例によって例のごとく、見知らぬ人たちの発表会に足繁く通っている私です。
あちらこちらの(声楽の)発表会を見せていただいて思うことは、教室の数だけ異なった発表会があるって事です。
歌の上手な人たちが多く集まった発表会もあれば、歌の苦手な人たちばかりの発表会もあります。声のよく出ている人たちの多い発表会もあれば、一番前に座っていても、よく聞こえない人たちばかりの発表会もあります。生徒門下生だけで和気あいあいと行っている発表会もあれば、出演者の大半はゲストのミュージシャンの方々という体面重視の発表会もありました。
平均年齢が70歳超という発表会は珍しくありませんが、一方で中高生中心の発表会もあります。まあ、そういうところは、音大受験が目的の教室だったりしますが…。一般的には声楽教室は高齢化が目立ち、50代60代だと若者扱いされます(私もまだまだ若いもんなのです)。
大半の発表会は、誰でも観覧自由&無料なのですが、芳名帳に住所氏名を記入しないと入れてくれないところもあれば、整理券や招待状が必要なところ、関係者しか入れない発表会もありました。ごくまれに、チケットを購入しないと入れない発表会もありました。
また発表会なのに、わざわざ“演奏会”とか“コンサート”などと呼称して、世間一般の発表会とは一線を画している…ような発表会もありますが、大抵の場合、名前ほど中身に違いはありません。
多くの発表会は、土曜の午後に行われますが、日曜の夜とか、平日の午前中に行う発表会もありました。公共の音楽ホールを使用するところが大半ですが、中にはレストランやバーを使う発表会(そういう場所だとミュージック・フィーを支払います)もありました。
先生の経歴がきらびやかな教室もあれば、地味な教室もあります。先生がご立派だと、発表会の音楽レベルが高いのかと言うと、そうでもなかったりします。
しかし先生の性別は大切な要素のようで、女性の先生の教室だと、生徒もほぼ女性で、男性の生徒さんはいないし、いてもごく少数です。年齢の幅もそんなに広くはありません。一方、男性の先生の教室だと、男性の生徒も増え、多い教室では全体の半分近くを男性の生徒が占める教室もあります。また男性の先生の教室は、若い世代から人生の先輩方までいるところも多く、生徒さんのバラエティーに富んでいるように見受けます。なので、見る側からすると、先生が男性の教室は、見ていて楽しいですよ。
大雑把に言えば、若い人が多い発表会は音楽的なレベルが高く、歌える人が多いのですが、だからと言って、若い人はみんな歌が上手いのかと言えば、そうでもなかったりします。
どこの教室であれ、大抵の出演者の皆さんは、やる気十分で熱意に溢れ、技術の不足を気力で補っているのですが、中には、明らかにやる気のない人も出演していたりします。あれって、お友達に引きづられて、好きでもないのに発表会に参加しているんだろうなあって…なんか可愛そうに感じます。
あと、歌が苦手な人が大勢いる発表会では日本歌曲が人気で、歌が得意な人たちが多い所ではオペラアリアが人気です。まあ、オペラアリアは難しいですから、ある程度歌える人でないと取り組めないのですから、これは分かるのですが、分からないのは、歌が苦手な人ほど、日本歌曲を歌っているのです。
日本歌曲って難しいんだよねえ。曲によっては、メロディの高低と言葉の高低が必ずしも一致しているわけじゃないので、その折り合いをつけるのが難しいし、母語だから覚えるのが簡単かもしれないけれど、その分、表現を考えないといけないし、なんと言っても、日本歌曲ってメロディアスとは言えないでしょ? そのメロディアスとは言えない旋律は、本当に音が取りづらく、歌いづらいのです。また、歌詞が古語で書かれていたりすると、日本語なのに意味が取りづらかったりするし、なんかもう、大変なんです。
歌が得意でない人ほど、日本歌曲を歌いたがる傾向がありますが、日本歌曲ほど、歌い手の上手い下手がよく分かるモノは無いんのだけれどね…。外国曲を歌った方が、下手さが目立たないのになあ…なんて思うのです。
たまに、テノールアリアを歌う、バリトンさんがいます。もちろん、バリトンさんが歌うのですから、原調ではなく、キーを3~5度ほど下げて歌うのですが、聞いている私は、なんとも微妙な感じがします。愛唱歌や童謡、歌曲などは、歌手の音域に合わせて歌を移調して歌うのが一般的ですが、オペラアリアってのは、全体の中の一部ですし、作曲家も特定の声種を想定して作曲しているわけですから、普通は移調はしないわけですが、それを低く移調して歌われると「ウゲッ!」って思うわけです。
バリトンのアリアにだって、かっこいいアリアはたくさんあるんだから、何もわざわざテノールアリアを低く移調して歌わなくたっていいじゃん…って思うのですが、やっぱりテノールのアリアって歌いたいものなんでしょうね。
またピアニストさんも色々な人がいます。出演者に寄り添ってくれるピアニストさんが多いのですが、中には、絶対に出演者に合わせないで、最初から最後まで我道を突っ走るピアニストさんもいます。また、そこまでヒドくなくても、歌手が落ちようが、揺れようが、立ち止まろうが、全くひるまないピアニストさんもいます。逆に肝心なところで、ミスタッチを連発するようなピアニストも、困り者です。
基本的には、歌手に寄り添うタイプのピアニストさんの方がほほえましくて良いです。特に変幻自在に揺れ動く歌手の歌に見事に合わせてくれるピアニストさんを見ると「お見事!」と声を掛けたくなります。
プログラムに、出演者たちのひと言が載っているようなモノは、なんか微笑ましくて、私は好きです。
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コメント
昨日の日曜日、アマチュアの発表会に行ってきました。
合唱、ブラスバンド、オーケストラの豪華3本立て。
オーケストラにだけ言及しますが、
やはり、弦が弱いんですね。
繊細なフレーズでは、どうしても乱れが。
あと、管ではホルンに、やはり、乱れが。
ホルンって、最も難しい楽器の1つですから。
でも、まあ、全体的には良い演奏でした。
その最大の要因は、、、、、選曲。
ベートーベンの交響曲でした。
N響の某氏曰く、
「ベートーベンの交響曲は完成度が極めて高く、
演奏の良し悪しを問題としない。
ベートーベンの交響曲の演奏会は、
演奏前から成功が約束されている。」
おしまい
お疲れ様です。管理人さんはかなり多忙なはずなのに、他団体の発表会にもよく出かけられるとは。その意欲とエネルギッシュな行動力はうらやましい限りです。あと他団体の発表会情報とかどこから仕入れるのかも不思議です。
遅くなりましたが、キング先生の情報ありがとうございました(外国の方?とか思っていました(汗))。確かに美声ですね~。生で聞けばもっとすごいのでしょう。
operazanokaijinnokaijinさん
アマチュアは演奏に傷はあっても、心は熱いものです。その熱さがアマチュアシップってもんですって。
>やはり、弦が弱いんですね。
まあ、管楽器とか打楽器とかは、吹奏楽部出身者がいますけれど、弦楽器は、それこそ(数の少ない)音大卒業生とオトナから始めた趣味人で揃えないといけないので、やっぱり弱くならざるをえないのでしょうね。
ホルンは…難しいそうですね。私も第九をアマオケの伴奏で歌う時は、ホルンのソロでは、いつもハラハラして祈っていますから…。
>ベートーベンの交響曲は完成度が極めて高く、演奏の良し悪しを問題としない。
なるほど、勉強になりました。
ねぎさん
多忙だから出かけちゃう…という面はあります。アマチュアの歌は、ほんと、勉強になるんですって。
>あと他団体の発表会情報とかどこから仕入れるのかも不思議です。
ネットです(笑)。各音楽ホールのイベント情報を漁っているだけです。
>確かに美声ですね~。生で聞けばもっとすごいのでしょう。
すごいですよ。彼の声は、本当に美しくって色っぽいんです。私は、声楽教師としてのキング先生には疑問と感謝と恨みがありますが、テノール歌手としてのキング先生には、ただただ憧れがあるだけです。あの声は、まさに神様が与えた宝物です。その事を否定するほど、私の目は曇っちゃいません(笑)。
わたくしも、日本人なんだし、やはり日本の歌曲をちゃんと歌ったほうがいいのかなあ、と思います。
が、いわゆる日本歌曲として昔からよく取り上げられる曲は、なんだか世界観に共感できないというか、「時代が違う」という感じがしてしまい、メロディもそれほど好きなものがなく、敬遠してしまいます……
では最近の作曲家のものはどうか、というと、曲が難しかったり、詩の意味がよくわからなかったりしてこれまたちょっと敬遠……
あまり頭を使いたくないのかも知れません(汗)
今歌うならこれかなあ…と思っているのは「あわて床屋」をアレンジしたものです(笑)
椎茸さん
日本歌曲は我々の歌曲だし、良い歌もあるので、本来的には率先して歌うべきだと、私も思いますが、実際問題として食指が動くかと言われると、なかなか微妙なところです。
日本歌曲を歌うには、声以外の要素が重要なのですが、私は現在、声に重点を置いた歌唱を行っていると言うこともあり、反りが合わないのです(汗)。ですから、私が日本語の歌を歌うなら、日本歌曲よりも民謡の方が良いかも…でも民謡の発声とクラシック発声は、遠いんですよね…。
ちなみに私が、今歌うなら…と考えるなら、木下牧子氏の歌曲かな? 「さびしいカシの木」とか「ロマンチストの豚」なんかは、ぜひ歌ってみたいです。なかなか良いですよ。