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すとん前史 その8

 声楽の先生から破門を言い渡され、ショックで音楽ができなくなってしまった私でした。

 そこから約15年ほどの月日が経ちました。自分では演奏活動などは全くせず、音楽は専ら聞くばかりになっていた私です。それもクラシック関係の音楽ではなく、専ら昔のロックを中心に聴いていました。たまにカラオケなどに行っても、当時の新曲を追いかける気持ちもなく、80年代のロックばかり歌っていましたね。例えば、こんな曲です。

 アーハーの「テイク・オン・ミー」ですね。

 バンド活動もせず、楽器の演奏もせず、歌うと言ってもカラオケぐらいしか歌わなくなっていた私でした。この時期、何をしていたのかと言えば…専ら仕事仕事仕事でした。仕事人間に成り切って生きていた時期でした。30~40代は仕事だよね。

 そんな私が、ある時、仕事の関係で地元の音楽協会に出入りせざるを得なくなりました。

 で、数回目の音楽協会での会合を終えた時に、懐かしい人から声を掛けてもらいました。その人は、私が若い時にお世話になった合唱団の人で、当時も今も合唱団の幹部の方でした。で、その方から、今、新曲に取り組んでいて、新団員を募集しているから、もし良かったら参加してみないかと…と誘われたのでした。

 T先生に破門されて、心の傷を負っていた私でしたが、さすがに15年もすれば傷も癒えるわけで、誘われた事をきっかけに、私はさっそく合唱団への復帰を目論見ましたが…それは失敗に終わりました。

 その合唱団は、昔は誰でもウェルカムだったのですが、私が復帰を考えた頃は、すでにそれなりの実績も積み、団員たちも上達していたので、そこへポンとトーシローが混ざれるような団ではなくなっていたのでした。

 再入団に当っては、簡単なオーディションがあって、私はそれに落ちてしまいました。

 理由は「声が目立つ」ので、ダメって事です。私が歌うと合唱団が私の声だらけになってしまうので、それでは困るってわけです。おまけに、T先生のところを中途半端な状態で辞めた上に15年のブランクがあったので、声のコントロールなんて全然できず、音程も全然ダメになっていました。

 そりゃあ私が指導する立場でも、断るでしょうね。それくらい当時はひどかったと思います。

 まあ、指導者の方々も知らない間柄ではないので、しばらくトレーニングをして勘を取り戻したら、考え直さないでもないとは言ってくれました。

 そこで合唱団復帰のために、ヴォイストレーニングの個人レッスンをしてくれる先生を探す事にしました。と言うのも、本来ならT先生を頼るべきなんでしょうが、ほら、私、破門されているから(笑)。合唱団の方々が良い先生を紹介してくださるとは言ってくれましたが、それは私の方で断りました。

 だって、先生をご紹介されたら、どんなに遠くの先生であっても、どれだけ謝礼が高価な先生であっても、断れないじゃない? 当時の私は、合唱に復帰するのが第一であって、正直な話、ヴォイストレーニングのために、時間やお金をかける気になれなかったのです。

 だから、ヴォイストレーニングはさっさと修了して、すぐにも合唱に戻ろう…そのためには、必要なことだけ習ったら、いつでも辞められるような、縁の薄い先生を探すことにしました…今思うと、当時の私は、声楽やら合唱やらをなめていましたね、まことに申し訳ないです。

 とにかくヴォイストレーニングの先生を探しました。あれこれ情報を収集して見つけたのが、キング先生だったわけです。安かったし、近かったし、当時の私の条件にはピッタリの先生でした。

 今でこそ、あれこれ批判がましいことも書かざるをえないキング先生ですが、当時の先生は、実に親切で真摯で熱血な声楽教師でした。で、キング先生の元でヴォイストレーニングを受けながら、何度か合唱団のオーディションを受けましたが、ことごとく落ちました。いやあ、それは実に見事なものでした。

 落ちた理由は、色々ありますが、声が悪くて悪目立ちする上に、音程が甘かったのですね、それに尽きます。

 T先生のところで、音程が取れなくなってしまった私は、キング先生の元であれこれ頑張ってみたものの、ますます声は出るようになり、ますます音程問題は改善せず、さらに悪い事にノドで歌うことを覚えて、声の音色まで汚くなってしまったのです。

 声の改善どこか、改悪ですな。そりゃあ合唱団から断られるわけです。

 なにしろキング先生が教える発声方法は独特すぎるんですよ。キング先生に習って、ビックリした事は、それまで合唱団の指導者の方々や先輩から教えてもらった事や、T先生から学んだ事が、ことごとく否定され、ぜんぜん違うアプローチでの発声方法を学んだ事です。まあ、それで私はノドを壊しかけたんだけれどね。合唱に復帰するどころか、あやうく歌えないカラダになるところでした。

 まあ、キング先生のご指導は、熱心だったけれど、とても個性的なメソッドで教えられる方で、常識的な発声指導とは違っていたし、それでも適性があって、効果が出ればともかく、私に限っては効果も見られず、結論的には、私には合わない発声方法であり、指導方法だったわけです。

 ちなみに、今のY先生は、合唱団やT先生から学んだ事の延長線上にある、いわば常識的な発声方法を教えてくださいますので、カラダにも楽だし、安心して学べますし、私自身グングン上達しているしね。私のような凡人は、常識的なやり方が一番合うみたいです。

 とにかく、今はキング先生に良しと言われた事を避け、ダメと言われた事を積極的に行うようにしています。そうするとY先生から「良いですね」と誉められるのです。それもなんか変な話だけれど…。

 さて閑話休題。結局、音程やら音色なんて発声なんですよ。無理のない自然な発声をすれば、音程は自然と正しくなります。ノド声で無駄な力を込めて歌っていては、音程はフラットして当然ですよ。楽に正しい方法で歌えば、そんなに音程なんて外さないものです。音色も同様です。無理のない楽な発声が一番美しい発声なのです。

 発声方法が劇的に変化したT先生時代には、その変化の大きさに声のコントロールがおぼつかず、結果的に力任せな歌い方にならざるをえなくなったので、音痴になっても仕方なかったし、ちゃんと音程が取れるようになるまで学ばなかったのだから、音痴が固定してしまっても仕方なかったのです。キング先生のところでは、大声の出し方は習いましたが、楽で自然な発声に関しては学べず、いつまでたってもノド声で歌っていたし、ノド声歌唱が奨励されていたのだから、いつまで経っても正しい音程やら美しい声やらで歌えるようにはならなかったのでした。

 結局、私の音程問題は、現在のY先生のところで、徹底的に発声方法の見直しをしてもらって、ようやく人並みになったわけです。それでも昔の癖が出て、うっかりノド声になってしまうと、すぐさま音色が悪くなり、音程もぶら下がってしまうわけなのですが…。

 とにかく、キング先生の元で懸命にヴォイストレーニングに励み、合わせて合唱団のオーディションもチャンスがあるたびに受け続けましたが、受ければ落ちて、受ければ落ちてが連続すれば、自然と覚悟も決まります。

 更に、キング先生は合唱が嫌いな人だったし、私の合唱復帰にも反対していた人だったし、事あるごとに私に「合唱なんて辞めて、独唱にしなさい」とクチ酸っぱく言ってた事もあって、ある時、私は合唱で歌う事をやめて、現在のように独唱中心に歌う事に決めたわけです。

 そんなわけで、合唱を諦めた私は、キング先生の元で声楽を学ぶ事を決心したわけです。

 キング先生からは、独唱の素晴らしさと楽しさを教えてもらいました。とりわけ、それまで私は、独唱と言えばオペラアリアしか知らなかったのですが、歌曲の素晴らしさを教えてくれたのが、キング先生でした。その辺は大変感謝しております。

 これ以降の事は、このブログに書かれていますので『すとん前史』は、これでお終いです。ここまで読んでくれて、ありがとうさんね。

 蛇足だけれど、先日、妻に尋ねてみました。今の歌唱力なら合唱団への復帰は可能かな?…と。

 妻の答えは「まず無理なんじゃないの?」でした。理由は「声が全然合唱向きじゃないからね。もっと軽く、Y先生がおっしゃるような、本当に響きだけでも歌えるようになったら合唱もイケるかもしれないけれど、今は全然無理」との事でした。

 そうか、まだ合唱は無理か…。音程もだいぶ改善したし、細かなリズムにも対応できるようになったし、楽譜もそこそこ読めるようになったけれど、声がまだまだダメか。ならば、仕方ない。今しばらくは、やっぱり、独唱に励みますか(笑)。やがて上達して、軽く響きだけで歌えるようになれば、独唱も合唱も両方いけるようになる…んだろうなあ。それを楽しみに頑張って練習に励みましょう。

 という訳で、次回から通常運転に戻ります。

P.S. フルートの事が書かれていないではないか…とお嘆きなあなたへ。フルートはブログを書くようになってから始めたので、左欄の『フルートのレッスン&活動記録』とか『フルート購入顛末記』などをご覧いただけると幸いです。ヴァイオリンに関しても『ヴァイオリンの学習記録』や『ヴァイオンリの購入(&製作)顛末記』にあります。社交ダンスも『社交ダンスのレッスン』にありますので、よろしく。

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