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プロの基準とは?

 昨日の記事のコメント欄でドロシーさんからいただいた質問

>質問ですが、プロとアマの区別って、どこでするのでしょう?

 僭越ながら、私の無い知恵をしぼって、あれこれ考えてみました。

 まず、解答の前に、なぜこのような質問が出てくるのかと言うと…我が国では、音楽家の資格というのが無いからです。そのために、あれこれ混乱が生じているのだと思います。

 分かりやすい話、医者とか弁護士には資格があります。どれだけ医療や法律に関する知識があっても、有資格者でなければなりません。いわば、有資格者がプロであり、無資格者はアマチュアであり、愛好家なのです。だから、ブラックジャックは“もぐりの医者”と言われますが、いわば、彼は“アマチュアの医者”であり、ニセ医者であるわけです。

 国によっては、音楽家の資格のある国もあります。例えばドイツ。ドイツでは、音楽家は国家資格であり、その資格を持っていないと、ドイツ人であれ、外国人であれ、ドイツ国内では音楽でお金を稼いではいけないのです。つまり、無資格者はプロ活動はしちゃいけないわけね。実に分かりやすいです。

 でも日本には音楽家の国家資格はありません。誰でも音楽の仕事で稼ぐことができますし、自分はプロの音楽家であると誰でも名乗れます。だから、プロとアマの境界線を引きづらいのだと思います。

 さて、そんな中、私の身の回りを見渡すと、プロとアマの境界線にも、いくつか違う線がある事に気付かされます。

1)音大卒か否か?

 地域によって多少の違いはあるでしょうが、だいたい地方自治体単位で、プロの音楽家たちの寄り合いである“音楽家協会”と言うのがありますが、ここへの入会資格が『音大卒であること』だったりします。いくら凄腕であっても、普通大学卒の方は入れません。教育大学の音楽科卒とか、音楽専門学校卒とかの場合はどうなるのかは、浅学のため知りません。音楽家協会に限らず、音大卒を音楽家としての資格のように取り扱う人々はかなり多く存在すると思います。

2)演奏に際しギャラが発生するかどうか?

 単純な話で、お金をいただいて演奏するのがプロで、お金を支払って演奏するのがアマです。逆に言えば、お金をいただかない限り演奏しないのがプロであり、お金を支払ってまで演奏したがるのがアマなのです。

 もちろん、演奏のギャラだけで生活できる人もいれば、副業で生活を支えなければ生きていてない人もいて、この方々の分け方も難しいです。演奏のギャラだけで生活できる人がプロであり、それ以外をプロとは認めないという人もいれば、金額はいかほどであれ、演奏が有償であるなら、それでプロであると言う人もいます。

3)事務所(エージェント)の存在

 きちんと音楽事務所に所属していたり、エージェントを雇っていたりする人はプロであり、そうでない人はアマである…という考え方もあります。実際、仕事を依頼する際、音楽家さんに直接頼む仕事(いわゆる“ショクナイ”)もありますが、やはり多くは、音楽事務所経由で仕事の依頼をするわけですから、音楽事務所に所属している事がプロとしての現実的な条件になるのではないでしょうか?

 実際、大手事務所に所属していない人でも、個人事務所を立ち上げて仕事をしているケースが多いです。主に税金関係でそうするみたいですが、逆に言えば、事務所無しで困っていない人は、それなりの仕事しかやれていない…とも言えます。そういう人をプロと呼んで良いのか…という問題が生じてくるわけです。

4)自称しちゃえばプロ?

 案外「私はプロです」と宣言公言し、プロ活動をしている人もいます。私が思うに、これでいいんじゃないかと、個人的には思ってます。「私はプロです」と自称し、周りの人やお客さんが「確かにあの人はプロですね(だから、お金を支払っても良い)」となれば、それでプロでいいと思います。

 自称プロでも、周りが認めてくれなければ、やがて自称もできなくなるわけですし…ね。

5)実績があればプロ

 4)と似てますが、すでに現実的にプロとしてお仕事をしていれば、自称他称問わず、プロと呼んで良いのではないかと思います。

6)その他

 いわゆるレッスンプロの方々(教える事が専らで演奏活動をしていない人々:例えば街のピアノの先生たち)をプロとして認めるか否かとか、大手楽器店の講師資格を持っている人をプロと認めるか否かとか、学校の音楽の先生をプロとして認めるか否か、などという問題もあります。他にもきっと、あれこれ、プロとアマの間の線引きには色々とあるんだと思います。

 細かく考えだすと、あれこれキリがありませんが、当事者的には、生活とかプライドとかメンツとかがかかっていて、大問題ですし、微妙な問題なんだろうと思います。

 なので、自己申告制でいいんじゃないの?って、思う私であるわけです。

蛇足 ではアマの基準って何でしょうね? 単純に「プロでない者はアマチュアである」と言っちゃっていいのか? プロとアマの中間的な存在(セミプロとかハイアマとか)の人々をどう認めるか…ほんと、この手の問題は、考えだすとキリがありません。

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コメント

  1. ドロシー より:

    すとんさん、こんにちは

    なんとなく分かりました。
    1)については大体、音大卒または「同等の実力がある」という文言の有る所も多いですね。「同等の実力」はオーディションなどで判断するようですが、私の出身地で国際ピアノコンクールで優勝したお医者さんが音楽家協会にいます。教育大や短大は私の出身地ではOKです。
    2)同じ人でも、ギャラを貰うこともあれば、自分でお金を払って演奏することもありますね。ギャラがあってもチケットノルマの負担が大きく赤字というのもよくあるケースです。
    声楽に関して3)の話はあまり聞きませんが、4)5)はまさにその通りです。

    逆に実力は音大卒ではないアマチュアでも、人脈があって強い集客力があって、有料で黒字のコンサートを開いて収入があったら、その時点で「プロ」と名乗れるのでしょうね。

  2. すとん より:

    ドロシーさん

    >ギャラがあってもチケットノルマの負担が大きく赤字というのもよくあるケースです。

     チケットノマルと言うのは、アマチュアの見方であって、プロの場合はノルマではなく、ギャラの現物支給なのです。そして、はっきり言っちゃえば、主催者側も予算潤沢ではなかったりするので、ギャラの支払いをチケットでもOKと言ってくれる人(まあ、ザックリ言えば、たくさんのチケットを売りさばける人)を重要な役(主役級って奴だね)に置きたがるわけです。

    >実力は音大卒ではないアマチュアでも、人脈があって強い集客力があって、有料で黒字のコンサートを開いて収入があったら、その時点で「プロ」と名乗れるのでしょうね。

     いやいやいや、人脈があって、強い集客力があって、毎年有料のソロコンサートをやっているアマチュアさんを一人知っていますが、その人の歌唱力って(私自身を差し置いてなんですが)聞いているだけで耳が壊れてしまうような、すさまじい歌唱をする人で、妻と聞きに行った時、「この人の歌は、お金を貰っても聞いちゃダメ」と言って、途中で退席をした事がありますが、この人は、何をどうやっても、プロと名乗っちゃあマズイと思います。

  3. アデーレ より:

    やはりプロの歌唱はキラキラした、ムム、この歌には勝てない!と思わせるくらい普通とはかけ離れた声の持ち主であってもらいたい。そして、いつまでも聞いていたいと思わせる心地の良さかま声になくてはプロではないと思います。まずは際立つ美声であること。あとは潤沢な資金があり、また極めて際立つ美貌があれば、そりゃあ、トップの事務所からお誘いがかかる事でしょうね!(笑)日本人ではそう何人もいませんね。海外の歌手も含め専属を抱える大手事務所に名を連ねる日本人ソプラノ歌手は本当に何人もいませんが、リサイタルはいつも多分、満席。そう、あとね、演技力も声楽には大事。オペラは半分、女優さんですからね。。しかし、そこに所属の歌手たちは本当に実力派、納得ですよ。

  4. すとん より:

    アデーレさん

     プロの音楽家は、アマチュアとは、確実に次元の住民であるべきだし、実際、違う住民です。特に、声楽家の場合は、ギャラが高いですから(基本的には、あらゆるソリストの中でも、その相場はトップクラスとなります。指揮者よりもギャラの高い声楽家なんて、掃いて捨てるほどいます)、確実に別世界の人である力量と存在感が必要とされます。そうでなきゃ、それだけのギャラなんて、手に入れられませんから。

    >演技力も声楽には大事。オペラは半分、女優さんですからね

     声楽家の場合は、音楽の力だけでなく、演技力込みで評価されます。いや、さらに言えば、容姿だって実力に加味されるわけで、本当にプロを張っていくのって、大変だと思いますよ。

     私のようなアマチュアは、近づくどころか、影すら踏めません。

  5. ドロシー より:

    すとんさん

    ノルマ(つまり買い取ってもらうということですね)とギャラは別にしているところもありますよ。チケットの現物支給(買い取りなし)だと集客に協力しないプロもいますよね。
    でもチケットを買い取ってもらうような所で歌う人はプロフィールがいかほどであれ、「プロ」ではない、とすとんさんがおっしゃるのなら、それはすとんさんお基準として、それで良いかと思います。

    プロであれアマであれ、途中で退出したくなるほど下手な人の演奏は時間のムダだから、よほどの義理や恩がある人でもない限り、有料でも無料でも行かないのが賢明です。まぁ、多少強引な人だとしても、色々な断るための言い訳ができますよね。でもその方、実力がダメでも繰り返して来るお客様がいるというのでしたら、プロ・アマに関係なく別の意味で敬服しますね。

  6. すとん より:

    ドロシーさん

    >ノルマ(つまり買い取ってもらうということですね)とギャラは別にしているところもありますよ。

     出演者へのギャラはきちんと銀行口座経由のみで、チケットは申し出があった時のみ融通してくれるというオペラカンパニーの存在を知っています。そういう団体のチケットの場合、出演者の方に「チケットをください」と言っても「ごめん、持っていないんだよ。ぴあで買ってくれる?」とあっさり断られたりします…が、それが健全なんだと思います。

    >チケットを買い取ってもらうような所で歌う人はプロフィールがいかほどであれ、「プロ」ではない、とすとんさんがおっしゃるのなら

     言わない言わない。私は基本的に“自己申告”でいいと思っている人です。

     それでもあえて言えば、事務所に所属している人がプロ…かなって思ってます。だって、ホントの話、私などが音楽の仕事を依頼するなら、やっぱり事務所経由ですって。しかるべき事務所とビジネスの話をして、アーチストを派遣してもらいます。それは音楽家に限らず、イベントとか芸能関係は、みんなそうですって。どこの馬の骨か分からず、ギャラと力量が見合うかどうか分からない人には、仕事の依頼はできないですって。

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