるといいのだけれど…また、あのゴージャスな雰囲気のところに行って試奏する? そりゃあ、やっぱりムリムリムリって感じ。でも、した方がいいんだよなあ、楽しいし…。

 そうそう、ゴールド・フルートばかりを並べて、試奏したら、うっとり天国にいるような気持ちがするだろうなあ…。でもさすがに冷やかしで、そこまではできないよねえ…。

 ところで、試奏して帰って来たら、チャイナ娘がとっても不憫で貧弱でみすぼらしい笛に感じられました。だって、東京で会ってきた娘さんたちとは、全然違うんだもん。特にオンチなのは困りもの。さらに思ったのは、チャイナ娘、絶対に故障しているね、これ。低音のドがあれだけ出づらいのは、個性ではなく、故障でしょう。というか、欠陥? まだ、アルテに低音のドは出てこないからいいようなものの、これでは練習にも差し支えるね。

 やっぱり、チャイナ娘は引退だね。でも次のフルートと言っても、すぐには買えないよ。だって、良いフルートって高いもん。はあ、どーしましょ。

コメント

  1. めいぷる より:

    試奏お疲れ様~、個性豊かで面白いでしょ?おなじ「フルートという楽器」なのにねぇ、これに奏者の個性が加わるから、例え似ていても2つとして同じ物はなくなるんですね♪

    笛先生の「絶対買っちゃ駄目」が無かったら危険だったんじゃないんですか?(笑)

    今度は外国生まれさん達も試奏してみてくださいな。
    もっと個性差が激しくって面白いですよぉ~♪

  2. 通りすがり より:

    通りすがるどころか、昨日今日と待ち構えてました(^_^;)

    詳しいリポートありがとうございます。とっても楽しく読ませていただきました♪
    音の魅力って楽器の個性と演奏者の個性、両方から生まれるものなんですね。納得です。
    そういう意味では、声楽は本人の体のみ?!これもまたすごいことなんですね。

    それにしても総額400万!
    (ももねこさんなんて1本420万!!)
    貴金属宝石類やバッグなどに何百万、何千万とかける人もいますから、だったら楽器にかける方が素敵…なんてどちらにしてもそんなお金も勇気もない私です。

    さらに、すとんさんはフルートを始められてまだ日が浅いのに、吹きやすさとか音の個性まで(自分の好みの音まで)わかるなんて、すごいです!

  3. すとん より:

    >めいぷるさん

     いやあ、本当に試奏ってするものですね。私も実際に行なうまでは、試奏の必要性など感じていませんでした。「多少の違いはあれ、全部フルートだろ。そんなに目くじら立てるほどの違いがあるわけないだろっ!」って感じでしたが、ごめんなさい。私、間違っていました。

     確かにどれもこれもフルートでしたが、目くじら立てるほどの大きな違いがありました。いやあ、本当に違う、全く違う。

     おっしゃるとおり、個性豊かな楽器です、フルートは。

     おまけに、同じ楽器でも奏者が変われば、音が変わるから、これまたやっかい。そういう意味では、どのフルーティストさんも、One & Onlyな音で吹いているんですよね(厳密に言えば、どの楽器のどんなミュージシャンもそうなんだけれど)。

    >笛先生の「絶対買っちゃ駄目」が無かったら危険だったんじゃないんですか?(笑)

     かなり危なかったです。いや、ほんと、もう少しで大人の必殺技「カードでローン」を使ってしまうところでした。いやいや、試奏しながら、店員さんに「このお店、ローンできますよね?」って、うっかり確認しちゃった私ですから。

    >今度は外国生まれさん達も試奏してみてくださいな。
    もっと個性差が激しくって面白いですよぉ~♪

     ぜひ、やってみたいです。問題は、またあの「試奏のハードル」を越えなければならないという点ですが…。どこかで気安く試奏できる場所&チャンスはないかしら?

  4. すとん より:

    >通りすがりさん

    >さらに、すとんさんはフルートを始められてまだ日が浅いのに、吹きやすさとか音の個性まで(自分の好みの音まで)わかるなんて、すごいです!

     いや、ぜんぜん、まったく、すごくないです。

     と言うのも、やってみれば、誰でも分かります。それくらい、アッケカランと違うんですよ。

     吹きやすさは、本当に吹いてみれば、理屈抜きに分かります。また吹き心地も、笛によって様々です。フルートのカタログを見ると、歌口のカットとか頭部管の作りとかリッププレートの素材の違いとか、なんか色々とあって、商魂たくましいなあと以前の私は思っていましたが、今は違います。それくらい、吹き心地って違うんです。違うからこそ、こだわる人はこだわるのだと思います。

     フルートの音の個性も、これまたすごく分かりやすいくらい違います。これも実際に吹いてみれば理屈抜きで感じます。

     もちろん音の好き嫌いはその人その人の好みですから、何とも言えませんが、私は笛歴は短くても、クラオタとしての人生はそれなりに長いので、一応、「好きな音」の傾向は自分なりに分かっています。そこは本当の初心者とは違うかもしれません。

  5. ももねこ より:

     その1に引き続き、たいへん面白く拝読しました。

    ももねこも 中国製の¥4万の お気に入りのフルート持ってました。
    2年程前、発表会を前にして、先生に「この中国製で出ようか?14K(パールのオペラ)で出ようか?」って相談した事あります。
     
     ところでA B C D E Fの社名 是非知りたいのですが、
    イニシャルだけでも証してくれるとうれしいです。
     みんな そう思ってると思いますお!

  6. すとん より:

    >ももねこさん

    >この中国製で出ようか?14K(パールのオペラ)で出ようか?

     いやあ、4万円と420万円が天秤にかけられてしまうというのも、おもしろいと言えばおもしろいですなあ。でも、妙に納得です。

    >ところでA B C D E Fの社名 是非知りたいのですが、
    イニシャルだけでも証してくれるとうれしいです。

     墓場まで持っていくつもりです(笑)。

     かなりはっきり書いたので、ブログとかメールとか、いわゆるデジタル世界にはヒントも書くつもりはありません。リアルな知り合いなら口頭で教えちゃいますが…。

     デジタル世界では、情報というものは、コピー&ペーストでどこまでも広がってゆきます。単なるフルート初心者の個人的な趣味趣向に走った感想が、いつのまにか一人歩きして、変な権威付けされた情報にならないとも言えません。それでは、一所懸命がんばっているフルートメーカーに申し訳ないですからね。それにフルートメーカーにだって社員はいますし、ファンもユーザーもいます。

     というわけで、分かる人には分かるようにヒントは少なからず入れてありますので、あとはそれぞれで暗号解読に励んでくださいませませ。

  7. aky より:

     長時間の試奏、ご苦労様でした。すとんさんが、フルーティストの性(さが)とも言える、終わることのない「理想のフルート探し」の長旅に船出されようとしている様子が読み取れまして、楽しく拝見させていただきました。
     小生は、メーカー、材質がそれぞれ異なる、三人娘を抱えていますが、その日の気分で三人とも別々の音色を出してくれ、どれが一番のフルートだとは言えません。
     ことほどさように、フルートは主観的・個別的・気分的な生き物でして、万人に一番のフルートなぞありえないと思います。その意味で、すとんさんがメーカー名を明らかにしなかったのは正解でしょう。なにしろ、わが日本は、「富士山は日本で一番高い山である」と「富士山は日本で一番美しい山である」の違いを学校で教えてくれない国ですから。

  8. すとん より:

    >akyさん

     実は今回の試奏をして思ったことは、フルーティストにとって「渾身の一本、最良の一本なんてありえない」ということです。つまり、フルートって本当に個性的なので、「これ一本あれば、もう笛はいらない」なんて事にはならないということがよく分かりました。

     みんな違うので「これもいいけど、あれもいい。こっちが好きだけど、あっちもお気に入り」という状態に簡単になってしまうなあ…と思いました。

     でも、そんなに遠くないうちに、新しいフルートは購入するつもりです。早晩チャイナ娘には引退してもらうつもりです。しかし、次に買ったフルートは、おそらく引退することはないでしょう。では、ずっとそのフルートを吹き続けるかというと…おそらくそれもないだろうなあと薄々と感じてます。それを吹きつつも、違う個性の笛を見つけ、それはそれで愛でるようになり、気がついたら、数本のお気に入りの笛を所持している…となるのではないかと思ってます。

     ので、次に買うフルートは、ある程度の期間(その次の次のフルートの購入資金が溜まるまで)は、それ一本でいくしかないので、自分にとってメインとなる、いわば本妻となるような笛を考えていますが、その一方で「きっとまたすぐに別の笛が好きになるに違いない」とも思ってますので、肩の力を抜いて「いづれ買い足すもの」との考えで、お気楽に購入フルートを考えてゆきたいと思ってます。

     そんな意味で、前回の試奏では割とお高い笛ばかりを試してみましたが、おそらく実際の購入の際には、リーズナブルなものから選択することになるかなあ…と思ってます。もっとも、次の笛は、先生と一緒にバッチリと考えるつもりですけれど。

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