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LFJ その1 ヴィオラ・ダ・ガンバのマスタークラス

 さて、今年もラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(以下LFJと略)が開催されました。私も例年のように、初日と最終日に参加しましたので、例年のように、自分の記録のために記事をアップしていきたいと思います。

 2017年の今年、私的にショックだったのは、パソナがエリアコンサートに不参加だった事です。いやあ、ほんとにショックで、パソナのコンサートが無くなったんだから、今年はLFJそのものに行くのを止めてしまうおうかと思ったぐらいです(マジです)。

 もっとも、パソナコンサートが無くなったと知った時点で、すでに有料コンサートのチケットを購入していたので、泣く泣く出かけたのですが、もしも有料コンサートの販売以前に知っていたら、本当に行かなかったかも…それくらいショックな出来事でした。

 ここ数年、私にとって、パソナコンサートありきのLFJだったからなあ…。

 さて、気持ちを切り替えてゆきましょう。

 LFJの初日の初っ端は…ヴィオラ・ダ・ガンバのマスタークラスに行きました。先生は、フィリップ・ピエルロ先生です。

マスタークラス(ヴィオラ・ダ・ガンバ)

 初回のマスタークラスって、10時半開始で、整理券はその90分前の9時から配布で、例年は朝9時に行って整理券をもらっていたのですが、今年は1時間遅れの10時に整理券を貰いに行きました。1時間遅れの登場ってのは…それくらい、例年とは私のテンションが違うって事ですね。30分前に行って、整理券がもらえなかったら見なくてもいいや…くらいの低いテンションだったわけです。…でも、30分前で整理券をもらえちゃったので、例年通り、マスタークラスを見ることが出来ました。

 演目は、マラン・マレ作曲(誰?)の『ヴィオール曲集第3巻 組曲ト長調』の中から『壮大なアルマンド』と『クーラント』の2曲でした。

 曲的には全く知らない曲だったし、曲もそんなに面白いものでもなく、正直生徒さんの演奏にもワクワクしませんでした。ただ、ヴィオラ・ダ・ガンバという珍しい楽器の音楽が聞けたことが収穫かな?

 ヴィオラ・ダ・ガンバと言うのは、古楽器の一種で古楽で用いるチェロのような楽器です。弦は7本で、指板にはフレットがあります。弦が7本と言う事は、かなり音域も広そうです。実際、課題曲の演奏では、先生との二重奏(先生が低音部、生徒さんが高音部を演奏)でしたが、広い音域を縦横無尽に使った感じが、面白かったですよ。

 まず先生は、弓の使い方を丁寧に教えていました。

 弓の全幅をきちんと使い切る事。弓は大胆に大きく使う事。そして、フレーズを弾き終わったら、弓を弦に押し付けたままにせず、弓を空に飛ばす事など、音を生き生きとし、部屋の残響を活用する方向の指導をしていました。また、フレーズの中に、メロディと伴奏が混ざっているのですが、メロディの部分は弓をたっぷり使い、伴奏の部分(装飾的な経過音が多い)では、弓をほんのちょっとだけ使うなど、メロディとそれ以外の弾き分けも注意していました。

 左手の指導もしていました。

 どうやら生徒さんは(癖なんでしょね)フレットの直上に指を置いて弾きがちで、これのせいで、どうも音がくぐもるようなんです。何度も先生に注意されていました。それを先生は注意するために、和音を弓でなく、ギターのように爪弾いて弾いてみせたり、プリングオン/オフをやらせてみたりしていましたが、どうにも上手く行かなかったみたいです。

 私が見るに、生徒さんはヴァイオリンから転向してきて、ヴァイオリンの奏法が抜けていないのではないかと思いました。と言うのも、フレットの扱いがなんともぎこちないんですよ。ヴィオラ・ダ・ガンバはフレットがあるので、むしろ左手はギター的な使い方をしないといけないのです。

 ヴァイオリンとギター。その左手の動かし方は似ているようで、実はかなり違うんですね。私は両方弾くので分かるのですが、ほんと、ちょっとした感覚が全然違うんです。実際、私もヴァイオリンに熱心に取り組んでいた時は、リードギターが弾けなくなっていましたもの。それくらいに違うんです(リズムギターはコード奏法なので、演奏に支障なしでした:笑)。でも、ギターに夢中になっている時でもヴァイオリンは弾けるんですよ。つまり、ヴァイオリン→ギターは難しいのですが、ギター→ヴァイオリンはさほど大変でもないのです。まあ、これは私に限った事かもしれませんが、面白いですね。

 ちなみにヴィオラ・ダ・ガンバは、フレットがある事からも、左手はかなりギターに近いんですね。どうも、そこに生徒さんは苦労しているみたいでした。

 クーラントでは、三拍子のリズムの取り方を注意してました。クーラントは舞曲ですから、強拍の置き方が大切で、機械的な三拍子では全くダメで、だからと言ってワルツのようなリズムの取り方をしてもダメ。つまり、楽譜を見て、そのまま演奏してもクーラントにはならないわけで、じゃあクーラントをどう演奏したら良いかと言えば…クーラントを踊ってみて、そのリズム感覚で弾かなきゃダメみたいで、先生は一生懸命クーラントの動きとそのリズムを教えてくれてました。

 だってねえ…日本人の我々にはクーラントという踊り、踊るチャンスどころか、踊っているのを見ることだって難しいよね。そりゃあ手取り足取りにあらざるを得ません。

 でも、舞曲は実際に踊ってみないとリズムが分からない…と言うのは、きわめて正論だなって思いました。逆に言えば、ダンサーの動きが分かれば、舞曲はノリノリに弾けるわけで、そこが観賞用の音楽と、実用音楽の違いなんだなって思いました。

 時代様式の問題でしょうか、生徒さんは(ヴァイオリン奏法的に)ヴィブラートを付けたがるのですが、それは先生に止められていました。ヴィオラ・ダ・ガンバが活躍したバロック時代、ヴィブラートはあまり使わなかったようです。ヴィブラートの代わりに、クレシェンド&ディミヌエンドを多用して音を膨らませていたようです。ヴィブラートを多用するとロマン派ってぽい音になってしまうんだそうです。

 ヴィオラ・ダ・ガンバなんて、おそらく一生演奏するチャンスの無い楽器だけれど、こうしてレッスン風景を見せてもらうと、知的好奇心が刺激されるものです。

 続きはまた明日。

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